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文学談話室

おもにシナリオ脚本を中心に小説・音楽・旅行記など書いています

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童話「美華のお手伝い」

新童話「美華のお手伝い」
この物語はノンフィクションであり、ここに登場する名前・会社名は実在しません。


東京から西に40キロ、多摩丘陵の一角にある高台のもみじ丘ハイツの建物が冬の短い陽を浴びて美しい。
もみじ丘ハイツは多摩丘陵の新多摩公園駅から歩いて10分、都心の新宿へも東西電鉄と京神電鉄があってとても便利である。一戸建てを中心に一部の建物は、12建ての中層マンションが集まって15棟ほど建っていた。駅はもみじ丘から見るとちょっと谷間になっていて、人口の増加に伴って駅前にはスーパー、大型電気店、DIY、それに図書館、美術館まであって日曜日はかなりの人でにぎわっている。矢田一樹・佳奈子は29歳で職場で出会い結婚した、3年経って二人は女の子を授かった。
美華は両親の愛を受けてすくすく育った。佳奈子の母がクリスチャンだったこともあって聖書を読んで、佳奈子は美華をやさしく、しかし時には厳しくしかって育てることも忘れない。
「少年をその道にしたがって育てよか、うん、なるほどね、」

「ねえ、美華、スパゲッティー作ってあげようと思ったんだけど、ひき肉とかケチャップがないの」
「ママ、ないの」
「ええ、それでねえ、ママ美華にスパゲッテーとかパンとか買ってきてほしいの」
母の佳奈子は、美華に独立心と自分で判断することがもう必要と考えてかねて考えていたことをこの機会に一人で出かけてケチャップとかパンを買ってきてもらうようにしなければと思った。美華は、母から突然言われて、目をくるくる回しながら、
「ねえ、ママ行かないの」
と白いエプロンのすそを引っ張って母を見上げるように話す。
「美華ももう来年は保育園から幼稚園、もうおねえちゃんになるのよ」
「でも、美華怖いよ」
「はっ、怖いって」
佳奈子は、美華の目線にあわせるようにかがんで、美華の手をしっかり握って
「ねえ、あなた何が怖いの」
と優しく聞いた、佳奈子はいつも美華になにか聞かれて答えるとき、少し腰を折って子供の目線に合わせて必ず手を握り話すのだった。
「ねええ、この坂の下のほら加藤さんのワンちゃんが怖いの」
加藤さんとは、美華の行ってる保育園の友達の沙織の家なのだ。
毎日午後になると、加藤さんのおじいさんがかわいい犬を連れて散歩に出て来るのだった。
「怖いのって、大丈夫よ、加藤さんのワンちゃん、きっと美華のことが好きななのかも」
「だってわんちゃん、美華が側に行くとワンワンってほえて」
「でもあなたが近づくといつも尻尾振ってるでしょう、あれはね加藤さんのわんちゃん、美華が好きだから尻尾振るの」
「へえ、そうなの」
「犬はねええ、喜んでるときには尻尾を振る習性があるの」
「ママ、習性って」
「うん、なんていったらいいかなあ、ああ習慣、わかる?」
「うん、ちょっとわかってるけど、わからない」
「くせっていえばわかるかなあ、美華には」
「うん」
そんな和やかな美華との会話を交わしてるときが、私にとって一番幸せだわ」
母はしみじみそう思った。
美華はこれまで佳奈子と一緒に駅前の東友スーパーに出かけていた。佳奈子は、美華にお使いを頼むのにいつもいく東友スーパーでは無理だと思った。身長100センチ足らずの小さな美華が買い物籠を持ってレジを通るのは無理だしそれにスーパーで小さい子が一人で買い物をしてかえって周囲の人たちから奇異な眼で見られてもかわいそうだとも思った。
新多摩公園駅から紅葉丘ハイツに亘る道路の左右には一戸建てとか中規模のマンションが立ち並び人口も増加の一途をたどって自然発生的に商店街が出来上がっている。
スーパーに対抗して新鮮な肉・野菜。鮮魚をはじめ一般食品は結構安かった。
商店街のお店の人も母が美華が可愛く顔を覚えてくれて、時々買い物をしていると、
「美華ちゃん、お母さんとお買い物でいいわね、これおばさんからご褒美」といって商店街大売出しの時には風船とか、そうでないときは店で売っている鉛筆一本とか、箱入り菓子一箱とかを美華の小さな手に握らせてくれることもある。
美華もまた、母、佳奈子の書いたメモをもみじのような可愛い手で持って、
「あのねえ、おばちゃん、コロッケ3つとええと、ぽ・て・と・サラダをこんだけちょうだい」と背伸びして肉屋のお店の人にメモを見せたりしているのだった。
母の佳奈子は、美華は皆から愛されていて幸せな子だわと心の中で喜んでいた。
美華が、「あのねえ、美華一人でお買い物行ってもいいよ」といったので、美華も大人になったと喜ぶ反面、もし、買い物に行く途中、わが子が見知らぬ人に誘拐されたり、事故に巻き込まれてもと心配もあった。
かって佳奈子も母から丁度幼稚園に進むことが決まって、一人でお買い物を頼まれた経験があった。しかし、その頃は公園にも子供たちが集まってブランコに乗ったり砂場で遊んだりしていた。子供はのびのびと外に出て歓声をあげて遊んでいた。そんなことを美華の顔を眺めて考えた。
でも、時が変わり、今は子供が安心して外に出ている姿も見られなくなり、治安の悪化でこの辺でも子供に話しかけてそのまま車に乗せようとしたり、歩いて見知らぬ男についていって危うく誘拐されそうな子供の犯罪が発生していた。
佳奈子は、美華が行ってる保育園の同じ父兄と子供が一人で出かけるときにはお互いが助け合って子供を見守りましょうという協力体制がいつのまにかできていた。
昨日美華に気がつかれぬようにひそかに商店街に通じる道筋の父兄仲間にあらかじめケータイで連絡、監視をしてもらう約束が出来上がっていた。
「美華ちゃん、頼むわよ、その間美華の大好きなホットケーキ作っとくからねえ」
そういって「これがお財布、この中に2000円入ってるから、お買い物できたら美華の大好きな絵本一冊だけ買っていいからねえ」
といいながら美華に財布を渡す。
美華は、「保育園に行くときの・・・・ええとアヒルさんのかばんに入れていくね」
といって柱にかけてあるかばんを小さな手で肩にかけた。
美華は、数ある保育園のかばんの中でも母親がミシンを掛けて刺繍をしてくれたあたたかい手作りのかばんが一番好きなのだ。
「美華、これが美華に頼むお買い物を書いてある紙よ、なくさないでね」
佳奈子は、美華の目線にあうようにかけているレースのエプロンを少し手繰って腰を屈めて、
「いいこと、ひき肉が300グラム。スパゲティーが一袋、ケチャップが一つ、それにソースが一つ、あとパンが一袋いいわね」
「ママ、美華わかった、ええとお肉、ひき肉でしょ、ええと、ええと、ああわかったスパゲティーが一つ、それにパンだよねえ」
佳奈子は、美華が眼をくるくるさせながら小さな指を折りながらわからないときにはちょっと首を傾けて子供なりに買い物の品を一生懸命に復唱している姿がなんとも言えず可愛く、思わず、美華を抱いて、
「美華ちゃん、いつのまにかお買い物の名前覚えて・・・・じゃ、行ってらっしゃい」と手を引いてエレベーターに乗り、1階のロビーから通りに出て、
「じゃ、行ってらっしゃい、頑張ってね」
そういって美華の姿が消えるまで手を振っていつまでも見送るのだった。
美華もときどき振り返って小さな手を振っていた。
佳奈子は、美華の姿が見えなくなるとケータイを取り出してまづ、同じ保育園の松本直子に連絡をすることにした。
「あのう、美華の母ですけど」
「あっ、佳奈子」
「あのねえ、美華が今買い物に出たの、で、あなたの家から美華を見たらそれとなく見張ってくれる」
「いいわよ、佳奈子、心配だったらあたし、美華ちゃんと一緒にお買い物に行ってもいいけど」
「はっ、それじゃ、今日一人でお買い物させてるのは美華のためだわ、お気持ちうれしく受けておきます」
一方、美華ははじめて一人で外に出て緩やかな坂を下っていた。駅に通じる通りは黄色や赤色に葉が色づいていてプラタナスの木々がきれいだった。
時折風が吹くと葉がぱらぱらと舞いながらくるくると落ちてくる。
美華は道路に落ちている赤いもみじの葉に眼を留めて
「もみじさん、とってもきれ~、美華に一つちょうだいね」
折りしも風が吹いてきて歩道に落ちた紅葉の葉がくるくる回って足元を廻ってゆくのだった。
「紅葉さん、ちょっと待って」
美華はちょっと駆け出して風の止むのを待ってしゃがんで
「この葉っぱ、赤くてきれ~い、美華これがいいなあ」
そういいながら赤い紅葉を二、三枚拾って、プラタナスの木に向かって
「ねえ、紅葉さん、きれいな紅葉をありがとう、美華大切にするからね」
頭をぴょこりと下げた。その様子をじっと2階の窓から見ていた松本真子の母、松本直子が気づいて、
「美華ちゃんががここを通るようだわ」
タンスの中からケータイを取り出して二階を降りて玄関から外に出て待つことにした。
遠くから美華が近づいてくるのだった。
美華は、生まれてはじめて外に出たのがうれしいのか
「ランラランラン・ランランラン」となにかわからないが、ハミングして松本直子の立ってる場所に近づいてきて、
「あっ、真子ちゃんのママ、こんにちは」と前に立ち止まって丁寧に頭を下げた。そのしぐさがとても可愛かった。
母、直子は、美華さんのままはとても子供をよくしつけてるわ、近頃は挨拶もしない子供もいるのにと思った。
「おばちゃん、そこで何してるの、真子ちゃんは」
と不意に聞かれて、
「おばさんはねえ、美華ちゃんを」
といいかけてあわてて口を閉じた。危うくいうところだった。危ない、危ない
「あのねえ、真子ちゃんは今お父さんと一緒に駅前の公園にいってるの」
と答えて美華の顔を眺めた。
「あのねえ、おばちゃん、美華はねえ」
「お使いに行くの、偉いわねえ」
「うん」
「気をつけて行ってらっしゃいね」
美華は、紅葉のような右手を振って
「さよなら」
と行って通りすぎて行った。
直子の母親はケータイをエプロンのポケットから取り出して、
「直子の母ですけど、美華ちゃんねえ、今家の前を通って行ったわよ」
と報告した。
美華は黒塀のある加藤さんの家に差し掛かってきた。
あっ、加藤さんのワンちゃんがいたら怖いなあと思っていた。
左折道路があって、美華は黒塀の角からそっと様子を見ていたが、そのときだった。
加藤さんのおじいさんが犬を連れて門から目の前に出てきた。
「あっ、わんちゃん、美華怖~い」
驚いて、あとずさりしようとしてる美華におじいさんが
「美華ちゃん、怖くないよ。ほらこんなに尻尾振っているよ」
加藤さんの家で買っている犬は決して大きくなくフランス原産のパピヨンで小さく大きくなっても4キロという犬だった。人なっつこくて陽気だといわれている。
小さな美華には犬が大きく見えるのだろう。犬は立っている美華をじっと見ているようだった。
「美華ちゃん、喜んでるよ、こっちに来てごらん」
美華は母がワンちゃんは尻尾を振ってるときは怖くはないのよといった言葉を思い出していた。
美華は、おじいさんに近づいた。
「ほら怖くないよ」
おじいさんに言われて美華は
「可愛いねえ、ねえ、ワンちゃんの名前なんていうの」
といいながら右手を恐る恐る出して毛をなでようとした。
犬は驚いて、舌を出して美華の小さな手をペロッとなめた。
「わっ、驚いた」
といいながらも犬になれてきたようだ。
「わんちゃんの名前はねえ、ごん太郎というんだ」
「ごん太郎」
犬の側にいつまでもいて様子を見ている美華だったが、
「おじいちゃん、美華ねえ、ママに買い物頼まれたの、さよなら」
そういってまっすぐ道を渡って歩いていった。
加藤さんのおじいさんもケータイを取り出して、ひそかに美華に知られないように
美華の母に連絡した。

美華は、
「ええと、お買い物は、スパゲティーにええとケチャップにええとごん太郎に・・・」といいながら
「ええと、スパゲティーにええとああ、ごん太郎に」
犬の名前を教えてもらって美華には珍しかったのか、立ち止まって、
右指を折りながら、
「ええと、スパゲティーに、ええとケチャップに、それからごん太郎に」
と後の買い物の名前が思い出せない。
「ええと、ええと」
首をかしげながら思い出そうとするけど、思い出せない。
美華は、小公園に差し掛かった。この公園は地域の環境整備のために市が地区ごとに作った公園で、土、日のウイークエンドには周辺の子供を連れた親子でにぎわっている。
そこには、美華がお父さんやお母さんに連れられてずっと小さいときからこの公園で父に手を引かれて上った滑り台、母が小さな美華の背中を右手で支え左手でブランコの振り子があまり大きくならないようにして押さえて、わが子の安全を考えながら遊ばせてくれた美華にとっての楽しい想い出がいっぱい詰まっている場所でもあるのだ。

                               (続)

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童話「一箱のクレヨン」



童話「一箱のクレヨン」

ある日、トラックが駅前のぶんぼう具屋の前でとまりました。うんてんしゅさんはトラックから降りて段ボールの箱をかかえて「こんにちは」といいました。

店の奥から、おばあさんが出てきて「いま、だれも出かけていてわたしひとりるす番しているの、わたしも手つだうよ」
うんてんしゅさんは、床において段ボールを開けました。

中にはいろいろなぶんぼう具が入っていました。ボールペン、消しゴム、ノート、ふうとう、などをおばあさんといっしょにお店のいろいろなところに並べました。
「ごくろうさん」
おばあさんはそういっておまんじゅうとお茶をうんてん手さんにもってきました。うんてん手さんはちょっとおじぎをしてお店を出て行きました。

その中で一箱のクレヨン箱のクレヨン皆が箱の中で
「ねえ、ぼくたちを使ってくれる人はどんな人かなあ」といいました。
しばらくたって赤いランドセルを背負った小さな女の子がお店に入ってきました。おや、かずちゃん、がっこうの帰りかい」
おばあさんがききました。「そう、クレヨンほしいの」かずちゃんは、「うん」といいました。

おばあさんは、
「ちょうどいま新しいクレヨンが来たのよ、ふでで書ける水彩絵の具にもなるし」
かずちゃんは
「それちょうだい、いまお母さんが病院ににゅういんしているの、お母さん、お花が好きなので、お花の絵をかいてわたし持っていこうと思ってるの」
おばあさんは、かずちゃんのいうことを聞いて、
「お母さんがはやく直るといいねえ」
といいます。

一箱のクレヨンはお店のクレヨンを積んだ2番目にありました。かずちゃんは、クレヨンの前にきて「おばあちゃん、クレヨン取っていい」といいながら、クレヨンを取ろうとします。
一箱のクレヨンは「かずちゃん、ぼくたちは2番目だからえらんでね」
といっしょうけんめいいいますが、皆には聞こえません。
かずちゃんは3番目のクレヨンをえらび、「おばちゃん、これちょうだい」といって五ひゃくえんをおばあちゃんにわたして「どうもありがとう」といってお店を出ていきました。

つづいてはいってきたおきゃくさまは白いワゴン車から降りてお店の中に入ってきました。おきゃくさまはこの町から2時間も山奥に入った山里小学校の分校の高田せんせいです。
せんせいは、お店のクレヨンの前にきて、「これにしようかなあ」といって2番目のクレヨンを手に取っておかねをおばあさんにわたします。
一箱のクレヨンは先生がかばんにしまったので、うれしくなって皆で思わず「やったあ」といいました。

「せんせい、ごくろうさま、お茶でも飲んでいってください」といっておまんじゅうとお茶を持ってきました。おばあさんは「高田せんせい、ことしは寒いので山奥の分校も大変だねえ」といいました。せんせいは「うん、ここから車で2時間も入ったところだから雪もたくさんあって、野うさぎも冬ごもりしてるのか、学校の裏山にも出てこないよ」とおばあさんに答えました。

せんせいは「じゃあ、おばあさん、元気でいてね、今度くるまで」といってお店をでていきます。

「高田せんせい気をつけて帰んなさい皆によろしくいってちょうだい」
とおばあさんの声がせんせいの後ろから追っかけてきます。せんせいは白いワゴン車に乗り、エンジンを入れてハンドルを握って町の中をとおり抜けてやがて道がせまくなり林の中のまがりくねった道を登ってゆきます。

だんだん道のはじっこに雪が残っているところをすべらないようにしてこうして山里小学校の分校にたどりつきました。ここは冬の寒い間だけ、雪で道路も通れにくくなりこの山里小学校の生徒の皆はこの分校で雪にじっとがまんをして春がくるまでここでせんせいとともにすごすのです。

二日後に先生は一年生から三年生の7人のせいとにかばんの中から一箱のクレヨンを出して、皆に見せながら「このクレヨンを一週間だけ一人ずつあずけるので、皆の好きな絵をかいて、さいごのだれかが絵といっしょに持ってきてくれないかと皆に話します。

高田せんせいはいつも一年生から三年生までの7人のせいとをおしえています。だからさんすうの時間でも一年生と三年生ではちがいます。それで、みんな同じようなことをして7人がなかよくするには、今日買ってきたクレヨンで絵を皆にかいてもらおうかと考えました。

7人の生徒の絵を教室のかべにはり出して皆にそれぞれ賞品をあげようと思いました。
「せんせい、何でもかいていいのですか」三ねんせいの順君が聞きました。
「うん、何でもすきなものかいていいんだよ、さいごのだれかがせんせいに絵といっしょにもってきてくれないか」といいました。

「わかりました。せんせい」七人の生徒が元気よくこたえます。

「さあそれじゃ最初に三年生から書いてもらって最後は一年生にしようかなあ」とせんせいは、しゅっせきぼを見ながら「最初は三年生の順くんだ、そしてかなえさん、次に二年生の有紀子さん勇くんとしはるくんそして一年生に移って洋子さん、文彦くんが最後だ、いいね」
といいながら、せんせいはクレヨンの箱を順くんにあずけます。

「書き終わったら学校に持ってきてくれないか、このクレヨン」せんせいはそういって
「みなどんな絵をかいて持ってきてくれるかたのしみだなあとにこにこしています。

箱の中のクレヨンたちは、
「順くんがいちばん最初につかうのは、この中のどのいろだろう」と話しています。

順くんはランドセルにせんせいからあずかったクレヨンを入れて家に帰ります「ぼく、なんの絵を書こうかなあ」と考えているうちにおじいちゃんの顔を思い出しました。


「そうだ、僕はじいちゃんの顔をかこうかなあ」
箱のクレヨンたちはそれを聞いて「きっと茶色だよ、おじいさんの顔書くんじゃ」といっています。

順くんの家は学校から小さな川にかかっている橋を渡り国道に出てそれを沿って北に5分歩くと左側の黒い兵に囲まれた家がそうです。
お父さんはこの町のやくばに勤めていて、お母さんは近くの農協で働いていて、おじいさんが一人で留守番をしています「ただいま」といって戸を開けると、
中から
「順か、お帰り」というおじいさんの声がします。

雪囲いのある戸をあけると奥の部屋でおじいちゃんが「寒かっただろう、こっちにおいで」と手招きしています。
大きな柱が天井にあって部屋の真ん中には大きないろりがあって皆、家族がそこに集まる場所になっています。

大きなふるい柱時計がとつぜんぼんぼんとなりました。時計の針はごご3時なのにまどの外は白い雪にかこまれていてガラス戸が曇っています。
順くんは小さい頃まだ5歳のときだったでしょうか、暗い部屋から順くんの背のたかさまでもあろうかと思うような柱時計のぼん・ぼん・ぼんという大きな音が恐くてよく泣いたものでした。

「おじいちゃん僕恐いよ」おじいちゃんはそのたびに
「恐いことはないよ順」といって大きなたくましい日に焼けた手でしっかりと抱いてくれました。
順君はそんなおじいちゃんが大好きなのです。
それで学校でクレヨンを先生にわたされたとき、真っ先に僕はおじいちゃんの絵を書こうと思ったのです。

おじいちゃんは順君が部屋に入って肩にかけていた布で作ったリュックを置いてその中からクレヨンのはこを取り出します。
「順、寒かっただろう、おじいちゃんなあ、甘酒造っておいたから「甘酒、順くんのはじめて聞く名前です」
「寒い時にはからだをあたためるのがいちばんいいのじゃよ」おじいちゃんは立ち上がって台所にあった甘酒をあたためておわんに甘酒を入れてもってきました。
順君は目の前に差し出された甘酒にとまどっています

「飲んでごらん」おじいちゃんから言われると順くんは、おわんをもって一口飲みました」
「なにこれ白い米粒みたいのが」「それはなあ、お米で米の粕で作ると甘くなるんじゃよ」
「なんだかカルピスみたい」

このいなかでも街道そいにコンビニエンスストアができてから学校のともだちとときどきおにぎりとか
はんばーがーとか、カルピスウオーターとか買ってくるようになったのです。

「おじいちゃんは僕の宝物だよ、だって僕が知らないこまとか竹とんぼとか、竹馬とかいっぱいいっぱい作ってくれたんだもの」雪の深いこの山奥にも都会と同じようにテレビゲームが入ってきてこどもたちはこんなに自然がゆたかなところなのに外で遊ばなくなって家で過ごしてあそぶようになってしまったのです。

箱の中のクレヨンたちは「順くん、いつおじいさんの絵を書いてくれるのだろう」とささやきあっています

順くんはおじいちゃんの作った甘酒を飲みながら、
「おじいちゃん、今から僕、おじいちゃんを書いてあげるね」そういって箱の中のクレヨンを開けると16色のクレヨンたちはきちんと並んでいて「来た、来た」
とお互いの顔を見ながらいどおれ、ってます。
「順がおじちゃんの顔を、それはうれしいのう」
おじいちゃんは「それじゃ、きちんとせにゃあ」
ともういくらもない頭の白い髪の毛をくしできちんと直しました。

「おじいちゃん、じっとしててね」走ってとなりの部屋にいって引き出しから画用紙を取り出して帰ってきます。

箱の中のクレヨンは「順君、最初に何色でかいてくれるんだろう」茶色のクレヨンが「順くん、ぼくを使って」肌色のクレヨンも負けずに「私を使って、おじいちゃんの顔」と言い出しますがもちろん順くんにはきこえません

「おじいちゃん、いくよ」
おじいちゃんは順くんにいわれたからなのか、背中をまっすぐにして順くんの顔を見た。肌色のクレヨンに順くんの手が伸びたので肌色のクレヨンは思わず
「僕、やった」といってよろこびました。
順くんは、肌色のクレヨンを右手で持ちながら憩いよく画用紙いっぱいにおじいちゃんの顔全部をかきはじめます。

画用紙はつるつるするのでクレヨンもすべるように書いていくことが出来ます。肌色のクレヨンは「わあ、スケートみたい」と喜んでいます。
ええと、僕はといいながら肌色のクレヨンをおさめて
今度は黒のクレヨンと白のクレヨンを取り出します。

順くんはおじいちゃんのかみの毛をクレヨンを使って書いてゆきます。「ええとおじいちゃん白い毛もあるから」
そういって黒いかみの毛のところどころに白い毛をふやしていきます。「ええと、まゆ毛は」順くんはおじいちゃんのまゆ毛を黒いクレヨンで書いて行きます。
おじいちゃんはやわらかい弓のようになっていて順くんも一生けんめいです。

「次はおめめ」おじいちゃんの目は小さい目だけどとてもやさしく順くんもたいへん苦労しているようです。「おひげにお口でおわりだからね、おじいちゃん」そういっていっしょうけんめいで
「お口は赤だよね」
赤いクレヨンは思わず「わたしのばんよ」
といってよろこんでいます。
こうして10分でおじいちゃんの絵が無事にできました
「出来た、ほら、おじちゃんの顔」
順くんはそういって絵をおじいちゃんに渡します。
「順、ありがとう」おじいちゃんはそういって順くんを抱いてよろこんでいます。
「あのね、おじいちゃん、この絵はみなの絵ができたら学校でかざってみなで見るの」
「わしの絵を学校でかざってくれる」「そうなんだ、それまで僕、家のかべに張っておくからね」
順くんはおじいちゃんにいいました。

かなえさんは急いで玄関の戸をあけました。
おじさんがにこにこして「お母さんからでんわがあったので急いできたよ」
おじさんのうしろには、あの絵にかこうと思っている赤いいろの自動車がとまっています。
外はくらくなって山の上に赤いたいようが沈もうとしています。

かなえさんは急いで画用紙を持ってきて暗くならないうちに赤い自動車の絵を書こうと思いました。
台所からしいたけご飯のいいにおいがしてきました。
かなえさんは玄関の近くに止まっている赤い自動車を書くため部屋から小さないすを持ってきて絵をかきはじめます。

箱の中のクレヨンたちはまたさわぎはじめます。
「ええと、赤い色の自動車だから赤いクレヨンとタイヤの黒色だから黒いクレヨンだよね」
かなえさんはいすに座って赤いクレヨンで画用紙に赤い自動車のりんかくを書きます。
窓とドアを書いて
次は自動車のタイヤを丸く書いて行きます。
山の上の夕陽がそらを真っ赤に染めていましたが、やがて通りの街灯が点き始めて赤い自動車の影が伸びて行きます。「大変だ、急がないと、困ったなあ、夜になったし」

かなえさんは困ったようです」
どうしよう、弱ったなあ、そう思いましたが、ふと
「そうだ、赤い自動車が夜走ってることにしよう」
箱の中のクレヨンたちは「今度は黄色いクレヨンの出番だよ」黄色いクレヨンは突然のできごとにとまどいました。

「えっ、僕が」かなえさんの小さな手が伸びてきて黄色いクレヨンを取り上げました。そういいながら前のライトを黄色く塗って自動車が走ってるように前を灯りが照らしてるようにしました。

自動車はいかにも夜、走ってるようです。
窓を灰色で塗ってドアのりんかくを灰色でまとめて絵は出来上がりました。「ついでにおうち書こう」
かなえさんは灰色のクレヨンでおうちを書いて黄色で灯りを書きました。「できた、私の赤い自動車」

その時「かなえ、しいたけごはんが出来たわよ、おじさんも来てるから」「はあい」かなえさんは外でからだが冷たくなって玄関を開けて家の中に入りました。
おじさんも来てお父さん、お母さん弟も含めて5人でおいしいしいたけごはんを食べました。

夕ご飯が終わるとかなえさんは、
「おじさんありがとう、あたし赤い自動車書きたかった」といって皆に絵を見せました。
「かなえさんうまいねおじさんうれしいよ」
と喜んでいます。

翌日一箱のクレヨンをかなえさんは由紀子さんに渡します。由紀子さんは何を書こうかと思って腕組みをして校門を出てたちどまりました。かなえさんの頭には人形?いもうと?お母さん?バナナ?にしき鯉?とうずまいています。そのとき頭にひらめいたものがありました。そうだ犬のごん太郎を書こう。
犬のごん太郎は由紀子さんの家に来てもう3年目小さい時から由紀子さんはごん太郎を可愛がってきました












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