文学談話室

おもにシナリオ脚本を中心に小説・音楽・旅行記など書いています

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日替わり恋歌


恋歌といえば古くは万葉時代からありました。英語ではLove Songといいますが 恋歌ということばが日本語特有の美しいことばと思うのです。
懐かしい青春時代の恋人を謳った短歌を日がわりご披露したいと思います。 彼女・恋人、振られたり、振ったり。片思いだったり学生時代、社会人時代の 想い出を今、素直に短歌で表現したいと思います。
短歌といってもかって前世を風靡した俵万智さんの「サラダ記念日」の短歌集
に基づいたものです。
みなさまも、恋人を短歌で表現してブログ・メール・手紙とかで送ってあげるのはいかがでしょうか



付き合って
三回目だから君を抱く
なれなれしいわと声を恐れる
 
 


初恋の彼女とデートして3回目でした。ある夜彼女を抱きたくなりました。映画の一ワンシーンのように
でも、なれなれしいと思われはしないかと考えて浮かんだ歌です。
ずいぶん前のことであり、今のように元カレ、元カノもなく
その当時をあらわした短歌ではあります
<

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作家のたまご5月号  目次

ようこそ、「作家のたまご」を訪ねえてくださった皆様を心から歓迎します。
昨年7月に「愛は時を越えて」を出版しました。
それを機会に何とか作家として道を歩みたいと日夜頑張っています。

小説・シナリオ・童話をはじめエッセイ、テレビドラマ評、音楽など幅広いものを心掛けたいと思っています。

5月号の主な内容は次のとおりです

① 私の好きなテレビドラマ NTV「anego」① NEW
2006年NTVで放映されたテレビドラマ「anego」は同名の作家林ふみこの小説「anego」のドラマ化されたものであり、小説とは若干異なっている。

丸の内商社経営戦略部に勤務している野田奈央子(篠原涼子)は入社10年の熟練女子社員である。奈央子はとにかく部員をはじめ、女性社員の悩み事の相談に応じて、さらに東済商事を退職した
沢木絵里子(ともさかりえ)まで面倒を見ていて、気がつくと31歳になっていた。


②企業恋愛小説「ホテルの恋人たち」
これは全13話に当たるものでNTVテレビ「シナリオ登竜門」に応募しようと思った作品ですが2007年より中止となり小説化したものです。
東京台場にオープンする巨大シテーホテルに集まった研修生の3組の恋人を中心とした涙と笑いと感激の物語でホテルマンとして成長して行く物語です。

② 新登場 長編オムニバス小説「東京23区 「男と女の物語」

東京にはいろいろな顔があります。その中で23区は実にいろいろな個性を持っています。

その23区は政治・経済・ビジネスの中枢機能中心の千代田区
商業施設が集まるとともに江戸のよさ、伝統を残している中央区
最近まで緑いっぱいで畑も残ってる農業らしさを残している練馬区
中小企業の集まった人情のある下町、また高級住宅がある山の手のたたずまい、二つが同居する大田区

このような東京23区で起きる男と女の物語を書いて行くつもりです。
どうかよろしくお願いいたします。

第1回目は「ひと時の邂逅」(千代田区) 数寄屋橋親子三代記(中央区)です。

「ひと時の邂逅」
千代田区丸の内の新世紀商事(株)の経営管理部長 富田は新しいハケン社員の面接を行うこちになった。ひとりは名古屋静子だったが、もう一人は富田が5歳の時に妻と離婚した娘の富田優美だった
20年以上断絶されていた父と優美は運命の再会を遂げたが・・・・・親子の情愛を温かく、しかし哀しさ一杯の心情を渾身をこめて書いていて泣ける物語です。

「数寄屋橋親子三代物語」
終戦後の混乱期、東京オリンピックが開かれた高度成長期、そして平成の今、親子三代が数寄屋橋の激変を背景に時代時代をデートする物語です。
東京23区男と女の物語
東京にはいろいろな顔があります。その中で23区は実にいろいろな個性を持っています。

その23区は政治・経済・ビジネスの中枢機能中心の千代田区
商業施設が集まるとともに江戸のよさ、伝統を残している中央区
最近まで緑いっぱいで畑も残ってる農業らしさを残している練馬区
中小企業の集まった人情のある下町、また高級住宅がある山の手のたたずまい、二つが同居する大田区

このような東京23区で起きる男と女の物語を書いて行くつもりです。
どうかよろしくお願いいたします。


③ 短編純愛小説「けだるい夏の日」

 鉄道好きの幸一は土曜日のけだるいような夏の日にカメラを持って江ノ島に向かったが、江ノ島駅で見慣れない電車が止まっていて幸一はその電車に乗ったとたんタイムトンネルで高校生の涼子に逢うのですが涼子は高校生で17歳、幸一は年令は7年後のままの25歳、二人とも同級生なのに
二人の話はかみ合わず、果たして幸一と涼子は・・・・・・・・・・・・・・・・

④ 短編恋愛小説「意表」ケータイでは「イヒョー」
外資系の人材ハケンバンクの小野響子と東西通信(株)に勤務する広井重信は、ある朝大船駅で会い、二人はその後親密になって行くのだが、なぜ親密になったか・・・・・・・・・・

⑤ 短編音楽小説「雨宿りの幸せ」
音大生の高野真理子、~はともにピアニストを夢見ていた。しかし真理子は父の事業の失敗、倒産から留学をあきらめて新宿の子供の音楽教室でピアノを教え、あとはハケンで出版社に勤めていた。しかし、ピアニストの夢を忘れられず・・・・・そんなある日仲のよかったピアニスト磯辺美紀からパリ帰国演奏会に出かけた、自分と美紀の境遇を考えて失望のうちに駅で雨の降るのを待ったいた真理子に声を掛けてきた音大教授の彼、二人は雨宿りを喫茶店で過ごした・・・・・

⑥ 長編恋愛小説「愛は時を越えて」
  裕彦と亜理紗は幼稚園で聖書劇を通じて親しくなり小学校4年生で亜理紗の父が中近東に転勤
その後二人は音信が途絶えてしまった。
ところが20年後2007年に幸一が乗ったオーシャン航空ですっかり美人になった高梨亜理紗と運命の再会、二人はニューヨークで積年のつきせぬ想いを・・・・・・・・・・・・・・

⑧ 中篇小説 「山手線」
東京区内を45分で一巡する環状線「山手線」そこにはいろいろな人生を背負った人たちが乗ってきて降りて行く。早朝、ラッシュ・昼・夜にどれぞれ見せる別の顔がいる、すし職人・送別会のサラリーマン
新幹線で車内に泊まった友人の結婚式帰りの主婦・今日が定年・会社訪問がやっとかなった女子大生・ノルマ達成のセールスマン・ショッピングに行くセレブな主婦など・時間の変化とともに人も変わる
人々のいろいろな想いを載せて山手線は今日も走る。

⑨ 現代新日本語・若者ことば字鑑
今さかんに巷を飛び交っている新しい日本語、頻繁に使われる若者が用いることばから意外なものが見えてくる。新しい日本語として辞書にも掲載されていることばは感性のあるものが多い

⑩ 童話「一箱のクレヨン」
山の上の分校のせんせいはみんなに一箱のクレヨンを見せて、このクレヨンで好きな絵を書いてきて
出来上がったら皆の絵を壁に張ろうということで7人の子供たちは、
箱の中のクレヨンたちがさわぎはじめます。

⑪ 童話「美嘉のお手伝い」
東京郊外の丘にある沢山建っているマンションの一つ、そこに美嘉は両親と一緒に住んでいます。
ある日、お母さんは美嘉も来年は学校に行くので一人で買い物をさせようと送り出すのですが外に一人で出た美嘉の目に映ったものは・・・・・・・

⑫ 創作ドラマシナリオ「新浦島竜太郎物語」
おなじみのおとぎ話「浦島太郎物語」の現代版でパローディー版になっていますが、海洋汚染についても考えています。

⑬ 創作ドラマシナリオ「ホテルの恋人たち」
かってホテルの経験をもとに新しくオープンする東京台場セントラルホテルに集まった3組の恋人たちがホテルの発展とともに成長して行く物語で全13話ありますが、今回は第1話のみを掲載


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私の好きなテレビドラマ 第1回NTV 「anego」

好きなテレビドラマBEST3をあげてくださいといわれたら

① 「anego」http://www.ntv.co.jp/anego/

② 「ハケンの品格」http://www.ntv.co.jp/haken/

③ 「働きマン」http://www.ntv.co.jp/hatarakiman/

と答えます。

以下

④ 「花嫁は厄年っ」http://www.tbs.co.jp/hana-yaku/

⑤ 「あいのうた」http://www.ntv.co.jp/ai/

⑥ 「神はサイコロを振らない」http://www.ntv.co.jp/saikoro/

⑦ 「のだめカンタービレ」http://wwwz.fujitv.co.jp/drama/index.html

ということになります。




①「anego」

このドラマは、林真理子の小説同名の「anego」をドラマ化したものです。

第1話から第10話までで、東済商事を舞台に、入社10年のベテラン社員、野田奈央子(篠原涼子)を中心に、先輩と慕う加藤博美(戸田菜穂)、さらに奈央子になにかというと相談を持ちかける元東済商事の社員で投資コンサルタント社長(     )の妻となった沢木絵里子(ともさかりえ)、それに新入社員としていつの間にか奈央子に関心を寄せるようになった黒澤明彦(赤西仁)、経営戦略部長、後輩の個性を持った面々が好演している。




野田奈央子(篠原涼子)は31歳、常に女子社員の先に立って仕事は抜群、同性社員から頼もしく思われているが自分のこととなると不器用で黒澤明彦・沢木・それに斉藤ともお見合いをしたがいずれも失敗して結婚をあせっている、そんな31歳の女性の不安な繊細な気持ちを見事に捕らえていて最後まで視聴者を引っ張ってゆく。

またちょっとミステリーっぽい不可解な沢木絵里子役、ともさかりえ)も難しい役を演じていて、野田奈央子と沢木絵里子の不思議な関係が非常に面白い。




あらすじ

野田奈央子(篠原涼子)は東済商事に勤務する中堅社員で経営戦略部のほか、女子社員の面倒をよく見るが、自分自身もずっと白馬に乗った王子様、結婚相手を探してきたがいまだに独身である。

そんな時に新入社員の黒沢明彦(赤西仁)、立花(   )の二人が配属されてきた。

ある日、合コンが開かれたが鉄鋼部の宮元が現れて奈央子も喜んだが、同僚の

とタクシーで帰った。その夜、帰宅途中電車の車内に酔っ払った乗客に絡まれていたところを沢木翔一(加藤雅也)に助けられたが、その後皆でゴルフをしたがそこに沢木絵里子(ともさかりえ)が来ていて帰りに沢木は夫だったことがわかる。

奈央子が東京駅丸の内の満開のさくらを見ていたら、そこへ黒澤がやってきて今日から「anego」と呼ばせてくださいといい、以後anegoと皆から呼ばれるようになる。

そんな奈央子を、母親野田厚子(由紀さおり)は心配して見合いを勧めて写真を持ってきた。奈央子は気も進まなかったが、母のことも考えてお見合いをしたが、東大出身のエリート官僚斉藤恭一と会ってみることにした。お見合いはうまく行って東済商事の皆にまさかの王手をかけることになりましたと宣言し、皆からの祝福を受けたが

斉藤は以前離婚した子持ちの女性と交際したことがわかり、破談となった。

心配した上司の部長の坂口(升毅)から総合職登用試験を薦められた。

皆からの薦めとお見合いの破談の痛手から奈央子は総合職試験に挑む決心をした。

ある夜、奈央子が総合職の勉強をしていたら黒沢が突然、今夜寝るところがなく両親も転勤したからとめて欲しいとやってきて奈央子も不承不承応じた。

黒澤はお礼にと試験勉強を手伝っていよいよ試験に臨んだが筆記試験に合格、午後の面接を待つ奈央子は、絵里子の娘が行方不明になったことを聞いて面接を待っていて次の番を中断し絵里子と一緒に探すのだった。

32歳の誕生日を迎え、真奈美と一緒に京都に行くことになっていたがぎっくり腰で真奈美が行くことが出来なくなっていた。

奈央子は、買い物帰り家の前で沢木と出逢い、奈央子の誕生日を祝ってくれた。

沢木が京都の大学を出ていることから話は弾んだ。

沢木が帰ったあと、奈央子は寂しさのあまり、黒澤が次第に自分を愛していることを知って夕方公園に来て欲しいと会社に電話をして、黒澤が来てそこで奈央子は結婚してくださいと告白した。黒澤も奈央子と一緒にいたいということで喜んだ奈央子だったが、親とか同意を得ないと自分の気持ちも整理しないと、あと5年ほど待って欲しいと返事されて、奈央子は家に帰って5年も待ったら私はいくつだよと泣くのだった。

ちょうどその時、沢木から京都に行きませんかと電話が掛かってきて奈央子は沢木を好きになっていたので妻、絵里子が佐原の実家に娘を連れて帰っていて、奈央子も沢木の乗った新幹線を追いかけて二人は車内で一緒になって京都の一日を楽しんだ。

そのことを知った絵里子は、株主総会の当日、東済商事の屋上に居ることを知った奈央子は駆けつけて命がけで絵里子を救ったが、絵里子がメールを東済商事にばら撒き、マスコミも駆けつけて会社でも事件責任者として奈央子を系列会社に出向させようとしたが奈央子は一切の責任を取り11年勤めた東済商事を自分から退職届を出して去った。一方黒澤はモンゴルに行くことになり、黒澤から一緒にモンゴルに行ってくださいと頼まれたものの断ってハケン社員として小さな中小企業に再就職、立花と佳奈が交際の末、結婚することが決まり奈央子は披露宴パーテーで司会を務め、黒澤もモンゴルから一時帰国、奈央子は黒澤に毎日メールちょうだいと頼み、黒澤からメールを毎日もらった。奈央子もモンゴル語を習いに行き二人はメールを交換した。黒澤は奈央子にメールを売ったが大草原でバッテリーも切れそうになって大草原を全力疾走、太陽電池のある場所に到着、電源をつないでなおにメールを送信することができた。同じ頃、奈央子はモンゴル語を習っていた。二人のことばは

「モンゴルは今日もよい天気です」・・・・・・と















執筆中です。

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テレビドラマシナリオ「愛は時を越えて」NTV応募作品

ドラマシナリオ「愛は時を越えて」

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このドラマシナリオは、NTVシナリオ登竜門に応募するために書かれたものです。
全部で13話となっています。
応募要領に基づいてシナリオに登場する人物も想定俳優を書くことが必須条件でした。
2007年NTVはシナリオ登竜門を中断することになって応募はできませんでした。
そのままの形で公開したいと思いました。

キャスト
錦小路 裕彦(32) 玉木 宏
亜理紗とは幼馴染、彼女が忘れられずいまだ独身、ビジネスコンサルタントでニューヨーク国際線機内で20年ぶりに運命の再会を遂げる

高梨亜理紗(31)  伊東美咲
裕彦とはやはり幼馴染、小学校4年まで一緒だったが父の中近東転勤で、外国生活が長く裕彦とは会えずに30歳を過ぎる

伊東葉月(23) 上野 樹里
オーシャン航空新人CA、個性があって亜理紗も悩むが、率先して乗客の対応をしてることによって次第にプロ意識を感じてゆく
若さいっぱいで無邪気、お茶目で誰からも好かれる

後藤いずみ(24)加藤 あい
オーシャン航空新人CA
伊東葉月と同期生、落ち着いていて葉月と半年しか生年月日が変わらないのに、お姉さんを気取っている

サム・ケーシー(27)ダニエル・カール
ニューヨーク在住、日本語が上手で休日、自由の女神観光のフェリーで葉月、いずみのガイド役を買って出て親しくなっていく

山崎香織(29)
オーシャン航空CA
亜理紗と気の許せる関係

秋野絵里子
オーシャン航空CA




あらすじ
誰しも幼ななじみの男女がいるに違いありません。私も例外ではありません。

横浜のカソリック系の幼稚園の聖書劇で裕彦と亜理紗は出会った。それから二人はお互いの家を行き来して親しくしていたが、亜理紗の父が中近東に転勤以来、月日は20年余り過ぎて行き、そんなある日、裕彦は国際線機内でCAチーフになっていた亜理紗と運命の再会をするのだった。
亜理紗は一方では二人の新人CAの機内実習があり泣き止まない子供をあやしたり、間違って新人いずみがベジタリアン食の乗客に肉食を出して新人CAの償いをしたり、深夜急病人が発生して率先して範を見せて葉月、いずみも次第に自分から行動するようになっていった。
亜理紗、裕彦の二人はマンハッタンのホテルで積年の想いをやっと遂げたのだった。
幼い日の思い出を語り合い二人は32歳、20数年の空白を埋めるように努力した。
その頃新人の葉月、いずみは自由の女神の観光フェリーでサムという日本語の上手な若者と会い青春を楽しんでいた。
二人は秋のマンハッタンを散策、セントラルパークの白い観光馬車に乗ったり裕彦は亜理紗にテフィァニーでネックレスをプレゼントしたりして二人の心は次第に溶け合って行くのだった。
夜は更けて行き、私とあなたの長い空白はまだ埋まらないと二人はタクシーでエンパイアステートビルに向かい、亜理紗の気遣いと親切な説明で裕彦は「待って、待ってどんなにか君が現われるのを待ってました」と亜理紗を抱きしめた。亜理紗も「ずっとあなたを愛していました」と涙するのだった。

第1話 旅立ち 

■1884年成田国際空港前景
カメラパン
一台のタクシーが止まる。
タクシーから出る一人の男、そのまま空港ビルに入る

■空港国際線出発ロビー
背伸びして
裕彦「よおし、やるぞ」

■ポケットからケータイを取り出す。
裕彦「錦小路ですが、ニューヨークに行ってきます」、
井上「主任心配しないでください。まかせてください」
部長の声「誰なんだ、えっ錦小路君、僕に貸して」
部長、「錦小路君、大変だろうがしっかり頼むよ。ユナイテッド・デリバリー社と契約するための調査だから、君を信頼しているよ」
裕彦「部長安心してください、満足な結果得られる調査報告書持って帰りますから
部長「身体には気をつけてな、じゃあ」

■成田国際空港に着陸したBoeing機内
降りる乗客
亜理紗「ご搭乗ありがとうございました」
美由紀「お気をつけて、またのご利用お待ちしております」
昌子「Enjoy have a nice to your trip」

第1話 旅立ち                    
■1984年成田国際空港前景
カメラパン
一台のタクシーが止まる。
タクシーから出る一人の男、そのまま空港ビルに入る

■空港国際線出発ロビー
背伸びして
裕彦「よおし、やるぞ」

■ロビーの脇でケータイを取り出す
裕彦「錦小路ですが、ニューヨークに行ってきます」、
井上「主任心配しないでください。まかせてください」
部長の声「誰なんだ、えっ錦小路君、僕に貸して」
部長、「錦小路君、大変だろうがしっかり頼むよ。ユナイテッド・デリバリー社と契約するための調査だから、君を信頼しているよ」
裕彦「部長安心してください、満足な結果得られる調査報告書持って帰りますから
部長「身体には気をつけてな、じゃあ」

■成田国際空港に着陸したBoeing機内
降りる乗客
亜理紗「ご搭乗ありがとうございました」
美由紀「お気をつけて、またのご利用お待ちしております」
昌子「Enjoy have a nice to your trip」

■タクシーから降りる亜理紗
自宅について玄関のドアをかぎで開ける。

■マンション室内
壁の蛍光時計
制服のままで壁にもたれて背中を少しかがめて
亜理紗「あたし三十二だよね。なにやってんだろう」
そういいながら電気を入れて極東航空の講習の写真を眺めながら、木下機長の微笑んでいる姿を見ながら、
亜理紗「私がいけないんだ。いいお話もあったし、木下機長だって、私を愛してくれてるのに」
「自分が本当に好きだという人に私の愛を差し出したい。どんなにお見合いのいい話があっても自分の心を閉ざして結婚することは自分にとって不幸になるし、相手の人を幸福にできない、そんな偽善的な気持ちで結婚はできない」


■成田国際空港内化粧室
われに返る亜理紗
亜理紗「いけない、いけない、こんなセンチメンタルな気持ちになって、私には大切なことがある。」

化粧室でユニフォーム姿を鏡で見ながら
「ええと一にスマイル、二にスマイルか」
がっつポーズを取る亜理紗
亜理紗「私はやる、ようしがんばるぞ」
とほほを両手でたたく

■オーシャン航空客室部に向かって歩く
カメラ上から見下ろす
オレンジ・イエロー・レッド・スカイブルー・ブラウンなどに混じってアジア各国の民族衣装をモチーフにした制服を纏ったキャビンアテンダントたち
足を大きくして歩いて行く亜理紗
カメラ パン

■通路、柱に隠れている男
亜理紗知らずにとおり過ぎる
父「亜理紗」
亜理紗振り向いて、一瞬どきっ、身体を引く
亜理紗「お、お父さん」
父「立派だよ」
そういって、封筒のようなものを亜理紗の右手に握らせる。
亜理紗「お父さん、ありがとね」
亜理紗、微笑んで去ってゆく
亜理紗「よかった、お父さん、CA認めてくれて

■オーシャン航空客室部
ドアを開けて、中に入ると
秘書「高梨さん、さっきから部長がお呼びです」
亜理紗「わかったわ」

■部長席
部長の正面に亜理紗立っている。
亜理紗「部長、お呼びですか?、高梨ですが」
部長「おお、君が来るのを待ってたよ、高梨君、ご苦労さま、今回、うちの新しいニューヨークツアーの企画開発のために今日急遽ニューヨークまで飛んでもらうことにした。それでどうだろう伊東葉月、後藤いずみの新人にも経験してもらって」
亜理紗「はっ、あの新人ですか?」
部長「たしかにあの二人は、個性が強いとか、自己中心主義とか言われてるようだが、僕はあの二人育て方によっては立派なCAになると思うよ」
亜理紗「部長、ほらこの頃の子ってこうだから、こうしてねと言ってもわかってますとか、どうしてですか?とか結構こっちの方で後輩に気使うんですよ」
部長「二人とも研修は終わってるし、合格してるし、君なら大丈夫だし、鬼の亜理紗君なら大丈夫」
亜理紗「部長、鬼の亜理紗ってその言葉止めてください」
ちょっとふくれっ面した顔でぴょこんと部長にお辞儀する亜理紗

■カートを引いて小走りする亜理紗

■連絡表示板
各自がそれぞれ入れられているポストの中の書類を見ている
美香「おはようございます、高梨先輩」
亜理紗「あっ、おはよう」
美香「先輩は今日フライトですか」
亜理紗「946でニューヨーク、で、美香は」
美香「あっ、私ですか606便のシンガポールです。このところシンガポールばっかし」
亜理紗「あなたCA2年目でしょう。まずは仕事を覚えること」
美香「そ、そうですよね、ところで先輩」
亜理紗「なに」
美香「今度のフライトでいい方、ほら、先輩が以前いってらっしゃった初恋の方に出会えるといいですね」
亜理紗「まさか、それはね、針に糸を通すよりずっと難しいことよ」
亜理紗、腕時計見て
亜理紗「いけない、ブリーフィング遅れちゃう、じゃ頑張ってね美香さん」
美香「先輩こそ、グッドラック」

■ブリーフィングの行われる部屋

十二人のキャビンアテンダント仲間が待ち構えている。
亜理紗「遅れてどうもごめんなさい」
「おはようございます、高梨パーサー」
亜理紗「皆、体調大丈夫ね」
一同 「はい」
亜理紗「これから打ち合わせをします。自己紹介のあと、皆様各自の非常ドアーの場所、例えばL1というように受け持ちを確認してください。、サービスの内容、各クラス別の乗客数、そのほかキャビン関係で生ずる事柄などを行いましょう。本日は伊東葉月、後藤いずみさんの新人2名を加えて十二人のキャビンアテンダントで搭乗します。では、まず、私から、秋野さん、小西さんの順にお願いします」、
亜理紗「L1の高梨亜理紗と申します五十五期生です。どうぞよろしくお願いいたします」
絵里子「L2の秋野絵里子といいます。五十二期生です。どうぞよろしくお願いいたします。国際線搭乗経験は三年目です」
亜理紗「はい、次ぎの方」
優子「L3の小西優子で五十三期生で」
山下「L4の山下はるかと申します。五十期生で」
              
葉月「伊東葉月と申します。同じ四十七生で国際線勤務は二回目です。、よろしくお願いします」
いずみ「後藤いずみといいます。同じ四十七期生で国際線搭乗はこれで二回目です。どうかよろしくお願いします。ええと、私のキャラは、インスタントに短歌を作って・・」
亜理紗「せっかくですが、そのお話は先を急いでるのでいずれまた、では、次のかた」
(次ぎって言ったけど、私しかいないじゃないか。そそっかしいなあ。)
急にすまし顔を作り、
亜理紗「ええと、みなさま、各自の受け持ちの非常ドアの確認をしてください。本日ファースト、エコノミーともほぼ満席です。お客様が何を求めているか、注意を払ってクレームが出ないように気をつけてください。ニューアーク空港まで約十三時間、長時間のフライトですので休息取って疲れないようにしてまいりましょう」

亜理紗は皆の顔を眺めながらふと本多木綿子のことを考える

回顧
本多「高梨さん、12Cのお客様、まだコーヒー持ってきてくれないっていってたわ、あなた、どうして」
亜理紗「すみません、コーヒーもって行こうと思ってたら、急にお客様が吐き気がるというものですから」
本多「そういうとっさの出来事って誰でもあるわ」
本多「高梨さん、元気を出しなさい、どうしたの、私に話してごらんなさい」

■極東航空通路
本多「亜理紗、私、9月1日付で地上勤務になったの」
辞令
「極東航空本社、企画開発部課長を命ず」
亜理紗「本多チーフパーサー、おめでとうございます。けど、チーフが本社に行かれたら私は誰に相談したらいいかなあ」 
本多「しっかりしてよ、亜理紗、私の後任っていうか、立派なチーフパーサーよ。もう、あなたに教えることないし、これからも色々なれないこともあって戸惑うこともあるでしょうが、あなたなら大丈夫、頑張ってね」

■駐機場に向かう通路
カメラ6人の姿を前にして移動
亜理紗「二七九人プラスゼロかあ」
駐機場に続く長い通路を六人のキャビン・アテンダントたちと歩いた。歩きながら
亜理紗「もう十年目かあ」

■羽田国際空港国際線出発ゲート
アテンダント「お気をつけて行ってらっしゃいませ」
裕彦、パスポート、搭乗券を見せる。

■駐機場までの専用バスに乗り込むCAたち

■秋空に輝く駐機場のBOEING747
駐機場には機体にグリーンでFALをデザイン化したボーイング747が大きな巨体を横たえていて銀翼がきらきら陽の光りに輝いている。それを見上げるように
亜理紗「本多チーフ、ああ違った、本多課長、見ていてください、私は頑張ります」

■DC-8内
亜理紗「さあ、頑張っていこうよ」


平井機長、福島副操縦士、小林機関士のクルーが待っている室に入った。
機長「さあ、合同ブリーフィングを始めよう」
一同「はい、機長」
機長「ところでみな、非常の際の緊急脱出用の位置、覚えただろね」
一同「はい、平井機長」
機長「本機は羽田空港離陸後、茨城県鹿島沖から太平洋をハワイホノルル島に向けて高度15,000メートル以上の上空を偏西風、つまりジェット気流にしたがって運行します。ハワイホノルル空港で給油後ニューワーク空港までの飛行時間は約13時間を予定していますが、ジェット気流の状況で1時間ほど短縮されるかも知れません。気象条件も安定していて揺れ(タービュランス)もないと思われます」
亜理紗「機長、今日はお客様にあまり気を使わなくてもよさそうですね。気流も安定していることは何よりですね」
機長「でも、高梨パーサー、乗客には席を離れる以外はなるべく座席のシートベルトするように言ってくれないか」
亜理紗「平井機長、ご心配なく、それはCAの努めですから」
機長「何か、質問は、なければこれでやめにしよう」
一同「・・・・・・」
機長「じゃ、よろしくお願いします」



■打ち合わせするCAたち
亜理紗「では、私たちのサービスプランについて簡単に説明します。離陸後二時間で最初のお夕食ミールサービスを行います」

■メモを取るCAたち
亜理紗「本日のお客様は、ファースト五名、エコノミーが十二名、トータルで二百七十九名様の予定です。あわせてお客さまの入国書類の配布、食前酒とドリンクサービスの用意を行います」
一同「はい」
亜理紗「なお、本日は、ベジタリアン(菜食主義者)のお客様が五名ほど居られます。ベジタリアン食は、万一に備え七名様分用意してありますが、間違わぬように充分注意してください。このほか免税商品販売も行いますのでそちらのほうもよろしくお願いします」

■機内での確認事項打ち合わせ
亜理紗「機内の整備状況、サービス物品点検、飲み物とか、お食事の量の搭載、オーデオチェック、それにトイレの確認とか仕事、山ほどあるんで、このチェックリスト見てチェックしてちょうだい」
一同「はい、わかりました」
亜理紗「乗客搭乗まで少ししか時間がないの、協力してやりましょう。葉月さん、いずみさん、頑張ってねえ」。
二人「はい」

■室内
乗客の搭乗まで目前に控えていて十二人のキャビンアテンダント

トイレの水の流れ具合、客席のオーディオの確認、国内外の新聞の確認、テレビの状況、荷物収納棚一つ一つのチェックなどをこなさなければならず駆け巡って戦場のように混乱している。一方、ギャレーでも三食分の食材、食器、飲み物の量、免税商品の確認などを短時間で終えねばならず喧騒だった。
亜理紗「いつも戦場になるし」

亜理紗「お食事の数、ミート、フィッシュ、それぞれ、それと・・・・そうそうベジタリアン食も」
由香里「わかりました、ベジタリアン食3人だけど予備が5食ですね」

■ 機内
コールフォンの音、亜理紗壁の電話機を取る
亜理紗「はい、パーサーの亜理紗ですが」
機長 「コントロールタワーセンターから離陸の許可が出た、乗客へ・・・」
亜理紗「かしこまりました、平井機長」
亜理紗は時計を見つめながらハンドマイクを手のして
亜理紗「乗客搭乗五分前です」

■搭乗口に立ち搭乗客を迎えるCA
亜理紗「ウエルカム・トゥー・ボーデイング」、
由香里「ご搭乗ありがとうございます」
優子「いらっしゃいませ」
亜理紗「こんにちは、ようこそ」、

■客席に立っていたいずみ
いずみ「お客様、お席がお分かりになりませんか」
七十歳過ぎ、白髪の婦人は小さなボストンバッグを手に重そう。
いずみ「20のCのお座席はこちらです」
婦人「ご親切にありがとうございました」

■室内
カメラパン
婦人が持っていたボストンバッグを収納棚に上げた。乗客が搭乗し終わると七人のキャビンアテンダントで機内をめまぐるしく廻り、仕事をこなす


■救命胴着を身につけて非常の際の脱出方法を説明
亜理紗は時計を見ると出発十五分前を指していた。マイクを取りアナウンスをはじめる
亜理紗「皆様こんばんは、本日はオーシャン航空・946便にご搭乗くださいましてありがとうございます。当機はニューアーク空港まで参ります。飛行時間は約13時間を予定しております。まもなく離陸いたします。お座席のシートベルトを今一度ご確認くださいませ」

亜理紗「ウエルカム・ボーディング・トゥー・オーシャンエアーライン946フライト・・・・・・・・」
座席のシートベルトの確認をアテンダントたちがお客様の席を見回りながら確認している。
香里「シートベルトのご着用をお願いいたします」
亜理紗「ジス・フライト・テイクオフ・フュー・メネッツ・メイク・アビリーフ・ファッスン・トー・ユアー・シートベルト・サンキュー」

■コックピット機長、副操縦士が最終点検を行い離陸準備を始める
 羽田航空管制塔とファーイーストエアーラインの航空機の間で交信
機長「こちらはオーシャン航空946便ニューアーク行きです。ジス・イズ・ファーイースト・エアー946、クリア・トウー・スタート・・・」
副操縦士復唱、
機長「ビフォーアー・スタート・チェックリスト」
副操縦士「復唱します、エンジンスタート」
機長「エンジンスタート3」
機長「エンジンスタート4」
機長「ナンバー4スタート、フルパワー」

■滑走路
カメラ、ズームイン

■離陸光景

■室内
亜理紗「おしぼりサービスだわ」
六人のCAエプロンをつけ始める

                           (続く)

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企業恋愛小説「ホテルの恋人たち」PC/ケータイ同時掲載(完)


作家のたまご



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東京台場にオープンするニッポン・セントラルホテル台場に研修生たちが集まり3組の恋人たちがホテルマンとして成長して行く話ですが、作者のホテル経験も含めて書いたものです。
今回第1話を掲載します。
どうぞよろしくお願いします。

作品に出てくるホテル・企業名・登場人物は存在しません。

あらすじ

東京の台場に新しく出現する巨大ホテルに採用された研修生たちが、ホテルの発展とともに成長していきながら、ホテルの中で繰り広げられる喜びと悲しみの華やかな三組の恋人の「ホテルの恋人たち」の物語です。
ホテル研修の初日、道路で奈央子が落としたケータイを洋一郎、拾って彼女を見るとなんと中学時代の初恋の人。

研修の昼休み、何気なく話した重信と麻美、二人の性格がまるっきり正反対のところが意気投合。
韓国人キム・ヨンイルはソウルで恋人だったリュ・イジンが突然行方不明、東京で一家が居ることがわかり、とうとう彼女と喜びの対面。

また、ホテルで働く人たちとホテル利用客との心温まる交流も物語として登場します。
純粋で愛のある3組のホテルマンの活躍する物語をどうぞお楽しみください

この小説を書くにあたって

この小説を書こうと思ったきっかけは過去ホテルの経験と仕事を参考にホテルで働く恋人たちを生き生きと描きたいと思ったにほかならない。
コンサルタントとしてのホテルの仕事と若干のホテル経験、実務経験に加えてさらに調査して書いたものであるが、あくまでも仮想「ホテル」ということでこの物語はホテル及びストーリーに登場する諸施設は実在しないことを最初にお断りしておきたい。


この小説に登場する主な人物のプロフィール
深川 洋一郎(30)

一度は一流商社に入社したもの、人材バンクを通じてニッポン・セントラルホテル台場の幹部研修生として転職。
研修当日、時間に遅れて途中、道路の前を走っていた女性がケータイを落としてケータイを拾ってあげた。
その女性とは、洋一郎が片時も忘れられなかった高校時代の初恋の人と運命的な出会いをすることになる。

中野 奈央子(29)
女子大を卒業後、ニューヨークの大学に2年間留学したので、アメリカに多くの友達を持っている。
研修当日、時間に遅れてホテル研修会場に向かう途中、ケータイを落とし、洋一郎がケータイを拾い出会う。
奈央子には、アメリカ時代のマイケルという恋人がいるが、洋一郎を次第に愛するうちに二人の恋人というジレンマに陥り、次第に罪の意識のジレンマに立たされる。

長瀬 徹(45)
ニッポン・セントラルホテル台場の総支配人
温厚で誠実であるが、ホテルはお客様に満足して頂くためのあらゆるサービスと安全を心がけ支配人自身が火災などの危機に立ち向かう。

長谷川 重信(25) 
スポーツが好きで、明徳大学ではサッカー部に籍を置き、全日本大学サッカー試合で優勝したこともある。
二人の姉妹の言うことをよく聞くので、二人からよく甘味喫茶など女性しか行かない店に連れて行かれる。
おしるこやあんみつ、和菓子を食べると、二人の姉妹から、重ちゃん、かわいいなどとよく言われる。。
性格は何事も楽観的に考えていて、恋人麻美とはいつもやりあっている。
 
井上 麻美(23)
独立心旺盛で関西の女子短大卒業後、単身アメリカ、カリフォルニアのあるホテル経営学校に2年間留学。
麻美の父は、地元旅館組合理事長を兼任しているため、顔が広く早く、地方の有名な観光地の温泉旅館の一人娘。父がこの旅館を早く引き継いでほしいと願っているが、麻美はホテル経営に興味を抱きアメリカ、ロスアンゼルスの大学ホテル経営学科に入学、性格は勝気、負けず嫌いな反面、人をすぐ好きになる。

キム・カンイル(26)
韓国、ソウル出身、ホテル研修生で外国人採用の一人。 
日本に興味を示しているが、とても礼儀正しく、目上の人をものすごく尊敬している。高校時代の恋人、リュ・イジンが突然行方
不明になってあるとき在日朝鮮人の親戚にいることが分かり、日本興味があることもありホテル研修生となる。
ホテルの仕事に精進する一方、恋人リュ・イジンの行くえを調べている。
ある日、リュ・イジンがこのホテルのレストランで働いていることを知り15年ぶりに感激の再会を果たした。

リュ・イジン(27) 
キム・ヨンイルとはソウルの大学付属高校生と一緒でキム・ヨンイルは彼女をとても愛している。
事情があって誘拐されそうになるが一家は在日韓国人の親戚を頼って日本で一家は生活することになる。
彼女はキム・カンイルに会いたいと思ったが、思いがけず彼と再会することになる。

岡田 麻里亜(28)
深川洋一郎の姪、神戸に住んでいるが、国際航空に入社、パーサーとなるが、語学能力を買われて、ロンドン支店に勤務となる。
久しぶりに一週間だけ日本に帰ってきて洋一郎と会うことになるが、ある日洋一郎が麻里亜と会っているのを奈央子が目撃してこれが誤解となる。
後に誤解が解けて、洋一郎、奈央子、麻美とともに楽しい時を過ごすことになる。

朝比奈 梨花(36)
客室支配人として、研修生の教育訓練を担当する。
高校卒業後、国際的な名門ホテルに就職、実力派。
セントラルホテル発足に伴いスカウトされた。
フロント接客、顧客対応について、研修生を厳しく訓練するところからいつしか鬼の梨花支配人と呼ばれるが、本当は暖かい人情を持っている。

片倉 優子(38)
メインテナンスマネージャーとしてホテルの高校卒業後、メインテナンス会社、ホテルの経験を経てセントラルホテルにスカウトされる。


この小説はドラマシナリオ「ホテルの恋人たち」全13話を小説化したものです。


第一話 恋人たちの出会い

東京ベイを飛ぶ一機のヘリコプターがあった。ヘリコプターの陰が地上に小さくできてそれが上空から見ると道路、建物と影が移動して行く。
ヘリコプターの窓を通じて春霞がたなびいていて遠くは富士山といいたいところだけど

今日は見えず、新宿を中心に左が渋谷、右が池袋のグレーの超高層ビルの塊、手前に六本木、霞ヶ関、後楽園スタジアム、そして手前が品川・芝浦・汐留・銀座と要所要所にビルがつくしのように伸びている。
「OK,これから下降します」

ヘリコプターを操縦している荒木機長がそういって操縦かんを倒した。
爆音を奏でながらヘリコプターは下降して行くに連れて台場を走る東京湾岸道路・マンションホテル。SC群の建物がはっきりと見えて、ゆりかもめモノレールは台場を曲がりくねってその先が蛇のようにくねくねと伸びている。

ニッポン・シティコアホテル全景、中央にセントラルホテル、隣接してSC ELINA、スポーツクラブなどの複数の建物が見える。
建物には祝東京台場に本格的シティーホテル誕生、21世紀にふさわしい複合ホテルのアドバルーンが見えてくる

東洋新聞の記者はカメラを構えて今日の夕刊に間に合うように写真を撮っている。
「よおし、この辺で一枚」
そういいながら5~6枚の写真を立て続けに撮った。
 


春の朝、モノレールの中、朝9時、春霞のたなびく春の朝、中野奈央子はブルーコート、首にはピンクのバラ模様のきれいなスカーフ。春の陽光が車窓いっぱいに差し込んできて居眠りするにはちょうどいい。
奈央子は時々左の隣に座っている濃紺の縦じまスーツを着ている中年の男性に体が傾きそうになる。はっと目がさめて急いで自分の姿勢を直し、
「どうもすいません」
「いいえ」
というもののまた体が傾きそうになる。
「どうもすいません」
「いいえ」
そんな奈央子は、目がさめて駅の表示板を見てあわてて立ち上がった。
「いけない、降ります」
急いでドア側に近づいたがドアは閉まる。

「どじだなあ、あたしは」
小さな声でいったが後の祭り、流れるように過ぎて行く国際会議場前の掲示板をうらめしそうに眺めていた。
次の青海までがえらく長く感じられた。
窓越しに倉庫・事務所などどんどん流れていく景色を見て無意識に地団太を踏んでいた。

青海、電車が滑り込んだとたんドアが開くと向かい側の汐留行きに滑り込むようにして乗った。と同時にドアは閉まり母に就職祝いと言って買ってもらったプラダの赤いバッグの紐あドアとドアの間に挟まってしまった。
一生懸命バッグの紐を引っ張りながら留め金から紐が外れたらどうしようと心配だった。何とか取れて小声で
「ママに買ってもらった赤いバッグ、怒られちゃう」

国際センター駅に戻り、奈央子はダッシュ、ダッシュと自分に言い聞かせながらエスカレーターを降り、ホテルへ通じるプラタナスの街路樹の道路を全速力で走っていくことになった。

その時ケータイがなった。
ユッコからだった
「もしもし、奈央子、あのさ、今日暇だったらデパート行かない?。春のドレスが30%引きですって」
奈央子は「それってあとの話にして、今あたし、ごめんね、ユッコ」
ユッコは奈央子の高校時代の友達でもう結婚して3歳の子持ちの母になっている。

働きたいらしく、時々
「あの、私、仕事したいんだけど、相談に乗ってくれない」
と時々電話をしてくるのだが、相談に乗る奈央子はまだ独身で生活のために働かざるを得ないのだ。

そういう友人ゆえに、奈央子も時々知人、親戚の叔父に会ったりして
「あの、ハケンだけどさあ、私の叔父のところで」
と話しても
「私、ハケンでないところが」
と女子の就職難なのに
「よくいうよ」と思ったりもした。

でも、翌日になると奈央子は
「ユッコの就職も考えないと」
と手帳を見ながら悩んでいる。
奈央子の手帳には自分のことよりも、近所、友人、今まで勤めていた会社の同僚から相談されたことを手帳に書いては悩んでしまう、責任感、潔癖さがある。

同じ頃、もう一人電車でうたたねして居る男がいた。
東京臨海線国際センター前で降りた一人の男、洋一郎はエスカレーターを二段飛びして猛烈な勢いで駆け上がっていた。
洋一郎は
「いけねえ、遅刻しそう、いつも人生大切なときに遅れたりして」
駅入り口から外に出て同じポプラ並木の道路を走っていく。

実は、家族がホテルに就職したことを喜んで、昨日は駆けつけた親戚の叔父、いとこも加わって盛大に門出を祝ってくれたのだった。

奈央子のケータイが再びなった
ごめん、ユッコかな、違っても今はそれどころじゃないと心の中で謝りながら
ケータイを取り上げたとたん、ぽろっと落としてしまった。
「ああ、私のケータイ」
奈央子が赤いケータイを拾おうとかがんで右手を伸ばした瞬間、
「これ大事なんでしょう」
先に拾ってくれた男が居た。

奈央子は、
「ああ、すいません。ケータイ落とすなんて」
洋一郎は、奈央子の顔を見た。
「あっ」
彼女は中学時代の僕の初恋の人?まさか」
「なにか」
「いいえ、何でもありません」
洋一郎は驚きを隠しえず 
「ど・・・どこまでいらっしゃるのですか?」
「実はあたし、この先の」
「僕も実は、そうなんですか」
「急いでいるのでごめんなさい、ケータイのお礼したいのでここが電話です、すいません」
「そんなあたりまえのことを」
奈央子は名詞を渡し、駆けて行く

奈央子は、ニッポン・セントラルホテル台場研修生会場と大きく掲げられている掲示幕を見て
立ち止まり、超高層ホテルを見上げながら
「ようし、頑張るぞ」
とほほをたたき気合といって自動回転ドアから1階ロビーに入った。
天井から下へ1階はギリシャ彫刻の柱、ステンドグラスに陽が映える、らせん階段
壁面に噴水、シースルー・エレベーターなど、立ち止まってしばし眺める。

「すご~い」
思わず驚嘆の声を上げた。
その時、息を弾ませながら洋一郎が飛び込んでいた。肩で息をしながら奈央子が立っているのに気が付いて後ろから、
「おや、さっきあなたとお会いしましたね」
奈央子は振り向いて
「あっ、さっきの方、今日はこのホテルの」
「ああ、よかった、あなたと二人なら、実は僕も同じホテルで」
「私も、今朝寝坊して遅刻して一人ならどうしようかと思って、怒られても二人で分け合えるし」

実際そうなのだ、
企業研修で、自由な学生から企業の組織にいきなり組み込まれて、皆が最初は大事と送れず集まっているのに初日から遅刻してしまう大胆さと肩身のせまさが同居している。
「研修会場この8階ですね。エレベーターで行きましょう」
二人は通りの前のシースルーエレベーターに駆け寄ってボタンを気ぜわしく押した。
エレベーターの中で、
「さきほどはご親切に、中野奈央子です」
「深川 洋一郎です」
とはじめて名前を名乗りあった。

8階降りると研修会場に着く。
洋一郎、奈央子は少しうつむいて受付係りの方へ行く。

総務受付が机の名簿を見ながら「お名前は?」
「深川洋一郎です」
「中野奈央子と申します」
受付担当者は
「左側ドアよりお入りください。ホテルは24時間営業でお客様のサービスに当たりますので今日のところはよいですが、明日から遅刻されないようにしてください。」
担当者、研修マニュアルとネームプレートを二人に渡す。

二人とも気まずそうにドアを開けて中へ入る。その瞬間、皆の冷たい視線を浴びた。
二人は皆の視線を見ないようにうつむいて階段の一番高い椅子にそっと腰を下ろした。
「~でありますから、今日ここに15人の優秀な当ホテルの未来を担当の方々をお迎えすることは私共ホテルの大きな喜びとするところです。
まさに21世紀のホテルにふさわしく国際化時代の幕開けでもあります。

日本のホテル業界として外国の方にも門戸解放をいたしましてアメリカ2名、イギリス1名、ロシア1名、マレーシア1名、韓国1名、計5名の新進気鋭の国際人をお迎えし、当ホテルが広く国際的にも飛躍発展したいと考えております」
と型どおりの挨拶だったがシテーホテルに日本人のほかに各国外国人を積極的に採用していることに驚いたりもした。

研修センター・の建設会社のコンサルタントがホテルの全容を説明した。
「これから新しくオープンする東京台場セントラルホテルは・・・・・・・・」

建設会社企画コンサルタントの説明、スライドパネルでポイント説明でわかりやすい
パネルNO1.から次々に画面変わる 
東京都中央区台場1丁目、再開発用地
基本コンセプト
泊まる、安らぐ・・・・・・・・ニッポン・セントラルホテル台場
鍛える、見る・・・・・・・・・併設スポーツクラブ
選ぶ、楽しむ・・・・・・・・・SC SERIENA

パネルNO2
特色ある施設、360度シネスクリーン ワンダフルとうきょう
       東京、横浜周辺の迫力ある光景(日本ではじめて)
       常設館
パネルNO3
階層構成
32F展望ラウンジ
31F客室
8F 客室
7F 大・中宴会場、
6F 結婚式場、フォト・スタジオ、フラワー・ショップ キッズルーム
   貸衣装、理容室、美容室
5F 中・小宴会場・兼会議室、
4Fレストラン、コーヒー・ショップ、ミーティング・ルーム、クリニック
3Fショップ部門、
2F ショップ部門 
1F吹き抜けロビー、フロント、ガイドセンター、銀行、郵便局 ビジネス・
  センター、
B1駐車場
B2駐車場、 機械室、 カラオケ、地下BAR
ホテル部門  総室数 800室
ロイヤル・スイートルーム、スイート・ルーム、ツインルーム、シングル・ルーム。
各室、インターネット、液晶多目的TV、冷蔵庫、BGM、
FM装置、空調装置、電話、バス、洗面所、
大宴会場 800人収容、小宴会場、会議室、控え室
結婚式場、フォートスタジオ、美容室、理容室
郵便局、両替交換所、コンビニ店、案内所、フラワーショップ、バー、レストラン。
ショッピングアーケード。
パネルNO4
付属施設   SC SERIENA 120店入店
       食品、ドラッグ・ストアー、婦人・紳士雑貨、ファッション、インナー、
併設スポーツクラブ、ジム、プール、エアロビックス・スタディオ、サウナ、
テニスコート、ゴルフ練習場、室内スカッシュetc
体験360度シアター 東京はじめ各地の360度映像(日本初の施設)

パネルNO5  開発による相乗効果
台場周辺の住宅開発による定住人口の確保
住民の利便性の増大
 ホテル利用者、定住者の健康促進
周辺ホテルとの協力、国内、海外宿泊客需要に対応
ベイエリア全体の経済効果      
わかりやすいパネル説明に研修生たち、静かに聴きいっている。

二時間近くのホテルの社長から始まって専務・常務など、役員がホテルの未来像を一人ひとりが熱弁をふるって新入研修社員を鼓舞したが、初日だけに会社側と社員のそれを受け止める温度差はあった。
時計が12時を過ぎて、ホテル至急の昼食のお弁当は豪華だった。

皆、黙々と弁当を食べて一時間の休息時間をすごそうと大きく背筋を伸ばしたり、あくびをしていたが、一人、二人出て行った。
32階ラウンジでは 春霞の東京湾を航行しる船舶がかすんで見えていた。。

展望塔の柵にもたれている二人のカップルが出来上がりそうだった。
積極的で明るくて、しかしさびしがり屋の直美がお隣の男性に声を掛けた。
「あなたも同じ研修生つてわけ」
直美、重信から話しかけられ、重信の方を向く
「えっそうだよ、ところであなたは」
「あっ俺、なんとなく」
「ずいぶん心細い話。この大きなホテルに目的もなく入って」
「昔からすごい楽天的なんだ、何とかなると。君は」
「あら、もう12時半過ぎたよ。じゃ簡単にいうね」
「うん」
「家は関西、うちは旅館なの」
「何、関西?」
「温泉がどんどん少なくなってホテルに変わっているの。だから、将来ホテルにしようと思って」
「そうなんだ」

「あなたははそれで家出したんだ?」
「家出ってちょっと。父にあたしホテルを勉強してホテルに入って、将来経営者になればホテルだって旅館だって宿泊業には変わりないでしょう?。・・・って言ってやったの」
「お前は話の筋が通っているんだからとも」
「それで?」
「地元の短期大学出たあと、アメリカのホテルの経営学を専攻、留学したの」

「そうか、ずいぶん努力家なんだなあ」
「そうよ、何でも努力しないと幸せは勝ち取れない、これが私の考えなの」
と聞いてこの女性、俺には手に負えない勝気な子だと思った。
「俺はサッカーの選手やってた。学校で。二人のanegoがいて姉二人にデパートとか、喫茶店につき合わされたりして」
といいながら両手でボウルを持つような振りする。

「あなた、外見て男っぽくサッカー選手なんて格好いいけどさ、今話聞いているとそれじゃ二人のお姉さんに玩具にされてんじゃないの」
「そうなんだ、」
麻美は重信の話を聞いて思わず吹き出し
「それじゃ、あなたちょっと気の毒みたい」
「そうなんだ、だんだんお酒が飲めなくなってきて、困るんだな、チームの皆と飲むときに」
「あたしんちはぜんぜん逆よ、・・・父がお酒が好きで影響受けちゃったの」

麻美は重信ベンチに腰掛けて向き合いながら
「君んちとぼくんちはまるっきり正反対なんだ」
「あなたんちとあたしんちを足して2で割るといいかもね」
「・・・・・・。」
「ところで重信さんはホテルでなにをやりたいの」
「俺、俺はフロントでも料飲部門でも、営業でも身体を動かしてい仕事につきたいと思うよ。一日机に座って仕事をする、総務とか経理はごめんだ。数字がまるきり弱くて」

たしかに重信は中学時代からサッカー部に所属して大会、全国高校大会、そして大学の六大学サッカー部で最近までボールを転がしていたのだった。
そんな重信が何よりも体が動かせる営業を希望しているのも当然のことである。
「あたしは料飲レストランでもいいわ。何しろお給料いただいて日本、東洋。西洋料理まで覚えられたらいいよ。でも企画とか経理とかの事務でもいいわ」
「なんだかあたしとあなたと仲のよいお友達になれそうね。まるっきり正反対なのがいいのかも」

麻美のこの提案に自分とはまるっきり違う、そう思って
「そうだな、友達として付き合おうよ」
「あらためてっと、あたし井上麻美よろしくね」
「僕は、長谷川重信っていうんだ、よろしく」
二人とも立ち上がって、長谷川重信、手を麻美に差し伸べる。麻美、微笑して手を差し伸べ握手を交わした。

重信が
「ちょっと待って、この手をそのままでええと」
手のひらにサインして
「サインしたからこれを持っていよう。」
 と言って、サインのまねをして君も、重信手を滑らせて
「なに、これでいいの」
麻美も重信の手の平にサインのまねをした。
「じいってコピー」
「コピーしたからもう大丈夫だ」
「なるほど、コピーね、あなたって面白い人なのね」

8階研修会場ではホテルから支給された豪華弁当を奈央子と洋一郎は食べていた。
鯛の塩焼き、たまご巻き、神戸牛の一口ステーキ、野菜の煮物、キムチ漬け、フルーツサラダと研修生のために栄養価値豊かなホテルならではの気配りだった。
食べ終わり残り少ない30分を奈央子が「よかったら32階の喫茶室でお茶しません?」と
呼びかけた。
「うーん、そうしようか」

二人は立ち上がり誰もいない研修室のドアを開けて海の見えるエレベーターで32階へ
上がった。

32階のレストラン「パシフィックオーシャン」では
「洋一郎さーん、窓際に座ろうよ、船の見えるところがいいわ」
二人は、窓際に座る
「・・・・・」
「・・・・・」
「洋一郎さん、あなたは何でこのホテルを?」
まず、このことを聞きたかった。
「僕は一流商社辞めてこのホテルに入ったんだ」
「はっ、なんで、辞めるなんてもったいない」
「誰もそういうね。」
洋一郎は落ち着いている。

「そうなの、それで?。」
「ところが配属されたのは国内石油部で、まあ部長と中近東に二回出張したりしてよかったんだけど」
「部長さんと中近東2回もいけるなんて、もったいない」
「それ以来、毎朝国内石油の需給調査でコンピューターで会議のための日報、月間統計表づくりなんだ」
「ずいぶん地味な仕事なのね。」
洋一郎、そのときを回想するように奈央子に話しはじめた。

回想
「あれはそうそう、僕は呼ばれて部長の脇のソファで向かい合って座ったんだ」
部長から
「実は、今年わが社は創立120周年を迎えるんだけど、それを永遠に残そうということで社史を出そうということになって社長室所属で社史編纂室を設けることになったんだ」
といって一枚の辞令を手にして僕に見せたんだ」

「そうなの、それで」
「それで室長として適任者を探していたんだが、君に白羽の矢が立って」
「この僕がですか?」
「まあ、この際会社全体の仕事を知るのには絶好の機会だし」
「部長、お言葉ですが、僕はまだ会社に入って間もないですし、その僕が先輩を差し置いて室長になることは無理です
それに海外に出かけて現地で折衝し 日本に石油を輸入、安定供給を図るこの仕事をやりたいと入社しました」

部長が、一生懸命になって一生懸命話すのを見ながら
「君の熱意もわかるけど、君の今後のことは充分考えるし、決して悪いようにしないからここは呑んでくれないか」
といわれてさ。
「そんな時、断れないの、だって」
「そう、行かないんだ、自分で決めることはできないんだ、まあ、組織の中では」 
洋一郎は、部長席から自分の室に帰る途中に
「お気の毒ね、社史編纂室なんて」
「彼、部長にでも何でもはっきり言いすぎるし」
「あいつ空気よめねえし、俺は部長に」
小声で部長が席をはずしていないのをいいことに皆がささやいているのを目撃していたたまれがない気持ちになった。室全体が冷ややかな空気が流れる。

洋一郎は、われに帰り
「ごめん、中野さん」
「商社って難しいのね、華やかな感じだけど」
「それでもっと人と人とのつながりを求めてホテルに転職したわけ」   

奈央子は、華やかな誰もが憧れる商社でも難しい組織と人間関係があるものだなあと思った。
奈央子の場合はせっかく身に着けた語学を生かしたいという単純な理由だったけど男性は一生をゆだねる会社に期待して入社するのに転職のきっかけにもなる組織と人間関係の複雑性を改めて認識した。                            
奈央子は右腕の時計を眺めて
「あら、もう時間、ところであたしのケータイ拾ってくれた大切な人にお礼しなくちゃ、それにあたしの話も夜聞いてね」
「お礼なんていいよ、ほかの人でも拾ってあげたよ」
奈央子は洋一郎の冷たい反応に
「ああ、そうそりゃそうだけど、あたし想い出のケータイ拾ってくれた人っていってるのに」   
「ごめん、怒らしたかな」
少し機嫌が悪くなるが、思い直して、
「いいわ、許したげる」
「・・・・・・・・。」

「あなたからの借りはきちんと返さないと気がすまない性分ないの」
「借りはいつでもいいよ、そんなに気を遣わないように」
「そうそうあたしの知っているところでお食事して、ケーキ食べて、ピアノ演奏聴きながら楽しむたりしたところあるの」
「君がそんなに言うなら借りを返してもらおうか」
「あなたが、私が落としたケータイ拾って呉れなければ・・・
改めてお礼いうわ。あのケータイ、私にとっては想い出の・・・」
と言葉が詰まった。

そういって奈央子の顔を見る。心の中で高校時代の初恋の人に似ている。

洋一郎は、われに帰り
「ごめん、中野さん」
「商社って難しいのね、華やかな感じだけど」
「それでもっと人と人とのつながりを求めてホテルに転職したわけ」
奈央子の場合はね、せっかく学んだ語学を生かしたいという単純な理由で退社したのだけれど、彼の場合は大企業、商社に憧れてきっと就職して語学を自由に操って石油の輸入、開発に力をいれたかっただろうと話を聞いて、一見商社という華やかな舞台で組織と人間関係が機能していて個人の自由は制約されるのだということを受け止めていた。

再び展望台で
展望台ではさびしそうにしているキム・カンイルがいた。彼はソウル高校時代に付き合っていたリュウ・イジンがいた。
奈美が近づいてさびしそうにしている韓国のキム・ヨンイルに
「キムさんもいっしょに撮りましょうよ、」
と絵里奈が見かねて誘った。
太一が
「おーいっ、写真撮るぞ」
「いっしょに撮りましょうよ」
「こっち来ないか」
富士夫が「じゃいい、はいチーズも古いし、1+1はにっつこれも
古いし、キムさん、韓国ではこういうときに何てうぃうんだ。」
   
「韓国じゃ1・2・3のこと、ハナ・トウ・セッツていうんだ」
「OK,それできまり、国際親善で。」
「ハナ・トウー・セッ」
皆いい笑顔でパチリ、写真を撮り終えるとキム・ヨンイルまたさびしそうな顔に戻る。
傍の絵理奈心配そうに彼に尋ねる。
「ねえ、聞いてもいい?あなた一人でさびそうだけど何か心配事でもあるの」

「絵理奈さん、僕のことを気遣ってくださってありがとうカムサハムニダ。実はソウルの高校時代の初恋の人がいなくなって、その後日本に来てることがわかったんです」
「ああ、そうなの?。ここは日本だからきっとその人に会えるよ、元気だしなさい」
キムは絵里奈に励まされて
「カムサハムニダ、どうもありがとうございます。」
と丁寧に頭を下げた。

午後の講習を明日に回して、これから皆様をこのホテルの各部門に案内してホテルの機能と働きを実感していただきますと述べた。
地下2階 保守管理センター、厨房・料理部門・フロント部門・ハウスメンテナンス部門
付帯施設部門を見て回ります。

これは総務部長の粋な計らいだった。
明日から始まるホテル部門の講習に備えて午後を実際のホテルの中の各部門を見て実際のホテル運用を理解してもらうことにより研修生の意欲を高めることにあったのだ

30人の研修生たちは地下を降りてセキュリテイーセンターに通じる薄暗い通路を歩いた。
目の前に広いセキュリティー・センターが現れる。
中では係員が忙しそうにホテル各階、拠点に設置している監視カメラの映像をチェックしている者、電気・水・ガスなど示されている回線、など動力源の数値を見ている者、各室の冷暖房状況のチェックなど、実に多様な仕事が組み合わされてはじめてお客様にホスピタリテーなサービスをチェックできるということを研修生は感じたようだ。

案内役の総務部長が
「ホテルの場合、収益は電気・ガス・水等の資源の管理によって大いに影響を受ける業種だけにECO管理にまたお客様の目に触れない部分は電気を節減しています。さらに最近犯罪・事件の多発があり、お客様の安全に最も力を入れていて火災事故の際の緊急措置、防火扉、非常の際の脱出、2001年のテロ事行為件以来迅速に対処できるシステムが出来ています」
「最近は、皆様の安全といのちを守るための対策を・・・・・」
と熱を帯びてきて説明をする。

「ええ、ここでは、ボイラー管理者・エレベーター保守点検・電気工事資格者などが活躍する部門で皆さんもこのような資格を取って置かれることをお勧めします」
といったので、研修生の中から
「石川、お前、ボイラー1級管理の資格持ってるから早速どうだ」
「こんなところでお前言うなよ、俺の秘密を、これじゃわかってしまうじゃないか」
二人の話で皆わらってしまった。
固い空気がなごやかになって総務部長も笑っている。

ホテルを利用する人々もほとんど認識していない縁の下の存在なのだと説明を奈央子も
洋一郎も大きくうなづいて聞いていた。
「私たち、華やかなフロントとか宴会・会議室、結婚式・披露宴を見てホテルは華やかと思ってたけど」
「そう、一日中地下で人の目にも触れず、ここで働く人は作業服で時には油にまみれている、生命・安全のために24時間頑張っていることを覚えておかないとね」
洋一郎もうなづいてそういった。

よく見ると研修生の菅原が涙をためていた。
隣にいた奈央子は
「あなた、何で、泣いてるの」
「僕、実は親父があるホテルの保安員なんです、父はホテルに勤めていてホテルというものはお客様の心を掴むものだ、しっかり頑張れ」
と励ました時、
「お父さんなんて保安員だろう、恥ずかしくて、お父さんはもっとレストランとかフロントになりたくなかったの」
と語気を強めて喧嘩になってしまったことを告げた。
「何もホテルのことわからなくて、ごめん」
といった。

次はホテル後方の調理・厨房部門を見てまいります。
ホテル従業員が出・退勤のたびに通る通路の左に調理室・厨房部門があった。

「大淵調理長おじゃまします」
「今日は、ああ、研修生の・・・ご苦労さん、説明したいとこだけど大きな宴会と結婚式披露宴が入っていて」
「かまわずにやってください」
「おおい、302号室の宴会の鯛は」
「100人分確保できたのですが10人が」
「わかった、10人分確保しろ、大至急だ、まだ二時間ある」
調理場のなべからときどき真っ赤な火が高く立ち上る
「中華、焦がすなよ」
「ステーキ焼けたか、40人分」
「遅いぞ、もっと早くしろよ」

総務部長が調理しているコックに邪魔にならないように
「ここでは、お客様の予約を受けた料理を和・中華・
西洋・東洋といっても最近はエスニックな韓国・台湾・タイ・はてはベトナム料理と多様化するお客様のニーズに合わせて時間までに迅速に調理する技術が求められています」
「うまそうだなあ、ああ、腹減った」
すぐ側のトレーのさらに盛られていた大きな丸ごと鯉の中華揚げ煮のにおいに引き寄せられたのか研修生の大石がいい、
「皆さん、どうもすいません」
と頭を下げた

「調理・厨房部門では料理だけではありません、食品管理面で冷凍技術・材料仕入れ管理・衛生管理などがホテルにとって何よりもは大切なもので食品一つ一つの原価管理、一円が何よりも大切です」
「なるほどね」
「さらに、食品の中毒事件です、いったんホテルでそんなこと起こしたらホテルの信用は失墜します」

「総務部長、そのためには仕入れ業者の交渉も大切ですね」
研修生の一人が質問した。
「その通りです、仕入れ業者は数社を選定して業者間による競争入札をすることが大切です。業者を固定してそことばかり付き合うとリベートとか、よく新聞で話題になりますが」
と料理長に代わって総務部長の説明も熱を帯びてきている。

では、皆様憧れのフロント部門ですと総務部長は大きな貨物用エレベーターで皆を誘導し1階のロビーに向かった。

まだ2時半過ぎだというのにひっきりなしに電話が掛かってきて5人のフロント担当員は両手に電話を持って片方はあごで抑えてお客の応対をしている。
フロントテーブルの下にはコンピューターが設置されているらしく予約状況を見てはすばやくキータッチで情報を入力している。

「伺っております、石井さまでいらっしゃいますね
5時にご到着お待ちしています」
「はい、シングルルーム二部屋ですね、はい、おとりしておきます」
「お客様502号室のお客様はただいまお出かけです。
ご用件お伺いしておきましょう」
「ディズニーランド直行バスは・・・・・・」など
担当者が機敏に応対している間にもお客がフロントを訪ねてくる。

フロント担当者が皆の前にやってきて
「主任の堀 博です。ここでの業務を簡単に説明いたしましょう」
「ここでは、お客様の予約・当日客、個人・団体客の受付、館内の案内、客室への宿泊客の取次ぎ、料金清算などがあって迅速な時には非常時など急病人の発生、救急車の連絡、さらに浴室、水漏れ、空調設備の不調など、とにかくあらゆるクレーム発生の応対など
機敏さと寛容さが要求されます。
また当ホテルは外国人利用客も多いので英語のほかにほかに一カ国後ぐらい話せるようにして置いてください」

「キムさん、韓国語が役に立つわね」
うらやましそうに絵里子がキムにいった。
一通り説明が終わったとき、洋一郎が質問がありますと手を上げた。
「あの、フロントをやっていて一番苦労することってなんですか」

「なんといっても客室管理業務ですね。ホテルはお客様が到着する6時ごろには満室近くなっているように心がけています。そのためにVIP・常連客・固定客・フリー一元客何人ぐらいかあらかじめ予測していつも利用いただく常連客はあらかじめお部屋を取ってフリーの方は端の部屋から埋めてゆきます」
フロント主任の話を聞いて
「フロンとってかっこいい服来て一番目立ってあこがれていたのに本当は大変な仕事だと洋一郎、奈央子も否皆そう思っているに違いない。
皆は大きくうなづいていた。

「大変なんですね」
「またお客様の中には性格が違いすぎて口論に発展する方もおられますので別の階のお部屋をお取りするとかして、とにかく表通りから見た客室全部が部屋割りの上手下手によって大きく影響しますね。まあ外から見てあのホテルはいつも繁盛しているなあと思っていただくことが大切です」
「そうですか、こんな細かいとこまで」

フロントが終わるとらせん階段をゆっくり上がりながらテナントのあるコーナーを見てそれからエスカレーターで4階の結婚式、宴会場に行った。
400人収容の大宴会場はおりしも今晩の予定で忙しかった。
今晩はこの円形テーブルがお客様でいっぱいになります。
宴会・会議。披露宴で大切なことはそれぞれのお客様のご予算と開催時間に合わせてお料理をお出しすることです。バランスを取ってちょうど終了前に最後のデザートをとか結構気を使います。
後ろでそっと見守りながら、時々お客様のもとに近づいて「お料理の味いかがですか」とか「ワインいかがですか」とかそれとなくおもてなしすることも大切です。

セットの際のテーブルは食器、フォーク、スプーンなどの種類とかワインの種類を暗記できるまでに覚えることが必要です」
そういう話を聞いてホテルは人に注目して華やかで男女の出逢いがあってと考えていた研修生たちの表情も真剣になっていた。

そのほか、ホテルの中枢機能であるビジネスセンターでは、巨大コンピューターが稼動していて経営意思決定を行う予算管理・各部門業績管理・予約管理・部品管理・原価管理・販売管理などがいつでも把握でき、さらにお客様のメール。コピーを受け付けたり、場合によっては伝言を取り次いだりしていることも知り、いかにホテルとはどの部門も連携しあってすべてはホテルを利用するお客様のために快適なサービスを提供していることを研修生たちは認識させられた。

見学は三時間に及び研修生たちはやや疲れた表情で8階会議室に帰ってきた。
最後の一時間は明日からの講習ということで、
麻美を突っついて小声で
「ほら、未来のホテルの経営者になるんだろう、たりして」
あたしって昼からずっと見学してていて、もし寝たら明日あなたのノート見せてもらうかも」

麻美は何とかして目を覚まそうとしているけど、肘を突いたままいつの間にかこくりこくりと居眠りをする。時間が経ち、眠気が襲うのを我慢しながら
「俺って女の子にやさしい人なんだなあ」
「えーとノート書かなくちゃいけないわ」
麻美は時々はっと気がついて講義をノートに記すものの手からペンを落として居眠りをしていた。

新宿駅西口は仕事を終えて、自宅へ急ぐ人の波、遊びに行く人の波が交差していた。
今日一日ぎっしりとホテルの研修があって研修生も軽い疲れを感じていた。
奈央子と洋一郎二人もそうだった。
「この先の角の超高層ビルの45階があたしたちのいくところなの。」
いくて前方にグレーの超高層ビルがそびえていた。

二人は新宿超高層ビルのシースルーエレベーターで45階スカイタワーに昇った。
昇るにつれて目の前の道路を行きかう自動車の赤いライト、建物が次第に小さく周辺いっぱいに光が広がって二人はじっと東京の街の果てしないきらめきの広がりを実感する。

新宿タワービル45階最上階。
室内も高級感があり赤いじゅうたんの先にはクリスタルルームがあった。
BGMは、中央から聞こえてくるピアノ曲「白い恋人たち」で室のムードがいやおうなしに高まっている。
「いらっしゃいませ、何名さまで・・・・」
奈央子はハンドバックから会員カードを取り出している。

係員は「お席にご案内いたします。2名さまですね」
といって先に立って二人をエスコートした。
「へえっ、すげえところだな」
「いちばん眺めのいいところにご案内します」
 
スカイラウンジ内は、天井は星空、下は黒いじゅうたん、間接照明で大きな窓から新宿の夜景が一望できる。中央にピアノがあって白いフォーマルドレスを着た女性がピアノを弾いている。

「一寸いいでしょう。だからここで借りを返すといったの」
「それに妙に酔っ払った男の人もいないでしょう。女の子同伴でないとここには入れないのよ。」
「君が借りを返すと言ったところは、ここか、君と今後付き合っていくのは重荷だよ」
「ねえここいいでしょう。女性専用の会員クラブになっているから」
「こんなところで借りを返されたら、僕身が持たないよ。ここはよく来るの」
「とんでもない、滅多に来ないわよ、でもあたしにとって大切だと思う方だけとここに来るよ」
洋一郎は(思わず) 「えっ、僕ってそんなに大切な人?」と聞く

奈央子が
「そう、あたしにとっては想いでのケータイ拾って呉れたんだから」
「えっ、君の想い出というのが気になるの」
「それは秘密、その内わかるかもよ」

奈央子からそういわれると個人の秘密だし、
洋一郎はそれ以上聞けなかった。
「ここは大学時代の親しい友達と来ることあるわ、夜景見てあっきれいとかいってるわ。あと」
「あとって」
「父を連れてきたの」
「お父さんと?。」
洋一郎は、娘がこんなところに連れてくるとは場違いでないかと考えていた。

「そうしたら、父は俺は江戸っ子だってんだ。お前は俺がやっているお金をこんなところで使っているのかと怒られたわ。」
「江戸っ子って何やっているの?」
「下町で団扇とか扇子作っているの」
「そうなんだ」

洋一郎ははじめて父の話を聞いて、彼女の父が江戸古来の伝統を今も引き継いで扇子やうちわを今でも作り続けていることを知ってない子の父にけ一種の尊敬の念まで感じ始めていた。
でも、奈央子さんはそんな古風の伝統を引き継いでいる女性には見えないしとも考えてみた。
「第一、ピアノでなんか西洋の音楽やったりして、やはり俺には演歌かなんかとかこんなとこで言うもんだから、あたし恥ずかしくて」

当時を思い出すかのように、奈央子一寸肩をすぼめて、恥ずかしいようなそぶりを示す
「扇子職人だと無理だろうな」
「ちょっとあなた失礼ね」奈央子は
(一瞬むっとするが抑えて)
「あたし、もう少し父が、センスがよければいいと思うのだけど」
「扇子にセンスね、すごい。」
「何よ、あなた何いっているのからかわないで、偶然いっただけよ」
とポイと横をふりむいた。
洋一郎は
「ごめん、はじめて会ったのに怒らせて」
「謝っても聞かないわ」

「あの、実は僕、奈央子さんからお父さんが扇と扇子を作ってる江戸職人といった時、僕はもうそんな伝統的な仕事を今でも引き継いでおられて素晴らしいと思ったんだ」
「何よ、あなたはけなしたり、ほめたり」
でも、奈央子の顔からは穏やかな笑顔に戻っていた。

それにしても君は何ていうか才能があるっていうか、扇子とセンスを重ねるなんて」
「変なところで感心しないでよ」
といいながら「お食事しましょうっていってもここは軽い食事で、ピザ、カレー、スパゲッティ、ピラフ位で女の子の負担を軽くしてるの、それに?」
「それにって」
「私たち、友達とか来てここでおしゃべりするでしょう、男の人とその点違うの、あと、甘いデザートが多いの」
「あたし、ピザにするけど、あなた好きなもの、何でも」
「奈央子さんの選んだものをいただくよ」

洋一郎と奈央子とピザ、野菜サラダを食べながら

「ねええ、ワインかカクテル飲みましょうよ。わたしはマンハッタン・・・・・・・・・、あなたは」
「僕、そうだなあじゃ、シンガポールリスニング」
「あなた、カクテル通なのね」
「いや、シンガポール行った時飲んで」
「恋人と行ったの、いいなあ」
「まさか、部長のお伴」
「お食事終わったらデザートたべましょう」
「そんなものあるの?」
「洋菓子のバイキングがあって何でも食べ放題なの」
「さすが女性殿堂なんだあ」
そう言って奈央子は指で
「ほら、あそこ」
といった。

和菓子から洋菓子、ケーキ、ゼリー、飲み物まで種類が豊富で若いカップル、女の子が周りを囲むように集まっている。
「ふうっつ、すげえ、驚いたな」
「ねえ、すごいでしょう?、お菓子店顔まけでしょう」
「だから女性は太るんだ」

奈央子と洋一郎は、
好みのデザートを盛ってテーブルにもどる
洋一郎「奈央子さんはさすがだなあ、」
イチゴタルト、メロンケーキ、それにシュークリーム、フルーツポンチ、を見て驚いた。
「あなたは?」
洋一郎のお皿には
ワインケーキ、バームクーヘン、タルトなどを選んで「あっさりしたものばかりね」    
「あれを見ただけで」
「あれを見ただけでって?」
「君がせっかく誘ってくれたのにごめんよ」
「さあ食べましょう、あたしケーキは別腹なの。」
洋一郎は、男も女もそう代わらないと思った。同じクラブでもビール・ウイスキー・日本酒・焼酎・酎ハイ・ワインといろいろ飲みながら酒の肴として選んで食べて飲むことには代わらないと思った。
同時にここは男一人で来るところでなく女性の殿堂とも思ったりした。

「なに、さっきから考えてるの」
洋一郎ははっとわれに帰って
「じゃ、僕も頂かせてもらいます。」
「どうぞ。」
「本当だ、このクリームの上品な甘さ、一寸ワインぽい味染み出てチョコレートと溶け合ってエレガントで引き付けられる。」
洋一郎は一口食べるたびに菓子の味を細かく話すので、
奈央子思わず噴出してしまった。
「あなたって面白い、急に料理評論家になったりして」


あたし、ホテルの仕事昔から憧れていたの、きれいなところでフロントとかかっこいい制服着てお客様の応対するのっていいなあといつも考えていたの。」
「それでいろいろ調べて2年間、経営学を学びたいと思いニューヨークの大学に留学したの」
「2年もアメリカに単身行くなんてすごい。」
「あなたはホテルの何を希望してるの?」
「僕もホテルといっても、料飲関係、客室関係、渉外関係いろいろあるのでひととおり経験したいよ。でもやっぱりフロントかな。語学も役に立つしね」
「意欲的なのね。」

「案外、君と一緒でフロント配属されそうな気がする」
「そのときはよろしくね。」
「でも、実際はお客様にサービスすることってあんなにいろいろなセクションが協力し合って、誰もが知らない苦労を重ねていることがよくわかった」
と洋一郎は改めて今日午後のホテル見学をした印象を奈央子にいった。

奈央子もまた、
「私も、なにかあんな巨大ホテルでかっこいいユニフォーム着て華やかなフロントでお客様の応対をして、中にはイケメンとか外国人に会えるし、結婚のチャンすもと、舞い上がっていた」
としみじみ洋一郎に思いを話すのだった。

「ところで君はどっかで見たような気がするんだけど。あの?」
「あのって何なの、言ってごらんなさい。早く、早く」
「君だって、大切にしているケータイの秘密教えて」
「それは、・・・・・そのうちわかる日が来ると思うわ」
「じゃ、僕だって秘密にしておこう」

二人はお互いの秘密は胸のうちに今は収めておくほうがいいと顔を見せてにっこり笑った
夜も更けて中央のピアノ曲、「イエスタデイ・ワンス・モア」、バラード曲に変わる。
ロマンチックムードに奈央子
「ねえ、洋一郎さん、あたしと踊らない?」
「えっ僕、それが情けないことに君と違って」
「いいのよあたしに付いて来てくだされば」

見ると、3組のカップルが踊っている。
奈央子の誘いに従って洋一郎もステップを踏んだ。側でピアノ曲が
同じビートルスの「イマジーン」に変わった。スローテンポでゆっくりと踊りやすい。
二人は今朝からの出来事を考えていた。
ケータイを取り上げたとたん、ぽろっと落としてしまった。

「ああ、私のケータイ」
奈央子が赤いケータイを拾おうとかがんで右手を伸ばした瞬間、
「これ大事なんでしょう」
先に拾ってくれた男が居た。
奈央子は、
「ああ、すいません。ケータイ落とすなんて」
洋一郎は、奈央子の顔を見た。
「あっ」
「なにか」
「いいえ、何でもありません」
「あなたお上手ね、踊れないと言ってたのに。」

学生時代からダンスが苦手で、友人を通じて会社の創立記念ダンスパーテーに誘われてエチケットとしても周りにいる男女とも「踊りませんか」と誘い合うものなのだが、洋一郎は遠慮をして踊れない男女がいる、いわゆる壁の花だった。
奈央子からそう言われて
「何か、僕今夜すごい幸せ」
と彼女の耳元でささやいた。

同じ頃、ホテルのもう一つのカップルが居た。
新宿駅西口駅はこれから夜を楽しむため、遊びに行く人、仕事が終わり家路に急ぐ人が交錯して賑わいを見せていた。
二人のホテルで今日、知り合った重信・麻美もその中を歩いていた。
「君の家、どこなの?」
「家?、家は新宿の山の手よ。割と近いところよ」
「良い所に住んで居るんだね」

新宿駅西口駅はこれから夜を楽しむため、遊びに行く人、仕事が終わり家路に急ぐ人が交錯して賑わいを見せていた。
二人のホテルで今日、知り合った重信・麻美もその中を歩いていた。
「君の家、どこなの?。」
「家?、家は新宿の山の手よ。割と近いところよ。」
「良い所に住んで居るんだね。」

重信に直美は関心を示し、いい友達になろうと言ったことを理由に
「ね、私たちお昼いい友達になろうねと言ったじない。少しだけ寄り道して行かない?」
「寄り道って」
「私、おいしい炉辺焼きの店知っているの。魚もおいしいしビールも少しだけ。どう?」

重信は、いきなりビールといわれて困惑の表情を見せた。昼休みにホテルの展望ラウンジで直美にお酒は苦手と話していたので、
「えっビールって言ったよね。君ってお酒は呑めるの」
「少しくらいはね。さっき話したでしょう?」
自分の育った環境とまったく違うと驚いて
「さっき話したようにだめなんだ俺」
とできら逃げたかったのだ。
麻美は話題をちょっと変えて
「一寸、聞いていい?」
「何?。」
「あなたって、恋人いるの?」

「僕サッカーで何度も優勝に導いているんだけど、体育会系なんて男の城なんだよね。女性と会う機会がないんだよ」
「そう、それじゃ仮にあたしがあなたの恋人としてあなたと一緒にお姉さまにあったらどうかしら、驚くかしら」
「そういう手もあるなあ、君に無理言って、一日恋人になってもらおうかな」
「・・・・・・・・・」
麻美は笑いながらそっとうなずく

麻美はそう話しながらビルを降りて行くと、にぎやかな歓声や笑い声がすでに二人を覆っている。
「炉辺焼酒場 あかり灯」
中はカジュアルっポイろばた焼きの店で正面にいろりがあって魚を焼く音とにおい、さらにたばこの煙と男の酒場ムードなのだが、音楽がスイスのヨーデル、仕切りがステンドグラスがはめてあって敬遠しそうな炉辺焼酒場が女の子も入れるようになっている。
「ええー、らっしゃい、何名さま」
「二人」
「お二人さん。こちらへどうぞ」
フランスの田舎の民族衣装を着た女性の店員が席に案内し、
「こちらへどうぞ」と案内する。

中央カウンターに座る重信と麻美の周りには会社帰りのビジネスマン、若いカップルでにぎわっている。
いろりばた焼きなのに洋風の内装が落ち着いていてここなら女の子も安心できる。
いか、ほっけ、いわし、さば、いわし、海老、ホタテなどの海産物が並べられていて見るからに食欲をそそる。

面白いのは焼いた魚介類をスペイン風・イタリア風・ギリシャ風に調理とかドレッシングを用意してあることだ。
「女の子に誘われて来るなんて、はじめてだ」
「この店、雰囲気いいでしょう?。炉辺焼きなんだけどここは洋風でカジュアルっぽいから女の子も入りやすいの。

新宿は超高層ビルをはじめ都心からこお副都心に移転してきた企業で勢いここで仕事をしている人を狙って大手チェーン店はじめ零細な炉辺焼き酒場が多く生存競争が激しく開店した店の裏には敗退、閉店に追い込まれた店があって生き残りが大変のだ。
それに魚介類も新鮮で地中海風とかフランス風とかにアレンジするの」

従業員がやってきて中央カウンターの近くの席に案内する。
「焼酎、地酒、にごり酒、酎ハイ、ビール、ウイスキー、わあたくさんあるなあ。見ただけで・・・・・・・。」
「本当にだめそうな顔してるみたいな」
「・・・・・・・。」
「なら、酎ハイはどう?。メロン、いちご、オレンジ、りんご、いろいろあるわ。ビールもあるし、少しくらいどう?」
「ビールは、日本製のほかに、ハイネケン、バドワイザー、それにタイガー、ほかにも」
「あたしは、ビール小ジョッキ、ビールはハイネケン、そのあとはメロンの酎ハイ、」
「じゃ、僕は小ビール、バドワイザーでいいよ」

麻美は、せっかく誘った炉辺焼き酒場でお酒、アルコール類がダメだといった重信に
気を遣って
「あとは、なにか食べないと、和洋取り混ぜいろいろあるわ、ええと
焼き鳥、肉豆腐、肉じゃが、ウインナー、マリネ、魚は地中海風ソテイあたりでどう」
「いいね、いいね」
やがて注文の品が運ばれてきて、麻美はメロン酎はいを飲み、重信もすすめられていちご
酎はいをたしなんでいた。

「あたしたちって本当に最初から出会いがあった見たい」
「あなたの家と俺の家が変わっているし」
「でも正反対って、案外うまく行くんですって」
「ところでアメリカのホテル学校役にたったの?」
「う~ん、日本とアメリカの風土、習慣の相違なのかなあ、日本の方がきめの細かいサービスやってるみたいな」 
「そうなんだ」
「っていうか、アメリカ人て国がめっちゃ大きいからあたし的には大雑把に見えるし」
麻美からアメリカのホテルの話を聞いてうなづいていた。

ところで
「そういう君が夕方の授業に居眠りしてた」
「たしかに、あそこんとこで何かアメリカで聞いた感じだったよ」
「道理でさっき居眠りしてたんだ」
「変なことに感心しないで?」
重信は麻美に親しみを感じて
「これから、、居眠り姫さまと呼ばせてください」
麻美はいきなり自分のことを居眠り姫と呼ばれて
「何なの、ああむかつく」
とまゆにしわを寄せた。
「でも君のために全部ノートとレコーダーに記録しておいた」
と言ってポケットから重信HDDレコーダーを取り出した。

「ほらね」
音を再生して麻美に聞かせた。講師の声と共にスースーという音が入り混じって聞こえてくる。
「何なの、このスースー言う音は?」
「これこそわが愛する居眠り姫さまの可愛いいびきさ。」
麻美、それを聞いて少し不機嫌に、
「あっそう、あなたもう、いい加減にして、いやだこんな証拠物件残して。たたくわよ」
重信「・・・・・・・・・」
重信「でも、あなたってずいぶん容易周到ね、内容録音してくれたので許してあげる」
「でも麻美さんは、すでにカリフォルニア学校出ているし、だから当分居眠り姫さまでいいよ。なに俺は君のために全部ノート、録音しておいてあげるし」
重信の皮肉めいた話に
「いやな性格、人をからかうって、でもさっき言ったとおり日本と外国のホテルサービスが違うの」
「・・・だから、私も居眠り姫ばかりではね」
「あなたは何するの?」
「あっつ俺コーラでいいよ」
「はt、こんなところで」
「本当に飲めないんだ」
「あなたって骨太でがっちりして、頼もしい存在にみえるけど、サッカーのOB会とか、コンパとかそういう時どうするの?」

「そのときは、一寸付き合って、あとはジュースで雰囲気もりあげるとか」
麻美が次第にエスカレートしてくるので、誘われた重信も心配になってきた。
彼女、いくら強くても家にかえれなくなってはいけない。

麻美は酎はいを重ねているうちに酔っ払ってきて
話がスローモーになって行く。
「変な~人ね、あ、あなたに~話すけど、ね聞いて、あたしねえカリフォルニアのホテルの~~ホテルの経営学部に居て~~、あなたよりもっと素敵な男の子が居てえ、・・・・・すきだったんだけど振られちゃうのよね。麻美、アイ・ラブ・ユーとか言ってさ、なのによう、ある日彼は、僕の婚約者ですってえ~~~、思い出しっちゃった。今夜悲しい・・・わ。わかる~~、重信さあんこの気持ち。」
重信はすっかり酔ってきている麻美を見て頃合を考える。重信、酔ってる麻美を見て可哀想になるがどうしていいか戸惑ってしまった。

「麻美、家まで送るから、もう帰ろう」
「あたし~悲しくなった~~~」
とハンカチを目に当てて涙をふいている。
「麻美さん、続きはこんどにして帰ろうよ」

とうとう重信、足元がよろけようとする麻美を肩で受け止めてお勘定を支払い、一歩ずつ階段を上がり道路に出た。
「麻美さん、大丈夫?」
「大丈夫よ、これくらいのことでえ~~」
麻美だいぶ酔っている
炉辺焼き酒場から出てきたサラリーマンが手をあげてタクシーを止めている。一台のタクシーが交通渋滞で止まっているのを見て、重信は麻美を背負って駆け寄って合図をした。

ドアを開けて麻美を先に中に入れて、自分も乗り込んだ。
麻美から住所を聞き、
重信「中野1-23番地」
タクシー走り去る。
タクシーの中が走り出して麻美は酔いが醒めてきた。
「重信さん、あなたにこんなにご迷惑掛けてごめんなさい」
と言ってハンドバッグからお金を取り出して重信のスーツのポケットに入れた。

十時を過ぎて青梅街道から横丁を入ると人通りも少なくなって街路灯がぼんやりと通りを照らしている。山の手住宅街の黒塀のある家から玄関を開けて男が出てきた。
「麻美の兄です、今日は妹がお世話になりました」。
「こんばんは、長谷川重信といいます」
兄が
「麻美、重信さんによくお礼を言って、ここまで送ってくださったのだから。」

麻美は兄に寄りかかりながら
「あたしが彼をお誘いしてあたしが酔って、今夜はすっかりご迷惑おかけしてどうも本当にすいません。」
重信は、、麻美を送り届けて地下鉄駅に向かう途中。
「今日は、変な日だったなあ。麻美からお酒誘われて、俺が彼女を家まで送るなんて。麻美明日来れるかなあ」

新宿地下街は十時を過ぎるとビルの店舗もシャッターを下ろして駅までの地下通路が異常に長く感じられる。駅に近いある洋品雑貨コーナーはまだ店を広げていた。
奈央子は、目を留めて
「洋一郎さんにあそこの黄色いネクタイ買ってあげる。」

「奈央子さんの元カレはネクタイ、何色が」
「はっ」
「なんとなく聞きたくて」
「まだ、今日逢って、そんな仲じゃないし」
「だよね、また怒らせて、ダメだな僕は」
「私が黄色が好きだから、大事なケータイ拾ってくれたし、やっぱり恩人だし」
「じゃ、僕はあそこの店の黄色いスカーフ、今日二回も怒らせて」
「これ高いんでしょう?」
「頼む、黙って受け取って。」
「ありがとう、ありがたくいただくわ。そうそう明日二人でこれをして来ること、いいわね。?。」

二人、手を振って分かれようとするが、
「あっ、そうそう君のメールアドレス教えてよ。」
「いいでしょう、あなたストーカーじゃなさそうだし」
「えっ、僕が、奈央子さんだって平気でいうね」
「ごめん、怒らせて」

奈央子は、目を留めて
「洋一郎さんにあそこの黄色いネクタイ買ってあげる。」
「奈央子さんの元カレはネクタイ、何色が」
「はっ」
「なんとなく聞きたくて」
「まだ、今日逢って、そんな仲じゃないし」
「だよね、また怒らせて、ダメだな僕は」
「私が黄色が好きだから、大事なケータイ拾ってくれたし、やっぱり恩人だし」
「じゃ、僕はあそこの店の黄色いスカーフ、今日二回も怒らせて」

「これ高いんでしょう?」
「頼む、黙って受け取って。」
「ありがとう、ありがたくいただくわ。そうそう明日二人でこれをして来ること、いいわね。?。」

二人、手を振って分かれようとしたが、
「あっ、そうそう君のメールアドレス教えてよ。」
「いいでしょう、あなたストーカーじゃなさそうだし」
「えっ、僕が、奈央子さんだって平気でいうね」
「ごめん、怒らせて」
時々お互いがぶっつけあっているのだが、もう遠慮もなく話せることに奈央子も洋一郎も今朝あったのに心が打ち解けて話が出来ることを喜んでいた。

翌朝空は快晴で、風はまだ冷たいが、それはさわやかに陽の光はきらきらまぶしくさわや青々とした街路樹、モノレールの窓から見る小公園、マンションの前にはさくらが開花して研修生たちにエールを送っているようだ。


ニッポン・セントラル・ホテル台場のロビーにはすでに研修生が集まっている。
洋一郎は、今日は絶対遅刻できないと今日は早めに着いていた。
洋一郎「ところで奈央子さんは、僕が上げたスカーフしてくるだろうか」
昨日、新宿地下街でお互い黄色いスカーフ、黄色いネクタイをして出勤しようといったもののあうまでは不安だった。
「いかん、こんなこと考えるなんて、彼女がもう僕の心を占めている」
ホテルのドアから紫色のワンピース、赤い大きなベルトがアクセサリーの。
彼女が入ってきたが洋一郎は気が付かなかった。、
奈央子は小走りで洋一郎のところへ行き、

「お早う」
後ろから静かに洋一郎に近づいて後ろで目隠しをした、
「どう驚いた?。じゃ~ん、ほらあなたの呉れた黄色いスカーフ・・・・・・・・・・・・・・。
あら、あなたもね。」

洋一郎と奈央子は並んでエレベーターに乗って研修室に・・・・・
一方、ホテルフロントの前の黒いレザー貼りのソファに腰かけている麻美は、
バッグからファッション雑誌取り出し半分顔を隠している。
「ああ、重信さんにあんな迷惑掛けて、どうしよう、恥ずかしい」

重信が回転ドアを開けて滝のある側のベンチで腰掛けて背中を見せている麻美に
「お早う、麻美さん、昨晩はどうも。」
「あああたし、あなたに大変な迷惑を掛けて本当にごめんなさい」
「いいんだよ、君と楽しい時間っ過ごせたし。君との友好関係深まったし」

重信に言われて一緒にエレベーターで研修センターに向かうシースルーエレベーターで研修室に向かった。
麻美は、昨日の失態を見られてしまったことで重信の顔を見れず、雑誌で半分顔を隠し、ていた。
「本当に昨日は済みませんでした。あたし恥ずかしくて、もう二度と飲みません、ごめんなさい」
「いいんだよ、ちっとも気にしていないんだから」

それをドアの影からひそかに見ている者がいた。
キム・カンイルだった。
「僕の大切なリュ・イジンは日本のどこに居るのだろう、中野さんに深川さん、それと長谷川さんと麻美さん、あの仲のよさは恋人だよ、リュ。イジンどこに居るんだ、今ここにいれば僕たち三組目の恋人が出来るんだけど」
小声でつぶやいていた。

                  第一話 完

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長編小説 新連載「東京23区 男と女の物語」 (千代田区)

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東京23区男と女の物語
東京にはいろいろな顔があります。その中で23区は実にいろいろな個性を持っています。

その23区は政治・経済・ビジネスの中枢機能中心の千代田区

商業施設が集まるとともに江戸のよさ、伝統を残している中央区

最近まで緑いっぱいで畑も残ってる農業らしさを残している練馬区

中小企業の集まった人情のある下町、また高級住宅がある山の手のたたずまい、二つが同居する大田区

このような東京23区で起きる男と女の物語を書いて行くつもりです。

どうかよろしくお願いいたします。


東京都千代田区、東京の中央に位置する面積わずか11,1kmの人口は約4万2千人であるが、昼間はなんと
2、374倍という途方もない人がここに集中し働いている。

第1区 ひと時の邂逅  (千代田区)

富田慶三郎は丸の内の新世紀商事(株)の経営管理部長だ、ある日、ハケン社員がやってきて
主任の柳内と面接に向かうのだが、二人のうち、富田優美、それは5歳の時に妻と離婚して30年
会いたいと思っていた自分の娘だった、二人は・・・・・・

富田敬三郎は東京駅から歩いて5分の新世紀商(株)の総務部長だ。
従業員5万人を擁する新世紀商事は総合商社であって
55歳にして経営管理部長の席を手に入れた。
60歳が定年と定められているので、会社の要職とはいえ、富田にとってはあと一歩で定年のない役員に昇格するか、それともあと5年で定年、あとは嘱託待遇か関連会社出向か、サラリーマンなら誰もが二つの岐路に立たされるが、自分で決定することの出来ない苛立ちを感じ始めていた。

そのため、自分自身でもこうときどき思うことがある
「昔はもっと覇気に満ちていて正論を吐き、ブルとーざーのようにたくましく猪突まい進していたのだが」、
最近は上司にはただ頭を下げてすべてに迎合するようになっていた。

「おはようございます、ハケンの面接があります、部長もおっしゃっていた通り二人控え室に来ていますのでどうぞよろしく」
新世紀商事でもかってのバブル好景気が去ってしまって国内需要の低迷によって人件費が安く弾力的に運用できるハケン採用の道をとっていた。

「わかった、会おう、パソコンスキルが高いといいんだけど」
「部長、そんなこといっては居られませんよ、だって部長のデスクの上のパソコンほこりかぶっていらっしゃいますよ」
痛いところをついてくる柳内さつきは入社8年の大ベテランなので言うことも厳しい。

部長はさつきを従えて室を出て行き右側の控え室のドアを開けて中へ入った。
向かい側のドアを開けると二人のハケン女性とハケン会社のサブマネージャー村沢が待っていた。

「どうもお持たせしました」
「失礼します」
二人が丁寧に頭を下げる。
「サクセスマネージメントの村沢です。要請に応じて今日、私どもにハケン登録している富田優美さんと小岩井文香さんをお連れしました」

そう紹介があって顔を上げた富田は
「あっ」
と大きな声をあげそうになって驚いた。
その顔は5歳の時に妻と離婚した富田優美の面影があったからである。

富田は向かい側の左側に座っている富田優美、本当は実の娘かも知れない女性に
「パソコンはどの程度おやりですか?」
と聞いた。
サブマネージャーの村沢が
「ちょっと待ってください」
といいながら黒い皮のカバンを開けて
「彼女はパソコンはもちろんのこと、情報管理士1級の資格を持っています」
とさらさらと読み上げる。
富田は5歳の時に妻と離婚して以来ずっと娘に逢えなかったのでこんなことで娘と再会することが信じられなかった。
質問しながら
5歳の時に別れたんだもの、顔ははっきり覚えていないけど、唇の左右に小さなほくろが、笑うと小さなえくぼが、耳が小さいしと心の中で一問一答をしながら
○×をつけていた。
富田は思いあまって
「富田優美さんとはどこかでお会いしたような気がしますが」
といってしまった。
彼女は
「お会いしておりませんが、富田優美という名前はほかにもありますので、失礼しました」
と反論した。


「右側の方は名古屋静子で簿記1級、パソコン1級で御社の重要な戦力になると思います」、
それぞれ自己紹介があったあと、経営管理部に二人を連れてきて冨田は
「おい、聴いてくれ、今日からハケンのお二人をお迎えして、富田優美さんと名古屋静子さんだ、皆わからないことは教えてあげてくれ」
紹介しながら20年以来あうことが出来なかった自分の娘がしかも同じ会社の同じ経営管理部にいる。
なんという巡り会わせだろうか。

富田は、「ちょっと」
と柳内さつきを呼んで通路脇の会議室に入った。
「ど、思う、あの二人」
「部長、私に聞くのですか、ご自分がおきめになることでしょう」
「まあ、そうだけど」
「どうしてもというなら最初からやろうという気持ちがあるハケンを見た目できめてはいけません」
「その通り、柳内さんは頼りになるし同じ女性の目から見て」
「では、もう一つ、富田優美さんですけど、部長のお顔に似てらっしゃって」
「やっぱり、そう思うかね」
「部長、何か」
「いや、何でもないよ、ありがとう」


富田は、目の前に自分の娘がしかもハケンで今日から働いている。20年間いやそれ以上、娘が小学校・中学校・高校・・・そしておそらく大学へ、そんな父がずっと思い続けてきた娘への思い、今ここに実現しているが別れた妻の子で長い間の年月が大きく壁が立ちふさがっていた。

二人はパソコンを使って集計をを行っていた。
気がつくと、12時を指していた。
「富田さんに名古屋さん、一緒に昼食しよう」
「部長、私たち、二人で」
「なあに、今日だけだよ、今日からうんと頑張ってもらわないと」
「ありがとうございます」
「ただ、カレーだけど」
彼の方針だった。ハケン社員が彼のところに配属されると仕事への励ましで必ず一緒に昼食をともにするのをずっと以前から行ってきた。
会社は労働派遣法の改正によって正社員・契約社員・ハケン社員・アルバイト社員に分かれて各々の立場からの違いとかいさかいを調整し、組織と人間関係を円滑にするのが部長の役割になっていた。

20階の社員レストランからは日比谷から皇居、お堀そして大手町遠くは新宿まで望むことが出来る。
二人は、部長の顔を見ながら運ばれてきたカレーに舌づつみを打っていた。

「おいしいですね、このカレー」
「よかった、喜んでもらって」
そんな会話が続いたあとに、右側にいた名古屋静子が
「あの、私ちょっと母に頼まれたことがあって、ごちそうさまになりました」
といって席を立って入り口に歩いていった。

あとには富田と優美が残された。
彼は、ハケンの名古屋が居なくなったので優美に聞いてみたかった。
こういう話は二人きりにならないと出来ない。
「あの、僕はあなたをどこかで、小さい時に見たことがあるのだけど、ほら5歳の時」
富田は優美の顔を見つめながら聞いた。
彼女が自分の父であること、誰も廻りにいなくなった今こそ実は、私は、お父さん、パパと呼んでほしかったのである。
富田は優美の口元を見つめていた。
唇がかすかに動いていたが
「富田部長、あの、私・・・・・・・・」
彼は胸がどきどきしていた。
20年間もはなれていた自分の娘が、
「なに?」
「じ、実は私・・・・・・」
優美はそこから口ごもった。
その先を聞かせてくれ、優美
「大変失礼しました、富田優美は部長とは関係ありません」

「そうか、ごめん、富田優美さん」
彼はそういってカウンターで3人分のカレーを払いエレベーターで7階の経営管理部に戻った。
二人のハケンはなれた手つきで部門別販売。支店別販売などをどんどんエクセルで処理している。
学卒の三人が
「ちょっと、あの子たち早いわね、私たち」
「今に仕事持ってかれちゃうよ」


こうして今日も陽がくれて6時を指すと
「さあ、帰ろう、帰ろう」
「部長、お先に」
どんどんそういって帰っていって部長と主任のさつきと優美が残っていた。
「さつきさん、富田さん今日はこれでいいから」
「そうですか、お先失礼します」
優美が去ったあと、
「部長、あの富田優美さん、娘さんだったらどうするのですか」
「どうするって、僕には25年前のことだし」
「それに、明日も富田さん来るし」

「部長、何を言ってるんですか、優美さんだってうちの会社で突然会って、きっと悩んでるんです、さあ、早く彼女のあとを追いかけてください」
机の上の物品を引き出しに閉まってパソコンスイッチを切って柳内は帰っていった。
富田は、室内の電気を消して暗い廊下を歩きエレベーターに乗って1階ロビーの受付嬢から
「ご苦労さまでした、部長」
の声を受け止めて正面玄関から表に出た。

前方百メートル先には優美がゆっくり歩いていた。
富田はどうしてももう一度聞きたかった。
急いでそのあとを追っかけて走って行くと優美は突然立ち止まった。
「富田さん」
優美はその声に振り返り、
「お父さん、お父さん」
と悲しそうな顔をして二度呼んだ」
「やっぱり、優美、私の子だな?」
「お父さん、私、どれだけお父さんを」、

富田は優美が5歳、まだ物心がつくかつかぬか、そんな時に妻と離婚して以来、今日まで娘のことをいつも想い続けてきた。
でも、たった生まれてから5年間だけ、そんな短い月日のことを娘は覚えていてくれてるだろうか
「どうだ、食事でもしよう、ご馳走してあげるから」
父と娘、優美は黙って左右の暗いビル群を後にしながら東京駅丸の内口に向かって歩いた。

丸の内ホテルに入り2階のレストランに向かう赤いじゅうたんの敷いてある階段を登った。
入り口でウエイターに二人で静かな部屋で話したいことを伝えて、奥の別室に案内された。

赤いレザーの椅子に二人は向かい合って座った。
「お食事はなにに」
メニューを置いていった。
「お、お父さん、会えて優美うれしいです」
「優美、私もだよ」
5歳の分かれた時には優美はまだ幼稚園生でピンクのワンピースに白い首の周りのレースのお人形のような子だった。

その優美が今、大きくなって目の前に居るのだ。
彫りの深い顔に高い鼻、大きな澄んだ瞳、二つの小さなほくろ、何よりも優しい微笑み、落ち着いた花模様のカットソウ、その上にベージュの短めの上衣に黒い長いパンツ姿、若いときの恋人に出会ったような一種のときめきさえ感じていた。

「どうだ、お母さんは元気か」
「ええ、元気よ」
「今、何をしてるんだ」
「ああ、ママは、お父さんと別れてから苦労して今は絵を生かしてイラスト書いて、賞をもらってから千代田区の広報のイラストも書いてんの」

「優美はいつ資格取ったのか」
「ああ、資格、学卒でも片親のせいか最後の面接で断られて、このままではと思い、やっと情報管理士の資格とって、その第一号がお父さんの職場っていうわけ」
「そうだったのか、学校も千代田区、それに小さいけどマンションに住んで、二人で千代田区のお世話になってるっていうか、税金も千代田区に払ってるしね」
娘は明るい声で彼に話しかけてきた。

「そうか、お母さんも頑張ってるんで安心したよ、ところで優美いくつになった」
「25歳よ、まだ若いし、でも来年はぎり若いって言われるかも」
娘、優美のはじけるような話に父は微笑んでいた。
「優美と別れたのが5歳の時、あれから30年も立ったんだなあ」

優美は、ステーキをフォークでさいの目に切りながら父の顔を見つめながら哀調味を帯びながら、
「ねえ、お父さん、ママも歳取ってきて仕事が忙しい時には家にもって帰ってイラストパソコンで打ち込んでるんだけど・・さびしそうなの」
「優美、お父さんどうしてるんだろうね」
寂しさを湛えるようにため息をついている母の姿を伝えてきた。

富田は自分と同じように歳を経た妻の顔を思い浮かべていた。
優美は
「ねえ、お父さん、ママも時々パパはどうしてるのかしらねえ」
と私に聞くの。
「ママも戻りたいようなこと言ってるから私、二人の仲裁役になってあげようか」
「えっ、優美が」
「ところでお父さんはどうなの」
「お父さんか」
思わずため息が出そうになった。

富田は妻が優美と一緒に家を出てから10年間辛抱強く待ったのだった。
しかし、親戚の片岡が
「いつまでも一人では、奥さんも考えてるかも知れないけど5年待ち続けたんだろう」
「ええ、それはそうですが」
「あんたも40歳、課長になって何かと一人じゃ、これから会社の仕事も」
そう薦められて10歳違いの子供二人を連れた農水省に勤務している女性とお見合いをして半年後に再婚したのだった。
そんな一部始終をよりをママと戻そうといっている優美に話せるはずもなかった。
ことばが詰まってしまった。

優美がせっかく30年前別れた妻とよりを戻してもう一度再婚して、自分が仲裁役になるといった気持ちを踏みにじってはいけない、少なくとも今夜本当の話をするべきではないと思っていた。
父は、話を変えなければと思って
「優美、幼稚園でお遊戯やってたときのことを覚えているか」
「私、覚えているよ、目の前でビデオ撮ってくれたことも」
「覚えていてくれているか」
「ええ、ママが時々これがあなたのお父さんといってビデオ見せてくれるの」

翌日、二人のハケンは9時前には出勤していて、富田優美も名古屋静子も始業前の体操をしていた。
昨日は親子として話した父と子が今日は上司と部下の間柄である。

優美は体操が終わると給湯室に行って経営管理部の皆のお茶を一つ一つトレーから机においていたが
「富田部長おはようございます」
丁寧にお辞儀をしてお茶を机に置いて自分の席に座った。
富田は自分の娘がすぐ側の机にいてすごい速さでデータをパソコンに打ち込んでいる。
二人のハケン社員に富田は公平に仕事の割り振りをするように主任の喬木を呼んで依頼した。

公正に二人を見なければと思いつつ冨田は、時折優美、自分の娘を呼んでいた。
「すまないけど、午後の会議資料字句を訂正してコピー30部してくれないか」
「かしこまりました、部長」
父と子はビジネスライクに仕事をこなしていた。

あわただしい中でお昼休みになった。
優美はつくえから振り返り父を見た。
「富田さん、昼休みぐらいゆっくりしなさい」
そういって忙しそうに部屋から消えていった。

後ろでケータイが震動音を鳴らしている。
優美は振り返った。部長の机ににケータイが残されていた。
「電話だ、っていっても誰も居ないか、父のケータイを見るのは」
親子といっても昨日30年ぶりに会ったばかりだ、でも父に掛かった電話なら
そう思って急いで部長席にあるケータイを取り上げた
「はい、こちらは新世紀商事経営管理部ですが、どちらさまでしょうか」
「いつも主人がお世話になっています、居りますでしょうか」
優美は、なに主人、お父さんすでに再婚してるんだ
頭に血が上ってあまりにも突然でふらつきそうになった。
「富田は、た、ただいま席をはずしています」
やっとこれだけしか言えなかった。
ケータイのスイッチを切り、メモに
「富田部長、奥様から電話がありました」
乱れた震えた字で書いた後、
「嘘、嘘、こんなばかな」
涙が出てきて、部屋を出てからただ夢中で走ってエレベーターに乗り1階、ロビーに出た、昼休みとあって隅に置いてあるソファには社員が座って楽しそうに歓談している。
今にも泣きそうな顔を唇をかんで我慢して外に出た。
私は昨日、一生懸命になってお父さんとお母さんの仲裁役をやろうといったのに、
走って走って走りぬいて二重橋の見える広場にいつの間にか来ていた。
私はなんなのよ、30年掛かってやっとハケンで運命の再会を遂げたのに、私はお父さんにとってはもし子供がいたら先妻の子なの
悲しくて切なくて優美は広場の砂利道に足を投げ出して座って泣き続けた。、
「お父さんのバカ」
私はなんなのよ、30年掛かってやっとハケンで運命の再会を遂げたのに、私はお父さんにとってはもし子供がいたら先妻の子なの
悲しくて切なくてこらえていた涙がこみ上げ優美は広場に座って泣き続けた。、
「お父さんのバカ」
優美はこんな悲しいことってあるの、お母さんがお父さんのこといつも噂してるのに、私は目に見えないお父さんのことをずっと考えてきたのに、幻だった父がやっとハケン社員で目の前に居る。長い間望んでいたことが、やっとお父さんと一緒に、しかも部長で会社でも期待されている、お父さんも一人で大変だったろう、ほめてあげたいよ、だけど再婚してしまってお父さんには新しい家族が育ってる、これって悲劇だよ、ドラマみたい、ドラマは一時のものだけど、私はこれからずっと
優美の胸はそんなことを考え続けて飛び散りそうだった。
ひとしきり泣いていたが優美は次第に冷静さを取り戻そうとしていた。

結果を恨んでも始まらない、ここでいつまでもいても
私は新世紀商事のハケン社員だ、時給いくらでもらっている以上、会社に戻ってお仕事をしよう。
お父さんが直属の部長なんて、悲しいけれど今は仕事を第一に、優美は責任感が強かった。
再び立ち上がって馬場先門の信号を渡ってビルが流れるように走った。
新世紀商事のビルのドアを押すと1時前5分だった。
優美は、誰にもわからないようにうつむいて自分お机の引き出しを開けてポーチを取り出して8階洗面所で泣いたあとがわからないように顔を洗いちょっと濃い目に化粧をしなおして席に戻った。

一方、部長の富田も図らずも派遣社員として自分の娘
優美に出会ったことで大きなショックを受けていた。
自分が上司ででその下で優美が働いている、本当は喜ばなければならないのだが、冨田には再婚した妻子連れの妻がいた。
優美から30年前に離婚した妻がお互いが歳を重ねて出来たら戻りたいと言っていることを優美から伝えられて富田は今の妻と別れて・・・・・・
そんなことまで突き詰めて考えた。10年間妻を待ち続けて電話、手紙を書き続けたが

「あなたとの関係はもう終わりました、お互いに新しい道を歩みましょう、身体に気をつけてください」
という返事だけだった。
優美はと見ると活発に仕事を続けていた。
「部長、これに印をお願いしたいんですけど」
富田は昼休みに優美が泣いたこともわからなかったし
少し集めの化粧で隠されていた。
「富田君、いやに張り切ってるね」
「はい、お時給いただいているので」
そんなさりげない会話のあと優美は戻って伝票をパソコンに叩き込んでいた。

一日は早かった。二日目もこうして陽がくれようとして通りに面した窓からは茜色に代わって行く空がきれいだった。
富田は優美が3ヶ月間ハケン社員としてうちの会社で仕事をしてくれる。
うれしくもあり、日日がたつと娘と段々別れにくくなる。家には再婚した妻も子供も待っている。
気持ちは複雑だった。優美はパソコンで仕事をせっせと片付けながらも時々父、富田の顔をちらっと見ていた。
優美も気持ちが複雑だった。父と歳とってどうやら復縁を望んでる母と一緒に出来れば過ごしたかった。
でも、それは無理だった、あたしが父に今の奥さんと別れてと頼むことも考えた。でも再婚してもう月日が立っている。考えて考えて結論を出しあぐねていた。

優美は長いこと20年も母の手で育ててもらったのだ
お父さんとも3人で過ごしたいが、やはりどちらかを選択するならお母さんだよ。
心の中で葛藤しながら答えを出そうとしていた。

気がつくと時計は6時を過ぎて社員も帰り支度を始めていた。
「部長、パソコンで稟議書直しました」
そういって部長の前の机に4部コピーを置いた。
「富田さん、ご苦労様、」
「部長、今日は早く帰らせてください、昨日遅かったのできっと母が一人で待っていると思いますので」
「ああ、いいから早く帰りなさい、それにしても君は仕事が速いね、驚いたよ」
「部長、私恥ずかしくて照れちゃいますよ」
うわべではにこやかに微笑んで話す親子だが心境はとても複雑だった。
誰にも悟られないよう部長と単なる部下、一派遣社員と皆思っている。
優美はそういって冨田に丁寧に頭を下げて室を出て行ったがずっと考え続けていた。
私、お父さんもお母さんも愛している。本当はお母さんも望んでいる3人で過ごしたい、だけど、お父さんはとっくに再婚して子供もいたら、お父さんはそれなりに幸せな生活、私がお父さん別れてお母さんと一緒になんていえないよ、
歩きながら同じ考えが巡り巡っている。
でも、お母さんを一人に出来ない、だって私が大きくなるまで苦労して育ててくれたんだもの、でも辛いなあ、結論出すのは、歩きながら考え続けていた。
「お父さんとはお別れか、せっかくハケン社員でお父さんと一緒にお仕事できるはずが

優美は千代田区の神田駅から歩き住宅の立て込んでいる空き地に建っている小さなマンションに戻った。
「優美、お帰り」
「うん、昨日は遅かったので」
母子二人はやっと小さな幸せをこの2DKの室で手に入れたのだ。
「優美、お父さんは今頃どこにいるだろうかねえ」
母の方から切り出してきた。
優美は、来た、来た、そう思いながらハケン社員で
ハケン先の会社で上司の父に会ったとは口が裂けてもいえない。

そう、言えば母は
「で、それは本当、お父さんは元気だったの」とその先の話を聞いてくるに決まっている。
「あのね、思うんだけどお父さんもきっとたくましく生きていると思うよ、お母さんがたくましいように」
「そうだねえ、お母さんも悪いところがあったかも知れないし」
「あえなくてもどこかで生きている、別々でも心はつながってる、私、そう思っている」
優美は吐き出しそうな感情を抑えて母に話した。

翌日、富田は新世紀商事(株)の経営管理部に早めに着いていた。上司たるもの自ら率先してとの信念だった。
「おはようございます」
「おはよう」
次々に富田にお辞儀をしては部員が席に着いた。
ハケンの名古屋静子もやってきて経営管理部は全員が出揃っている。
「おや、富田優美さんはまだ」
「きっと電車が遅れてるとか、来ますよ」
主任の柳内が振り返って言った。
富田のポケットのケータイが震動してびりびりと心臓に伝わった。

富田は急いでケータイのカーソルを動かした。
メールだった。
富田はあせっていた。
「お父さん、ごめんなさい、いろいろ考えましたが昨日で会社を辞めることにします。ハケンで続けるとますますお父さんと離れなくなって、お母さんとこれからも一緒に、本当に楽しい二日間でした。ありがとう
優美」
ケータイの文字が次第ににじんでいた。
富田は娘からのメールを読んで、優美が悩んで、悩んでその結論がこうなのだ、娘の心情を考えるとやりきれない気持ちが湧き上がってきた。
ごめん、優美、お父さんも、お母さんも勝手で離婚して、優美はどんなに苦しんだろうな、
デスクの上にある書類を読み印を押しながら考え続けていた。

「部長、印、さかさまです」
書類を食品一部に持っていこうとしている主任の柳内から言われるまで気がつかなかった。
昼休みの時計が12時を指すと、皆三々五々と連れ立って室を出て行く。中には椅子から立ち上がって背伸びしたり、あくびをしたりしていて緊張感から開放されている。
「部長、宅急便です、これに印を」
中村慶子が角丸百貨店の包みをデスクの上に置いた。
「ありがとう」
「なんなんだろう」
あけるとピンクのネクタイが出てきた。
「お父さん、ネクタイちょっと地味みたい、まだ若いんだからたまにはピンクのネクタイしてね、パパの大切な優美」
読みながら、優美はなんて優しいこの育ったんだろうとまたジーンとこみ上げてきた。
昼休みの誰も居ない更衣室のロッカーに行き、ピンクのネクタイにしめなおした。

一時間の休みはあっという間に過ぎて昼食、散歩から帰ってきた部員が息を引き返したように、さあ仕事、仕事といいながらまた、元へ戻った。
「お茶どうぞ」
主任の柳内がネクタイの変化に気がついて
「部長、ピンク似合いますよ、なにかあったんですか」
「いや、別に」
富田はピンクのネクタイをつけて決済書類に印を押し続けていた。


中央区は面積約10、1k㎡で商業集積度が高く伝統ある銀座・日本橋がある。人口は9万8千人で昼間人口は63万人と千代田区同様昼夜間人口比率が高い減り続けていたが近年、月島・佃島・晴海地区に超高層マンションの建設の結果、増加に転じた。

昭和23年、東京は戦争の爆撃で壊滅的打撃を受けていたが、敗戦によって人々は明日の食べるものも心配する生活だったが街の表情は明るかった。

古田真一は簡易服を着た妻のひとみと国鉄電車を有楽町で降りて銀座に向かっていた。
街には駐留軍のカーキ色の制服姿が目立った。
日劇のわずかな広場ではNHKが街頭討論を行っていて周りには取り囲むように国民服、簡易服、白いブラウスの人たちが群がっていた。
NHK街頭討論と看板があってアナウンサーが、群集を割って入り「あなたはどうやって食べていますか」を聞いていた。

ひとみは、
「あなた、どうやって食べていますかだってよ、出てみたらどう」
「僕は出る気しないよ、だってわれわれ今、おかゆすら食べられないんだから」
「ジャガイモにかぼちゃ煮て、それをおかゆ、じゃないか、米粒がついているだけで」
真一の言うように東京の食料事情はひどかった。

日劇の白い特徴のある建物は焼失を免れたものの有楽町のガードから銀座、築地のはるかかなたまでまで見通す事ができた。
爆撃で焼失は免れても壁が黒く汚れていてある建物は鉄筋がむき出しになっていた。
かろうじて電柱に取り付けられた街頭放送のスピーカーが並木節子の「りんごの歌」赤いりんごにくちびるよせて♪を歌っている。
ひとみが「りんごの歌」明るくていいわね
真一が
「ああ、せめて歌でも明るくなくちゃね、この澄んだ
空と一緒に」
二人は街頭録音を見送って黒くよどんでいる川に掛かっている数寄屋橋を渡った。
数寄屋橋の川に首都高速道路がかけられ川が埋め立てられたのは20年以上を経た東京オリンピックの時である。

有楽町から銀座4丁目を経て築地に向かう路面電車は
長い戦争で疲れきって意欲を失った人たちであふれていた。
どこを見ても明るい希望を見出すことは出来なかったが、ただ戦争中の米空軍B29から追い回される爆撃もなく、言論統制もなくなって自由に意見を言えることが救いだった。

いつしか銀座四丁目に差し掛かった。交差点では連合軍のMP(軍隊の警察)がボックスの上に立って両手を動かして交通整理を行っていた。
信号もなく手さばき一つで交差点の人と自動車を立派に制御する。
車は戦前のトヨタ、日産のダットサンがよたよたと走る中でアメリカ製の大きな車が、日本人には無縁な存在、バスは時折駐留軍のトラック前方車と大きな長い車体が走って行く。
京橋に向かう右側松屋百貨店もPXとして接収されて銀座四丁目に立つと勝者と敗者の論理が明らかだ。
その向い側はPX(駐留軍専用ショッピング・センターで今の服部ビルが接収されていてショーウインドーも華やかでここは日本人立ち入り禁止なのだが入ってくる人、出てくる人の格好が華やかだった。

真一とひとみはしばらく交通整理の手さばきを眺めていた。
「ねえ、三越行って見ましょうよ」
「そうするか」
華やかな角のPXに比べて三越はいかにも敗戦を象徴するかのように建物全体が薄汚れていて、疲れきった人たちが何かを求めて出入りしている。
暗い店内で木製のカタカタ音を立てるエスカレーターのベルトに捉まりながら真一は
「なにか欲しいものがある」と後ろのひとみに効いたが妻は首を振って
「ううん」
とかわした。
二人は店内を廻ったが敗戦から3年立っても物不足は深刻だった。
「もう、帰りましょう、子供たちにかるめ焼きでも」
と子供を気遣っている。
「そりゃ、欲しいものないといったら嘘、私だって
さっきのPXのあんなショーウインドーのワンピース着たいわ」
「苦労かけるな」
真一はそういって妻がたけのこ生活で家事をやりくりしていることに感謝していた。
たけのこ生活とは当時の流行語でたけのこをはぐように衣類とか家庭に合うものを売る、物々交換で食料品に変えていた。

二人とも家でお腹をすかしている郁子・道彦の幼い子供のことを考えていた。
なにもない、帰れば爆撃のあとのやけこげた木ととたんを組み合わせて急場ごしらえで雨、露をしのぐ家だったがそれでも親子四人は支えあって生きていた。

国鉄電車は相変わらず混んでいた。つり革は竹製、座席は柔らかなみどりのモケット張りの電車も登場し始めたものの、何者かがかみそりで切ってもって行った後が痛々しかった。
30分かけて亀有を降りて焦土の中のバラック小屋に帰った。
ひとみが
「二人ともお留守番していて、ありがとう」
上の子の郁子が
「ねえ、お父さんお母さんとランデブーどうだった」
と冷やかすように聞いた。
当時はまだデートということばは使われなかった。
バラック小屋の中には唯一贅沢な真空管使用の四級式ラジオがあった。
スイッチをひねると
「皆様、今日の配給便りをお伝えします」
続いて「目黒区の一班、二班はすけそう鱈、練馬区の一斑から四班まで砂糖、杉並区の・・同じくすけそう鱈・・・・・」
と放送していた。
ひとみが放出食料もいいけど、砂糖ではね、お米か小麦粉がほしいわね」
と愚痴った。
当時は敗戦の痛手による戦災孤児が上野・東京駅などで家、両親を失って栄養失調で終戦の年はこうした孤児を中心に餓死者百万とも二百万とも言われていた。
この深刻な状況にアメリカ駐留軍も急遽小麦など食料品を日本人に放出した。

いくらか改善されたもののまだ食品は配給制だったのである。
ひとみは
「ごめんね、何もあげられなくて、お砂糖があるからかるめ焼きを作ってあげるからね」
たった一つの焼け跡から拾ってきた食器棚の砂糖を取り出して、おしゃもじに砂糖を溶かして重曹を入れて
かき混ぜる。外に出てコンロにまきをくべて砂糖が膨らんできて
それをコンロから遠ざけるとざらざらしたお菓子が出来上がる。

久しぶりに小麦粉が配給になって妻は古着の着物を松戸に行き売ってこれをお芋とお米に変えたのであった
ひとみは
お米を外の共同の水道で研いでお芋を入れておかゆを作った。
おかゆができた時はもう日もすっかり暮れて夜空に無数の星がまたたき地上はとたん屋根の家の明かりが転々と漏れていた。

「おいしいよ、お母さん」
「よかったね」
食べ盛りの二人の子供にお茶碗にいっぱい盛りながら
「おかわりしていいのだよ」
ひとみは子供の頭を優しくなでた。
妻と夫は、子供たちにお腹が空かないよう気を使いお釜の底のおこげを拾って食べた。
時が過ぎて夫と妻は子供を真ん中に置いて一枚の毛布で仲良く寄り添って寝たのだった。
夜空の星は美しく地上を飾っていた。
四人は明日への希望を星に託しつつ・


親子二代目


それから20年、昭和27年北朝鮮軍が突如38度線を越えて韓国に侵入し、いわゆる朝鮮戦争が起きた。
韓国軍は不利で北朝鮮は韓国の南はるかまで迫ったが連合軍が仁川に上陸して反戦優位に転じて、日本はこれを転機に景気が回復、いわゆる特需が起きたのだった。

二人の子はすっかり成長して姉29歳、弟27歳になっている。
東京オリンピックを迎えようとしていた。
郁子、道彦は母と父が歩いた数寄屋橋を同じように歩いている。
オリンピックの誘致が決まり開催は目前に迫っていた
数寄屋橋の川はとうに埋め立てられて首都高速道路一号線が建設されていた。
交差点では、電柱の有線放送が坂本九の「明日があるさ」美空ひばりの「柔」♪勝つと思えば、思えば負けよ♪を盛んに放送していた。
郁子は流行のパラシュートスカートをまとい、道彦は
VANの黒いセーターを着てデートを楽しんでいた。
いや、デートというより28歳になった姉、郁子が結婚が決まって、姉が最後に弟を連れてデートしたかった
「姉貴、ちょっとそのパラシュート目だって恥ずかしいよ」
「えっ、せっかく道彦と恋人気取りで歩いてあげようと思っているのに」

「だってなんか、今流行のみゆき族みたいだよ」
「お姉ちゃんね、結婚の前に道彦連れてこういうかっこ一度でいいからしてみたかったの」
みゆき族はオリンピックを前にロングスカートの後ろに共布のリボンを結びつけて頭に布を巻く、男性はVANのスタイルをくずす銀座のみゆき通り、並木通りに若者が出現していたので道彦は派手で恥ずかしいと思った。







・・・・・・・










                 




























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短編小説「意表」

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作家のたまご


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短編小説「意表」
毎朝のことだがバスターミナルから吐き出された人たちは大船北口駅に向かって駆け出す。
(いけない、遅刻したらあの部長から雷落されちゃうよ)
廣井重信も例外でない、大船駅の北口階段をエスカレーターの右側を二段飛びしてダッシュして走る。
電車を降りてこちらに駆けてくる猛牛とぶつからないよう、右に左に。
身体をくねらせて、サラリーマンの悲しい宿命だ。
定期を自動改札機に入れて、それを掬い取るようにホームまで、駆ける、駆ける。
この構内のマラソンが会社にとって仕事の実績にも、部長のおめがねにもかなうかだ。
なぜって
(私廣井は朝、床離れが悪いのです)

構内の時刻表を見る、今朝は東海道線か、横須賀線か、違うホームから同じ東京方面行きが発車する。
7;29快速東京、7;26快速千葉
う~ん、三分横須賀線が早いが、新橋の地下エスカレーターが混むし、よおし遅い東海道線だ、頭の中で素早く計算をしてまた駆ける。
少しでも早くホームに、エレベーターが閉まろうとしているのを見て
「すいません」
と言ってドアーに手を掛けて滑り込んだ。中の数人が迷惑そうな顔をして広井の顔をじっと見る。
眼のやり場に困り、
「すいません、急いでいたものですから」
下のホームに降りてい行こうとしている密室のエレベーターに車輪の軋む音が聞こえてくる。
ホームで停車している電車に身体を後ろにねじ込むようにしてわずかな場所を作るのだ。
このあと、電車が続いてまいります、無理をなさらず次の電車をお待ちください。
あわただしい駅員のアナウンスが、いつもののんびりした声と違いけたたましい。
ドアーが閉まろうとして手を掛けた広井の側の女性が駆けてきて手に握っていたカードを落としてしまった。

廣井は本能的にドアーから手を離して、女性が落としたカードを見るとSUICAだったが、屈んで拾って差し出した。
一分一秒争うよな追い詰められた時でさへこれまでも女性に親切でハンカチ・財布・めがねケースまで拾っている。
コーヒーブラウンの薄手のブラウスにラベンダー色のスカートをはいたすらっと伸びた足をした女性はかっこいい。
、「どなたか知りませんがご親切に、定期券が切れて今朝これを買ったもので」
一寸、SUICAを大切そうにホームのほこりを払ってバッグ゙に入れた。

廣井には本能的に困ってる人がいれば、遅刻しようが助けてあげたい、そんな気持ちがあるのだ。
以前も新橋駅の地下鉄銀座線の階段でうずくまっている老婆を発見、
自分が遅刻するのもかまわずに、駅員に通報、
急いで駆けつけた救急隊員を見届けて会社に駆け込んだのだった。

時計は九時三十分、六階、東西通信営業企画部が彼の仕事場だ。
さすがに決まり悪く部屋に入るなり長身の彼は身体を三十度に折り曲げて、眼をそらすかのように横に歩き、
「遅れてすみません」
そっと自分の席に座る。
部長が、廣井のほうを向き、
「ところで十時からのプレゼンだが」
「はい」
「君の提案まとまっただろうね、楽しみにしてるぞ」
すっかり信用をしているようだ。
「まかせてください、」
自信たっぷりにアタッシュケースを開けて探すがない。おかしい、昨日深夜1時までかかってパソコンで打ち込んで印刷機のがーがーいう往復運動の騒音を気にしながら隣室に音が漏れないように苦労しながら刷ったのに、
「す、すみません、家においてきてしまいました」
いけないよ、机に置いたままで顔がひきつっているのがわかる。
「主任、また」
隣の席の小川夏美があきれたようにいう。
次に部長に聞かれた返事なんていおう、
頭の中でからからと鳴るようなむなしい考えが左右している。
「えっ、で、スタッフは君の提案を聞こうと思ってるんだよ」
廣井は机の引き出しを開けて紙をあさりながら答えた。
「あ、ありました、ここに」
とくちゃくちゃな紙を高く両手に持って皆に示した。
昨日提案を箇条書きにメモに書いておいたのが残っていた。
でも、これをつないで提案として説明しなきゃならない、きついなあ
広井の追い詰められた気持ちを知ってか知らずか、わあ、わあと失笑にも似た笑い声が課内全体に拡がってゆく

でも廣井には度胸があった。一見おっちょこちょいに見えるが会議が始まると、
豹変をする。くちゃくちゃのメモ代わりの社箋をテーブルに並べて、
「ええと、そこで他社との差別化戦略としまして、例えば」
と流暢に説明する。
「よくあんなメモで説明できるよね」
「っていうか、彼はこの課でも異色の男だから」
大井博美が隣の柏木恭太郎にひそひそ話をしている。
役員が、
「君、例えば、どうするんだね」
「そこで名づけてナチュラルリターン作戦、いわば自然に帰れ作戦で、せせらぎとか鳥の鳴き声を着信音に、また壁紙も川とか鳥とか花を、でケータイにも」
「ふ~ん、ケータイに」
「例えば鳥を小さくデザインしたりしてあなただけのケータイを、色もカナリアとか鶯色で、従来のケータイと差別化を図って・・・・・・・」
」と堂々と説明するので、
「廣井君は、失敗もあるけど、説明は堂々としてるね」
「ええ、彼は度胸があるというか、提案はなかなかユニークなところが」
と部長、課長二人がうなづいている。

でも遅刻しては、そんな失敗が心によぎった、廣井はわれに返り、側の彼女を見た。
「この前の・・・・・・あり得ない」
親切にしてあげたばかり会社に遅刻して会議室に駆け込んで部長・課長はじめ同僚の冷たい視線を浴びたが今日はなんとか大丈夫だ。

まもなく続いて電車がホームに入ってきて何とか身体をねじ込んで二人は何とか乗ることができた。
車内は、小田原から各自が違った方向を向いて電車に乗ったのか、後ろ、右、左、斜めとどこを見ても眼が触れ合う。
でも、幾ら混雑して肩と肩が触れ合うから、目のやり場がなくてもあまり見ていてはいけないと廣井は思った。
大抵は、どんなに電車の中に押し込まれても、それを耐えて黙って通勤に耐えている羊のようにおとなしいサラリーマン、OLなのだが、たまに足を踏んだ踏まなかった、肩に強く触れた、触れなかったで言い合いになって車内が緊張することだってある。

だが、持っている新聞も読めないし、長い五十分の車内は、時々相手の人を見ては眼をそらし、車内の中吊り広告に眼をやり、また人を見るという具合に眼の玉を動かさざるを得ないのだ。
初夏に近い車窓から緑いっぱいの木々が混雑の乗客の目を癒してくれているが、窓一杯の外の景色など見る乗客は少なく、極端だが、空、時々ビルの屋上のアンテナしか見られない人もいる。
廣井は、無言のまま、さっきの彼女と矢継ぎ早に去る窓の景色を見つめていた
戸塚、東戸塚を過ぎる頃、向かい側の横須賀線電車にはちきれそうな乗客が乗り込んでいる。

二分早く大船駅を出た横須賀線を追い抜こうとしていた。
「正解だった」
「えっ」
「東海道線ですよ」
低い声でつぶやくと、窓に頬を押し付けられるようにしていた彼女が
「はっ」
と廣井に聞いた。
「どこまでいらっしゃるんですか」
「虎ノ門迄です」
「偶然ですね、あたしも虎ノ門なんです」
横浜で顔をすり寄せていた二人のドアが開かなかったことでほっとしたのだが、ホームの
「上り、東京行き、3分ほど停車いたします、遅れています、寝台特急富士が通過します」
なんだい、今頃富士が通過するなんて、心の中で、マラソンは始まっていた。
やがて背中の後ろで、ご~っという音がしてブルートレインが通過してゆく
「おい、いい加減にしてくれよ、なにもこんな時間に」
低い声でつぶやいた。
窓に顔を押し付けられてゆがんだ彼女が
「お忙しそうですね、でも仕方がないですよね」
「あなたは悔しくありませんか」
「幾ら考えても、世の中、ままならないことだってあるんです」
と妙に落ち着いている。

川崎でどっと、人が降りる。廣井も彼女もところてんをつきだすかのようにするっとホームに出されてしまう。
幾らか空いたものの、南武線から都心に向かう人もいて広井も彼女もドアに手を駆けて電車に潜り込む。
多摩川の鉄橋を渡る。隣を走る京浜東北線も同じように、窓に押し付けられた顔のゆがんだ人を乗せて。

品川を過ぎてやっと、車内も足を一寸だけ動かせる広さが確保できる。
肩のふれあいもなくなると、人の顔のしわもなくなり、皆和やかそうに見えるのが不思議だ。
虎ノ門で吐き出されるように押し出され二人は交差点で、
「ではここで失礼します」
「明日もお会いしたいです」
「あたしは鎌倉です大船で降りて待ってます。3両目近くにいます」
そういってきびすを向けて廣井と反対方向に向かって歩いて消えた。

彼女の呼びかけで、広井は翌日大船駅に向かった。
バスを降りてすぐダッシュするのだ、でも今日はいつもと違って足が軽い。
「おはようございます」
彼女は丁寧に広井に頭を下げた。
「お、おはようございます」
黒色のカットソーにパンツ、今流行のAラインのベージュのドレスコートをまとっていてグリーンのガラス玉のネックレス、セシールの皮のバッグを肩に掛けている。
「お住まいは・・・・・大船ですか」
と聞かれて彼は、
「あ、いや、バスで中に入ったところで」
とことばを濁した。まだ、昨日会ったばかりで今朝は2回目の彼女との出会い、住所までいったら何かはしたなく見られてしまう。広井にはそういう用意周到なところがあった。
「あたしは鎌倉なんです」

廣井は、会社では自分の課では結構ジョークを言っては、
「廣井さんて、面白~い、天然もあるし、かわいい」
などと女の子から、いやいつも仕事で失敗して、主任の廣井は心配して庇ってあげているのに市川美奈にまでいわれてしまっている。

だが、彼は女の子と一対一で面と向かうとまったくだめなのだ。
とたんに口数も少なくなってしまう。
今年三十三歳になる彼としては、今まで本社総務部にいた時、社員の研修までやってきてことばも流舌なのだが、異性を気にするのかなぜ思ったとおり話せないのだろうかといらいらもしてくることもある。

車内は昨日と変わらないのだが、今日は気持ちが浮いている。
上り電車の人並みに少し押されてよろめきそうになった彼女を全力で走って品川駅で急速に速度を緩めたため将棋倒しになろうとして傾いた響子の身体を広井は支えた。
「ああ、そうそう昨日は大切なカード拾っていただいて、せめてお名前だけでも」
「ぼ、ぼくの名前は廣井重信といいます」
「あたしは小野響子といいます、響子って響くっていう字なんです」
「あなたは音楽家ですか、響子ってほら響くって音楽と関係あるんじゃないかと思って」
彼女は笑い出して、
「面白~い、でもあたしは虎ノ門の近くの航空会社のOLしてます」
「航空会社ってかっこいいじゃないですか、ひょっとしてキャビンアテンダント」
「皆、そういいますねえ、最初入った時は2~3年やりました、でも今はガイド係なんですよ」
相変わらずドアの窓に顔押し付けられながらも、昨日の苦痛の通勤とは違うのだ。
廣井は、何時ものぼくはどこにいったんだろう、こんなに滑るように話が淀みなくできるなんて
と自分の変容に驚いていた。
「お帰りは早いんですか」
響子に突然聞かれて広井は、
「いいえ、皆が帰ってしまっても、大抵一人で・・主任なんで」
「主任って大変ですね」
「誰か僕のことをいつしか残業マンて名前をつけて」
「残業マンね」

昨日偶然であったOLの彼女のためと思うと、苦虫つぶしたような部長の顔を思い出さなくてもいい。
五十分はあっという間に過ぎて新橋のホームに下りた。
地下鉄虎ノ門でおびただしく人の群れが吐き出されて階段を出て交差点をわたりそこで彼女と別れた。
小野響子は、
「明日もご一緒していいですか」
「ええ、もちろん、間違えないように、ぼくのケータイの番号教えておきます」
たった二日間、それも電車の中であった彼女にケータイの番号を教えることは」
なにか彼女に意味深に受けとられてもと思ったが、廣井は50分の混んだあの電車の中でも一緒に居たいと思っていた。
同じ虎ノ門だし、ようし、そう思っていった。
彼女にメモにケータイの番号を記して渡した。
「わかりました。お電話します」
「ああ、あなたの・・・・・」
「はっ」
「あっ。いや、失礼しました」
と言ってからあわてて口をつぐんだ。自分のケータイの電話番号教えても、彼女の番号聞くのはやめようと思った。
たった二回で聞くのは、あまりにこちらの意図が見え見栄になってはいけないと思った。
もうちょっと成り行きに任せよう、
そう思った。

三十三歳の彼にとっては、落ち着きを持っていなければ、年齢なりの渋さも大切かと思ったり、反面これがチャンスかも知れないのに、この機会を逃してはだめだ、お前は馬鹿だなあと人格が別々の方向に歩こうとするのを制御をする。

こうして次第に彼女と次第に親しくなった。
いつもの時間に大船駅でいつもの電車で、廣井はいつしか胸の膨らむ幸福感を感じていた。
五日目、広井は、
「あの、小野響子さん、今日か明日どちらでもいいですから僕と付き合ってくれませんか」
驚くぐらい自然に広井の口から出た。
意表をついた広井のことばに、
響子は一瞬、戸惑ったが
「ええ、あたしでよければ」
「そ、そうですか。じゃ、今夜ということで今日6時に」
そう、響子からデートの約束を取り付けた広井はにわかに早くなった心臓のときめきを感じていた。

その日、一日広井には会社の仕事がばら色のように輝いて見えた。
「みどり君、これからヤマムロ電気に行って、うちの新発売のケータイの状況見てきてくれる、ああ、富岡君とも一緒で、ちょっとアンケートとってきて」
「岡田君はその稟議書、10部ほどコピーして、その前に間違った字がないか」
「はい、廣井主任」
いつもと違って、皆に指図できるし、
その様子が部長にも伝わって。
「廣井君、今日は張り切ってるねえ」
営業企画課が広井のきびきびした行動で活気を帯びている。

「じゃ、今日はこれで、皆も早く帰りなさい」
廣井はそういって、急いでパソコンのスイッチを消し、腕時計を見た。
「どうした、残業マンの君が、珍しいね」
女の子が、
「廣井さん、これからデートって言うわけ」
「そんなんじゃないよ」
そういいながら、廣井はエレベータを降りてロビーを小走りで外に消えた。

三十分後、廣井は約束のゆりかもめモノレール新橋駅にいた。
「お待たせ」
黒色のジャケットにピンクのフリルのブラウス長めの黒のスカート、細いゴールドのネックレス、紫色のスカーフを巻いて小野響子が何時ものとおり1億円の笑顔で来た。いや、廣井には彼女の微笑が少なくともそう見えた。
「響子さん、素敵ですよ」
「ちょっと黒の勝負服できてみたの」
「えっ」
廣井は、会社を終えて、あらかじめロッカーに入れて置いたグリーンのコール天ジャケットに淡いパープルのシャツに淡いグレーのパンツの格好をしており、二人の装いはアンバランスだった。
彼女、フォーマルな格好していて、こちらは気軽にデートに誘ったんだけど、困ったなあ、改まったフォーマルの装いの彼女にどう話を持ちかけたらいいのだろう、自分で彼女を誘って今頃ドギマギするのではと考えた。
響子を誘っては見たものの、どう切り出したら響子が喜ぶだろうか、だめだなあ広井はと考えていた。

夜の帳が下りて銀座はこれからあでやかな夜の装いに衣変えしようとしていた。廣井がお台場を選んだのは、新しい東京の台場に行ってみたい、小野響子さんと二人で歩いたらと思ったからだ。二人は、一両目の前の席に向かい合って腰掛ける。
モノレールは静かに発車し、右折して汐留の高層ビルにはさまれるように、向かい合った二人の顔が車内の窓に移っていたがビルの窓からこぼれるように光りがさして、顔がうっすらと重なって見えてくる。
二人は窓に映る自分の顔を眺めて無言だった。
日の出桟橋を過ぎてやがて芝浦の黒い倉庫のかなたに白い弓のイルミネーションの東京ベイブリッジが遠くに見えてきた。芝浦駅を見ながら右よりに楕円形にカーブしてイルミネーションの東京レインボーブリッジに突っ込んでいく車窓を眺めながら、
「きれいですね、向こうの夜景が」
「ええ、ほんとに」
と響子が廣井にひと言言った。

台場で二人は降りた。
駅前の白亜のホテル日航台場がくっきりと浮かんでいた。
廣井がそっと左手を後ろに伸ばした。
柔らかい白い手が廣井の手を握った。
昼間は家族連れでにぎわった台場も今は静かでブロンズの自由の女神像の先にさっき渡ってきた白いイルミネーションのベイブリッジが遠く輝いていた。
東京湾岸がよく望めるようあたたかいぬくもりの木の遊歩道が二人を迎えてくれた。
彼女が、
「今日は残業なさらなくてもいいのですか、残業マンのあなたが」
「えっ、どうしてそれが」
「だって、あなたの行動からわかりますよ」

とにかく明るく振舞う響子に廣井はいつの間にか恋しているのを感じた。
「今日は実は、会社の女の子から、デートでしょうっていわれて」
「だってあたしに会うのが嬉しそうだし、誰が見ても、顔に書いてありますよ」
歩きながら彼には、響子が話す一言ひと言がダイアモンドが口からこぼれるように感じた。
「僕も三十三、彼女も同じぐらいかなあ、いやもう少し年上だろうか、どっちみち、なんか波長もいいし、これって最後のチャンスかも」

「あなたは、これまでお見合いをされたことありますか」
廣井は、響子に思い切って聞いてみた。
そんなこと聞いてどうするんだ、自分が好きだったらはっきりといえばいいんじゃないか
廣井は心の中にあせりを感じていた。
「ええ、それは、いろんな方に会いました。親父の会社を継ぐとして工場とか北海道の広大な森林とかありますとかいわれて」
「結局、巡り会わせがなかったのですね」
「そうだったんですか、僕もそれらしいことはしましたが、結局いまだに独身です」
「結局、お互い巡り会わせがなかったのですね」
「あなたのそういう正直なところが好きです」
広井は、響子からほめられて、
「いやあ、そうでもないんですよ、」
と大いに照れて見せた。

「小野さん、きれいですね、ベイブリッジが白いイルミネーションで輝いて、向こうが新橋、銀座です。左に僕たちの会社が、僕、一度あなたと来て見たかったんです、あれが観光フェリーですよ、それにしてもベイブリッジの車がすごい多いですね・・・」
「そう、あたし、ニューヨークに行ってた時のこと想いだしました。ちょうどハドソン川対岸から見るマンハッタンってこんな感じね」
「僕もこういう風景見ましたよ、マンハッタンの夜景きれいだったなあ」
「えっ、あなたもニューヨークへ」
「あれは五年ぐらい前の」
と、響子が留学生で住んでいたこととは違って、廣井はたった一回しか行ってないのに
「ええ、ニューヨークは僕にとって思い出のあるところです」
と話を無理にあわせるようにした。
今度、聞かれたらばれちゃうよ、
廣井は、話を別のほうに持っていかなければと思い、
「あの、響子さん、あなたが理想的な男性のタイプは」
「あたし、ですか、そうねえ、頼れるっていうか、優しくて、思いやりがあって、やはり頼りがいがあって、それでいて細かいことにくよくよせず、いざという時、あたしを守って・・・・・・・」
廣井は、響子の話をうなずきながら、
「あの、僕は少なくとも優しくて、思いやりがあって、細かいことには気にもかけず、そこまではあなたの条件にぴったりだと思いますが、あとの二つが、これがねえ」
響子はぷっと吹き出しながら、
「どうしてですの」
「いやあ、僕って案外そそっかしくて、この間も札幌出張を一日、日にちを間違えて千歳について電話したら」
「それで」
「君、明日こちらに来るんじゃなかったのか」
「いや、今日は19日のはず」
「違う、今日は18日、日曜日」
と言われてしまいましてね」
響子は、
「あなたって、面白い人、そういう失敗って憎めない」
とけらけらと笑った。
「いやあ、上司がいい人で君の今日の宿泊面倒見てあげよう」
ほっとしましたと笑い転げてる響子に廣井は話した。
廣井は響子が思い切り、自分の失敗を笑ってくれたので、急に壁がなくなって親密感が出てきたなと思った。
虎ノ門、霞ヶ関のビルは狭い土地からはみ出るように高層ビルが屹立していたが、赤坂、銀座に比べて黒い塊に見えて来る。
「経費節減で、どこの事務所も残業カットだなあ、これじゃ、日本経済が不況なのも」
、だめだ、あれだけ響子さんが笑ってくれたのに、もう次の面白い話ができないなんて、何でもっと女の子とふさわしい話ができないのだろう、
自分をもどかしく思っていた。

でも、なんでこんなに言葉が饒舌になるのかとも思う。
対岸のネオン、華やかな銀座、新橋から霞ヶ関、そして遠く新宿の超高層ビル群を見ながら、なんてロマンチックだろう。
広井はデジカメをかばんから取り出して写真を撮った。
「今度はあたし」、
響子もバッグからケータイを出して撮った。
歳老いた夫婦が仲良く目の前を過ぎていったが、振り返って二人のそばに来て、
「あの、もしよければ写真撮ってあげましょう」
「本当ですか」
響子が廣井の手を掴み、
「ここで」
といった。

二人は、柵にもたれながらどんどんきらめいて変化して行く光景を眺めていたが、
「響子さん、僕はあなたを・・す、好きに」
そういって響子にうんと近づいて抱きしめた。
「あたしも」
響子はそういって抱かれていた。

ある日、
「あの、あなたにお昼休み、近くの喫茶店で・・・・・」
今度は、小野響子から誘われた。
廣井は驚いた。
「えっ、このぼくに」
「あたし、お聞きたいことがあるんです。仕事のことでご相談に乗ってほしくて」
意表をついた質問に、
廣井は思わず、
「ぼ、ぼくでよかったら」

一週間はあっという間に過ぎて、母が作ってくれたハムがはみ出した不ぞろいのサンドイッチを右手にコーヒーカップを左手で廣井は持って眼は時計の秒針を追っていた。
その時、シャツのポケットが震えて振動が心臓に響いた。
小野響子からだった。
「ああ、どうも、7番線のホームで、はい、はい、そうします」
彼女の電話を受け止め、いつの間にか微笑んだ。
ぼくの反応を母は素早く受け止めて
「重信、もしかしていい人にでも会えたの」
廣井はあわてて、
「お、お母さん、そんなんじゃないよ」
「お前はとても優しい子なんだけど、女の人には・・・・・」
「わかったよ、母さん・・・・・・」
そういい残して靴べらで左足を押し込むようにしてせわしく戸をあけて出て行った。

十日過ぎたある日、廣井は社員の行動半径外の六本木の交差点に立っていた。
「お待たせ」
ベージュのキャミソールに白いカーディガン、濃いブルージーンズの彼女。
二人は赤白のテントを張ったアマンドに入り二階の窓際に席を取った。
信号灯が点滅し、十字路に止まっているバス、大型車、タクシーが交差していて青信号の合間を歩行者がせわしく横断していた。

「あたしもあなたと近くの会社に勤めています」
響子が口火を切った。
「どちらにお勤めでいらっしゃいますか」
「ああ、ぼくですか、東西通信っていってケータイでは結構有名な」
「あたし知ってます。東西のPL355、最近発売のこれ」
そういってバッグから赤いケータイを出して見せてくれた。

「ああ、このケータイ」
「どうしたんですか」
「実はこのケータイぼくが提案して、色々な鳥の声が着信音に組み込んだんです。それに一台一台違った鳥が小さく数種イラストになって壁紙に、あと、ケータイの色も鳥の色に近く、淡い色で」
「凄いですね、あなたは、ひょっとして会社の救世主かも」
「からかわないでくださいよ、もう」
廣井は彼女からほめられて頬が赤くなっていた。
「そんな頼りになる部下を持っていてお幸せですね」
「いや、部長はもう気まぐれで、この時は、君はこの課で一番頼りになるな」とほめてくれたのに」
「どうしたんですか」
「毎年、春の入学期と暮の商戦で大型店に派遣社員で出されるんです、お客様にケータイ薦めて売り上げあげようとするんですが」

「それで」
「ああ、このときは、おい、売り上げが悪いのは主任の君がもっとしっかりお客にアプローチせんからだ、この数字は恥ずかしくて上に報告できん」
と部長の雷が落ちて声が大きく、皆いっせいに仕事やめてぼくの顔見るんです」

「あたしも上司、特に部長は苦手なんです、いつも例の仕事はできたかねって突っ込みいれられて、あなたはどうですか」
「ぼくも同じですよ、あなたの会社の部長がどういう方かわかりませんが、ぼくのところの部長は遅刻がうるさくて、それでバスを降りてからすぐダッシュなんです、もうホームの電車に乗るまで」
「そうなんですか、あたし一番最初にあなたのすごいダッシュ見て驚きました」
「あなたは自分の仕事に自信がおありですか」
「はあっ、どうしてそんなことを」
「あたし、実は航空会社の添乗員やってるんです。お客様から海外ツアーのいいろいろなこと聞かれて、会社はできるだけ高いツアーに関心持つようにセールストークしろというんですけど、つい、お客様の懐考えて、こちらよりお安いツアーがっていってしまって」
「ぼくもそうなんです、大型店でお客様をお相手に、それは高いわ、他社はもっとといわれると、それではこちらのもっとお安いって、ああ、正直者はだめですね」
お互いがにっこり微笑んだ。

「同じ考えだし、これっていまだに結婚もできず、好きな女の子もいないぼくに神様が贈り物してくれたのだろうか」
ひそかに廣井はそう思った。
「あなたの会社の部長さんてどういう方かしら、あたし、どういう風にしてうちの会社の上司に合わせたらいいのかわからないんです」
「ここだけですが、あなただって苦手な上司がどこかに行ってくれないかと思うでしょう」
「そんなこと、ありっていうかおおありですよ、どっかほかにいくか、自分がどっかにいくかで」
「部長と意見が合わなくて、仮にお前なんかやめろといわれたらどうします」
「一応、あやまりますが、部長が怒ったら、その時は」
「はっ」
「僕、ほかの人材センターに登録してるのですよ、どっか条件のいいところがあれば、大した仕事してないんですよ」
「そうですか、転職っていうわけ」
「ええ、まあ、そういうことになりますかねえ」
彼女はにっこりと、しかし意地悪そうな微笑みを見せた。

数日後、エクセルで機種別売り上げ表を作成していた。
「廣井君ちょっと」

部長は、
「君には営業企画部から、わが社の製造部門である三重鈴鹿工場に転勤してもらうことになった」
思わぬこの部長の話にぼくは戸惑った。
「す、鈴鹿工場ですか?」
声はひきつって、部長の顔から眼を背けた。
「でも、わが社のケータイを発売するための販売促進で部長、ほめてくれたじゃないですか」
「君はわが社のケータイの販売企画では、いいろいろ提案してくれて見事だった
だけど、販売成績では、君の課は落ちている、君の将来を考えて製造部門の仕事も経験してもらわないと」

廣井重信は部長の突然の移動の宣告に頭が真っ白になった」
いつも販売企画で大型電化店を一緒に廻ってくれた薄井みどりが、
「廣井さんが鈴鹿工場なんて信じらんないわ」
と側に来て慰めてくれる。
「ありがとう」
「私、廣井さんを見倣ってるのに、広井さんがどっかに行ったら、私、だれを」
広井は、
「僕の同期の営業部の田川とか、総務の井上とかいるから大丈夫だよ」
こんなときぐらい、残業しないで早く帰れば良いのに、そう思いながら会社のためにはと本当の働きマンだなあ、苦笑いしながらパソコンのスイッチを切ったのは夜の九時をとうに過ぎていた。

「廣井さん」
部屋の明かりを消した暗闇の隅から声が聞こえてくる。
薄井みどりだった。
「廣井さんが鈴鹿工場だったら、皆、わたしたちのように広井さんを見習って仕事してるものにとっては、目標を失って、あ~あ、いったい何をこの会社に期待したら良いんですか」
「みどりさん、ぼくのことをそんなに、僕って楽天的でピンチに強いから」
と励ましながらも楢崎部長の今度の態度は理解できない。

「途中まで一緒に帰りましょう、広井さん、大船だし、あたしモノレールですから」

エレベーターを降りて明かりが暗い一階ロビーを廣井はみどりと一緒に歩いた
新橋駅に向かう虎ノ門のビジネス街は、さすがに昼の喧騒さを飲み込んで静かだった。
廣井はこの見慣れた虎ノ門の活気もしばらくおあづけかと思った。
信号を渡り、いつもはそこから地下鉄に乗るのだが、みどりが、
「新橋まで歩きません」
と言ってきたので、しばらくみどりの顔を見られないと思い、ゆっくりと歩いた。

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街路灯と自動車のテールライトがどこまでも伸びて、二人の影は長くなったり短くなったりしていた。
「廣井さん、ちょっとお茶でもして、どうです」
みどりが、鈴鹿工場の転勤話で落ち込んでいる広井を元気づけるようにささやいた
暗い道路まで、中の明かりがこぼれるようにはみ出している。
みどりが、背中に手を掛けるかのようにして、回転ドアのドアを開ける
中はカジュアルな感じの明るい喫茶店だ。
二人は、外が見えるピンクのソファに向かって腰を下ろした。

落ちついたピアノ曲が流れてきて、廣井は店内のお客の模様を眺めていた。
中ほどは一段ほど高くこちらを遮蔽するかのようにモザイク上のついたてがある。
その時だった、昨日までいつも一緒だった女性が赤いコートを着て入ってきてついたての後ろに消えた。
廣井は、一瞬はっとした。みどりと一緒にいる姿を見られては。同じ課内の女の子と言っても彼女は果たして、
その時だった、楢崎部長が店内に入ってきて、彼女の向かい側に腰掛けた。
彼女と部長は、まるで親子のように年が離れている。二十歳以上も離れているだろう。
部長が女性に声をかけた
ついたてが遮断していて二人の姿は動くたびにモザイク状になって移動して行く。
なにか話しているようだが、ついたてが邪魔でよくわからない。
でも、小野響子と廣井の部屋の部長が何を話しているのだろう。
そういえば、六本木の喫茶店で彼女から仕事のことでといわれて会って話した時の最後の
意地悪そうな微笑み、考えて彼女はもしかして僕の素行をずっと見ていたのでは、
そんなことありえない、あの小野響子さんが
しかし、彼は次第に血の気を失っていった。
「いけない、こんなこと考えるなんて」
「疑ってはいけません、何の根拠もないでしょう、小野響子さんがどういう人か、あなたが一番分かるはずです」
必死になって打ち消そうとするのだが、一方では、
「あなたは、小野響子さんにはまったのです、あの意地悪そうな微笑見ても分からないんですか」
耳元で別の声が廣井に囁く

みどりが、
「どうしたんですか、廣井さん、顔色が青いわよ」
みどりに答えられなかった。

「みどりさん、ごめん」
みどりは、同じ営業企画で広井と机を並べているうちに次第に気持ちが傾いていくのを感じていた。
というのも、
本木や原田は、みどりに、
「君、これ、大至急コピーして」
「あのコーヒー飲みたいけど」
みどりは、仕事を一生懸命やっているのに、ワードは誤字だらけ、エクセルの集計はいつも縦横合わず、社員からは、
「みどりは走りがいちばんいいよ」
「頼んでも遅いし、俺がそれで残業になるんじゃ」
と蔭で言われていたのだ。

そういうみどりを庇ったのが廣井だった。
「みどりさん、君の仕事大変そうだから、僕が半分コピーしてあげるよ」
「廣井、・・・さん、すいません」
仕事が遅い彼女とそれをカバーする主任の間に、みどりは次第に広井を慕う気持ちが芽生えていた。

一方、叔父から頼まれた東西通信工業の人員合理化、リストラ計画のお手伝いをして、叔父から広井のことを報告して、響子は最初は自分が役に立ってよかったと思っていた。
叔父から「今日はありがとう、何にも忙しくて何もできないけど、これで洋服でも買いなさい」といってくれた5万円をしっかりと握っていた。
しかし、叔父と別れて新橋駅か汐留の立ち並ぶビルのライトを眺めて、電車を待っているうちに、響子は涙が出てきそうになった。
「何で、何で私が・・・・・・」
自分で、自分に言い聞かせるように言ってみた。
小田原行きが流れるようにくねらせながら入ってきて、車内の人になった。
涙は止まらずに流れてくる。
自分は、叔父に頼まれたことをやっただけと割り切って考えようとしたが、いつのまにか、広井のことが好きになったのだろうか。
大船までの40分間、響子は自分でやったことがよかったか、どうかを心の中で自問自答しているうちに段々罪の意識を感じ始めていた。

翌日、営業企画部をはじめ春の人事異動の話で持ちきりだった。
廊下に人事異動が貼られて、大勢の社員が群がっていた。
小田武  札幌支店   支店長代理を命ず
坂本太郎 本社 販売管理一部課長を命ず
富岡浩一郎本社 消費者管理課課長を命ず
廣井重信 三重鈴鹿工場 生産管理副課長を命ず。
大勢の名前の中にたしかに彼の名もあった

営業企画部の部屋に入ると、部員が振り向いて一斉に広井の顔を見ながら拍手して迎えてくれた。
廣井は昨夜の事情を知っているので、さめた顔で皆を見つめながら、机に腰を下ろし、エクセルで営業支店別集計を始めた。

昨日までの廣井と違って、元気がなく、今日は廣井のいる販売企画課の皆も彼に気を使ってるのか、下を向いてもくもく仕事をしている。
廣井に一番同情しているみどりは、ケータイ新製品のチラシをDMとして封筒に入れているのだが、心ここにあらずといった感じで、さっきからチラシを指で四つ折にしながらも同じ封筒に2、3枚入れていて、ただ、手を動かしているに過ぎない。

何とか一日の仕事が終わりに近づき、課員も、
「主任、お先に失礼します」
と小声で廣井に挨拶して返って行く。
社員が、部長も帰ってしまって誰もいない部屋は蝉の抜け殻のようにむなしい。
シャツポケットのケータイがビビビと胸に響く。
「おい、廣井、お前なに三重工場に転勤だって」
「そうなんだ」
「澤田、僕のどこがいけないんだろう」
「えっ」
「・・・・・・・・・・・」
「大分ショックのようだなあ」
「なぜ、こんなことになったかわかんないんだ」
「とにかくお前の今の気持ち、聞いてやるから、いっぱい飲んで」
廣井は総務の同期の澤田から誘われて、
一時間後、新橋の焼き鳥屋にいた。
「僕、あんなに部長を信頼して、一生部長についていきますなんていってさ」
澤田は、焼き鳥を右手に持ちながら、
「あのなあ、会社って言うところは、自分が一生懸命働いても結果が裏目に」
「総務の君には分からないよ、販売企画って言うところは、企画立てながら営業をやるところで、幾らいい提案しても売り上げが悪いとどうも」
と廣井は澤田に訴えた。
澤田は、
「どうだ、もういっぱい、酎ハイでも」
「うん」
廣井は元来呑めないのだが、お酒でも飲まないとやりきれないと思っていた。
「僕は、総務だけど、君の部長の噂はいいよ」
と落ち込んでいる廣井に肩をかけるように励ます。
「実は、僕の最近の出来事なんだけど」
そういって、廣井は、大船駅のホームで女性が落としたカードを拾って親しくなって、昨日その女性が廣井の上司の部長と親しく喫茶店で話している顛末を話した。
澤田は、
驚きの表情で廣井の顔をじっと見つめていたが、
「それだよ、君も目撃した部長と女性」
「僕は実際目撃したんだけど、まだ、まさか部長がそんなことを・・・・・信じられないんだ」
「気をつけろよ、そういう女性には」
「実は、小野響子さんというんだけど、すごい仕事のできそうな」
澤田は、
「お前、小野響子が好きになったのか」
「うん、まあ」
廣井は、
「今夜はどうも、もういっぱいビールを」
「もうよせよ、お前は呑めないんだから無理するな、
澤田はこんなにお酒を飲んで酔った廣井を見るのは初めてだった。
「もう帰ろう、俺送ってあげるから」
外に出て、同じ千鳥足で歩いているサラリーマンを見ながら、組織の中にいる働きマンもかごから出ることのできない小鳥のようだと哀しくなった。

同期の澤田が、廣井を心配し、気遣うかのように、
「今夜、ずっといてお前の悩みを聞いてあげる」
そういってタクシーを呼び、廣井を抱えるように先に座席に座らせ、運転手に、
「大船駅まで」
といった。
廣井は、同期の澤田に寄り添われて眠っていたが、
「澤田、今夜はすっかり世話になった、ごめん」
と言ってまた目を閉じた。

一方、小野響子は、会社に出ても元気がなかった。
響子が広井に話した航空会社のOLは実は嘘で、響子は外資系の人材派遣会社に勤務していた。
米国留学も手伝って響子は学校卒業後、普通のOLの道は歩きたくなかった。
それで外資系の人材派遣会社に入って、持ち前の明るさと積極さ、誰にでも優しく、それでいて人を見抜く力と英語のほかにフランス・スペイン・韓国語も駆使して、誰の目からも頼りがいがあると見られて何時のまにかアシスタントディレクターになっていた。
響子は企業にうずもれている優秀な人材を発掘するこの仕事に生きがいを持っていた。
それだけに周囲の皆もその活躍に目を見張った。
高度成長経済期の真っ只中にあって、会社という会社をチェックしては、自分から人事部に乗り込んでは交渉をした。
「あの、ヒューマンサプライ社の小野響子と申します、本日うかがいましたのは・・・・・」
と、企業で中高年を勧奨退職させる際の社員を何とか選び出して、優れた人材の放出を待たずに他企業に斡旋させることを何よりも仕事の生きがいとしていたのだ。
でも、当時は、
「せっかくですが、わが社も新規事業の推進とか、販売の拡充でむしろ優秀な方を求めている状況で」
「はあ」
「ヒューマンサプライ社にわが社がほしい人材はいませんでしょうか」
と逆に要請をされたのだ。
響子は、社内に「転職電話24時間相談室」
を設けて、応募者の秘密は厳守いたします。仕事についてお悩みのかたのご相談に応じますと積極的に人材の確保を行った。
その成果も実り、電話室からまわされた転職者が響子のもとを訪れてその応対も忙しく、気がつくといつの間にか、響子のデスクだけが蛍光灯で照らされていて腕時計の針は11時を過ぎようとしている。
「いけない、終電に間に合わないよ」
電気を消して、ここからいつも素早く走り出し、ホームに上がり急いで電車に駆け込むと同時にドアが閉まり、ホーム構内のランプが消える。
いつも、どうしてこんなに働くのだろう、
だからいまだに結婚できないんだわ、アシスタントデレクターでがむしゃらに働き、毎月の給料袋は重いのだが、それとはその代償はあまりにもさびしく孤独なのだ。

でも、翌日には優秀な人材を望んでいる会社に出かけて世話をして、響子もそれを喜んでいる。
たまに、自宅に響子あてに転職者からのお礼の手紙がくることもあった。
「前略、小野響子さま、失礼とは思いますがお礼のお手紙を差し上げたいと思います。私はヒューマン・サプライ社のおかげであなたにお会いでき、面接の結果、今の会社で張り切って仕事をしています。コンピューターの専門家として誰もが頼りにしてくれていて大きな喜びです。
本当にありがとうございました。
              中村 哲次郎」
読んでいて響子は感動して泣いた。
自分の仕事がこんなに皆に喜んでもらって

だが、様相は逆転した。
バブルが崩壊してからは、企業はバブル期時代に水増しして採用した社員をいかに整理して、身を軽くして悪化している企業の業績を上げることに終始したのだ
響子も転職の仕事から、今度は、企業から頼まれてリストラ社員の話を聞き、それを企業に報告する仕事に変わってしまった。
「ああ、私は、何時のまにか」
大きく廊下でため息をついた。

響子は、幾ら不況で企業が業績が悪くてもリストラとか、中高年者の早期勧奨対策には反対だった。
原価コストを下げるとか、品質管理の徹底化、生産、販売流通コストの節減化、遊休不動産
の処分、などを徹底的にやって最後にリストラすべきだわ、
との思いが誰よりも強かったのだ。
時々企業から依頼を受けた人材節減、リストラ策に出かけては企業の担当者に会い、
彼女自身、あらゆる企業の資料を分析し他結果を相手企業の人事部長の目の前に置いて、
説明し始める姿は迫力があって相手はちょっとたじろぐのであった。
「ちょっとお伺いしますが、御社のリストラ計画の50人、この数字何とかならないでしょうか」
「えっ」
「私が申し上げたいのは、50人全員でなく何とかもう少し、御社の経常利益も前年対比-3、5%で人件費の節減を図る、それもよくわかります、でも一番夫を頼っている家族にとって、リストラするということは家庭で奥さんが頼りにしている働き手を失い生活破綻をきたすことになるのです。ですから私はお願いをしているのです。リストラを何とか最小限にしていただいて、今日給与の多少の減額を、苦しい時には皆でその苦しみを分け合って・・・・・・」
と応対に出た人事担当者を前に自分の考えていることを熱意をこめて話した。
時には、
人事部長から、
「あなたの言われることもよくわかるけれど、ヒューマン・サプライ社さんは、われわれの企業の要望を取り上げてくれる人材斡旋会社ですよね、失礼ながら小野さんの言われることはちょっとわが社の内部まで干渉されています」
と迷惑そうな顔をして響子をじっと見つめた。
「つい、言い過ぎまして申し訳ございません」
響子が何とか企業の人材を有能にリストラなんかしないで活用したいと思えば思うほど、抵抗は強くなっていったのだった。

響子はふと広井のことを思い出した。
「あの人、おじさまへの報告でがっかりして」
首をかしげながら、
「もしかして・・・・・」
次の二字のことばがひらめいた。自殺
響子がそんなことを考えるほど、最近はサラリーマンのリストラ・ストレスが重なっての自殺件数は群を抜いて多かったのだ。

翌朝、会社に出勤すると、さっそくマネージャーのミシエルに呼ばれた。
「お呼びでしょうか」
響子は一礼してマネージャーのそばの椅子に腰掛けた。
「オオー、小野さん、あなたのおかげで無事に東西通信のこと片付きました」
「はあ」
響子は自分を信じて何でも明るく振舞って話をしてくれた廣井のことが気になっていた。
「小野さん、東西の部長喜んで電話今来ました」
「そうですか」
響子はそれ以上、話せなかった。

「東西は業績は今のところいいけど、早期退職者を含めて500人ほど、人事異動したいと」
「えっ、そんなに・・・ですか」
「あなたは、頭の回転がよくて、優しくて、可愛くて、だけど日本人のように情をはさまず、会社、リストラの仕事してくれてます」
「でも、そのお話聞くと」
「そこで、今度はサニー自動車の仕事やってもらえますか」
といってマネージャーは、一冊のファイルを響子に差し出した。
「わかりました、私にも・・・・ご返事2~3日間待ってください」
響子は、マネージャーのミシェルに軽く頭を下げて部屋に戻った。

部屋では、電話がひっきりなしにかかってくる。
響子は、いつも何かと失敗しては、皆に怒られている上原亜希子を使おうと思った。
「小野先輩、あたし、先輩にずっとついて行きます」
と慕っている彼女を何とかして一人前に育ててあげたいと思っていたのだ。
亜希子は高校を卒業後、日露学院に行ってこのあと、なぜかロシアのモスクワにロシア語の勉強を習いにいっていたという会社では変り種だった。
外資系なのに、英語をやらないでロシア語を習ったという経歴が面接の役に立ったのか、目に止まり、英語の成績も努力家でよかったので採用になり、小野響子のところに配属されたのだった。
しかし、生まれながらのこせこせしない、そそっかしく、のんびり屋が課内で失敗を度々したのだった。
会議室に行って議事録を配布し終わると、出席者から
「違うぞ、俺のところ22ページがない」
「ああ、僕のところはその22ページが二枚ある」
「うちは9ページが抜けている、誰なんだ」
と会場が鉢の巣をつつくような騒ぎになったのだ。
また、ある時は、新製品開発でのブレーンストーミングで課員が思いのままにアイデアを話してそれをまとめるためにその内容をCDロムに保存してそれをワープロで印刷にかけたのだったが、いざ会議室でその結果の印刷物を上原は配ったのだったが最後の5分間の話をうっかりCDロムに記憶させなかったためにそこが白紙となってしまった。
課員は自分の発言をノートにメモしていたのをそれぞれの記憶で何とか最後のつじつまあわせをしてなんとか乗り切ったが、単純なミスが二回も続き、それ以来亜希子は走りが仕事になった。
小野響子の会社は、外資系の人材斡旋会社だったので、日本にある外国事務所が求人依頼があることもある。
英語・スペイン語・中国語・韓国語などが主だが、ごくまれに在日本の機関が求人依頼してくることもある。
そんな時、唯一ロシア語が話せる亜希子は引っ張り出された。
「なんていっても君の肩にかかっているのだから」
「ロシア語なんて、俺ら、日本語も危ないのに、上原さまさまだよ」
と課員にまで祭り上げられた。
そういうときの上原は、
彼女がいつも見ている上原と違って目は輝いて、生き生きと、
「ズドラストビーチェ、コフェ・パジャルースタ(こんいちは、コーヒーをどうぞ)
モージナ・パズマ・トリエーチ。カルターチク(地図を見ていいですか)
・・・・・・・」とほかの誰にも理解できない流暢なロシア語で職を求めているロシア人と企業担当者を引き合わせて、いや、その物腰と堂々とした態度は、ベテランの響子もたじろぐほどだ。
でも、翌日になると、また亜希子は沈み込んで、
「響子先輩、先輩だけが頼りです、なんでもします」
と響子に相談を持ちかけてくる。
「上原だけど、彼女なんとかしてあげなくちゃなあ」
そんな響子の気持ちとは裏腹に、失敗が怖いのか近頃は、コピーを取ったり、報告書の誤字を訂正したり、社員の机を拭いたり、雑役が彼女の仕事だった。

「上原さん、オーシャン電機の総務部にこれから一緒に行きましょう」
「はい、先輩」
虎の門の会社を出て、十分ぐらい坂を歩くと赤坂にオーシャンビルがあった。
ロビーの受付に響子は名詞を出して訪問を伝えた。
受付の女性が、手元の受話器を取って話をしていたが、
「五階の会議室で部長がお待ちだそうです」
響子は一礼して、上原を連れてエレベーターに乗って五階で降りた。
部長が待っていて、
「これは、小野さま、どうぞ」
と言って右側の会議室に招いた。
響子は、
「最近、うちから派遣した二人はいかがですか」
「水野さんに吉井さん、二人ともよく頑張ってくれています」
「そうですか、安心しました」
「ただ、私どもも仕事に波がありまして、簿記1級の水野さんは引き続き」
「ありがとうございます」
「採用枠がなくて、近く中高年を中心に」
「そうですか、」
「それで吉井さんは3ヶ月で一応契約終了ということで」
上原は、部長と響子の話のやり取りを聞きながら二人の顔を代わる代わる眺めていた。
響子は、側の上原に、
「今回、こちらを担当することになりました上原亜希子です」
と部長に紹介した。
響子の突然の行動に、上原は、あわてながら、ハンドバッグからあわてて名詞を取り出し
震える両手で、名詞をバッグから取り出したものの緊張していたのだろう、ポロリと床の上に落としてしまった。
「し、失礼しました」
亜希子はあわてて屈み、名詞を拾いテーブルに置いて、改めてバッグから新しい名詞を出して震える両手に持って
「大変、し、失礼しました。ヒューマン・サプライ社の上原亜希子と申します、よろしくお願いしますと45度に腰を折って頭を下げた。

挨拶が終わって、ドアの入り口で二人は部長に頭を下げて一階ロビーに下りた。
「あのさ、手が震えていたわよ、気持ちもっと落ち着けて」
「どうも先輩、すいません」
ご苦労っだったわね、今度からあなたの担当よ、頑張ってね」
「せ、先輩、あたしになにも言わないで、ずるいですよ」
と、響子に詰め寄ってくる。
「あなたも入社、半年でしょう、いつまでも男性の走りやっててどうするの?」
「そんな、先輩、もし、今度失敗したらあたし、会社に居られなくなりますよ」
「あのさ、ロシア語で応対している時の態度はもう立派なものよ、あの時のあなたを見てると負けちゃいそう」
「はい」
「だから、あの時のことを思い出して頑張るの、ロシア語生かして働けるところがあればね、
でも、日本では」
「・・・・・・・」
「とにかく頑張るの、いまのように消極的だと落ちこぼれになるわよ」

アシスタントディレクターという役付が頭に覆い被さっている。
私が今考えていることと反対に後輩を、会社は違ってもやることは同じ、こんなに変わって行ってる気持ちは、廣井に出会ったらどうしようかしらとも考えていた。

「お昼いかない」
同僚の佐々木と麻生が誘ってくれた。
「ううん、一人にしといて」
「今日の響子変よ、じゃあ私たちお先に」
誰もいない電気も消された部屋でミシェルから渡されたファイルがあった。
そこにはサニー自動車の総務部長から300人の早期退職者、管理者削減に伴う・・・読んでいて響子は胸の詰まる思いがした。

皆の行かないところでお昼食べよう
響子は地下鉄に乗って日比谷のほうに行こうとしていた。
地下鉄の中で、もし、自分をあんなに信用してくれた広井に会ったら
ぼんやりと地下鉄の窓際で点々と過ぎてゆくトンネル内のランプを見つめていた。
日比谷を降りて、サムと書いてあるレストランに寄った。
ここはいろいろなスパゲティーがあって、雑誌にも取り上げられてOLたちの人気の店だった。
お昼休みとあって華やかなOLたちのはじけるような話し声の中に、響子は砂漠のような殺伐さを感じていた。
「私の、好きで望んでいた仕事が、なぜこんな人を不幸に・・・」
そう、思うと、廣井のこともあってか、店員が運んで来たいかすみのスパゲッテイーが涙でかすんでぼうっと見えた。

翌日、響子は、昨夜一生懸命書いた退職願いを持って人事部に行った。
部長の鈴木健一が、
「やあ、小野君、君の素晴らしい働きで、各会社からも、僕のところにもお礼の電話が来てるよ」
「部長、私、今日で辞めさせてください。長い間お世話になりありがとうございました。ですが、依頼受けた東西通信の仕事は責任持ってやらせていただきます」
そういって響子は退職願いを部長の前に差し出した。
「おい、おい、小野君、どうして、わが社にとっては君のような」
と部長が慰留しようとするのも聞かないで、
「とにかく、私の決心は固いです、本当にお世話になりました」
そういって、きびすを返して人事部の室を出て行った。
皆が唖然としてる中で、アシスタントディレクター 小野寺響子という横書きのプレートをそっと伏せて、
「皆さん、どうも長いことお世話になりました」
課員たちは、響子の突然の行動にあっけにとられて響子のほうをいっせいに振り向いたが無言だった。
丁寧に頭を下げて、それから机の引き出しの私物をバッグに入れた。

「小野君、早まってはいけないよ、君も疲れたのだろう、二、三日休みなさい、有休もなしに働いてきたんだから、この退職願いは預かっておくから」
「だけど、私の決心は決まっています、皆さん本当にお世話になりました」
そういって部屋を出て、エレベーターに乗ろうとした時だった。
上原亜希子が駆けてきて
「先輩、辞めないでください」
「上原さん、でもあたしの決心変わらないの、あなたにも何もしてあげられなくてごめん」
「先輩にずうとついていきたいと思っていたのに」
上原は泣きそうな顔をした。
「でも、遠い所にいくわけじゃないし、いつでもケータイで連絡してちょうだい」
「先輩」
「先輩は昨日、いつまでも走りじゃだめよ・・・といいましたよね」
「ええ」
「だから私頑張ろうと」
上原が、
「本当にありがとうございました」
そういったときエレベーターのドアが閉まった。
エレベータを降りて、壁を思わず手で触れてみた。
天井から一階ロビーに差し込んでくる陽光が、響子には偉く眩しく感じられた。
この会社もはや10年たったか
見慣れた会社の光景が遠く去っていくように思えた。
複雑な気持ちだった。

会社って、辞めるときには案外簡単なんだよなあ、入る時はあなたのような方こそ、支度金まで、くれたのに、まあ、部長はゆっくり休養取りなさいといってくれたけど、あれは社交辞令だよ、と思う一方、
だけどさ、もし、小野さん辞めないでくださいと皆に言われて、止められたら
あたしだって辞めにくいかも
10年という月日は、重いなあ
心の中で葛藤しながら、
「もう、退職届けまで出したんだし考えるのよそう」

小野響子は部長、それにマネージャーからも信頼が厚く、アシスタントディレクターにまで登り詰めたのだった。
一方、響子が頑張れば頑張るほど、企業から人員整理の話が舞い込んできた。
あたしが、頑張れば、リストラ、人員整理で陰で泣く皆がいるし、あたしがここで辞めて・・・・減るんだ、泣く人が
そう思うと、これまでの精神的疲れやストレスから開放されるように、急に身体の重荷が降りてゆくようだった。

でも、三十三歳になった響子をこれから正社員として、まして役付きで迎えてくれそうなところはなかった。
明日から、派遣でもやるか、そう思いながら一抹の不安もあった。
重いドアを押して、響子は外に出た。
しばらく歩き、振り返ってビルを手をかざして見上げた。
オリエントビルの45階建ての20階、21階が響子のヒューマンサプライ社だった。
感傷的になってきて、
このビルともお別れね、さよなら、自然に涙がこぼれて、小声でそういった。

一時間後、響子はお台場海浜公園を降りて人口なぎさにに来ていた、この間広井とデートしたことを想いだすかのように、夕日を浴びた富士が、古風な広重の絵のように美しかった。夕方、一番客を乗せたのか、観光フェリーが静かに目の前の海を通り過ぎて行く、
響子の大きな瞳は対岸の芝浦、汐留、霞ヶ関、はては新宿までの都会のビル群のシルエットを追っていた。あの中で喜んでいる人いるし、あたしみたいに悲しんでいる人も、
波が静かに、響子の足元を濡らした。

これでよかったんだ、あたしは人のためになって喜んでもらえる仕事に喜びを感じてきたのだ、それがいま、いくら仕事のためと言ってもリストラのお手伝いは
そう思いながら、響子は廣井のことを考えていた。
なぎさの側を手を握って歩くカップルが増えて行く中で
広井さん、不器用な人だし、あたしがおじさまに報告したこと
そう、思いながらいつまでも一人、段々きらめいてゆく対岸の光景を眺めながら廣井のいない海岸のベンチにたたずんでいた。

三日後、広井の三重鈴鹿工場転勤の送別会が開かれた。
営業企画課全員12人が出席した。
「廣井君のために、皆集まってもらってありがとう」
皆がいっせいに拍手した。
カラオケセットが用意されて、
部長がスバルを歌った。
みどりが、
「部長っていつもあれよね、ほかの歌知らないのかしら」
こうやって、マイクは左回りで広井の番になった。
「廣井君」
「廣井さん」
皆の声に後押しされるように、
「では、新曲」
「それって、また韓国」
「いや、今日は国産だよ」
皆を和ませる一声に皆いっせいに笑う。
「それでは、最近覚えた曲で」
「主任、わ~、かっこいい」
「いいから、早く歌えよ」
「ひろ~い、ひろ~い、ひろ~い」
大田がそういうとシュプレヒコールが輪となって広がって行く。
それじゃ、中島美佳の見えない星」
「お前、どこからそんな新しい曲を」
「いいぞ、廣井君」
「すご~い、廣井さんて何でもうたっちゃうんだから」
廣井の歌で会場が大きく盛り上がったのは言うまでもなかった。

廣井の三重鈴鹿工場行きはそれから一週間たってからだった。
彼を取り囲むかのように三十人ほど見送りの数が多かったのは、営業企画部を中心に十年という本社勤務の表れだった。
春爛漫、会社の転勤の見送り客に混じって新婚のカップルが以外に多かった。
「お待たせしました、十一番線からひかり109号博多行きが発車します。お見送りのかたは」
案内放送が流れる中で拾いは見送りに着てくれる皆と握手を交わしていた。
小柄なみどりが、
「廣井さん、頑張ってね、私のこと忘れないでね」
そう言って、皆を掻き分けてきてピンクのバッグから小さな箱の包みを廣井に差し出して小声で
「広井さん、これ」
といって手に握らせた。みどりは広井に手を差し伸べて
「明日から広井さんがいない、私悲しい」
そういって緑の顔を見ると涙ぐんでいる。
「これで、泣かないで、また一緒に仕事も出来るよ、きっと」
そういいながら格子模様の男のハンカチをみどりに、
「拭きなさい、これで」
と渡した。
「広井さん」
そういって彼女はハンカチを目にあてて涙をぬぐっている。
「広井さん、ありがとう、どうも、これ」
彼女が右手でドアに手を差し伸べて彼に渡そうとした瞬間、新幹線のドアが閉まった。
それをホームの陰でひっそりと見ていた女性がいた。格子模様のショートなジャケットに大きな花柄のスカートを着て、赤い小さなボストンバッグを手にしていた。

グリーン車は空いていた。
廣井のために赴任旅費の不足分を皆がカンパしてくれていたのだ。
皆の親切がこうして僕をグリーンに乗せてくれて
情にもろい彼はそう思って、これから先の慣れない三重鈴鹿工場の生産ラインでの副課長、役付きで赴任するだけに知らないとはいえない重荷にちょっとだけ皆の好意を感じていた。
東京タワー、田町のビル群が過ぎ去って行き品川を過ぎた。
列車がここから徐々にスピードを出そうと、車内が一つ揺れた。
広井は発車間際に、みどりがくれた小さな箱の包みのリボンを解いた。
中には黒色の万年筆があり、一枚の花柄模様の便箋があった。
広井が広げると、
「広井さん、今までありがとうございました。私、広井さんが本社に帰ってくるまでいつまでも待っています。これ私だと思って使ってください 葵 美登里と書かれてあった。

その時だった。ドアーを勢いよく開けていき弾ませて賭けてくる女の人が、広井は万年筆の入った箱を上着のポケットに閉まった。
ボストンバッグを手にした女性が、
「廣井さ~ん」
といって駆けてきて、彼の腰掛けているグリーン車の席に手を置いた。
廣井は一瞬、目を疑った。
「あっ、あの時の、あなたは、・小野・・きょう、響子さんでは」
「どこにいかれるんですか、あなたに会いたいと思っていました。この席空いてますよ」
「ああ、グリーン券、僕が出しましょう」

響子は、
「ご、ごめんなさい、私はあなたを、だましていました」
「えっ、だましていたって」
「私が皆悪いのです、あなたを」
「ちょっと待ってくださいよ、僕頭が混乱して」
「思い切り、廣井さん、ぶってください、実はあたし、リストラの」
というなり、泣き出した。

「ここじゃ、皆がいるので、デッキの方に」
連結器の継ぎ目のせいか時速210キロのひかりはがたがたと揺れる。
ドアを閉めてデッキが空間になったところで、
「あなたは、なにも悪いことなんかしてません」
「事情がお知りにならないのでそういわれるのです」
響子は、
「私は、外資系の人材派遣会社に勤めていまして、それで会社のお荷物になる社員のリストラをとあなたの会社から依頼があって」
廣井は、
「そうだったんですか、あなたがまさか、私を」
「本当にごめんなさい、あたしを信用して何でも気軽に話して、お台場で一緒に」
響子は泣きながら、広井に謝ってくる。
「あたし、大勢の罪のない心の正直な・・・・仕事に熱心なそんなかたに会って、会社に頼まれて・・・・・・」
「本当に罪なんです、幸せな人を不幸に・・・・・・悲しいんです」

廣井は、
「小野さん、泣かないでください、あなたがリストラ請負業で、仮にうちの部長から頼まれて、僕を左遷させたとしても、」
「本当に、あたしって人の幸せを、自分の仕事ということで、だめに・・・だめに
して・・・来たんです」
といいながらハンカチを目にあてて泣いている。
廣井は、
「大丈夫ですよ、僕はこう見えても案外のんびりとしていて、結構会社でいびられて、でも打たれ強いんです。また、本社に戻りますよ」
といって慰めた。

そういいながら、彼は、一生懸命彼女を慰めたが、最高時速260キロを記録したのか、横揺れがあり、話を聞きながら彼女の身体をしっかりと支えた。
彼女は、
「あたし、廣井さんのおっとりとした何があっても驚かないところが好きなんです」
広井は、
「お気持ちはわかりますし、僕だってあなたとお台場のあの公園で、デートした時に・・」
「あたしも同じです、お台場の公園で・・・・」
「三重の鈴鹿工場に一緒に連れて行ってください」
「・・・・・・・・」
あまりの驚きに言葉を失っていた。
「あたし、廣井さんの工場のパートでも、何でもやります」
響子から、そういわれて、
廣井は、
「ちょっ、ちょっと待っててください、いきなり言われても」
戸惑いを隠せなかった。
僕をリストラ、左遷に追い込んだ女が、この頼りない僕を好きになるなんて
そこまで彼女から言われると、響子が好きだと想いが募った。

だが、彼は冷静だった。
「小野さん、こうしましょう、僕は今夜名古屋の東洋プラザホテルに泊まります
シングル一室取ってるので」
「はい」
「こうしましょう、ホテルのロビーであなたとゆっくりお話しましょう、あなたのお母さん、お父さんも心配していますよ、だから僕からも、あなたからもゆっくりお話しあって、僕はそれに」
「それにって」
「僕は不器用で、それにもう三十三なんです、あなたはお若いんだし。もっと」
広井は、こんなにまで自分のことを考えて、小さなボストンバッグを持って新幹線にまで乗ってきた彼女がとてもいとおしく抱きしめたかった。

そういう気持ちを抑えて、
廣井には結婚して幸せにさせる自信がなかった。
会社でしょっちゅう失敗し、遅刻し、決して他人に迷惑をかけるわけではないが、とらわれず、自分の好きな道を歩み、ある意味で自分勝手なところがあって。
少なくとも家庭的におそらくなれないだろう自分がここにいる、そんなことを考えていた。
「ここじゃなんだから、もう席に戻りましょう」
廣井はやっと泣き止んだ響子の肩に手を添えて、グリーン席の自分の隣に響子を腰掛けさせた。

車掌が5号車のドアを開けて検札に来るのをドアのほうに行って、
「発車間際に乗ったものですから名古屋までグリーン券を一枚」
そういって響子から差し出した乗車券を見せている広井の姿を見て、響子は、
「廣井さんて、なんて思いやりがあるのだろう」
また、泣きそうになった。
「今日は暑いですね、ほら山桜がきれいといっても、こう早くちゃねえ」
廣井の明るい声に、響子は
「廣井さんて本当におかし~い」
と笑顔を見せた。
7号車からアテンダントがやってきて
「お飲み物にアイスクリームいかがですか」
廣井はアイスクリームを買って響子に一つ渡した。
「ああ、これってグリーントリーのアイスクリームですね、おいしいんですよ」
「あたし、アイスクリームが好きだということを広井さん、知っていたんですか、
滅茶苦茶嬉しいです。ねえ、ねえ、広井さんて会社の女の子にもてるんでしょう」
「僕が」
「だって、優しいし、親切だし」
「違いますねえ、僕はそそっかしいところがあって、忘れ物すると、」
「忘れ物・・・するんですか」
「えっ、たまに、そうすると、主任またとか言われちゃって」

はしゃぎながら話しかけてくる響子を見ながら、
廣井は、意表って二つもあるなんて、僕が左遷されたことと、好きです鈴鹿に一緒に、・・・と彼女にいわれたこと、
とにかく、何よりも心配しているお父さんとお母さんのところに返してあげないと、駆け落ちするように彼女が飛び出してきても、結婚は皆から祝福されてするものだ
そう思いながらも一方では、
鈴鹿の赴任先の家で、
「あなた、お帰りなさい、今日はあなたも、私もお給料日なので、あなたの好きなすき焼き、お肉100グラム600円と奮発したの」
そうあたたかい言葉をかけてくれる。響子、
二つの顔を、アイスクリームをなめながら、はしゃぐように話しかけてくる響子を見つめていた。
                         終わり
























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創作テレビドラマシナリオ「新浦島竜太郎物語」

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この物語は、おとぎ話の現代版である。浦島竜太郎は、沼津の羽衣海岸の漁師である。竜太郎たちは、漁船を操って沖合いへと出かけ、定置網で魚を獲るのであったが、最近は海洋汚染とか不漁が続き、竜太郎も困惑していた。組合でも対応策を考えたが対応策は見出せなかった。
そんなある日、子供たちが海岸に打ち上げられた数匹の海亀が子供たちによって虐待されているのを竜太郎が動物を虐待してはいけないと子供たちを諭して海亀を逃がしてやった。
その夜、竜太郎のポケットのケータイが鳴り、男の声で「この間、亀を助けたお礼があり、あなたにお会いしたいので海岸に来てほしい。」ということだった。

竜太郎は狐につままれた面持ちで約束の海岸に出かけたが
すでに夜中を過ぎていた。、その時きれいな衣装をまとった女性が一人いた。
彼女は、亀を助けた御礼と、自分は海の魚たちの管理と保護を行っている国家であるが、是非海の魚類保護と水質の汚染破壊防止に協力したいということであった。

竜太郎は怪訝に思ったものの、話の本質は筋が通っていて、竜太郎も近年海洋汚染によって魚が獲れないこともあり、この問題を解決したいと思っていたので相手の要求に応えることとした。。
女性は小箱を取り出して、「決して危険なことはありません、これから私たちの国にお連れするまでのことは秘密で誰にも話さないでほしい」と言って小箱を開けた。
箱の中から白い煙が立ち上ると、竜太郎は煙を吸ったとたん、意識がボウッとなった。

どれくらい時間が経ったのだろうか、「お目覚めですか。もう大丈夫です。」と頭上から声がした。竜太郎があたりを見るとそれは潜水艦の中だった。
「どうして私はここへ。」と聞いたが、傍に居た乗組員は、「思い出すことはできないでしょう、あなたをわが海底の国にお連れするためにはやむを得ないことです。どうぞご了承ください]
ということだった。

私たちの自慢の原子力潜水艇をお見せしましょうと女性の乗組員が竜太郎を案内してくれたが、想像を絶するものだった。
それは、映画館、スポーツ施設、医療センター、インターネットカフェから美容院・総合クリニック、シアター、大食堂、キッズルーム、小型SCと何一つ不自由しない地上での施設がそろっていたのだった。
こうして数時間後、海底に立派な建物があって竜太郎は、海岸で亀を助けたお礼ということでもてなしを受けるのだった。
海底の国だけに魚料理一色であった。

しばらくおもてなしを受けたあと、年配の紳士が現れて、私たちは海底にある国で、魚だけしか食べない民族です。
私たちにとって魚資源の枯渇は生死にかかる大きな問題です。陸に住んでいる地球民族が私たちの存在を知ったら戦争をしに来るでしょう。それで誰にも知られたくないのです。
あなた方は近年地球環境汚染で特にあなた方も魚が不漁で困って居られるようですな。

海洋汚染と言っても一朝一夕に解決される問題ではありません。
竜太郎と年配の紳士は海洋汚染について真剣に話し合い、お互いのためにも認識を新たにし、竜太郎たちは海への不法投棄を防止、監視パトロールを行うこと、組合を通じて海洋汚染の啓蒙活動を行うこととか、船舶の海上での不法投棄をしないことで海洋汚染を防止し、アトランティス国を守ることなどを話し合った。
そのあと、海洋牧場、食料生産工場、医薬施設などを見学、
地球上の技術よりさらに高度なアトランティス国の水準の高さに驚いた。

7日後、竜太郎はなつかしい故郷に帰った。
竜太郎が去るとき、不思議な小箱のようなものをプレゼントされたが魚群探査機で、コンピューターと連動して船舶に載せることにより、どの海域に魚がどれほどいるか測定できる機械だった。
不漁に泣いていた竜太郎たちはこの魔法のような正確な探知機で魚を追跡、探査機に示された数量の魚を獲ることができて喜び合うのだった。
めでたし、めでたし。、

新浦島太郎物語

■沖合い漁船

沖合いの定置網を見に行く一艘の漁船(遠景、次第にズームアップ)

龍太郎「今日こそは定置網にいわしが掛かっているだろうよ」
義男 「ならいいが」
太一 「昔はこないことあらへんかったが」
康夫 「魚が獲れんからって、俺ら漁師が魚屋でいわし買ってたら、話にならん」(笑)
 
■三笠海岸

子供たちが4~5人集まって、台風で打ち上げられた数匹の海亀を囲んで棒を持って、亀をたたいたりしていじめている。

そこへ漁師、浦島竜太郎が通りかかる..
子供の顔を見ながら

龍太郎「これこれ、亀をいじめるのを止めなさい」
子供A「(不審そうに)おじさん誰?」
龍太郎「浦島竜太郎だが、とにかく罪もない動物をいじめるのだけは止めなさい」

子供、びっくろした顔で立っている竜太郎を見上げながら

子供B「(驚いた顔で)おじさんてっ、あっ、知ってる、あの浦島太郎の孫?」
龍太郎「まさか、あれはおとぎ話だ」
子供C「でも名前とか似ているし」
龍太郎「まあ、とにかく亀を棒でたたいたり、いけないことだよ。昨日台風もあって死にそうじゃないか」
子供D「たしかに、おじさんの言うとおり、逃がしてやろうかねえ、皆」
一同 「そうだ、おじさんの言うとおりかわいそうだよ」
そういいながら子供たち亀を持って、浦島竜太郎とともに

龍太郎「じゃ、皆で海に帰してやろう」
子供A「もう二度と捕まってはいけないよ。さようなら」

子供三人、せーのと合図をして
子供全員「ごめんね、いじめて」

龍太郎「皆いいことをしたね」
龍太郎、ポケットからお金を出して
竜太郎「皆でノートでも買いなさい」
浦島竜太郎、皆に手を振りながら立ち去って行く。

月光、満月の夜
■龍太郎のマンション(一人住まい)

コンビにで買った弁当を食べて時々お茶を飲んでいる。
机で一生懸命何か書いている。
昨日の不漁対策のための対策を書き上げて

龍太郎「さあ、寝るか」
その時、ポケットのケータイの着信音

龍太郎「はい、浦島ですが、どちらさま」
女性の声「浦島竜太郎さまですね。この間は海亀を助けていただいてありがとうございました」
龍太郎「はあっ。?」
女性の声「実は、あなたは大切な海亀を助けてくれたので、?」
龍太郎「それで、何でしょうか」
女性の声「あなたにお礼したいのです。それに助けを借りたいこともあるし」
龍太郎「わかった。で場所は」
女性の声「三笠海岸の三本松の木の下で」

■タイトル 新浦島竜太郎物語
      出演者・・・・・

■深夜の三本松 木の下(波の打ち寄せる音)

月の輝く三本松の木の下で行ったり来たりして

龍太郎「何だ、誰もいないじゃないか、するとあのケータイは」
そういいながら時計見て

龍太郎「もう1時かよ、いたずらかあ」
その時後ろから光を感じるが次第に周りは黄色く輝く。

任えの女性「浦島竜太郎さまでいらっしゃいますね?」
浦島竜太郎「は、はいそうですが」
仕えの女性「あなたは、私たちが大切にしている海亀と子亀を助けてくださってありがとうございました」
龍太郎「いえいえ、可哀想で見てたら」
仕えの女性「あなたさまは心のやさしい方です。それで私たちはお礼をしたいと、それと私たちは今深刻なある問題を抱えています。それであなたとご相談したいことがあります。是非協力していただきたいと」

竜太郎、驚いた表情で、ちょっと首をかしげて

龍太郎「えっ、で相談とは」
仕えの女性「あなたも漁師で困って居られると思います。それでお互い困っていれば」
龍太郎「わかった、それでどこで?。いったいあなたは?」
仕えの女性「私たちは海底に済むもので」
海底と聞いて竜太郎、驚き目を丸くして
龍太郎「ま、まさか竜宮城っていうんでは」
仕えの女性「いえいえ海底でも、おとぎ話と違います」
龍太郎「わかった、話を聞こう」
仕えの女性「それでは、これからあなたを私たちの国にお連れします、で」
龍太郎「で?」
仕えの女性「あなたをお連れするには、このことは絶対秘密です。あなたの記憶を一時的になくします」

と言って女性が袋から箱を取り出す。中から黒い箱が出てくる

龍太郎「まさか煙とか出ておとぎ話の・・・・・・まだお爺さんには」
困った表情を

仕えの女性「いえいえ、そんなものでは」
龍太郎「そんなものって」
仕えの女性「私たちはあなた方のように嘘つきません」
龍太郎「それを信じよう、でもその箱は玉手箱みたいな」
仕えの女性「じゃないんですよ」
龍太郎「・・・・・」
仕えの女性「あなたを私たちの国にお連れするには。やむを得ないんです」
龍太郎「わかったよ」

女性が近づいて箱を開ける。中から煙が出て
次第に拡がって行く、あくびをしていた龍太郎は眠くなったくる。

仕えの女性「ごめんなさい、1時間くらい寝ていただきます」
龍太郎「やっぱりだまされた、俺はなんて馬鹿だ、これはら、拉致された・・・・・・・」
次第に声がゆっくりと小声で
と言いながら龍太郎、倒れて寝てしまう。

海底、そこをブルーの大きな潜水艦のような物体
■原子力潜水艇の中

1時間後
寝ていた龍太郎、館内のベッドで目を覚ます

龍太郎「ここはどこ」(あたりをきょろきょろ見回すように)
女性覗き込むように、

3201「おめざめですか?、ご気分は?」
龍太郎「あ、あなたはだれですか?」
3201「ご心配なく、あなたを私たちの国にこれからお連れするだけです」
龍太郎「名前は?」
3201「私たちは皆統一番号で呼ばれています3201です、おいやでしたら花子でも、裕子でもどうぞ」
龍太郎「驚いた、なあ・・・、けど、ここに来るまでの道とかがわからないが。3201さん?」
3201「それは、・・・それは困るんです」
龍太郎「なぜ?3201さん、何か変だなあ、よしこれからは花子って呼ぶことにするよ」
3201「陸に住んでいる方に知られては困るんです」
龍太郎「ええと、花子さん、なぜ記憶がないのか」
3201「私たちにとっては、魚は重要な食料で、陸に住んでおられる人たちが、私たちの国を知ったら、きっと武力を使っても攻めてくると思います」
龍太郎「たしかに」
3201「ここにお連れする際に煙で眠らせてしまったことはおわびします」
龍太郎「わかったからいいよ」
3201「それでは、海底の国に着くまで、この潜水艇の中を見てください。よろしければ私がご案内します」
龍太郎「何か見たくないような、でもやっぱり見てみたいような気もするよ。花子さん」
3201「私が艇内をご案内します」

3201からいわれてベッドから起き上がる。

女性3201(花子)がさきに立って竜太郎が後に続く
歩きながら、

龍太郎「でもずいぶん大きいなあ」
3201「ここには何でもあるんですよ」
竜太郎 「これって原子力潜水艦?」
3201「私たちは潜水艇と言ってます。潜水艦だと兵器持っていますが、私たち軍隊ありません」
竜太郎 「それにしてもめちゃくちゃ船内が大きいなあ」

■翌日 竜太郎の漁業組合

理事長、不安な顔をしながら腕を組んでいる

組合理事長「ところで海野竜太郎がまだ姿を現さないが、だれか知らないか」
仲間A「あいつのことだからきっと寝てるに違いない」
仲間Bケータイ取り出し電話、発信音だけ鳴り続く
「あっ竜太郎いません」

■潜水艇の中

3201「わたしたちのこの潜水艇には、映画館、スポーツ施設、医療センターから、美容院、大食堂、小型SCと何一つ不自由しない施設がそろっています」
艇内の諸施設を3201(花子)と見る。

龍太郎「いや、ただ驚くばかりです」

■医療センター前

3201「ここは医療センターです。小手術室も完備してます。まさかの急病にも対処できます」
龍太郎「いや、驚きました。われわれの国の潜水艦では、頭もつかえるくらいの狭さですよ」
3201「私たちは、魚を主食としてる海底国家なので、海底牧場とか飼育センターとか、また海底資源管理のためにも長期間航行できる潜水艇が必要なんです」
龍太郎「よくわかります。そんな海を保護するためのあなた方に、地球の国の人たちは何と無神経でしょう」
3201「この医療センターでは、海の魚類たちを細かく分析して医薬品とか医療材料とか食品、燃料などを開発使用してます。私たちは無公害の例えば海老、蟹の甲羅から取れるキチン質を人工皮膚に、やけどした場合とかに使います」
龍太郎「それって聞いたことがあります、えびとか、かにの甲羅からとれるキチン膜が人口皮膚の役割をすることを」

■映画館の前

3201「ここは映画館です」
龍太郎「さっきから驚きの連続です。」
3201「さっきもお話したとおり、潜水艇は長期間航行しますので、乗組員を癒すこういう施設がどうしても必要なんです。そうしないと精神衛生的にも」

■スポーツ施設の前

3201「ここは、乗組員たちが運動不足にならないよう、体を動かし健康維持のための施設なんです」
しかし野球とかサッカーはできませんが」
龍太郎「いや、私も遠洋漁業でマグロとか採りに行く時、遠洋漁業船に乗りますが甲板でせいぜい体操するくらいです」

■スポーツ施設の中

3201「この広さではスカッシュ、体操、卓球くらいに限られますが」
龍太郎「いいえ、それでも」
船内の狭い階段を上る二人

■リラックス・ルーム
室内を歩きながら竜太郎驚いている。

3201「ここは、リラックスルームです」
龍太郎「これって何ですか?」
3201「乗組員たちが、交代でTV見たりテレビゲームとか将棋、麻雀、チェス、囲碁とか楽しんだりくつろいだりします」
龍太郎、部屋の一角でテレビゲームやってる人に気がついて、
龍太郎「ああ、これスーパーマリオの冒険、人気あるんですよ」
3201「陸の皆さんがおやりになるテレビゲームは揃っています」
龍太郎「あれ、懐かしいNHKとかテレビやってる」
3201「あなた方の世界各国のTVと私たちの国のTV放送見れます」
龍太郎「海底で、しかもNHKを見るなんて、いや驚いたなあ」
3201「海底には情報、通信とかの大きなケーブルが走っています。インターネットで私たちもすべての情報知ることができます」
龍太郎「インターネットはわたしたちも使っていますが、アトランティス海底国のこと、さっぱりわかりません」
3201「それは、あなた方の国は、インターネットを悪用しているからです。ネットを利用してマガイ物の商品販売、出会い系ネットで犯罪犯したり、正直言ってあなた方、陸の方、あなたは違いますが、信用できません」
3201「あなたは、私たちが大切にしている海亀を助けてくださいました
陸の国では、今動物虐待とか、年とった人とか、立場の弱い人とか、いじめたり殺害しています。私たちは動物を助ける人って心のやさしい人と思っています」
龍太郎「そのとおり・・・・あれっ、今一番左のテレビで魚と会話する放送してますが」
3201「魚たちのコミニュケーションを大切にしてるんです。何しろ、海底の国ですから、魚たちの会話はいちばん大切なものです」
3201「陸のあなた方は、数え切れないほど、いろいろな動物がいるのに」
龍太郎「私たちは、犬にしぐさを教えて、はい、お手と言うと手を私たちの手に置いたり、鳥のオウムが人間の言葉をちょっと真似るので、お利口さんとか言って喜んでいるくらいです」

3201に龍太郎、いろいろ案内される。

■ティ―ルーム

3201「お疲れでしょう。ティ―ルームでゆっくり休みましょう」
龍太郎「う~ん、これはおいしいデザートだ」
3201「皆、これらのデザートは魚類、海草類で作られています。」
3201「これはコーヒーゼリーです」
竜太郎 「知ってます。私たちも海の天草からとって寒天という材料にしてそれを使います」

■原子力潜水艇内

アナウンス「アテンション・プリーズ、スーン・ウィル・ビー、アプローチ ザ・アトランティス・アイランド・・・・・・・・」

■アトランティス国
潜水艇トンネルを通り、通過後トンネルのドアが閉まる、海水の流入を防ぐ、コンクリートトンネルで
やがて前方に灯りが輝いている。


潜水艇のハッチが起きて外へ
3201「さあ、ここが私たちのアトランティス海底国です。どうぞ。ご案内します」
5034「ようこそ、私たちのアトランティス国へ」
7093「どうか浦島さま、ごゆっくりお楽しみください」

■頭上のモノレール

竜太郎 「あっ、上をモノレールが」
5034「あれに乗っていきましょう」

■モノレールの中

竜太郎 「われわれの世界と同じだ、タクシーもあるし」
5034「我々の世界では、水素を燃料にしています」
竜太郎 「何か夢を見ている見たいな」

モノレール駅「海底アクアリウム」
竜太郎「海のそこの水族館か」
5034「ここで降りましょう、沢山の魚たちがいます」
竜太郎 「ここは」
3201「まあ、降りてみてください」

■踊る魚の劇場(巨大水槽)

3201「踊る魚の劇場です」
竜太郎 「花子さん、やっぱり、竜宮城で鯛やひらめの舞い踊りか、それに乙姫様が来るのですね」
3201「いいえ、違います」
竜太郎 「えっ。違う?」
5034「あれは、浦島太郎のおとぎ話で」
竜太郎 「じゃ、なにが」
3201「まあ、楽しみにしていてください」
竜太郎 「・・・・・・・・」
6754「大きなガラス窓でしょう」
龍太郎「江ノ島の水族館も大きいが、ここはすごい」

6754「アピアピ。ポプパレ・プピパ」
龍太郎 「えっ、今のは、アピアピとか」
3201「これは魚たちと話すための言葉なんです」
龍太郎 「わっすごいっ、ものすごいひらめの大群が」
6754「アピアピは魚語でひらめという言葉です」
3201「ひらめさん、こちらに集まって」って言う言葉なんです」
龍太郎 「そんな言葉が」
6754「アプアプはいわし、プラプラはマグロ、ペナペナは鯛という具合で」
龍太郎 「そいつは面白い、私は漁師なので、じゃ秋刀魚さん、私のところに集まってっていうのは」
6754「秋刀魚はポレポレなので、ポレポレ パロパ・
     ポプバレ・プピパ」
龍太郎 「もし、魚と自由に話すことができたらと思っていましたが・・・・・・・・うーんん素晴らしい」

7611「見ていてください、このひらめたちが」
6754「音楽スタート」

天井からさわやかなBGMが
3611「このBGMは魚たちが聞こえる周波数にあわせています」
竜太郎「はっ、そんなことが」
7611「アピアピ・ペロペロ・ポパピポ・パパポ」
龍太郎 「ひらめが音楽に合わせて踊っている、すごいっ
6754「これは美しき青きドナウですが、音楽に合わせて踊っているでしょう」
龍太郎 「こんな素晴らしい魚の踊りみたことない」
龍太郎「烏賊がこんなに立ち踊りするとは」
7611「今にすごいことが起きます」
龍太郎 「あっ、すごいっ、いかが墨を」
6754「まあ、見ていてください、今に」
龍太郎 「墨が、えっウエルカム・トウー・リュウタロウ」
6754「すごいでしょう」
龍太郎 「驚きの連続でもう、」

■レストラン

9231「さあ、遠慮なく召しあがってください。陸の方のように肉はここにありませんが」
龍太郎 「これはハンバーグでおいしい」
8017「鮭で作ってあります」
龍太郎 「するとこのカツは?」
9231「秋刀魚、鯵、で」
龍太郎 「おすしはねたがあたらしいし、大きいし」
8017「どうです、気に入っていただけました」
龍太郎 「こんなおいしいお料理ははじめてです」
9231「野菜はありませんが、野菜代わりに海藻とか昆布とか」
9231「どうです、お食事お気に召したでしょうか?」
龍太郎「ええ、何もかも、それにしても魚たちの踊りはたいしたものでした」
8017「それはよかったです」
龍太郎「あなたは、とてもお美しい乙姫様のようだ」
8017「乙姫様って、あたしもそのええと竜宮城の話知っています」
龍太郎「乙姫様ですか、あなたは?」
8017「いいえ、姫は姫でもミスアトランティスで一年間ここへ来られたかたをおもてなしする役です」
3201「そろそろ、あなたにお会いしたいって言う方が来られます。海洋汚染について話をしたいと言っておられます」

■三笠警察署

理事長、組員3人走って三笠警察署の入り口から中へ

婦人警察官がいる。
組合理事長「あのう、た、大変です」
婦人警察官「なにが大変ですか」
理事長「私の組合員の海野竜太郎が行方不明で?」

警察官「えっ、いつからですか」
仲間A「3日前からです。夜中にどうも出ていったらしいんです」
警察官「今、調書を取りますから」
組合理事長「もしかして浜辺で例の・・・拉致されたんじゃないでしょうね?」
警察官「まあ、落ち着いてください、海上パトロールも最近やってますから、不審な船が来ればわかります」

警察官「誰か不審な人とか船とかみなかったか早速捜査します」

■会議室

3201「竜太郎さま、このお部屋でお待ちください、直にあなたにお礼を申し上げたいと私たちの代表が参りますので」
竜太郎 「わかりました」

3201「竜太郎さま、参りました」
代表  「浦島竜太郎さまとはあなたですか?」
竜太郎 「はい、私でございますが」
代表  「この間は浜辺で弱っているウミガメたちを子供のいじめから助けて海に放っていただいて本当にありがとうございました」
竜太郎 「いいえ、お礼を云われるには及びません、当然のことをしただけです」
代表  「どうでしたか?私たちのお礼のおもてなしは?お気に入っていただけましたでしょうか」
竜太郎 「ええ、大変な歓迎とおいしい食事までいただいて」
代表  「あなたに気に入っていただいてそれはよかったです」
竜太郎 「ごちそうもおいしかったですけどこの海の中の海底のアトランティス国
の科学技術は私たち陸にいる技術よりはるかに進んでいて驚きました」
代表  「でも私たちインターネットで陸の国の人たちの生活見ていますがうらやましいですよ」
竜太郎 「たしかに、ITとかの技術は進んで居ますが、まだ動物たちとの会話など出来ないんですよ」
代表 「ところで今日、あなたにご相談したいことがあって」
竜太郎「はっつ私に・・・相談ですか」
代表 「ええ、是非」
竜太郎「けど、私あなたのような偉い方とは、私は・・・・」
代表 「・・・・・・」
竜太郎「私は、私は陸でただの漁師で・・・えらくありません」
代表 「それだからいいのです、あなたは普通の方で、そして海の生き物を大切にされて海がめの命を救ってくれた、私たちにとっては大切な方なのです」


      (未完、資料海洋汚染など分析中です)









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創作仮想テレビドラマ「ホテルの恋人たち」

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東京の台場に新しく出現する巨大ホテルに採用された研修生たちが、ホテルの発展とともに成長していきながら、ホテルの中で繰り広げられる喜びと悲しみの華やかな三組の恋人の「ホテルの恋人たち」の物語です。
ホテル研修の初日、道路で奈央子が落としたケータイを洋一郎、拾って彼女を見るとなんと高校時代の初恋の人。
研修の昼休み、何気なく話した重信と麻美、二人の性格がまるっきり正反対のところが意気投合。
韓国人キム・ヨンイルはソウルで恋人だったリュ・イジンが突然行方不明、東京で一家が居ることがわかり、とうとう彼女と喜びの対面。、
また、ホテルで働く人たちとホテル利用客との心温まる交流も物語として登場します。
純粋で愛のある物語をどうぞお楽しみください
このドラマを書くにあたって

このドラマを書こうと思ったきっかけは過去ホテルの経験と仕事を参考にホテルで働く恋人たちを生き生きと描きたいと思ったにほかならない。
コンサルタントとしてのホテルの仕事と若干のホテル経験、実務経験に加えてさらに調査して書いたものであるが、あくまでも仮想「ホテル」ということでこの物語はホテル及びストーリーに登場する諸施設は実在しないことを最初にお断りしておきたい。

このドラマに登場する主な人物のプロフィール
深川 洋一郎(30)
一度は一流商社に入社したもの、人材バンクを通じて東京台場セントラルホテルの幹部研修生として転職。
研修当日、時間に遅れて途中、道路の前を走っていた女性がケータイを落としてケータイを拾ってあげた。
その女性とは、洋一郎が片時も忘れられなかった高校時代の初恋の人と運命的な出会いをすることになる。

中野 奈央子(29)
女子大を卒業後、ニューヨークの大学に2年間留学したので、アメリカに多くの友達を持っている。
研修当日、時間に遅れてホテル研修会場に向かう途中、ケータイを落とし、洋一郎がケータイを拾い出会う。
奈央子には、アメリカ時代のマイケルという恋人がいるが、洋一郎を次第に愛するうちに二人の恋人というジレンマに陥り、次第に罪の意識のジレンマに立たされる。

長瀬 徹(45)
東京セントラルホテル台場の総支配人
温厚で誠実であるが、ホテルはお客様に満足して頂くためのあらゆるサービスと安全を心がけ支配人自身が火災などの危機に立ち向かう。

長谷川 重信(25) 
スポーツが好きで、明徳大学ではサッカー部に籍を置き、全日本大学サッカー試合で優勝したこともある。
二人の姉妹の言うことをよく聞くので、二人からよく甘味喫茶など女性しか行かない店に連れて行かれる。
おしるこやあんみつ、和菓子を食べると、二人の姉妹から、重ちゃん、かわいいなどとよく言われる。。
性格は何事も楽観的に考えていて、恋人麻美とはいつもやりあっている。
 
井上 麻美(23)
独立心旺盛で関西の女子短大卒業後、単身アメリカ、カリフォルニアのあるホテル経営学校に2年間留学。
麻美の父は、地元旅館組合理事長を兼任しているため、顔が広く早く、地方の有名な観光地の温泉旅館の一人娘。父がこの旅館を早く引き継いでほしいと願っているが、麻美はホテル経営に興味を抱きアメリカ、ロスアンゼルスの大学ホテル経営学科に入学、性格は勝気、負けず嫌いな反面、人をすぐ好きになる。

キム・オルソ(26)
韓国、ソウル出身、ホテル研修生で外国人採用の一人。 
日本に興味を示しているが、とても礼儀正しく、目上の人をものすごく尊敬している。高校時代の恋人、リュ・イジンが突然行方
不明になってあるとき在日朝鮮人の親戚にいることが分かり、日本興味があることもありホテル研修生となる。
ホテルの仕事に精進する一方、恋人リュ・イジンの行くえを調べている。
ある日、リュ・イジンがこのホテルのレストランで働いていることを知り15年ぶりに感激の再会を果たした。

リュ・イジン(27) 
キム・ヨンイルとはソウルの大学付属高校生と一緒でキム・ヨンイルは彼女をとても愛している。
事情があって誘拐されそうになるが一家は在日韓国人の親戚を頼って日本で一家は生活することになる。
彼女はキム・ヨンイルに会いたいと思ったが、思いがけず彼と再会することになる。


岡田 麻里亜(28)
深川洋一郎の姪、神戸に住んでいるが、国際航空に入社、パーサーとなるが、語学能力を買われて、ロンドン支店に勤務となる。
久しぶりに一週間だけ日本に帰ってきて洋一郎と会うことになるが、ある日洋一郎が麻里亜と会っているのを菜穂子が目撃してこれが誤解となる。
後に誤解が解けて、洋一郎、奈央子、麻美とともに楽しい時を過ごすことになる。

朝比奈 梨花(36)
客室支配人として、研修生の教育訓練を担当する。
高校卒業後、国際的な名門ホテルに就職、実力派。
セントラルホテル発足に伴いスカウトされた。
フロント接客、顧客対応について、研修生を厳しく訓練するところからいつしか鬼の梨花支配人と呼ばれるが、本当は暖かい人情を持っている。

片倉 優子(38)
メインテナンスマネージャーとしてホテルの高校卒業後、メインテナンス会社、ホテルの経験を経てセントラルホテルにスカウトされる。


ドラマシナリオ 「ホテルの恋人たち」全13話
ドラマシナリオのあらすじ

第一話■恋人たちの出会い

東京・台場新シティホテルの新入社員研修に向かう途中、研修生の上野奈央子は電車でうたた寝をして遅刻、同じころ洋一郎も遅刻、奈央子が落としたケータイを拾い女性が後ろを振り向いた瞬間、女性(奈央子)の顔は、洋一郎が片時も忘れられない高校時代の初恋の人であった。
昼休み、二人は、自己紹介、ホテル入社の動機や希望などいろいろうちとけて話すのだった。
一方、32階展望台スカイラウンジでは、隣で眺めていた研修生の麻美(井上麻美)に重信(長谷川重信)は声を掛けるのだった。
麻美は、関西の観光地の父は温泉旅館を経営していたが、旅館の衰退とともに近代的なホテルに改装したいと考えていた。
両親を説得、単身アメリカののホテル経営学校に留学、ホテルでの実際の勉強を兼ねてホテル研修生として就職したのだった。
一方、重信はスポーツマンで二人の姉妹の感化を受けいつしか酒もほとんど飲めないようになっていた。どこか頼りないがとても純粋で正直な重信のおおらかさに麻美は惹かれるものを感じたのだった。
午後はホテルの各部門の見学をした。地下2階のセキュリティー・センターから始まって調理・厨房・
宴会会議場・フロント・ビジネス・センターなど、を見学してあらためてホテルでの利用者を快適に過ごしてもらうための目に見えない努力を感じるのだった。

一日の研修を終えた夕方、奈央子は洋一郎にケータイを拾ってくれた貸しを返したいと話をし、奈央子と洋一郎は食べ、飲み、そしてピアノ演奏の曲でダンスを楽しむのだった。
同じ夕方、麻美は重信を新宿の炉辺焼きの店に誘ったものの開放感から少し飲みすぎて重信は麻美の居る兄の家までタクシーで送ることになった。
翌日、昨日、お互いがプレゼントしたものを、沙耶香は黄色いスカーフを、洋一郎は黄色いネクタイを結んで二人は逢ってにっこりと微笑むのだった。
一方、麻美は翌朝、昨日重信に迷惑掛けてタクシーで送ってもらったこと、初対面なのに酔った姿を見せたことに罪悪感を感じ、重信に逢ってもうつむいたままでバッグから出した雑誌で顔を半分隠し重信にもう二度とお酒も飲み過ぎないしもう迷惑も掛けないと必死に謝った。
                               (第一話)

第一話 恋人たちの出会い

■ 東京ベイを飛ぶ一機のヘリコプター

ヘリコプターの陰が地上に小さくできてそれが上空から見ると道路、建物と影が移動して行く。

ヘリコプターの窓を通じた景色
春霞がたなびいていて富士山は見えない。新宿を中心に渋谷、右が池袋のグレーの超高層ビルの塊、手前に六本木、霞ヶ関、後楽園スタジアム、そして手前が品川・芝浦・汐留・銀座と要所要所にビルがつくしのように伸びている。

■ヘリコプター機内

荒木機長「OK,これから下降します」
操縦かんを倒す。

■ヘリコプター下降、

台場を走る東京湾岸道路・マンションホテル。SC群の建物がはっきりと見えて、ゆりかもめモノレールは台場を曲がりくねってその先が蛇のようにくねくねと伸びている。
東京シティコアホテル全景、中央にセントラルホテル、隣接してSC ELINA、スポーツクラブなどの複数の建物が見える。祝東京台場に本格的シティーホテル誕生、21世紀にふさわしい複合ホテルのアドバルーン。

■機内東洋新聞記者

記者「よおし、この辺で一枚」
5~6枚の写真を立て続けに撮る。
 。
■モノレールの中、

朝9時、春霞のたなびく春の朝、中野奈央子はブルーコート、首にはピンクのバラ模様のきれいなスカーフ。奈央子は時々左の隣に座っている濃紺の縦じまスーツを着ている中年の男性に体が傾きそうになる。
はっと目がさめて急いで自分の姿勢を直し、

奈央子「どうもすいません」
乗客「いいえ」

体が傾きそうになる。

奈央子「どうもすいません」
乗客 「あっ。いいえ」


奈央子 「ママに買ってもらった赤いバッグ、怒られちゃう」

■街路樹の道路

国際センター駅に戻り、沙耶香ダッシュ、エスカレーターを降り、ホテルへ通じるプラタナスの街路樹の道路を走っていく。電話が鳴る。

■ケータイを掛けてる、ユッコから

ユッコ「もしもし、奈央子、あのさ、今日暇だったらデパート行かない?。春のドレスが30%引きですって」

■街路樹の道路

全力疾走しながら 

奈央子「それってあとの話にして、今あたし、ごめんね、ユッコ」

■国際センター地下駅構内

電車が着く、ドアが開くと同時に
遅れて東京臨海線国際センター前で降りた一人の男、猛烈な勢いで駆け上がる。

洋一郎「いけねえ、遅刻しそう、いつも人生大切なときに遅れたりして」

■街路樹の道路

時計見ながら全力で駆ける洋一郎の姿、横からカメラ流し撮り
奈央子のケータイが再び鳴る。電源を切るが
あわててケータイを右手から落としてしまう

奈央子 「ああケータイ落として、あせるなあ」

ケータイが道路に落ちている、洋一郎止まるが、はあはあいって

洋一郎 「もしもしお嬢さんケータイ落ちていますよ」
洋一郎急いであとを付けケータイを拾う。

奈央子 「ああ、すいません。ケータイ落とすなんて」

奈央子、洋一郎の方を振り返る。、洋一郎じっと見つめる。
その時、忘れられない高校時代の初恋の人との再会に驚く

■洋一郎・奈央子の再会

洋一郎 「ど・・・どこまでいらっしゃるのですか?」
奈央子 「実はあたし、この先の」
洋一郎 「僕も実は、そうなんですか」
奈央子 「急いでいるのでごめんなさい、ケータイのお礼したいのでここが電話です、すいません」

といって名詞を渡し、駆けて行く

洋一郎 「そんなあたりまえのことを」

頭を下げて奈央子、走っていく。

■東京台場セントラルホテル

ホテルの中にいる奈央子(後ろ姿)

一階ロビー、天井から下へ1階はギリシャ彫刻の柱、ステンドグラスに陽が映える、らせん階段
壁面に噴水、シースルー・エレベーター
奈央子、じっと眺める

奈央子「すご~い」

洋一郎、横の道を曲がり急ぎ足で歩きながらセントラルホテルの方へ去って行く。

■ホテル内

東京台場セントラルホテルを眺めている洋一郎
建物眺めながらロビーに
中のロビーに天井を眺めている奈央子
洋一郎、気がついて

洋一郎 「おや、さっきあなたとお会いしましたね」
奈央子「そうなの、今日はこのホテルの」
洋一郎「ああ、よかった、あなたと二人なら、実は僕も同じホテルで」
奈央子「私も、今朝寝坊して遅刻して一人ならどうしようかと思って」
洋一郎「研修会場この8階ですね。エレベーターで行きましょう」
二人、立ち上がって

■エレベーターホールで奈央子、洋一郎

■エレベーターの中

奈央子「さきほどはご親切に、中野奈央子です」
洋一郎「深川 洋一郎です」

■8階 研修会場
  
エレベーター8階降りると研修会場に着く。
洋一郎、奈央子少しうつむいて受付係りの方へ行く。

総務受付「お名前は?」
洋一郎 「深川洋一郎です」
奈央子 「中野奈央子と申します」

総務受付「左側ドアよりお入りください。ホテルは24時間営業でお客様のサービスに当たりますので今日のところはよいですが、明日から遅刻されないようにしてください。」

担当者、研修マニュアルとネームプレートを二人に渡す。
二人とも気まずそうにドアを開けて中へ入る。その瞬間、皆の冷たい視線を浴びる。

■研修センター内 社長挨拶

二人とも後部座席着席、

社長「~でありますから、今日ここに15人の優秀な当ホテルの未来を担当の方々をお迎えすることは私共ホテルの大きな喜びとするところです。
まさに21世紀のホテルにふさわしく国際化時代の幕開けでもあります。
日本のホテル業界として外国の方にも門戸解放をいたしましてアメリカ2名、イギリス1名、ロシア1名、マレーシア1名、韓国1名、計5名の新進気鋭の国際人をお迎えし、当ホテルが広く国際的にも飛躍発展したいと考えております」

建設計画の説明、スライド

■研修センター・コンサルタント説明

コンサルタント「これから新しくオープンする東京台場セントラルホテルは・・・・・・・・」

建設会社企画コンサルタントの説明、スライドパネルでポイント説明でわかりやすい
パネルNO1.から次々に画面変わる 
東京都中央区台場1丁目、再開発用地
基本コンセプト
泊まる、安らぐ・・・・・・・・東京セントラルホテル
鍛える、見る・・・・・・・・・併設スポーツクラブ
選ぶ、楽しむ・・・・・・・・・SC SERIENA

パネルNO2
特色ある施設、360度シネスクリーン ワンダフルとうきょう
       東京、横浜周辺の迫力ある光景(日本ではじめて)
       常設館
パネルNO3
階層構成
32F展望ラウンジ
31F客室
   客室
   客室
   客室
8F 客室
7F 大・中宴会場、
6F 結婚式場、フォト・スタジオ、フラワー・ショップ キッズルーム
   貸衣装、理容室、美容室
5F 中・小宴会場・兼会議室、
4Fレストラン、コーヒー・ショップ、ミーティング・ルーム、クリニック
3Fショップ部門、
2F ショップ部門 
1F吹き抜けロビー、フロント、ガイドセンター、銀行、郵便局 ビジネス・
  センター、
B1駐車場
B2駐車場、 機械室、 カラオケ、地下BAR
ホテル部門  総室数 800室
ロイヤル・スイートルーム、スイート・ルーム、ツインルーム、シングル・ルーム。
各室、インターネット、液晶多目的TV、冷蔵庫、BGM、
FM装置、空調装置、電話、バス、洗面所、
大宴会場 800人収容、小宴会場、会議室、控え室
結婚式場、フォートスタジオ、美容室、理容室
郵便局、両替交換所、コンビニ店、案内所、フラワーショップ、バー、レストラン。
ショッピングアーケード。
パネルNO4
付属施設   SC SERIENA 120店入店
       食品、ドラッグ・ストアー、婦人・紳士雑貨、ファッション、インナー、日用雑貨、書店、電気器具、寝具、写真、眼鏡、レコードDVD、フラワーショップ、時計・宝飾、スポーツ
洋品、etc.
併設スポーツクラブ、ジム、プール、エアロビックス・スタディオ、サウナ、
テニスコート、ゴルフ練習場、室内スカッシュetc
パネルNO5  開発による相乗効果
台場周辺の住宅開発による定住人口の確保
住民の利便性の増大
ホテル利用者、定住者の健康促進
辺ホテルとの協力、国内、海外宿泊客需要に対応
ベイエリア全体の経済効果      
わかりやすいパネル説明に研修生たち、静かに聴きいっている。

■ホテル32階ラウンジ 春霞、東京湾、船舶が見える。

重信「あなたも同じ研修生つてわけ」
直美、重信から話しかけられ、重信の方を向く

直美「えっそうよ、ところであなたは」
重信「あっ俺、なんとなく」
麻美「ずいぶん心細い話。この大きなホテルに目的もなく入って」
重信「昔からすごい楽天的何とかなると。君は」
麻美「あら、もう12時半過ぎたよ。じゃ簡単にいうね」
重信「うん」

麻美「家は関西、うちは旅館なの」
重信「何、関西?」
麻美「温泉がどんどん少なくなってホテルに変わっているの。だから、将来ホテルにしようと思って」
重信 「そうなんだ」
重信「君はそれで家出したんだ?」
麻美「家出ってちょっと。父にあたしホテルを勉強してホテルに入って、将来経営者になればホテルだって旅館だって宿泊業には変わりないでしょう?。・・・って言ってやったの」
麻美「お前は話の筋が通っているんだからとも」
重信「それで?」
麻美「地元の大学出たあと、アメリカのホテルの経営学を専攻、留学したの」
重信「そうか、ずいぶん努力家なんだなあ」
麻美「そうよ、何でも努力しないと幸せは勝ち取れない、これが私の考えなの」
重信「俺はサッカーの選手やってた。学校で。二人のanegoがいて姉二人にデパートとか、喫茶店につき合わされたりして」
といいながら両手でボウルを持つような振りする。

麻美「あなた、外見て男っぽくサッカー選手なんて格好いいけどさ、今話聞いているとそれじゃ二人のお姉さんに玩具にされてんじゃないの」
重信「そうなんだ、」

麻美、重信の話を聞いて思わず吹き出し

麻美「それじゃ、あなたちょっと気の毒みたい」
重信「そうなんだ、だんだんお酒が飲めなくなってきて、困るんだな、チームの皆と飲むときに」
麻美「あたしんちはぜんぜん逆よ、・・・・」
    父がお酒が好きで影響受けちゃったの」

麻美・重信ベンチに腰掛けて向き合う

■ラウンジのベンチ

二人でラウンジのベンチに休んでいる。
  
重信「君んちとぼくんちはまるっきり正反対なんだ」
麻美「あなたんちとあたしんちを足して2で割るといいかもね」
重信「・・・・・・。」
麻美「ところで重信さんはホテルでなにをやりたいの」
重信「俺、俺はフロントでも料飲部門でも、営業でも身体を動かしてい仕事につきたいと思うよ。一日机に座って仕事をする、総務とか経理はごめんだ。数字がまるきり弱くて」
麻美「あたしは料飲レストランでもいいわ。何しろお給料いただいて日本、東洋。西洋料理まで覚えられたらいいよ。でも企画とか経理とかの事務でもいいわ」
麻美「なんだかあたしとあなたと仲のよいお友達になれそうね。まるっきり正反対なのがいいのかも」
重信「そうだな、友達として付き合おうよ」
麻美「あらためてっと、あたし井上麻美よろしくね」
重信「僕は、長谷川重信っていうんだ、よろしく」

二人とも立ち上がって、長谷川重信、手を麻美に差し伸べる。麻美、微笑して手を差し伸べ握手する。

重信「ちょっと待って、この手をそのままでええと」

手のひらにサインして
重信「サインしたからこれを持っていよう。」
 と言って、重信手を滑らせて

重信「じいってコピー」
重信「コピーしたからもう大丈夫だ」
麻美「なるほど、コピーね、あなたって面白い人なのね」

BGM「始まり」(冬のソナタ)韓国KBS放送
     
■8階研修会場

会社支給のお弁当を食べ終わり     
     
奈央子「よかったら32階の喫茶室でお茶しません?」
洋一郎「うーん、そうしようか」

二人立ち上がりエレベーターで32階へ

32階 レストラン

奈央子「洋一郎さーん、窓際に座ろうよ、船の見えるところがいいわ」
二人、窓際に座る
奈央子「・・・・・」
洋一郎「・・・・・」
奈央子「洋一郎さん、あなたは何でこのホテルを?」
洋一郎「僕は一流商社辞めてこのホテルに入ったんだ」
奈央子「そこを辞めるなんてもったいない」
洋一郎「誰もそういうね。」
奈央子「そうなの、それで?。」
洋一郎「ところが配属されたのは国内石油部で、まあ部長と中近東に二回出張したりしてよかったんだけど」
奈央子「部長さんと中近東2回もいけるなんて、もったいない」
洋一郎「それ以来、毎朝国内石油の需給調査でコンピューターで会議のための日報、月間統計表づくりなんだ」
奈央子「ずいぶん地味な仕事なのね。」洋一郎、そのときを回想するように沙耶香に話す。

回想

■統括部長席

部長の脇のソファで向かい合っている。

部長「実は、今年わが社は創立120周年を迎えるんだけど、それを永遠に残そうということで社史を出そうということになって社長室所属で社史編纂室を設けることになったんだ」
洋一郎「そうですか?」
部長 「それで室長として適任者を探していたんだが、君に白羽の矢が立って」
洋一郎「この僕がですか?」
部長 「まあ、この際会社全体の仕事を知るのには絶好の機会だし」
洋一郎「部長、お言葉ですが、僕はまだ会社に入って間もないですし、その僕が先輩を差し置いて室長になることは無理です
それに海外に出かけて現地で折衝し 日本に石油を輸入、安定供給を図るこの仕事をやりたいと入社しました」
部長「君の熱意もわかるけど、君の今後のことは充分考えるし、決して悪いようにしないからここは呑んでくれないか」 

部長席から自分の室に帰る途中

麻子「お気の毒ね、社史編纂室なんて」
紀子「彼、部長にでも何でもはっきり言いすぎるし」
竜彦「あいつ空気よめねえし、俺は部長に」
小声で部長がいないのをいいことに冷ややかな空気が流れる。
       
洋一郎、われに帰り
洋一郎「ごめん、中野さん」

奈央子「商社って難しいのね、華やかな感じだけど」
洋一郎「それでもっと人と人とのつながりを求めてホテルに転職したわけ」                                                                       
奈央子、右腕の時計を眺めて

奈央子「あら、もう時間、ところであたしのケータイ拾ってくれた大切な人にお礼しなくちゃ、それにあたしの話も夜聞いてね」
洋一郎「お礼なんていいよ、ほかの人でも拾ってあげたよ」
奈央子、洋一郎の冷たい反応に
奈央子「ああ、そうそりゃそうだけど、あたし想い出のケータイ拾ってくれた人っていってるのに」   
洋一郎「ごめん、怒らしたかな」

奈央子、少し機嫌が悪くなるが、思い直して、
奈央子「いいわ、許したげる」
洋一郎「・・・・・・・・。」
奈央子「あなたからの借りはきちんと返さないと気がすまない性分ないの」
洋一郎「借りはいつでもいいよ、そんなに気を遣わないように」
奈央子「そうそうあたしの知っているところでお食事して、ケーキ食べて、ピアノ演奏聴きながら楽しむたりしたところあるの」
洋一郎「君がそんなに言うなら借りを返してもらおうか」
奈央子「あなたが、私が落としたケータイ拾って呉れなければ・・・
改めてお礼いうわ。あのケータイ、私にとっては想い出の・・・」

と言葉が詰まる
そういって奈央子の顔を見る。心の中で高校時代の初恋の人に似ている。

洋一郎「一年たったある日、石油統括部の部長に呼ばれて行ったら、洋一郎「おことばですがるけど、社長室からたってのことだと選考された 」
奈央子「はっ、商社で」
                                                  
■展望台

再び展望台で

奈美「ねえ、ここで記念の写真撮らない」
太一「おーいっ、写真撮るぞ」
さびしそうにしている韓国のキム・ヨンイルに
奈美「キムさんもいっしょに撮りましょうよ、」

と声を掛ける

絵里奈「いっしょに撮りましょうよ」
といってキムの手を引いて彼も仲間に入る
いわれて彼も加わり、6人になる。

富士夫、「じゃいい、はいチーズも古いし、1+1はにっつこれも
古いし、キムさん、韓国ではこういうときに何てうぃうんだ。」   
キムヨンイル「韓国じゃ1・2・3のこと、ハナ・トウ・セッツていうんだ」
皆 「OK,それできまり、国際親善で。」
富士夫「ハナ・トウー・セッ」

皆いい笑顔でパチリ、午後再び研修第一日終了

写真を撮り終えるとキム・ヨンイルまたさびしそうな顔に戻る。
傍の絵理奈心配そうに彼に尋ねる。

絵理奈「ねえ、聞いてもいい?あなた一人でさびそうだけど何か心配事でもあるの」
キム「絵理奈さん、僕のことを気遣ってくださってありがとうカムサハムニダ。実はソウルの高校時代の初恋の人がいなくなって、その後日本に来てることがわかったんです」
絵理奈「ああ、そうなの?。ここは日本だからきっとその人に会えるよ、元気だしなさい」
キム 「どうもありがとうございます。」

■午後の研修室
総務部長

「午後の講習を明日に回して、これから皆様をこのホテルの各部門に案内してホテルの機能と働きを実感していただきます。では地下2階 保守管理センター、厨房・料理部門・フロント部門・ハウスメンテナンス部門付帯施設部門を見て回ります」

■地下に通じる階段

30人の研修生たち
地下を降りてセキュリテイーセンターに通じる薄暗い通路を歩く。

■セキュリテー・センター

係員、忙しそうにホテル各階、拠点に設置している監視カメラの映像をチェック
、電気・水・ガスなど示されている回線、など動力源の数値を見ている、
各室の冷暖房状況のチェックなど、

それを真剣に見ている研修生30人

■案内役の総務部長
「ホテルの場合、収益は電気・ガス・水等の資源の管理によって大いに影響を受ける業種だけにECO管理にまたお客様の目に触れない部分は電気を節減しています。さらに最近犯罪・事件の多発があり、お客様の安全に最も力を入れていて火災事故の際の緊急措置、防火扉、非常の際の脱出、2001年のテロ事行為件以来迅速に対処できるシステムが出来ています」

「最近は、皆様の安全といのちを守るための対策を・・・・・」

総務部長「ええ、ここでは、ボイラー管理者・エレベーター保守点検・電気工事資格者などが活躍する部門で皆さんもこのような資格を取って置かれることをお勧めします」

研修生の中から
羽田 「石川、お前、ボイラー1級管理の資格持ってるから早速どうだ」
石川 「こんなところでお前言うなよ、俺の秘密を、これじゃわかってしまうじゃないか」

皆笑う。和やかな雰囲気

奈央子 「私たち、華やかなフロントとか宴会・会議室、結婚式・披露宴を見てホテルは華やかと思ってたけど」
洋一郎 「そう、一日中地下で人の目にも触れず、ここで働く人は作業服で時には油にまみれている、生命・安全のために24時間頑張っていることを覚えておかないとね」

■研修生 菅原
研修生の菅原が涙をためている。
奈央子は「あの、菅原さん、あなた、何で、泣いてるの」
菅原 「僕、実は親父があるホテルの保安員なんです、父はホテルに勤めていてホテルというものはお客様の心を掴むものだ、しっかり頑張れと励まされました」
奈央子 「ああ、そう」

菅原 「お父さんなんて保安員だろう、恥ずかしくて、お父さんはもっとレストランとかフロントになりたくなかったのといったんです」
■家で言い争う父と息子(対面)

父「お前は」
菅原「なに、お父さん」
父「お前はなにもわかっとらん、お父さんの言ってることが」

菅原 「何もホテルのことわからなくて、ごめん」

総務部長 「次はホテル後方の調理・厨房部門を見てまいります」

暗い通路の左
■調理室

「大淵調理長おじゃまします」
「今日は、ああ、研修生の・・・ご苦労さん、説明したいとこだけど大きな宴会と結婚式披露宴が入っていて」
「かまわずにやってください」
「おおい、302号室の宴会の鯛は」
「100人分確保できたのですが10人が」
「わかった、10人分確保しろ、大至急だ、まだ二時間ある」

調理場のなべからときどき真っ赤な火が高く立ち上る
「中華、焦がすなよ」
「ステーキ焼けたか、40人分」
「遅いぞ、もっと早くしろよ」

総務部長 「ここでは、お客様の予約を受けた料理を和・中華・
西洋・東洋といっても最近はエスニックな韓国・台湾・タイ・はてはベトナム料理と多様化するお客様のニーズに合わせて時間までに迅速に調理する技術が求められています」

側のトレー・カート

大石「うまそうだなあ、ああ、腹減った」
大きな丸ごと鯉の中華揚げ煮
皆、大石を見ている。
大石、頭を右手で掻きながら
大石 「皆さん、どうもすいません」
頭を下げた

総務部長 「調理・厨房部門では料理だけではありません、食品管理面で冷凍技術・材料仕入れ管理・衛生管理などがホテルにとって何よりもは大切なもので食品一つ一つの原価管理、一円が何よりも大切です」
研修生「なるほどね」
総務部長「さらに、食品の中毒事件です、いったんホテルでそんなこと起こしたらホテルの信用は失墜します」

研修生、石田 「総務部長、そのためには仕入れ業者の交渉も大切ですね」
総務部長 「その通りです、仕入れ業者は数社を選定して業者間による競争入札をすることが大切です。業者を固定してそことばかり付き合うとリベートとか、よく新聞で話題になりますが」


総務部長 「では、皆様憧れのフロント部門です」
総務部長は大きな貨物用エレベーターで皆を誘導し1階のロビーに向かう

時計2時半
■ 一階 フロント

ひっきりなしに電話が掛かる。
5人のフロント担当員は両手に電話を持って片方はあごで抑えてお客の応対をしている担当者

■フロント内部

フロントテーブルの下にはコンピューターが設置されている

■フロント予約状況コンピューター

予約状況を見てはすばやくキータッチで情報を入力している。

■電話で話している担当者

フロントF 「伺っております、石井さまでいらっしゃいますね、5時にご到着お待ちしています」
フロントD「はい、シングルルーム二部屋ですね、はい、おとりしておきます」
フロントB「お客様502号室のお客様はただいまお出かけです。ご用件お伺いしておきましょう」
フロントC 「ディズニーランド直行バスは・・・・・・」など


■フロント正面

フロント主任 「主任の堀 博です。ここでの業務を簡単に説明いたしましょう」
主任 「ここでは、お客様の予約・当日客、個人・団体客の受付、館内の案内、客室への宿泊客の取次ぎ、料金清算などがあって迅速な時には非常時など急病人の発生、救急車の連絡、さらに浴室、水漏れ、空調設備の不調など、とにかくあらゆるクレーム発生の応対など
機敏さと寛容さが要求されます」

■研修生背中、後ろ
主任「また当ホテルは外国人利用客も多いので英語のほかにほかに一カ国後ぐらい話せるようにして置いてください」
研修生 重信「外国語ねえ、もっと英語やっておけばなあ」

絵里子 「キムさん、韓国語が役に立つわね」
一通り説明が終える。

■フロント正面

洋一郎「あの、フロントをやっていて一番苦労することってなんですか」

主任 「なんといっても客室管理業務ですね。ホテルはお客様が到着する6時ごろには満室近くなっているように心がけています。そのためにVIP・常連客・固定客・フリー一元客何人ぐらいかあらかじめ予測していつも利用いただく常連客はあらかじめお部屋を取ってフリーの方は端の部屋から埋めてゆきます」

洋一郎 「フロンとってかっこいい服来て一番目立ってあこがれていたのに本当は大変な仕事だ」と洋
奈央子「そうだよね、大変だよね」
皆は大きくうなづいている。


主任 「またお客様の中には性格が違いすぎて口論に発展する方もおられますので別の階のお部屋をお取りするとかして、とにかく表通りから見た客室全部が部屋割りの上手下手によって大きく影響しますね。まあ外から見てあのホテルはいつも繁盛しているなあと思っていただくことが大切です」
「そうですか、こんな細かいとこまで」

■ らせん階段

ゆっくり上がりながら登っていく
テナントのあるコーナーを見るそれから

■エスカレーター

■ 4階の結婚式、宴会場

■ 400人収容の大宴会場

総務部長 「今晩はこの円形テーブルがお客様でいっぱいになります」
研修生田中「ここが」

宴会担当水野係長「水野です、宴会・会議。披露宴で大切なことはそれぞれのお客様のご予算と開催時間に合わせてお料理をお出しすることです。バランスを取ってちょうど終了前に最後のデザートをとか結構気を使います」
「なるほどね」

「後ろでそっと見守りながら、時々お客様のもとに近づいて「お料理の味いかがですか」とか「ワインいかがですか」とかそれとなくおもてなしすることも大切です」

「セットの際のテーブルは食器、フォーク、スプーンなどの種類とかワインの種類を暗記できるまでに覚えることが必要です」

■ビジネスセンター

コンピューター
操作する女性

そのほか、「ホテルの中枢機能であるビジネスセンターでは、巨大コンピューターが稼動していて経営意思決定を行う予算管理・各部門業績管理・予約管理・部品管理・原価管理・販売管理などがいつでも把握でき、さらにお客様のメール。コピーを受け付けたり、場合によっては伝言を取り次いだりしています」

■8階研修会場

やや疲れた表情で8階会議室に帰ってきて各自椅子に座る。

麻美を突っついて、重信、小声で
重信 「ほら、未来のホテルの経営者になるんだろう、たりして」
麻美 「あたしって昼からずっと見学してていて、もし寝たら明日あなたのノート見せてもらうかも」

■麻美・重信の席

麻美は何とかして目を覚まそうとしている、
肘を突いたままいつの間にかこくりこくりと居眠りをする。
重信 「俺って女の子にやさしい人なんだなあ」
麻美 「えーとノート書かなくちゃいけないわ」
麻美時々はっと気がついて講義をノートに記す
手からペンを落として居眠りをしていた。

重信、麻美を突っついて小声で
重信「ほら、未来のホテルの経営者になるんだろう、眠ったりして」
麻実「あたしって昼から授業眠たくなっちゃうの。もし寝たら明日あなたのノート見せてもらうかも」

■新宿駅西口

仕事を終えて、自宅へ急ぐ人の波、遊びに行く人の波交差

BGM「愛と青春の旅立ち」

奈央子「この先の角の超高層ビルの45階があたしたちのいくところなの。」

■新宿超高層ビル45階スカイタワー

場面、夜、新宿タワービル45階最上階。
室内も高級感があるクリスタルルーム
BGMは、中央から聞こえてくるピアノ「白い恋人たち」で室のムードがいやおうなしに高まる。

係員「いらっしゃいませ、何名さまで・・・・」
奈央子ハンドバックからカードを取り出している。会員カードを差し出している。
係員 「お席にご案内いたします。2名さまですね」
奈央子「えっそうよ」
洋一郎「へえっ、すげえところだな」
係員 「いちばん眺めのいいところにご案内します」
 
■スカイラウンジ内

天井は星空、下は黒いじゅうたん、間接照明で大きな窓から新宿の夜景が一望できる。中央にピアノがあって白いフォーマルドレスを着た女性がピアノを弾いている。

奈央子「一寸いいでしょう。だからここで借りを返すといったの」
奈央子「それに妙に酔っ払った男の人もいないでしょう。女の子同伴でないとここには入れないのよ。」
洋一郎「君が借りを返すと言ったところは、ここか、君と今後付き合っていくのは重荷だよ」
奈央子「ねえここいいでしょう。女性専用の会員クラブになっているから」
洋一郎「こんなところで借りを返されたら、僕身が持たないよ。ここはよく来るの」
奈央子「とんでもない、滅多に来ないわよ、でもあたしにとって大切だと思う方だけとここに来るよ」
洋一郎(思わず) 「えっ、僕ってそんなに大切な人?」と聞く
奈央子「そう、あたしにとっては想いでのケータイ拾って呉れたんだから」
洋一郎「えっ、君の想い出というのが気になるの」
奈央子「それは秘密、その内わかるかもよ」

洋一郎、それ以上聞けず。

奈央子「ここは大学時代の親しい友達と来ることあるわ、夜景見てあっきれいとかいってるわ。あと」
洋一郎「あとって」
奈央子「父を連れてきたの」
洋一郎「お父さんと?。」
奈央子「そうしたら、父は俺は江戸っ子だってんだ。お前は俺がやっているお金をこんなところで使っているのかと怒られたわ。」
洋一郎「江戸っ子って何やっているの?」
奈央子「下町で団扇とか扇子作っているの」
洋一郎「そうなんだ」
奈央子「第一、ピアノでなんか西洋の音楽やったりして、やはり俺には演歌かなんかとかこんなとこで言うもんだから、あたし恥ずかしくて」

当時を思い出すかのように、奈央子一寸肩をすぼめて、恥ずかしいようなそぶりを示す

洋一郎「扇子職人ではね」
奈央子「ちょっとあなた失礼ね」(一瞬むっとするが抑える)
奈央子「あたし、もう少し父が、センスがよければいいと思うのだけど」
洋一郎「扇子にセンスね、すごい。」
奈央子「何よ、あなた何いっているのからかわないで、偶然なっただけよ」
(ポイと横をふりむく)

洋一郎「君は何ていうか才能があるっていうか」
奈央子「変なところで感心しないでよ」
奈央子「お食事しましょうっていってもここは軽い食事で、ピザ、カレー、スパゲッティ、ピラフ位なの?」
奈央子「あたし、ピザにするけど、あなた好きなもの、何でも」
洋一郎「奈央子さんの選んだものをいただくよ」

洋一郎、奈央子とピザ、野菜サラダを食べながら
奈央子「ねええ、ワインかカクテル飲みましょうよ。わたしはマンハッタン・・・・・・・・・、あなたは」
洋一郎「僕、そうだなあじゃ、シンガポールリスニング」
奈央子「あなた、カクテル通なのね」
洋一郎「いや、シンガポール行った時飲んで」
奈央子「恋人と行ったの、いいなあ」
洋一郎「まさか、部長のお伴」
奈央子「お食事終わったらデザートたべましょう」
洋一郎「そんなものあるの?」
奈央子「洋菓子のバイキングがあって何でも食べ放題なの」
洋一郎「さすが女性殿堂なんだあ」

そう言って

バイキング、見るとあらゆるケーキ、ゼリー、飲み物まで種類が豊富
洋一郎「ふうっつ、すげえ、驚いたな」
奈央子「ねえ、すごいでしょう?、お菓子店顔まけでしょう」
洋一郎「だから女性は太るんだ」

奈央子、洋一郎

■奈央子・洋一郎の席

奈央子、洋一郎好みのデザートを盛ってテーブルにもどる
洋一郎「沙耶香さんはさすがだなあ、」

イチゴタルト、メロンケーキ、それにシュークリーム、フルーツポンチ、を見て驚く洋一郎

奈央子「あなたは?。」

「ワインケーキ、バームクーヘン、タルトを見て、あっさりしたもの

奈央子「あっさりしたものばかりね。」    
洋一郎「あれを見ただけで。」
奈央子「あれを見ただけでって?。」
洋一郎「君がせっかく誘ってくれたのにごめんよ。」
奈央子「さあ食べましょう、あたしケーキは別腹なの。」
洋一郎「じゃ、僕も頂かせてもらいます。」
奈央子「どうぞ。」
洋一郎「本当だ、このクリームの上品な甘さ、一寸ワインぽい味染み出てチョコレートと溶け合ってエレガントで引き付けられる。」

洋一郎、一口食べるたびに菓子の味を話すので、
奈央子思わず笑い出す。

洋一郎「あなたって面白い、急に料理評論家になったりして。」
奈央子「あたし、ホテルの仕事昔から憧れていたの、きれいなところでフロントとかかっこいい制服着てお客様の応対するのっていいなあといつも考えていたの。」
奈央子「それでいろいろ調べて2年間、経営学を学びたいと思いニューヨークの大学に留学したの。」
洋一郎「2年もアメリカに単身行くなんてすごい。」
奈央子「あなたはホテルの何を希望してるの?」
洋一郎「僕もホテルといっても、料飲関係、客室関係、渉外関係いろいろあるのでひととおり経験したいよ。でもやっぱりフロントかな。語学も役に立つしね。」
奈央子「意欲的なのね。」
洋一郎「案外、君と一緒でフロント配属されそうな気がする」
奈央子「そのときはよろしくね。」
洋一郎「ところで君はどっかで見たような気がするんだけど。あの?」
奈央子「あのって何なの、言ってごらんなさい。早く、早く」
洋一郎「君だって、大切にしているケータイの秘密教えて」
奈央子「それは、・・・・・そのうちわかる日が来ると思うわ」
洋一郎「じゃ、僕だって秘密にしておこう」

二人、顔を見せてにっこり笑う
夜も更けて中央のピアノ曲、「イエスタデイ・ワンス・モア」、バラード曲に変わる。
ロマンチックムードに奈央子

奈央子「ねえ、洋一郎さん、あたしと踊らない?」
洋一郎「えっ僕、それが情けないことに君と違って」
奈央子 「いいのよあたしに付いて来てくだされば」

■ダンスを踊る奈央子・洋一郎

見ると、3組のカップルが踊っている。二人しばし、奈央子、洋一郎踊る
天井のスポット、踊っている3組のカップルを照らす。
奈央子「あなたお上手ね、踊れないと言ってたのに。」
洋一郎「何か、僕今夜すごい幸せ。」

■新宿地下街

新宿地下街、家路を急ぐ二人、ふとある洋品雑貨コーナーに沙耶香、目を留めて

奈央子「洋一郎さんにあそこの黄色いネクタイ買ってあげる。」
洋一郎「奈央子さんの元カレはネクタイ、何色が」
奈央子「はっ」
洋一郎「なんとなく聞きたくて」
奈央子「まだ、今日逢って、そんな仲じゃないし」
洋一郎「だよね、また怒らせて、ダメだな僕は」
奈央子「私が黄色が好きだから、大事なケータイ拾ってくれたし、やっぱり恩人だし」

洋一郎「じゃ、僕はあそこの店の黄色いスカーフ、今日二回も怒らせて」
奈央子「これ高いんでしょう?」
洋一郎「頼む、黙って受け取って。」
奈央子「ありがとう、ありがたくいただくわ。そうそう明日二人でこれをして来ること、いいわね。?。」

二人、手を振って分かれようとするが、
洋一郎「あっ、そうそう君のメールアドレス教えてよ。」
奈央子「いいでしょう、あなたストーカーじゃなさそうだし」
洋一郎「えっ、僕が、奈央子さんだって平気でいうね」
奈央子「ごめん、怒らせて」

場面、再びホテルのロビー、重信を待つ麻美、時計見ながら
麻美「彼、まだかしら、約束の6時半過ぎたのに。」
重信「何分待った?遅れて悪かった。」
見ると麻美、ピンクのスーツ、その上にレースのカーディガン、一段ときれいな装い
重信「すごい変身で驚いたよ」

■夜の新宿駅西口

新宿駅西口駅へと向かう人、仕事が終わり家路に急ぐ人が交錯して

重信「君の家、どこなの?。」
麻美「家?、家は新宿の山の手よ。割と近いところよ。」
重信「良い所に住んで居るんだね。」

重信に直美、関心を示し、いい友達になろうと言ったことを理由に

麻美「ね、私たちお昼いい友達になろうねと言ったじない。少し
だけ寄り道して行かない?」
重信「寄り道って」
麻美「私、おいしい炉辺焼きの店知っているの。魚もおいしいし
ビールも少しだけ。どう?」
重信「えっビールって言ったよね。君ってお酒は呑めるの」
麻美 「少しくらいはね。さっき話したでしょう?」
重信、自分の育った環境とまったく違うと驚いて
重信「さっき話したようにだめなんだ俺」
麻美 「一寸、聞いていい?」
重信 「何?。」
麻美 「あなたって、恋人いるの?」
重信「僕サッカーで何度も優勝に導いているんだけど、体育会なんて男の城なんだよね。女性と会う機会がないんだよ」
麻美「そう、それじゃ仮にあたしがあなたの恋人としてあなたと一緒にお姉さまにあったらどうかしら、驚くかしら」
重信「そういう手もあるなあ、君に無理言って、一日恋人になってもらおうかな」
麻美「・・・・・・・・・」
麻美、笑いながらそっとうなずく

■ビルの地下1階「炉辺焼酒場」

とあるビルの地下1階、炉辺焼きのある店に入る重信と直美
カジュアルっぽいろばた焼きの店、魚を焼く音とにおいがあたりを充満している。一杯の店内

店員「ええー、らっしゃい、何名さま」
麻美「二人」
店員「お二人さん。こちらへどうぞ」

(フランスの田舎の民族衣装を着た女性の店員が案内する。)

中央カウンターに座る重信と麻美、会社帰りのビジネスマン、若いカップルでにぎわっている。
いろりばた焼きなのに洋風の内装が落ち着いている。
いか、ほっけ、いわし、さば、いわし、海老、ホタテなどの海産物が並べられていて見るからに食欲をそそる。

重信「女の子に誘われて来るなんて、はじめてだ」
重信「この店、雰囲気いいでしょう?。炉辺焼きなんだけどここは洋風でカジュアルっぽいから女の子も入りやすいの。
それに魚介類も新鮮で地中海風とかフランス風とかにアレンジするの」
従業員がやってきて中央カウンターの近くの席に案内する。

■炉辺焼酒場中央カウンター

いさき、あじ、さば、いわし、かれー、ほっけ、帆立、えびなど、新鮮な魚貝類がある。
内装は落ち着いた茶色で魚をかたどったステンドグラスがきれいでどこか従来の男性路線と大きく異なり、さらに音楽もヨーロッパ音楽を奏でていてソフトムードである・
重信「焼酎、地酒、にごり酒、酎ハイ、ビール、ウイスキー、わあたくさんあるなあ。見ただけで・・・・・・・。」
麻美「本当にだめそうな顔してるみたいな」
重信「・・・・・・・。」
麻美「なら、酎ハイはどう?。メロン、いちご、オレンジ、りんご、いろいろあるわ。ビールもあるし、少しくらいどう?」
重信「ビールは、日本製のほかに、ハイネケン、バドワイザー、それにタイガー、ほかにも」

麻美「あたしは、ビール小ジョッキ、ビールはハイネケン、そのあとはメロンの酎ハイ、」
重信「じゃ、僕は小ビール、バドワイザーでいいよ」
麻美「あとは、なにか食べないと、和洋取り混ぜいろいろあるわ、ええと

焼き鳥、肉豆腐、肉じゃが、ウインナー、マリネ、魚は地中海風ソテイあたりでどう」

重信「いいね、いいね」

注文の品が運ばれてきて、麻美、重信楽しそう

麻美「あたしたちって本当に最初から出会いがあった見たい」
重信「あなたの家と俺の家が変わっているし」
麻美「でも正反対って、案外うまく行くんですって」
重信「ところでアメリカのホテル学校役にたったの?」
麻美「う~ん、日本とアメリカの風土、習慣の相違なのかなあ、日本の方がきめの細かいサービスやってるみたいな」 
重信「そうなんだ」
麻美「っていうか、アメリカ人て国がめっちゃ大きいからあたし的には大雑把に見えるし」
重信「そういう君が午後の授業に居眠りしてた」
麻美「たしかに、あそこんとこで何かアメリカで聞いた感じだったよ」
重信「道理でさっき居眠りしてたんだ」
麻美「変なことに感心しないで?」
重信「そうだ、君のニックネーム、居眠り姫ってつけちゃおうかな」
麻美「何なの、ああむかつく」
重信「でも君のために全部ノートとレコーダーに記録しておいた」
と言ってポケットから重信HDDレコーダーを取り出す。実
音を再生して麻美に聞かせる。講師の声と共にスースーという音
麻美「何なの、このスースー言う音は?」
重信「これこそわが愛する居眠り姫さまの可愛いいびきさ。」
麻美、それを聞いて少し不機嫌に、

麻美「あっそう、あなたもう、いい加減にして、いやだこんな証拠物件残して。たたくわよ」
重信「・・・・・・・・・」
重信「でも、あなたってずいぶん容易周到ね、内容録音してくれたので許してあげる」
重信「でも麻美さんは、すでにカリフォルニア学校出ているし、だから当分居眠り姫さまでいいよ。なに俺は君のために全部ノート、録音しておいてあげるし」
麻美「いやな性格、人をからかうって、でもさっき言ったとおり日本と外国のホテルサービスが違うの」
麻美「・・・だから、私も居眠り姫ばかりではね」

麻美、小ビールを飲み終わり、従業員を呼んでメロン酎ハイを頼む
麻美「あなたは何するの?」
重信「あっつ俺コーラでいいよ」
麻美「本当に飲めないんだ」
麻美「あなたって骨太でがっちりして、頼もしい存在にみえるけど、
   スポーツのOB会とか、コンパとかそういう時どうするの?」
重信「そのときは、一寸付き合って、あとはジュースで雰囲気もりあげるとか」

麻美、酎はいを重ねているうちに酔っ払ってきて
話がスローモーになって行く。
麻美「変な~人ね、あ、あなたに~話すけど、ね聞いて、あたしねえカリフォルニアのホテルの~~ホテルの経営学部に居て~~、あなたよりもっと素敵な男の子が居てえ、・・・・・すきだったんだけど振られちゃうのよね。麻美、アイ・ラブ・ユーとか言ってさ、なのによう、ある日彼は、僕の婚約者ですってえ~~~、思い出しっちゃった。今夜悲しい・・・わ。わかる~~、重信さあんこの気持ち。」

重信、酔ってきている麻美を見て頃合を考える。重信、酔ってる麻美を見て可哀想になるがどうしていいか戸惑う。

重信「麻美、家まで送るから、もう帰ろう」
麻美「あたし~悲しくなった~~~」
ハンカチを目に当てて泣く麻美

重信「続きはこんどにして帰ろう」

ついに重信、足元がよろけようとする麻美を肩で受け止めてお勘定を支払い、一歩ずつ階段を上がり道路に出る。
重信「麻美さん、大丈夫?」
麻美「大丈夫よ、これくらいのことでえ~~」
麻美だいぶ酔っている

■タクシー

表通りの通りがかったタクシーを止めて、麻美を先に中に入れて、自分も乗り込む。
麻美から住所を聞き、
重信「中野1-23番地」
タクシー走り去る。

■タクシーの中

タクシーの中、走り出して麻美、酔いが醒める
麻美「重信さん、あなたにこんなにご迷惑掛けてごめんなさい」
と言ってハンドバッグからお金を取り出して重信の洋服のポケットに入れる。

■山の手住宅街・麻美の兄の家

タクシー麻美の兄の家に到着、黒塀のある閑静な山の手住宅街。重信、麻美の兄と話している。
兄「麻美、重信さんによくお礼を言って、ここまで送ってくださったのだから。」
麻美「あたしが彼をお誘いしてあたしが酔って、今夜はすっかりご迷惑おかけしてどうも本当にすいません。」

■地下鉄駅に向かう重信

重信、麻美を送り届けて、地下鉄駅に向かう途中。
重信「今日は、変な日だったなあ。麻美からお酒誘われて、俺が彼女を家まで送るなんて。麻美明日来れるかなあ」

■ホテルに向かう街路樹の道路

翌朝の出来事、空は快晴。
吹く風、さわやか、青々とした街路樹に春の到来を感じる
ホテルに向かう研修生の姿

■ホテル内ロビー

ホテルロビー、すでに研修生が集まっている。
洋一郎、絶対遅刻できないと今日は早めに着いている。
洋一郎「ところで沙耶香、僕が上げたスカーフしてくるだろうか」
ホテルのドアから紫色のワンピース、赤い大きなベルトがアクセサリー。
彼女が入ってくるが、小走りで洋一郎のところへ行き、

奈央子「お早う」

奈央子、洋一郎の後ろで目隠しをして、

奈央子「どう驚いた?。じゃ~ん、ほらあなたの呉れた黄色いスカーフ・・・・・・・・・・・・・・。
あら、あなたもね。」

洋一郎、奈央子、エレベーターで仲良く研修室に。

ホテルフロントの前の黒いレザー貼りのソファに腰かけている麻美、
バッグからファッション雑誌取り出し半分顔を隠している。

麻美「ああ、重信さんにあんあ迷惑掛けて、どうしよう、恥ずかしい」
重信「お早う、麻美さん、昨晩はどうも。」
麻美「あああたし、あなたに大変な迷惑を掛けて本当にごめんなさい」
重信「いいんだよ、君と楽しい時間っ過ごせたし。君との友好関係深まったし」

麻美、重信に言われて一緒にエレベーターで研修センターに、シースルーエレベーターでホテルロビー、噴水遠ざかる。
麻美、重信の顔を見れず、雑誌で半分顔を隠し、その表情がとてもいとおしいと重信思う

麻美「本当に昨日は済みませんでした。あたし恥ずかしくて、もう二度と飲みません、ごめんなさい」
重信「いいんだよ、ちっとも気にしていないんだから」



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長編小説「山手線」

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はじめに
東京の大動脈、一周45分の環状線「山手線」始発電車から終電車まで朝・昼・夜いろいろな人が利用している。例えば、築地市場にすし種を仕入れにいくすし職人、夜、終電車に乗り遅れたサラリーマン、昼はサラリーマン、ショッピングを楽しむ主婦、高校生など、学生たち。夕方は、夜の歓楽街に急ぐマダム、そしてまだまだいろんな人種が山手線に乗ってくる
そこには人生の悲喜こもごもの物語が展開される。・・・・・・そこに色々な人間模様が見えてくる。「山手線」は、女性運転手、車掌も含めた歓呼・車掌・女性テープの案内・駅の案内などを忠実で究極の真面目な鉄道を再現させたい。一方それとは対照的に3つの仮想電車1100Y,1200Y 1090Yのそれぞれの朝・昼・夜と時間でどんどん変化していく自由な乗客の回顧・独り言・複数以上の会話、それは断片的なものであるかも知れないがともかく「山手線」は今日も色々な人々を乗せて走る。
ここに出てくる山手線は実在しますが物語はドキュメントであり登場人物は実在しません。


始発電車 大崎ー品川

冬の明け方、
吐く息が白いそんな寒さを運転士の田崎祐司(51)は大崎電車区のまだ眠りについている電車に今日の乗務をするため1100Yの点検に掛かった。

「皆E231に変わったなあ、僕がかわいがっていた205ー340は元気に働いているだろうか」
そのE231-340は、石巻線で第二の働き場を過ごしている

1輌ずつ見回りながら11輌最終車輌にきたとき車掌の森下光男(27)にあった。
「おっご苦労さま」
「田崎先輩よろしくお願いします」
「こちらこそ、今朝はやけに寒いが頑張っていこう」
「あの、田崎先輩、僕、山手線乗務今日が初めてです」
「えっ、君にとっては記念の日だね」
「は、はい、うちの息子がお父さん、僕、学校から帰ったら線路のそばで手を振るからね」
というんです。

「先輩はお子さんは」
「ああ、女の子が一人だけど二十歳を過ぎて出て行ったよ」
「それじゃさびしいですね」
「うん、小さい頃は何とか鉄道好きになってほしいと電車の本、買ったりプラモデル与えたりしたけど」
「そうですか、女の子は電車よりもほかのものに」
「まあ喜んでくれたのは七歳ぐらいだったかな」
と娘の小さな頃の出来事と重ねていた。

田崎は最近白髪が目立つ髪の毛を気にしながら帽子を脱いでかぶり直し、あご紐をきりりとしめた。森下が乗務員室のドアの取っ手に手を掛けて鍵を回して戸を開けて田崎もそれに続いた。

森下がパンタグラフのスイッチを押してあげるとモーター音周りだし室内灯が点灯し張り詰めたような冷たい空気が流れる車内を歩いて11両目を歩き先頭車車輌E231ー030に戻り、乗務員室のドアを鍵で開けて運転士室に入った。

これから眠っている車輌に息を吹き込んで電車を走らせると思うと一瞬緊張するのだった。マスコンのスイッチを入れブレーキ、加速・減速がスムースに動くかをテストした。圧力計に次いでパンタグラフの昇降テストのあと、さらにATC作動テストと相次いで行った。

すでに大崎駅では始発電車に備えて通り抜けの通路のシャッターを開けて、切符の自動販売機も作動するようにスイッチを入れられていた。

駅のホームでは、
「おはようございます、本日もJRをご利用くださいましてありがとうございます。間もなく始発電内周り、品川・新橋・東京・秋葉原・上野方面行きが2番線に入って参ります。危ないですから黄色い線までお下がりください」
時計は4時20分を過ぎて

さすがにまだ電車を利用する乗客は少なく肩にかごを掛けた築地市場のせりに出かけるジャンパー姿の仲買人、職人が目立った。

その中にすし善の矢田純蔵もいた。始発電車はライトをつけてしずしずと大崎車輌区側から2番線に入線してきた。

乗客が電車に乗り込んだ。

「JR山手線をご利用くださいましてありがとうございます。この電車は外周り品川・・・・・」
乗客に放送した。ミュージックサイレンが鳴り駅のホームの女性の案内放送が
「2番線のドアが閉まります」

田崎は前方を見つめていた。まだ、闇に包まれて3灯式信号機の表示が赤から注意、緑に変わった。
「大崎定発」
「信号よーし」
「出発進行」
「場内制限15」

電車は構内を過ぎると
「制限解除、速度60」

「車内でのケータイ電話の」
4号車の座席に腰掛けて居るすし職人矢田善三(55)は息子の真一(27)が勤めて居た会社を辞めて家業の寿司屋を継ぐというのだった。矢田は息子が自分の店のあとを継ぐと云ったことを喜んで居たのだった。寿司屋のほかに海鮮料理レストランを別に持って居た。

寿司のネタは築地市場に朝早く起きて出かけて誰よりも新鮮な材料を仕込んでくるのが一番大切だと考えていた。それで息子の真一を最初の朝に起こして築地の市場に連れて行った。

「真一、今から一緒に寿司ネタ仕入れに築地にいくからおまえも起きてついて来い」
と寝ている真一に声を掛けた。真一は、
「お父さん今何時」
と云いながら隅の時計を見た。
「わっ、俺堪忍してよせっかく爆睡してんのに」
「何をいってんだ、真一今日から寿司屋になるんだろう、さあ起きて起きて」
「わかったよ、起きるよ」
真一は不承不承起きて顔を洗い、歯を磨きグレーのブルゾンに格子模様のマフターをまいてを父について行った。しかしそれ一回だった。
「お前はなあ、やるというからこうしてお父さん教えているのに、」
「あなた、その辺で」
母、桃子が仲裁に入ったので
「まあ、しょうがないか」
矢田はそれ以上何も言わず寿司ネタの仕入れはしばらく一人ですることにした。

「次は品川です、東海道線・総武横須賀線・京浜東北線に京浜急行線、次の品川でお乗り換えです・・・
田崎は
「制限60」
「制限50」
「品川停車」
そういってマスコンレバーを手前に少しずつ戻した。
電車は緩やかにスピードを落とし品川駅1番線ホームに滑り込んだ。

品川ー田町ー新橋

品川駅では今日一番の始発電車に乗り込もうとしていた人たちが待機していた。

7号車の島本秀夫(32)もその一人だった。
島本は昨日、遠藤部長(57)が札幌支店長に転勤するために開発二課全員が出席して送別会をホテルで行ったあと、同僚3人と酒場で飲んで、つい山手線の最終電車に乗り遅れたのだった。

「しかし、遠藤部長の送別会にしてはお前がいいたいことを言うのでひやひやしたよ」
「だって、俺が企画書を一生懸命になって、女房からパソコンたたいてると、女房があなた家にまでもって帰って仕事する必要ないでしょう、第一それだけもらっているわけじゃないし」

「相手本社に今度帰ってくる時は取締役だぞ」
明石春樹(37)がいった。
「わかってる、お前の言うとおりだけど」
「会社というのは、お前の熱心さもわかるが、相手に嫌がられては、どんないい企画でも」

「でも、俺が遠藤部長に出した企画書は50本だよ、出すたびに」
「えっ、お前はそんなに」
明石がびっくりした顔で島本の顔を覗き込んだ。
「部長の席に呼ばれて、視野が狭い、自分のことばになってない、どこかでやってることまねするなと」
「最悪だなあ、お前にとっては」
「そう、部長は俺の気持ちをさかなでするようにだめだしばかりだよ」
早朝早々昨日の送別会の荒れた雰囲気を引きずっているようである。
始発電車でこれからなにもかも新しく始まるというのに。

身を突き刺すような張り詰めた空気で島本は酔いが醒めて
「家ではさぞ心配してるだろうな」
時計を見ると4時25分だった。島本は鞄の中からケーターを取りだして電源を入れたが
「まだ、爆睡だよな」
ケータイの電源を切った

「お待たせしました。1番線のドアが閉まります、次は田町です」
女性の駅アナウンスに促されるように
「品川4分延発」
「制限30」
「出発進行」
マスコンのレバーを手前に引くと再び電車が動き始めた。制限速度30キロを維持しながら構内を離れると
「制限解除」
「速度90」

右側には広い品川車輌区があって113系に変わって東海道線のE231系をはじめ 211系、ダブルデッカー車のE215系をはじめ、九州・山陰の寝台特急がまだ構内の照明灯に照らされて眠りについていた。

「間もなく田町です・・・」

「田町停車」
田崎はマスコンレバーを停車にブレーキを掛けながら徐々に減速させて停車位置に寸分の狂いもなく停車させた。

「田町です。ご乗車ありがとうございます」
「2番線の電車のドアが閉まります」
電車のドアが閉まると田崎は
「田町3分延発」
「制限60」
と歓呼してマスコンを手前に引いて電車は次第にスピードを増した。
「間もなく浜松町です。東京モノレール、羽田空港方面は次の浜松町でお乗り換えです」
「浜松町です。ご乗車ありがとうございます」
そのアナウンスを聞いて3号車に乗っていたコンサルタントの石塚亮太郎(35)は
座席で先方との会議資料におちはないかチェックしていたが、
「朝の7時の札幌便乗るの辛いよな」
鞄を右手に持ってドアが開くのを待ってホームの外に出て行った。

田崎は運転表の時刻と実際の時間を時計を見ながら
「やれやれまだ2分延発か、遅れを戻すのは大変なんだよな」
低い声で言った。

「浜松町2分延発」
「出発進行」
「制限60」
「信号よ~し」
指査喚呼を行いながら電車は新橋に向かって走行した。
「間もなく新橋です。新橋の次は有楽町です」す・・・・・」 
新橋汐留口の高層ビルもまだ眠りについていた。

「おっと、新橋か」
座席で居眠りしていた寿司職人の矢田は眠そうな目をこすりながら、その放送に促されて「今日はいい寿司ねたが手に入るぞう」と心の中で思いながら立ち上がってドアの開くのを待ってホームに降りた。
「新橋です。ご乗車ありがとうございます」

「浜松町2分延発」
「出発進行」
「制限60」
「信号よ~し」
指査喚呼を行いながら電車は新橋に向かって走行した。
「間もなく新橋です。東京メトロ銀座線、都営地下鉄線、ゆりかもめ線においでの方はお乗り換えです。新橋の次は有楽町です・・・・・」 
新橋汐留口の高層ビルもまだ眠りについていた。

「おっと新橋か」
座席で居眠りしていた寿司職人の矢田は眠そうな目をこすりながら、その放送に促されて「今日はいい寿司ねたが手に入るぞう」と心の中で思いながら立ち上がってドアの開くのを待ってホームに降りた。
「新橋です。ご乗車ありがとうございます」

さすがに新橋で降りる人は多かった。
朝の築地卸売り市場に向かう仲買人の番号をつけた黒い帽子とジャンパーゴム長スタイルの黒い一段が階段に吸い込まれるように集まって消えていく。
それとは反対に終電車で乗り遅れ一夜を過ごした人が電車の中に入ってくる。
今まで車内のあちらこちらにぽつんと腰掛けて居た人が新たに乗ってきた人で座席がつながって人がこしかけるようになった

左の窓から見る霞ヶ関までのビルも暗く、ただ街路灯と自動車のテールライトだけが延々と続いていた。

始発電車 新橋ー有楽町ー東京

「1番線のドアが閉まります。次は有楽町に止まります」
ドアがプッシュと言って閉まった。
ピンポン・ピンポン・ピンポンと3点のチャイムが鳴ると
田崎は
「新橋2分延発」
「出発進行」
「制限60」
マスコンを手前に引くとたちまち60キロになったが前方に有楽町駅がもう見えてきた。

山手線は全32駅ありどこの区間も駅間距離が短く、一駅平均1,08キロと中央線31駅平均1,8キロ、総武線21駅、2,8キロに比べても短かった。
「有楽町ご乗車ありがとうございました」
田崎はマスコンをニュートラルの位置に戻し外を眺めた。

かってのデートの場所であり有楽町で会いましょうといった有楽町広場は大きな変貌を遂げたなと思った。
そごう百貨店が撤退し、そのあとに大型家電店が進出していた。
ここから丸の内に掛けてはオフィスビルが同じ高さで立っていたが再開発と土地の有効活用で最近は一部高層ビルに模様換えしようとしていた。


「1番線のドアが閉まります。次は有楽町に止まります」
ドアがプッシュと言って閉まった。
ピンポン・ピンポン・ピンポンと3点のチャイムが鳴ると
田崎は
「新橋2分延発」
「出発進行」
「制限60」
マスコンを手前に引くとたちまち60キロになったが前方に有楽町駅がもう見えてきた。

山手線は全32駅ありどこの区間も駅間距離が短く、一駅平均1,08キロと中央線31駅平均1,8キロ、総武線21駅、2,8キロに比べても短かった。
「有楽町ご乗車ありがとうございました」
田崎はマスコンをニュートラルの位置に戻し外を眺めた。

かってのデートの場所であり有楽町で会いましょうといった有楽町広場は大きな変貌を遂げたなと思った。
そごう百貨店が撤退し、そのあとに大型家電店が進出していた。
ここから丸の内に掛けてはオフィスビルが同じ高さで立っていたが再開発と土地の有効活用で最近は一部高層ビルに模様換えしようとしていた。

「有楽町ご乗車ありがとうございました」
田崎はマスコンをニュートラルの位置に戻し外を眺めた。

かってのデートの場所であり有楽町で会いましょうといった有楽町広場は大きな変貌を遂げたなと思った。

東京駅では、昨日東海道新幹線の関ヶ原付近で吹雪となり、最終新大阪発ひかり号が夜中の12時30分頃到着し列車ホテルの乗客が今日最初の始発電車に乗り込もうとする人が多かった。
時計は4時44分を指してまだ闇のとばりに包まれていた。

京都の岸谷涼子(31もその一人だった。
涼子は高校時代の友人が結婚するので久しぶりに実家に帰り、友達の結婚式に出たが、その帰途、例の大雪で新幹線に閉じこめられ朝帰りになってしまった。

大阪ニュー関西ホテルのロビーでは5年ぶりに友達が涼子が現れないかと大勢の人に囲まれて背伸びして入り口を見ていた。
「あっ、涼子だ」
「涼子だよ、涼子、きたあ」
まるでスターを見た時のような喜びは、涼子は高校時代皆から人気があったようだ、
「涼子、ひさしぶりっ」
「由紀子、加奈美、久子、美月、ひさしぶりっ」
女の子がよくやる5人で手を握って飛び上がって喜んでいる。
「東京から私のためにきてくれはってほんまにうれし~い」
由紀子の京都なまりは相変わらず変わらなかったが東京のことばも半分はいっている。

「由紀子、久しぶりっおめでとう、で、だんなはどんな人」
涼子の問いかけに由紀子は、
「あのなあ、うちと付き合って5年やわ、この辺で決めんとうちも涼子・由紀子に越されて最後になるっていうか」
「大阪のラジオ局のアナウンサーですねん、」
「はっどうして知り合ったの」
「公開放送に友達と出てなあ、クイズに出たらもろ正解やで舞台に上がってそれからや」
「な、涼子いつ帰るねん、たまに京都に来たよってに、二、三日ゆっくりしていったらどう」

友人の加奈美、久子、美月が涼子を盛んに誘惑した。
「ごめん、結婚式済んだら、速攻で帰らんと主人と子供二人待ってるんで」
「いいなあ、そんな家で待ってくれている人がいるなんて、うらやましいわ」
「うちなあ、由紀子も結婚、涼子も東京で家庭持ってて、うち今年中には30になっちゃうし」
美月が真剣な顔をして、
「あんたんところ丸の内の商社だよね、今度合コンあったら久子と東京までいくから参加させて」
涼子、加奈美、久子、美月の関西、東京なまりの混じった話だ。

涼子の東京の家は池袋からさらに30分の大泉学園にあった。
「主人と子供はどうしているかしら、あの人は無きっちょうだからご飯たべたかしら」
と心配だった。

考えたあげくバッグから赤いケータイを取り出してなにはともあれと電源を押したが充電が切れていた。
「あたしってどうしてこうどじなんだ、もう」
新幹線車内で睡眠不足と寝癖のついた髪を掻き分けながら低い声でつぶやいた。

始発電車 東京ー秋葉原ー上野

電車は神田を過ぎ・秋葉原に止まった。
「秋葉原です、京浜東北線、総武線・つくば鉄道線・地下鉄日比谷線ご利用の方は当駅でお乗り換えです。」
田崎は運転席から秋葉原の街を眺めた。
「ここも変わったなあ、」

戦後ラジオの部品屋として発足した通称ジャンク街がTV・AVの発展と共に世界でも珍しい総合電気街に発展したのだった。
「3番線のドアが閉まります、次は御徒町に止まります」
ドアが閉まると田崎は
「御徒町延発2分」
「出発進行」
ここまできても品川駅延発はまだ取り返せなかった。

田崎は
「2分の延発、仕方がないよなあ」
と思った。
御徒町を過ぎて上野に到着した。
「上野です。東北線・常磐線・東北・上越・長野新幹線は当駅でお乗り換えです。
3番線の電車は当駅で時間調整のためにしばらく停車いたします」
上野駅から乗ってくる客は少なかった。
かって上野駅は田舎から上京してくる人の出世駅と云われていた。
急行「津軽」「十和田」など、東京への集団就職といわれた夜行列車は新幹線開業と共に消えてしまい、夜行列車はわずか北陸からの特急「北陸」だけという寂しさになってしまった。田崎はそんなことを考えていた.

上野駅の発車のサインはミュージックサイレンでなく、昔風のベルだった。かって国鉄時代は発車ベルだったが、山手線内はベルはなく今では東京駅の東海道線の普通電車7,8番ホームと快速、遠距離電車特急寝台特急が発着する9番、10番線のベルを除いてほかの駅はソフトな特徴を持ったミュージックサイレンだった。

涼子の東京の家は池袋からさらに30分の大泉学園にあった。
「主人と子供はどうしているかしら、あの人は無きっちょうだからご飯たべたかしら」
と心配だった。

考えたあげくバッグから赤いケータイを取り出してなにはともあれと電源を押したが充電が切れていた。
「あたしってどうしてこうどじなんだ、もう」
新幹線車内で睡眠不足と寝癖のついた髪を掻き分けながら、低い声でつぶやいた。
電車は神田を過ぎ・秋葉原に止まった。
「秋葉原です、京浜東北線、総武線・つくば鉄道線・地下鉄日比谷線ご利用の方は当駅でお乗り換えです。」
田崎は運転席から秋葉原の街を眺めた。
「ここも変わったなあ、」

戦後ラジオの部品屋として発足した通称ジャンク街がTV・AVの発展と共に世界でも珍しい総合電気街に発展したのだった。
「3番線のドアが閉まります、次は御徒町に止まります」
ドアが閉まると田崎は
「御徒町延発2分」
「出発進行」
ここまできても品川駅延発はまだ取り返せなかった。

田崎は
「2分の延発、仕方がないよなあ」
と思った。
御徒町を過ぎて上野に到着した。
「上野です。東北線・常磐線・東北・上越・長野新幹線は当駅でお乗り換えです。
3番線の電車は当駅で時間調整のためにしばらく停車いたします」
上野駅から乗ってくる客は少なかった。
かって上野駅は田舎から上京してくる人の出世駅と云われていた。

急行「津軽」「十和田」など東京への集団就職といわれた夜行列車は新幹線開業と共に消えてしまい、夜行列車はわずか北陸からの特急「北陸」だけという寂しさになってしまった。田崎はそんなことを考えていた.

始発電車 上野ー池袋

上野駅の発車のサインはミュージックサイレンでなく、昔風のベルだった。かって国鉄時代は発車ベルだったが、山手線内はベルはなく、今では東京駅の東海道線の普通電車7,8番ホームと快速、遠距離電車特急寝台特急が発着する9番、10番線のベルを除いてほかの駅はソフトな特徴を持ったミュージックサイレンだった。

「お待たせしました。2番線のドアが閉まります」
ホームの頭上から女性の案内テープが流れてドアが閉まった。
田崎はマスコンレバーを強く引いた。
「速度60」

上野駅を出ると、京浜東北線・山手線・高崎・東北線・常磐線と幾重にもレールが走っていて暗闇の中からヘッドライトを点けた電車が不意に近づいてきて賑やかになった。
5号車に乗った青森出身の登米富善はかっての集団就職のことを思い出していた。
登米は今は長年仕えた和菓子屋をのれんわけしてもらって巣鴨に和菓子屋を営んでいる。
あの頃は戦後の低迷期から日本はようやく近代国家として歩もうとしていた。
そのために若い労働力が必要で集団就職制度の発足に基づいてその労働力を東北の農村に求めていた。
通称出世列車なるものが大量の中卒生を東京に運んだのだった。
「津軽」はその代表的な列車だった。
登米は10年ぶりに母が危篤に陥って急遽ふるさとに戻っていたのだった。
「おふくろさ、迷惑かけてせめて時々は国さ帰らねばなあ」

電車は鶯谷・日暮里・西日暮里を過ぎて田端に着いた。
「2番線のドアが閉まります」
「田端2分延発」
田崎は喚呼しながら2分の遅れがまだ回復していないことにストレスを感じていた。

「池袋までなんとかしないとなあ」
低い声でつぶやきながら
「信号よおし」
「速度60」
田端から左にカーブすると下り坂になっていてすぐに駒込駅が見えてきた。
「駒込停車」
田崎は、停止位置にブレーキレバーを引いて電車を止めた。
数人の乗り降りがあり、辺りはようやく闇の帳から空が白みかけてきた。

電車は鶯谷・日暮里・西日暮里を過ぎて田端に着いた
」「田端2分延発」田崎は歓呼しながら2分の遅れがまだ回復していないことにストレスを感じていた。「池袋までなんとかしないとなあ」低い声でつぶやきながら「信号よおし」「速度60」田端から左にカーブすると下り坂になっていてすぐに駒込駅が見えてきた。 「駒込停車」
田崎は、停止位置にブレーキレバーを引いて電車を止めた。数人の乗り降りがあり、辺りはようやく闇の帳から空が白みかけてきた。対向の内回り電車も少しずつすれ違いが増えて来た。数人の乗り降りがあり、辺りはようやく闇の帳から空が白みかけてきた。

東京から乗った岸谷涼子は昨日の新幹線の大幅遅延で列車ホテルに変貌した車内でよく寝れなかったのか、可愛い寝息を立てて熟睡していたが、「次は、池袋です。埼京線、湘南新宿ライン、西武線・・・・・という車内の案内で目を覚まして、「いけない、乗り過ごすと主人に・・」と低くつぶやき、座席を立って眠そうな目をこすってあくびをしてドアに立つ。

「池袋、池袋ご乗車ありがとうございます、埼京線・湘南新宿ライン・西武線・東武東上線・地下鉄丸の内線・半蔵門線はお乗換えです。ご乗車ありがとうございました。
岸谷涼子は、コートの襟を立てての左手の黒い手袋で赤いバッグを抱えるようにして
「早く家に帰らないと」
とつぶやくようにして西武線のホームに向かって階段を早足で下りて行った。

朝、ラッシュアワー電車 池袋ー高田馬場ー新宿

池袋駅は1日乗降客約160万人という新宿駅と肩を並べるマンモス駅なのだが、今は各ホームに明かりが点いて電車がホームに止まっていた。
後には喧騒と悲鳴の起きることは想像もできない

「まもなく4番線に当駅発外廻り新宿・渋谷・品川方面電車が参ります、危ないですから黄色い線までお下がりください」
正面に1200Y池袋車両区所属の電車が静々と走って入線してくる。
初電から2時間半経って7時30分JR東日本浜中哲夫(26)の運転する1200Yはぴたり定位置で停車した。

車掌は香川まどか(23)だった。JRが最近積極的に女性の門戸を広げており、まどかもその一人だった。
まどかは工業高校から鉄道専門技術学校を出て昨年JR東日本を受けて見事合格したのだ。
友人からは、まどかが鉄道専門技術学校に進んだ時、
「あんた、鉄道専門学校に行くなんて」
「でも、おじいちゃん、お父さんの子だし」

たしかに女の子がファッションにも振り向かず鉄道を撮りに紺のジャージーにジーンズで男の子まがいの服装で休日はカメラを構えて電車を撮影するので、友人たちからは電車子ちゃんと呼ばれる始末である。
お父さん、おじいちゃんが二代鉄道の仕事をしていたせいか、
「私はおじいちゃん、お父さんの遺伝子を受け継いでかなあ」
と考えてみた。

まどかの夢は自分のデザインした電車が走ることである。
事実、中学生の作文で、
「私の夢」で
「私の家族はおじいちゃんが鉄道省、お父さんがJRです。だから段々鉄道が好きになりました
私の夢はいつか電車のデザインをすることです。洋服にもいろいろな色とか形とかいろいろなのがあるのと同じように電車もきれいなデザインの形の電車が走って欲しいです」

まどかと同じグループの咲子・絵美理が
「ねえ、たまには渋谷に出ておいしいもの食べようよ、あとファッションとか109見たいし」
と誘っているのに・
「ごめん、おじいちゃんと明日秩父鉄道のSL乗りに行くの」
「あっ、そう、あんたとは付き合いきれないよ」

最近の幹部候補生も現場体験をしてもらうという会社の方針に従って女性の運転手、車掌が進出してきている。
今回は運転手経験を終えて、今日から見習いとして車掌業務に就いたのだ。
あらためて今朝、自分が乗る7時25分発外回りE231を見て自分はこの巨体を相手に戦うのかと帽子を少しあげてまじまじと電車を仰いで見た。

「わたしもうまく止められるようになったなあ」
家でも祖父義男(76)が電車でGOのゲームを買ってきて、
暇を埋めるように熱中していた。
「なあ、まどか、おじいちゃんなあ、山手線運転うまくなったぞう」
と言ってコントローラーを元に戻して定位置で止めたのだった。
「おじいちゃん、私に貸して、うまく止めて見せるから」
孫、まどかは祖父とのコミニュケーションはゲームを一緒にするのが一番だと思っていた。

「でないと、でないと、そう、おじいさんとの話も必要なんだ」
50歳も歳が離れていては無理からぬことだ。
まどかは、おじいさんが鉄道省、父が国鉄、まどかが続けば三代鉄道一家になるのだ。

「今日から、おじいちゃん私、車掌業務なの」
「頑張れよ、まどか」
研修で何回かシュミレーションで車掌業務を体験したものの実車乗務は今日がはじめてて、ラッシュ時の波がうねるようなホームいっぱいにあふれた乗客を見て胸が詰まりそうだ。
「何だ、こんなことで頑張れよまどか」
おじいちゃんの声が聞こえてくるように思えた。
定位置に止まり、まどかは首を窓から出してドアスイッチを上げるとドアが開く、一瞬乗客の列が崩れてなだれ込みわずか15秒で席が埋まる。
11号車の日東自動車の黒川敦は、反対側のドアの近くに身を置いて流れて行く風景を目で追っていた。
黒川が日東自動車に就職したのは40年前だった。

まどかは158センチのまだ初々しい小柄な女性だが、前方を見つめるまなざしはもう立派な鉄道員だ。
「池袋、お待たせしました、当駅発外回り高田馬場・新宿・渋谷・品川
新橋方面行きです。まもなく発車します。発車間際の駆け込み乗車は大変危険です。次の電車をお待ちください」

川越市から池袋、新宿の日東自動車本社に向かう黒川敦(60) は、今日で定年を迎えた。35年の歳月はあっという間だった.
黒川はホームと反対側のドアのわずかな隙間に居場所を作り、洋服のポケットから黒色の手帳を取り出して拡げた。

2月22日(金)今日が誕生日、60歳の、その日が定年、黒川はそう思いながら手帳をじっと見つめていた。
1月4日始業式・10:30挨拶回りS工業橋田部長・13:10・D金属工業新年宴会(新橋加茂屋)から始まって昨日まで時間刻みにスケジュールが書かれていた。
手帳はサラリーマンの武器なのだ。今日2月22日ですべてが終わりか。

最後部の車掌室には、今日の香川まどかを教育するベテラン車掌、大黒貞夫(43)がまどかの一挙一動の動作を見ていた。
香川まどかは、今日が私の夢の第一歩だよ、そのためには車掌でも運転士でもどんどんやるよ、顔が光り輝いているが、でもはじめての朝の乗客の詰め掛けるうねりにちょっとびっくりしていた。

今までは、私も朝のラッシュの一人だったけど今は、このおびただしい乗客を制御して動かさねばと真剣に考えていた。
メロディーチャイムが鳴って、ホームのスピーカーが、
「まもなく山手線外回り、新宿・渋谷・品川・新橋方面行きが発車します」
メロディーが鳴り止んでまどかは電車に乗り、ドアスイッチを押した。

その瞬間、一人の中年の男が駆け寄ってきた。
まどかは瞬間困惑した。ドアを開けるべきか、開けないと乗客が、だけどその分遅れるし、開けないで発車、万一乗客が電車に巻き込まれたら
瞬時の判断は今までも教習で学んできた。なのに実際は。
まどかは決断してドアを開けた。
乗客は膨れ上がっている乗客の隙間に後ろ向きに身体を捩じらせて乗車した。
ドアを再び閉めて電車は発車した。

まどかは脇のテープのスイッチを押した。
「この電車は山手線外回り、新宿・渋谷・品川・新橋方面行きです。
次は目白です、お出口右側です」と女性アナウンスが全体に流れる。
まどかは壁にかけてあったハンドマイクをはずして、
「おはようございます、JR東日本をご利用くださいましてありがとうございます。この電車の運転士は浜中哲夫、車掌は香川まどかです。山手線外回り新宿・渋谷・品川・新橋方面行きです。次は目白、お出口右側に変わります」
と丁寧に放送した。

教習の先輩もうなづきながらまどかをあたたかく見守っている。
山手線の車内から、
「女性車掌だよ、今朝は」
「かわいい」
「この頃多くなってきたよ」
「アナウンスもやわらかくていいなあ」
などの声が漏れてくる。
車掌室では

教官の大黒貞夫が
「香川さん、忘れていない、何か」
と聞いてくる。
「忘れてる、私がねえ」
「香川さん、さっき乗客が」
「い、いけない、先輩ごめんなさい」
落ち着いていたつもりが、
急いでハンドマイクを握って、
「乗客の皆様に申し上げます、発車の際の駆け込み乗車は危険ですのでお止めくださいますようお願いします」
と付け加えた。
(いけない、初日から初歩的ミスで)

まどかは、
「教官、どうもすみません、初歩的ミスしてしまって」
「いいよ、まあ、最初は誰でも失敗があるものだよ、僕も昔、新宿を出てまた間違えて新宿といったことが」
といいかけてスイッチが入ってることに気がついて
「香川さん、スイッチ」
といった。
車内ではスイッチを切っていなかったのであちこちから笑いが拡がっていた。
「ドジだわ、あのまどかという車掌、あんたも時々ドジやるし」
「なに、それ私のこと」

明日から空白になる手帳が可哀想に思えてきた。
俺は明日からここになんと書けばいいのか。見慣れた朝の池袋駅のラッシュ光景が異質に見えてくる。

日本はようやく低成長を抜けきって東京オリンピックの開催を前に道路・建物・交通機関などが近代化されつつあった。

それまで山手線の空は果てしなく広かったが空をさえぎる高層ビルがタケノコのように突然空に向かってのびはじめていた。

黒川の日東自動車も高速道路、地方幹線道路の発展に伴って長い間の国民車構想で日本の自動車は低調であったのが本格的な高速運転も可能な低床車に移行しようとしていた。

黒川はまさにずっと日本の自動車の歴史を見つめてきたといっても過言でなかった。

電車が目白・高田馬場・新大久保と停車してやがて右窓に新宿超高層ビルの黒い塊が迫ってくる。
40年前、新宿は東口は駅広場の様相を呈していたが西口は広大な新宿淀橋浄水場の土地を再開発用地として超高層ビルを建てる構想が持ち上がっていて、西口から先は緑樹のある道路がまっすぐどこまでも伸びていた。

「まもなく新宿に着きます。湘南新宿ライン・JR埼京線
中央線・総武線・小田急線・京王線に東京メトロ丸の内線都営地下鉄大江戸線はお乗換えです」
言い終わって
「新宿は大変、アナウンスも」
香川まどかの弾んだ声が流れる。
指導教官が、
「たしかに、僕が若いときは埼京線・湘南新宿ライン
都営大江戸線なんてなかったし」
「香川君、いいよ、その調子で」
ほめられて香川のほほは赤くなっていた。

黒川は40年前が昨日のことのように思えて仕方なかった。
妻咲子とは同じ社内恋愛で結婚した。
黒川は、妻によく僕が設計した自動車で君のうちに迎えに行くよといっていた。

池袋始発電車なのだが電車がホームに入ると整然と並んでいた乗客の列が崩れて、ドアが開いたとたんなだれを打って乗り込んで15秒でもう立ち席者が出るの

日東自動車の黒川敦は、反対側のドアの近くに身を置いて流れて行く風景を目で追っていた。
黒川が日東自動車に就職したのは40年前だった。

日本はようやく低成長を抜けきって東京オリンピックの開催を前に道路・建物・交通機関などが近代化されつつあった。

それまで山手線の空は果てしなく広かったが空をさえぎる高層ビルがタケノコのように突然空に向かってのびはじめていた。

黒川の日東自動車も高速道路、地方幹線道路の発展に伴って長い間の国民車構想で日本の自動車は低調であったのが本格的な高速運転も可能な低床車に移行しようとしていた。

黒川はまさにずっと日本の自動車の歴史を見つめてきたといっても過言でなかった。

電車が目白・高田馬場・新大久保と停車してやがて右窓に新宿超高層ビルの黒い塊が迫ってくる。
40年前、新宿は東口は駅広場の様相を呈していたが西口は広大な新宿淀橋浄水場の土地を再開発用地として超高層ビルを建てる構想が持ち上がっていて、西口から先は緑樹のある道路がまっすぐどこまでも伸びていた。

黒川は40年前が昨日のことのように思えて仕方なかった。
妻咲子とは同じ社内恋愛で結婚した。
黒川は、妻によく僕が設計した自動車で君のうちに迎えに行くよといっていた。

結婚してから3年目に直人が生まれた。直人は黒川が家に仕事をもって帰り自動車の本など、家でも見て研究していたので直人は、パパは自動車作るのと自然自動車に興味を示し最後には4歳で街を走っている自動車の名前を当てるまでになった。

それから2年後黒川夫婦の間に女の子理香が生まれた。
父親の影響とは恐ろしいものでいつしか、
「私は観光バスガイドになりたい」
といって学校を出て観光バス会社に就職した。

でも、黒川も決して順風漫歩であったわけではない
会社生活とは山あり、谷ありで、黒川も日東自動車が満を持して新型車を発表することになっていたが、粉飾決算が明るみに出て黒川を引き立ててくれた藤原常務が責任を取って辞任、黒川は閑職の経営企画室に追いやられたのだった。
ちょうど、菱新自動車から黒川にスカウトの打診が起きたが妻の咲子は反対した。

黒川はすっかり自信をなくして会社に出ても取り立てて仕事のない経営企画室の勤務を体が拒否反応起こすまでになってしまった。

まもなく菱新自動車は外国資本の自動車工業から提携の話が持ち上がって合理化に伴う人員整理が行われた

「あなた、私のいってること正しかったでしょう」
妻の咲子にそういわれた。

黒川は、
「この山手線が永遠に線路を踏み外さず走ってるのと同じように俺も40年この山手線を踏み外さずに走ってきたのだ。
本社のある田町まで駅が一つずつ減っていくたびに40年の想い出が消えて行くような気持ちさえしてきた。

やがて前方に新宿超高層ビルが見えてきて
「新宿停車」
「速度15制限ようし」
「新宿停車」
運転手、浜中哲夫が前方を見つめながら指で示唆歓呼を行っていた。

朝 ラッシュアワー電車 新宿ー渋谷ー品川

新宿で乗客が幾らか降りて乗客が乗ってこない瞬間、黒川は窓際の手すりから身体をすばやく動かして座席に座ることが出来た。
反対側はシルバーシートになってるが黒川がこの優先席に座るにはまだ年令から遠かった。

電車は今最新機器を積み込んだE231である。
黒川が就職した昭和40年代は、チョコレート色の国電
73系から鶯色の高性能電車103系で夏などはまだ冷房もなかった。
冬はともかく夏のむせるような暑さの時にはYシャツを袖まくりしてハンカチで滴るような顔の汗をぬぐう
のだが全身からほとばしるように出る汗は、天井に設置された扇風機の生ぬるい風を送っているだけで駅を降りるとズボンまでもが汗で島模様を作り濡れている
ずいぶんいい時代になったものだ、今は、
黒川は瞑想していた。

車内のサラリーマンは黒川と同じようにきちんと黒・紺のスーツにぴしっと決めていて一部のすきもない戦闘服とも居えるが、黒川は今日8時間後には洋服を脱がなければならない。
そう考えるとサラリーマンとしての死刑執行を受けるような限られた時間に苛立ちさえ感じ始めていた。

40年正しく寸分も間違えずサラリーマンの時計を刻んできてそのレールに乗っていたがここにいるサラリーマンと違って黒川の時計だけが終わりを告げる。

黒川は、左手で頭をかきながら
「むなしいっ」
誰にも聞こえないように小さくつぶやい

新宿から乗った6号車の北川奈美は今朝、待望の会社訪問をしようとしていた。
奈美はかねてから新聞社とか雑誌社に仕事を得たいと考えてマスコミ研究科に籍を置いていた。

低成長で大卒でも女子の就職は大変なご時勢なのだ。
男女雇用機会均等法、規制緩和など派遣制度の改革もあいまって就職の門戸は広げられたものの正社員より、不安定な派遣社員が増加してそれが女子の就職を助けている。

奈美は自分から進んで積極的に履歴書を書いて自分の論文なども持ち込んで直接会社訪問を行ったが成果は実らず履歴書だけが机に山のようにたまっていた。

母はそういう真剣な奈美に心配して、
「あなたのやりたい気持ちもわかるけど、マスコミとか新聞とか男職場に行ったらこき使われるだけよ、
奈美は早めに結婚して家庭を持つことが一番いいと思うの、お父さんもお母さんもどんどん年とってくるんだし」
「お母さんの言いたいことは、早く孫の顔が見たいでしょうって言うんでしょう」
「女の幸せは・・・・」
「それってお母さんの古い価値観念なの、押し付けないで、私にはどうしてもやりたいことがあるので」
「・・・・・・」
娘にはっきり言われると母は弱かった。
「お母さん、ごめん」
そういって両親に決別するように少しむっとした顔で山手線に乗ってる自分がいる。、

奈美はドアを見ながら、
「いけないよ、こんな怒った顔では」
そういって顔を横に伸ばすようにして口を広げて笑みをたたえるようにして見た。

やっと新橋にあるT出版社があってくれることになったのだ。
失敗は絶対に許されない。

この山手線が私に幸せをもたらせてくれたら
そう思いながらもう鉛筆で赤線も入れられないぐらいに書き込んだ常識問題集を食い入るように見つめていた。

同じ頃6号車には萩原三郎がいた。
萩原は印刷屋街とも言われる飯田橋の中小印刷業を父から受け継いで印刷会社を営んできた。
古くからの創業で荻原があとを継げば親子三代目になるはずだった。
一時は、世の中の好況を反映して出版社からも印刷以来や商店のちらし、大型店、住宅販売など大きな仕事を抱えていた。
しかし、印刷革命がコンピューターの技術革新によっていわゆる活版印刷の低迷が始まりじりじりと影響が現れてとうとう廃業に追い込まれてしまった。
45歳という働き盛りの荻原は仕事を失い、20年近く連れ添った妻、栄子は、
「子供もまだ二人小学校5年と中学を抱えているので
大阪の実家に帰ります」
と突然昨日宣言されて途方もなく悩んでいた。
「このままだと仕事がなくてホームレス生活か」
荻原は一生懸命に祖父、父の仕事を継いで事業を発展する、それで中学校3年生から仕事を時々手伝っているうちに自分のうちの事業を手伝うには早く仕事を覚えたほうがいいと考えて卒業とともに家業を継ぐ覚悟をしたのだった。
だけど、やはり高校は出なければと都立の数少ない夜間高校を努力して出たのだった。

印刷しか知らない何のとりえもない俺がハローワークの窓口をたたいても再就職は無理だった。

電車が五反田に近づいた時日本共同印刷の大きな建物が飛び込んできた。
荻原が一生懸命父と日参して印刷のセールスを行って一時定期的に外注として安定していた。
荻原は、恨めしそうな顔をさせながら
「畜生、俺が力がないから」
にぎりこぶしを震わせてそう思った。

「まもなく五反田です。都営地下鉄、東急池上線乗り換えです。お出口は同じく左側です」
車内テープアナウンスに続いて女性車掌業務に今日はじめてついた香川まどかの声が全車輌に響いた。

渋谷で乗ってきた乗客が恵比寿・目黒。五反田・大崎に進むにしたがって、車内は立錐の余地もないほど込み合ってきた。
乗客は隣の人の肩に触れそうになって皆、自己防衛しようとしていた。
時として、足を踏んだ、踏まない、肩が触れた、触れないと車内でいさかいが生じることもあるからだ。
さらに最近は痴漢の増加もあって、時として女性が
この人が痴漢ですといって男性を駅員につれて行く
そんな新聞記事を見て、
乗車率は山手線の中でも一番高いのではないのだろうか、香川まどかは後部車掌室からそんなことを考えながらじっと窓を通じて満員で膨れ上がった乗客の姿を見ていた。

いつになったら超満員の乗客が救われてくれるのだろうか、もちろん、国鉄時代から京浜・東北線の品川・
田端間分離工事、運転間隔をちじめる超高性能電車
山手線車輌の一部四扉車輌など、必死にラッシュ緩和対策を行ってきたのだが相変わらずラッシュは解消されなかった。
一時は効果が現れたものの、東京23区内への人口流入
昼間人口の増加、ビル需要の増加、商業施設の集中など、解決が難しかった

「ねえ、混雑緩和対策として東海道線なみに山手線も
11両を16両に出来ないものでしょうか。
車内いっぱいの乗客を見ていて香川まどかが聞いた。
「難しいだろうね、というよりも各駅とももうホームの延伸は難しい、限界だろうね、それに16両にしても昼間の輸送需要から考えると採算の点でも」
指導教官の黒田は香川まどかに難しい事情を示した


渋谷で乗ってきた乗客が恵比寿・目黒。五反田・大崎に進むにしたがって、車内は立錐の余地もないほど込み合ってきた。
乗客は隣の人の肩に触れそうになって皆、自己防衛しようとしていた。
時として、足を踏んだ、踏まない、肩が触れた、触れないと車内でいさかいが生じることもあるからだ。
さらに最近は痴漢の増加もあって、時として女性がこの人が痴漢ですといって男性を駅員につれて行くそんな新聞記事を見て、
乗車率は山手線の中でも一番高いのではないのだろうか、香川まどかは後部車掌室からそんなことを考えながらじっと窓を通じて満員で膨れ上がった乗客の姿を見ていた。

いつになったら超満員の乗客が救われてくれるのだろうか、もちろん、国鉄時代から京浜・東北線の品川・田端間分離工事、運転間隔をちじめる超高性能電車
山手線車輌の一部四扉車輌など、必死にラッシュ緩和対策を行ってきたのだが相変わらずラッシュは解消されなかった。
一時は効果が現れたものの、東京23区内への人口流入
昼間人口の増加、ビル需要の増加、商業施設の集中など、解決が難しかった

「ねえ、混雑緩和対策として東海道線なみに山手線も
11両を16両に出来ないものでしょうか。
車内いっぱいの乗客を見ていて香川まどかが聞いた。
「難しいだろうね、というよりも各駅とももうホームの延伸は難しい、限界だろうね、それに16両にしても昼間の輸送需要から考えると採算の点でも」
指導教官の黒田は香川まどかに難しい事情を示した




同じ6号車には40歳台のミセスと見えるセレブな女性が3人居た。
3人は渋谷か新宿に行くようだ。
「今日、奥様をお誘いしたのはあそこの懐石料理は少々お高いですがもうそれは、京都本場の一品ですの」
「そうですか、私は主人とフランスのミシエランに乗った五つ星のレストランを食べ歩くのが楽しみでして」
「そうですか」
「何しろ主人が外務省でしょう、だからずっと海外の生活が長うございまして」
「だから今日、お誘いしたんですの」
「まあ、お値段は少々高く一人前2万円ですが味はもう」
と目黒の奥の高級街かも知れない。
それを隣で腰掛けながら聞いていた小川みずえがいた。
みずえはハケン社員だった。
「ああ、私、時給1600円か、それも雇用側から勝手に首をきられるなんて」
「テレビのようにスーパーハケンならいいけど、私の出来ることはワード・エクセルぐらいで、そんなもの今は誰でも出来るのよね」
みずえは突然長谷川商事から解雇を言い渡されて戸惑っていた。
一生懸命頑張っていたのになあ
でも、大切なデータを謝って消してしまって戦略会議が出来なくなって解雇になったのだ。
もう少しで契約更新の3ヶ月になろうとしていた。

みずえは突然の出来事でハケン会社にケータイでさっき連絡を取った。
みずえを紹介したハケン会社の担当者内田は
「とにかく話を聞きたいのでいらっしゃい、一度や二度の失敗でくじけてはいけません、スキルもあるのでもっと自信を持って」
「私が一般事務職のハケンっだったらよかったかも」
なまじっかコンピューターの資格持ってるんで会社は専門化として雇ってくれる。失敗すると専門的資格がある人が」
そんなことを頭の中で繰り返しては一人で自問自答していた。
2号車ではサラリーマンの青木慶太が沈んだ顔をして乗っていた。
慶太には小学校3年生の息子と5歳の幼稚園の沙羅がいて慶太は二人を可愛がっていた。
そういう妻と二人の子供がいて平和な小さな幸せな平凡な生活を送っていたのだ昨年会社が倒産、慶太は路頭にほうりだされていた。

40歳を過ぎてからの再就職先は見つからなかった。
営業一筋でやってきたがそれからは一家の生活は悲惨になり、慶太もガードマン・マンションの管理人になったものの正社員でなく妻は二人の子供とともに水戸の実家に帰ってしまったのだった。
別居が始まってすぐは、メールとか手紙が来て「お父さんがんばって、早くお仕事をして迎えに来てください」と妻、子供から様子が送られてきたが、半年たってから慶太が妻、子供にメール、手紙を送ってもぱったり途絶えてしまった。

「ごめん、お父さんは頑張ってるから」
そういってもハローワークでも仕事はなかなか見つからなかった。
そんな苛立ちと不安が的中して妻からこともあろうに離婚調停書が弁護士事務所から送られてきたのだった。
千代田区霞ヶ関1丁目にある家庭裁判所に出頭するために山手線に乗っていた。

「次は渋谷です、JR埼京線・湘南新宿ライン・・・・
お乗換えです。
電車は恵比寿を過ぎて右にカーブする渋谷駅に指しかかろうとしていた。
「信号20、減速」
田崎が前方を見ると線路にこちらに駆け寄ってくる人間が居る
「なにやるんだ」
大声で身を乗り出してマスコンを引いて0の位置になるように倒した。
とにか急ブレーキをかけた。

車内では急に急ブレーキをかけたのでつり革につかまってる人がなぎ倒されるような衝撃を受けている。
「わあ」
「なに」「
「ぎゃあ」
悲鳴にも似た声がした。
「あ~あ~」
田崎の悲鳴にも似た声が響き渡った・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・







・・・・・・・・・・・・・・・・・・・間に合わなかったのだ。

ゴーン、異様な音とともに男の身体は丸められるようにして車輪の下に入り、その瞬間、電車が一瞬持ち上がるような感触を受けた。
男は砕かれて電車に巻き込まれてしまった。
田崎は
「ああ、人を轢いてしまった」
急いで震える手でハンドマイクを握って
「今、人を轢いてしまった、急停車はそのため」
これだけ言うのがやっとだった。
田崎は模範運転手だった。30年無事故運転、
丁寧で時間を守り、停車位置も一度も一メートルもずらさない運転一筋、これまで励んできたのだった。
その誇りが無残にほんの一瞬で砕かれたのだった。

「お客様に申し上げます、ただいま渋谷駅で人身事故がおきてしまいました。しばらく停車いたします。
お急ぎのところ大変申し訳ありません」
車掌の矢島もことの重大さ、恐怖を伝えられて体が震えマイクを持つ手もがたがた震えていた。

乗客はいっせいに窓から外を見たものの昔と違い密閉
された窓からは線路の下を見ることは出来ない。
乗客は
「なにかあったの」
「大変だ」
そう叫びながらドアーに近寄った。
両ドアの窓ガラスは幾らか下もあるので3~4輌の人たちは死体、変わり果てた肉片を見ることが出来る。
「お、恐ろしい」
「可哀想」
「ああなんていうこと」

たったさっきまで男にはきっと家族もあっただろう、子供も、もしかして恋人も
それがもう肉屋で轢かれたミンチのような肉片に代わっている。
飛び込み自殺を図った男の身体は無残にも車輪に巻きもまれて頭も首も胴体も足もわからない黒い肉片になっていた。
線路と架線の柱には転々と血がついている。事故の無残さをあらわすかのように。
しかし、山手線は11輌の長大編成なので後部車に乗っている人は事の真相はわからなかった。「ぎいっ」と一瞬車が持ち上がる鈍い音、将棋倒しになりそうな衝撃以外は見えなかった。

渋谷駅はカーブしているが急停車駅ホームを半分滑り込んで間に合わなかったのだった。

警察官と救急員がみどりのシートをかけて皆の目に触れないようにした。
そう、電車は急には止められない。
時速60キロで走行して線路前方に人を発見しても急ブレーキをかけても200メートル以上自然走行するのだ。

鉄道で最も恐ろしいことは人身事故だ。
JR大久保駅で線路に誤って転落して女性を目の前に見て勇敢に線路に落ちた女性を救い上げ助けたものの自分は自ら犠牲になった勇敢な韓国人の青年の事件が伝えられて、線路に転落した人を助ける緊急時非常ベル装置など、またホーム下の緊急避難スペースも設けられて安全度は高まったものの今日の事故は場所が悪かった。

渋谷駅から恵比寿よりの線路にいたためにホームの乗客も発見出来えず、悲惨な事故になった。
田崎はうなだれるようにして二人の警察官に付き添われるようにしてホームから消えていった。

飛び込み自殺の現場を見たものはあまりにもリアルで無残で一生忘れられないのだ。
それは20年、30年、ずっと後までも駅を見ても悲惨な思い出がよみがえってくる。

事故の遭遇した電車に高齢者小田信夫が乗っていた。
彼は、現場を車内のドアから見ながら悲しい顔をしていた。
80歳の彼は学徒動員で沖縄戦の特攻隊として召集令状
を受けたのが終戦の3日前だった。
「俺が学生のときは、ひたすらお国のために、天皇陛下のために喜んで死んでゆくことが美学とされていた
でも、鹿屋の海軍特攻隊基地に赴いたときはもう無条件降伏を受諾、お昼に陛下の重大放送があるということであやうく命を救われたのだった。

小田はこんなに死ぬかもしれない、そんな命を終戦で救われて、皆、終戦の放送を聞いて正座して嗚咽していたが小田には泣けなかった。
否、心の中で九死に一生を受けたという歓喜にさえなっていた。
「これで俺は死ぬこともなくなった、これから先は焦土で過ごすだろうが、米が、野菜がなくてもはじめて自由を手に入れたのだ。
まだ20歳だしがむしゃらに国を立て直すのだ。
小田は、日本人はなぜ死のうとするのだろうかと考えていた。

切腹をして死んでお詫びをする、この戦争でも生きて米軍の辱めを受けるより死んで華と咲く、
母が大変な思いで腹を傷めて苦しい思いで出産するのにそんなこの世に生を受けているのに自分から命を絶つのか。

今はものが豊かで何でも手にいる、努力すれば報われるかも知れない、そんな先が明るい10代20代の若者
働き盛りの40歳台、そんな人の自殺者数が昨年3万人にも達している。
一昔前にネットであった練炭自殺が硫化水素を使った自殺が各地に広がっている。
小田は、
「すべての国民は健康で安全な最低の生活を保障する」と憲法にも定めてある。
一人でもこの世に生まれたもので無駄な人は一人もいない。
格差社会で底辺にいる人も多くなった、それもわかるが死んではいけない。
死にたくなくても国のため御国のために死ぬことが強制的に定められて10代の若者が散っていった特攻隊、そのことを考えれば生きて自分でいろいろ経験して歳を重ねて行き定められたときに死ぬべきではないかとじっと考えて訴えたかった。

依然として人身事故は減っていない
鉄道も私鉄では、ホームに安全策を設けて電車発着時だけ開く扉を採用しているのだが、駅以外の線路ウエでの飛び込み自殺を防ぐのは不可能である。
全国の路線に高いフェンスを設けても線路を横断する
跨線橋もあり完全防止は不可能である。
「この電車は人身事故でただいま取り片づけ作業を行っております。少々お待ちください」
車掌の車内に流れるアナウンスで時計を見る人、そのまま立ち止まる人、その偶然の残酷な経験をした人たちはこれからも深く脳裏に刻み込まれるだろう。
さっきまで人格もあり動いていた人が今は、ただ取り片付けとまるでごみでも片付けるように代わってしまう。
これも無残といえよう。

渋谷駅は騒然としていた。
各ホーム、否私鉄駅で人身事故を伝えている。
「ただいま、振り替え乗車を行っております。
埼京線・湘南・新宿ラインとも運転を中止しております。お急ぎの方は東京メトロ銀座線・半蔵門線、東急東横線・京王井の頭線をご利用ください」
渋谷駅は各駅とも人があふれ始めていた。

ホームでも改札口でも騒ぎが起きていた。
「人身事故だって」
「またか、よくあるな」
「早く動かないかなあ」
渋谷から新宿・池袋方面へは山手線が一番早い
回り道、たとえば新宿に行くのに地下鉄で赤坂見附に行き、丸の内線に乗り換えても、また青山①丁目で乗り換えてもかなり時間が掛かる。
改札口では電光掲示板のただいま、人身事故発生中・・・振り替え乗車を行っていますという電光文字がむなしく躍っていた。

運転手・車掌から連絡を受けて、まもなく救急車と警察官がやってきて現場を見ている。
「これは車輌、車軸も見ないとなあ」
「お知らせいたします、この電車は人身事故のため停車しております、なお、この電車は当駅で本日運転を中止させて頂きます。この電車は回送電車となります」
「ただいま私鉄線各線の振り替え乗車を行っていますので前6輌の開いているドアからお降りください」
車掌のアナウンスを聞いて
「なんだ、ついていないなあ」
「打ち切りか」

諦めにも似た表情で蜘蛛の子を散らすように皆、前6輌の車輌のドアに詰め寄って降りていった。
事故発生から50分が立とうとしていた。
「この電車は回送電車になります」
「ああ、小川ですが人身事故が起きて、今渋谷です」
「小川さん、それは大変ですね、大丈夫ですよ、待っていますから」
「ついてないよ」
みずえは一言そういって地下鉄銀座線に通じる階段を登っていった。

事故発生後1時間を経てようやく回送電車となって電車は渋谷駅を発車していった。
さっきの事故現場はきれいにされていたものの事故発生を物語る黒ずんだ水が枕木に残っていた。

ようやく何とか運転再開されたものの上下線、隣接する埼京線・湘南新宿ラインまで不通になっていてその後遺症は大きかった。
「お待たせしました、ただいま山手線・埼京線・湘南新宿ラインとも運転を開始します」
それを聞いてたrちまち山手線ホームはいっぱいに人手あふれた。
「開通したらしいよ」
「まったく困るなあ」
中にはケータイで
「お母さん、電車が直ったので今から帰るね・・・
ますみ」とメールを打っている女子高生もいる。
電車は何ごともなかったかのように原宿駅に差し掛かろうとしていた。

そのとき5号車のドア側に座っている女の子がいた。
疲れた表情で考え事をしている。
彼女宮元ますみは両親と口論して父から
「ますみ、いうこと聞かないなら出て行け」
「ああ、こんな家なんか出て行くよ」
母親さきが
「ますみ、ますみ」
といって引きとめようとしたのだが家を出て渋谷で3日間を寝泊りして過ごしたのだった。
ますみの家は父は中学校の教頭、母は教育評論家で時々新聞にも記事を書いて近所からもますみさんはお行儀がよく勉強する子として評判もよかった。
事実、中学校の成績は上位で、皆の信頼も厚く信頼を得て学級委員になっていた。
そのますみが変わり始めたのは高校に入ってからであった。

思春期特有の誰もが経験する反抗精神が芽生え、両親とも教育一家と言われていてことごとくますみは抵抗した。
ますみは黒い髪を茶、そして金髪に変わっていった。
ますみは親友朋子の家に泊まって、翌日は自由の身になったとばかり渋谷に行ってファッション209・コスプレ・カラオケ、すべて学校で禁止されたものだった夜はがらっと変貌する歓楽街を歩き回り、同じ渋谷にいた女子高生とも逢ってタバコも勧められた

二人ともこれといった目的なしに街を歩いた。
また、キャバクラの前で立ち止まり、男から声をかけられたが二人とも「私たち、いや」ときっぱり断った
深夜になるにつれて吐く息も冷たく泊まるところもなく二人はささえあってビルとビルの隙間で寝たものの寒さが厳しく目が覚めてたまらなくなって深夜営業のネットカフェに駆け込んだのだった。ネットカフェは誰もがコーヒーを飲みながらネットを楽しむ場所として親しまれているが、最近は格差社会が進んでここで寝泊りする人さへ出てきている。
世界でも主要国での貧困率がアメリカ・イギリスを抜いてとうとう第2位にまで転落している。

ますみも朋子もただ一度だけ今まで経験したことのないことを見て自分で試しかっただけだった。
渋谷の商店街の治安の維持を図っている中年のおじさんから
「高校生でしょう、両親が心配しているから帰りなさい」とも注意された。
二人はもう3日目には家が恋しくなった。
学校も3日間無断欠席してしまった。

ますみも朋子も3日目に家に帰ろうとしていた。
コンビニアルバイトでためた3万円もそこをつきかけていて帰りの切符を買ったら残りはわずかだった。
二人ともいすに腰掛けて両親にメールを打っていた。
「お父さん、お母さん、今から帰る、ごめん・・・ますみ」
両親からも家出後、頻繁にケータイに電話がかかってきたが留守電に切り替えた。
「ただいま、留守にしています。ご用件ある方は」
なすすべがなかった。

電話でも通じるのだが反対された両親の3日間の断絶は融和するには断絶の壁が出来上がっていた。
「まもなく新宿です、埼京線・湘南新宿ライン・総武線・小田急線・・・・・・」
テープのガイドが流れるとともに、ますみも朋子も二人とも立ち上がってドアが開くと出て行った。

冬の灯は早く沈む、時計は四時を過ぎていたが、池袋の駅ビル、百貨店の影が長く伸び吹き始めた北風でホームにいる人たちは寒そうにコートの襟を立てたり、ブルゾンのファスナーを引っ張りあげて首を覆い、亀のように首をその中に入れるような格好をしていた。
1200Yの山手線内回り電車がホームに滑り込んできた。

人身事故発生の影響で電車は正常ダイアに戻りつつあったがなお10分ほど遅れていた。
「1番線の電車が発車いたします、ドアーにご注意ください、次は新大久保に止まります」
ミュージックサイレンがなって電車は静かに発車した。

新宿から乗った7号車に生まれたばかりのわが子を浅草の病院に訪ねていく荒垣俊がいた。
彼は31歳、妻は29歳のときに結婚をした。それから数年間は甘い蜜月のような月日を過ごしたが気がつけば4年を経ていた。
「ねえ、あなた、私、子供がほしいんだけど」
「俺もそうだ、もう4年目だものなあ」
でもなかなか子供はできなかった。

二人で病院に行きましょうよ」
「そうだなあ、行って見てもらおうかなあ」
二人は知人の紹介で銀座の産婦人科に行った。
医師は夫、俊と妻、美佳の検査を行ったが、
検査結果は夫は問題なかったが、妻の方は「不妊になりやすく排卵誘発剤を使いましょう」という医師の診断だった。
二人は医院を出て、お互いに顔を見合わせながら
「結果が出てよかった」
と安堵の胸をなでおろした。

「大丈夫かしら」
「安心しろよ、医師が太鼓判押してくれたも同然だ」
妻も新しい生まれてくる、まだ妊娠の兆候もないのに
手芸のうまい彼女は、毛糸で靴下、帽子をせっせと編んでいた。
「ねえ、これかわいいでしょう、私とあなたの子、生まれたらこの靴下と帽子・・・」
「美佳、愛しているよ」

俊は本当に幸せを実感していた。
それから半年、美佳はずっとハケン社員でパソコンを操作して俺の少ない給与を助けてくれている。
子供は神からの授かり物だよ、いつも生まれてくるかも知れない新しい命をずっと待ってるのではかわいそうだ、美佳と一緒に冬休みの休暇でシンガポールにでも連れて行ってあげようか。

日曜日のある朝、二人で美佳が作ったフルーツサンドイッチとコーヒー、下手ながら俊が作った野菜サラダを食べながら、俊は、
「ねえ、美佳、いつも家事をやりながらハケンでがんばっている、俺も美佳と一緒に旅行を・・・」
といいながら旅行社でもらった海外旅行シンガポールを見せた。
「ごめんなさい、私、赤ちゃんができたらしいの」
「はっ、今の本当・・・・」
そんな前のことを俊は回想していた。

彼はあいにく松本に出張していた。
彼の両親からも電話・メールがケータイに来た。
「無事生まれた、女の子だ、早く帰って来い」
俊は早く病院に行って自分の子を見たかった。
また、妻美佳に
「ありがとう、本当に大変だったね」
と声をかけてあげたかった。

自分の二世、最初は女の子がかわいいなあ、兄弟が3人とも男なので余計女の子がほしかったようだ。
「どっちに似てるだろう、俺か、それとも妻か」
早く妻にあって「お疲れ様、大変だったね、ありがとう」と声をかけてあげたかった。
「女の子か、俺に似てるのか、それとも美佳か」
「バージンロードを歩くときはどんな・・・・
いけない、気が早すぎ」
頭で思い巡らしたあまりそんな先までと考えていた。

4号車にはカバンをひざに抱えてにこにこしている男が乗っていた。
井沢康夫は今日、課長昇進の辞令をもらったのだった
彼は高校を出て有名書店に勤務した。
小さい時から本を読むのが大好きで、どうせ好きなら書店に勤めよう。そしてそこで本屋のノウハウを学んで一軒の書店を持ち独立することが夢だった。
書店販売員から出発して書店チェーンでいつも売り上げトップを占めて15年目にしてチェーン本部の販売課長に昇進したのだった。

「まもなく池袋です。埼京線、湘南新宿ライン・・・
Soon will be arived Ikebukuro・・・・・」
と最近は日本語の次に英語案内が流れるようになった

「場内制限」
「池袋停車」

あわただしい一日は終わりを告げようとしていた。
山手線も終電車の時刻になった。
0時37分発大崎行き、このあと57分発が本当の最終電車なのだが、すでに東京・神奈川・埼玉・千葉に帰る深夜バスには間に合わないので37分を選んで乗る乗客が多い。
深夜営業を終えて帰宅するホステス、ぎりぎりまで会社で残業をしてやむを得ず深夜バスで帰宅、歓楽街で遊んで気がついたら終電に間に合わなかった、中にはホテルの勤務で夜勤と交代して二日ぶりに帰宅す者、そして終電車
お決まりの酔客など、実に今の世相を見る思いがする。

そんな乗客のさまざまな思いを乗せて大崎行きが発車する。
「山手線内回り大崎行きが発車します。このあた47分発電車最終電車になります」
暗黒に電車の前照灯が一筋幾手を照らしている。
「今日は、疲れたよ、朝からずっとフロントで立っていたから足が向くんだよ」
「村木さん、大変だよね60歳過ぎてのホテルでは」
同じホテルの先輩の垣田太が心配している。
「いや、僕は銀行定年後もこうして働くことが出来ることを感謝してるよ」
「先輩はいつも感謝って行ってるけど、俺にはできないな」
「まあ、働ける間はね、妻がうるさくってね」
「家でもそうですよ、家のローンも残ってるし」
とそりゃ馬にむちを当てるようで」
7号車に
「何いってやがんだい」
「いい加減にしたら、皆見ていますよ」
「ああ、見られてもいいよ 今日の・・・・部長のいうことが正しいか、どっちが正しいか、どう思う」
「先輩、平井さんのいうこと最もですよ」
「だろう、部長北海道にでもどこにでも、ああ、部長が行かなければ、俺が行くよ」
「先輩、大分酔ってますね」
お酒の匂いがだんだん車内を包んで行く。

「あのね、悲しいよ、ママ、何かというとあたしに文句いってさ」
「あなたもまだ新顔だから、そのうちなれるわよ、がんばってよ」
「あたし、気をつけて話しているつもりよ」
「秋田訛りが、誰でも最初は」
化粧の匂いをあたりいっぱいにまきながら二人のホステスの話、

「世の中、どっか間違ってると思うね、会社は景気いいのに俺は貧乏で、何とかならないか・・・
ちょっとあんたどう思う、年金だってわかんねえよ」
と盛んに周囲の乗客に不満を訴えている中年過ぎの男性

なんともわびしい話が車内で充満する中で目白・高田馬場を過ぎて新宿に差しかかろうとしていた。

「新宿です、この電車は大崎行きです、品川・田町。東京方面はすでに運転が終わっています、本日私鉄各線の連絡はすでに終了しています」
ドアが開くと同時に各車両から脱兎のごとく駆け出してエスカレーター、エレベーターとも行列が出来ている。
残業や夜、遊んで終電の乗り換え時間に間に合わない一団が走って新宿駅西口の深夜バス発着場に行く。
1:00、1:10分と相次いで近郊までの深夜バスが終電を待っている。
新宿から乗ってくる人はさすがに少ない。電車は大崎どまりでそれから先の品川方面は運転が終わっている
3号車の東和タクシーに勤務する大沢は同僚と焼き鳥矢でお酒を飲んで酩酊していて車内も足がふらつき通路をジグザグで歩いている。
「て、やんでー、タクシーさ730円になってから客は乗らないし、俺もよー、歳取ったから夜勤はできねえし、そのうち後期高齢者でいじめられるのかよ」
山手線車内はすっかり当世世相を嘆く広場に変わってしまっている。
渋谷駅で近郊の家に帰るためにホームはちょっと喧騒だった。とにかく東京都下・神奈川を主に最終深夜バスが発車直前になっているのだから無理もないことではあるのだが。
「二分延発」
「出発進行」
きらめいていた渋谷のビルの灯火もさすがに消えて
行く先を照らすヘッドライトと赤。蒼の信号灯が主役を果たしている。
「大崎停車」
目前に大崎駅のホームが見えてきた。
「場内制限15」
マスコンレバーを前方に引いて今日最後の電車の運転士前田紀夫はゆっくりとホームに到着した。
時刻は1:00をとうに過ぎていた。

「ご苦労様」
前田紀夫は、白い手袋で指差しながら「異常なし」と繰り返した後、構内運転士に
「異常ありませんでした」とホームに足をつけて交代した。
その間にも
「お客さま、この電車終点ですから」
深夜のこととて酔客は足を伸ばして座席に横たわっている。
「お客様、お客様」
何回も呼んで、やっと
「ありがとね、降りるよ、俺は品川まで行くけど」
「これから先はもう電車はありません」
「じゃ、この電車は」
「車庫に入ります」
「じゃ、車庫まで載せてくれよ」
「お客様、それはできません」
「じゃ、俺は」
「ここを降りて階段を上がり椅子で休んでください」
「えっ、この寒いのに」
「始発電車までお待ちください」
酔客に事情を説明して納得してもらうためにこんな一問一答が毎晩続く。
「まいったなあ、じゃ仕方ない、ビジネスホテルか」
すべての車輌を廻って乗客が車内にいないことを確認して入庫するのだ。
「出発進行」
「構内制限15」
電車はポイントが複雑な線路を車体を蛇のようにくねらして右へカーブ、すでに先に到着して一瞬の眠りについているE231群の中に入る。
「停車」
パンタグラフを下ろしてさまざまな機器を点検し
「異常なし」
構内運転士の白岡はマスコンレバーの鍵を抜いてしんしんと冷えている黒い冬空を見上げながら降りていった。
一周45分として一日15周以上走り乗客の喜び・悲哀を載せてその垢がついている。
わずか3時間の眠りについてまた明日もあさってもずっと同じようにいろいろな人間模様を描いて山手線は今日も走る。

みなさまお疲れ様でした。
ご乗車くださいましてありがとうございます
もしかしたらあなたが山手線の主役になっているかも知れません。













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短編恋愛音楽小説「雨宿りの幸せ」 


作家のたまご


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高野真理子は,子供たちのピアノスクールの仕事を終えて百合丘駅からゆっくりと坂を上って自宅に向かっていた。歩きながらかっての音大時代の将来はピアニストとして活躍したいと大きな夢はどこにいってしまったのか,考えていた。

真理子は3歳から10歳くらいの小さな子供を相手に新宿の子供ピアノスクールの講師として、ピアニストの夢を持ちながらいまだに実現できない、そんないらいらした気持ちをじっと心の奥底に秘めながら、矢つぎばやに変わってゆく雲のあわただしい流れと降り出しそうな空を見つめながら静かに歩いて坂を上っていた。

上るにしたがって耳元に聞こえていた電車の音がはるか背中の後ろで聞こえるような感じで遠ざかってプラタナスの木々の葉を揺する音が風に乗って聞こえてくる。上り坂の左に瀟洒な白い洋館づくりの家が真理子の家だった。

胴色の飾りのある門を開け、郵便受けを白い細い手で開けると中からどっとダイレクトメールが飛び出してきた。真理子は、それを胸に受け取ってそれから家の入り口のドアフォンを真理子は軽く触れた。中からピンポンという3連音がなっている。真理子はドアフォンのレンズに思い切り顔を寄せた。

「お帰りなさい。真理子」白いエプロン姿の母が、小麦粉だらけの手でドアの取っ手を掴み、開けてくれる。母は「こんばんは、あなたの好きなフライドチキンよ」といいながらキチンに帰り、ボウルの中でチキンに小麦粉をまぶしている。真理子は、「ただいま」と言ってそのままキチンのテーブルに腰を下ろし、手に抱えているダイレクトメールの束をめくってみた。

マンション、学習教室、スーパーの大売出しから自動車セールスなどに混じって、まだ父も母も50歳代なのに気の早い墓の分譲チラシまで真理子の家の年齢層の広さを物語っている。真理子にとっては大半は不必要なもので足元のくず籠にばさっと捨ててしまう。

一枚ずつめくっていて真理子ははっとした。小さな封筒で赤いハートのシールが眼に飛び込んでくる。「えっ、これ、なに、彼もいないし」真理子はあせるような気持ちで封を切った。一枚の便箋には「真理子、久しぶりね、元気してる、私も元気よ、ねえ、真理子、あたし赤坂のホールでピアノ独演会を開催することになったの、演奏会チケット同封するのでぜひ音楽会に来てね、絶対よ、あなたの一番の友達、磯部美紀と書かれていた。

数日後、真理子はフリルのついた白いブラウスにコーヒーブラウンの短めのジャケットにグレーのスカートと琥珀色の飾りのネックレス、久しぶりに逢う友人美紀のためにもとちょっとおしゃれをして赤坂のピアノ演奏会の招待状を持って出かけたのだった。真理子もまた、東西音楽大学ピアノ科に籍を置いて将来はピアニストを夢見ていた。音大でピアニストを目指す人たちは多く、大学を卒業しても才能と経済的な保障がないと難しかった。才能が認められて世間で認められて第一線で活躍できるピアニストはほんの一握りに過ぎない、

でも卒業後、外国の音楽院に行ってさらに飛躍したいと思っていた。ある日、真理子の夢は突然父が脳梗塞で倒れてかえらぬ人となってしまったのだ。父の経営していた金属加工工場も兄が継いだものの折からの不況もあって借金を抱えていたし時々真理子も手伝ったりしてドイツ留学どころでなかった。

真理子はとても繊細でいろいろな特技を持っていた。音楽とかけ離れた小説を書いてある賞に応募し入賞したのだった。小説と音楽はかけ離れていると思ってる人もいるようだけど、いかに繊細にあるときは華麗にあるときは激しい感情を出して描きあげることは同じはずだわ、真理子の持論だった。

それでピアニストの道を一旦あきらめてもう一つの夢、作家を目指して書籍の出版社に派遣社員として勤務し稼いだお金で今は楽器メーカーの音楽スクールに週に2回、新宿に通っていて」子供を中心としたピアノ教室で教えているほか、地域での音楽愛好家によるオーケストラの結成に精進したり、音楽のブログを立ち上げたりしている。
また、時折ピアノ演奏家として都内での音楽コンサートにピアニストとして出演するものの全力で音楽家としての灯を消さないよう懸命の努力を重ねて収入を得て生活をしている。

いつの間にか5年経って真理子も30歳近くになっていた。
そんな時いわば学校でライバルだった友人磯辺美紀がパリから帰ってきて日本でのピアノ演奏会を開催したのだった。赤坂美音ホールでは一躍ヨーロッパで有名になった磯辺美紀のピアノ曲を聴こうとする人で入り口を入ったロビーが立錐の余地もないほど満員だった。

華やかな服装と磯部美紀の話でざわめきがあちこちから聞こえてきて真理子はちょっと圧倒されそうになった。
分厚い黒地に金色の文字で「お帰りなさい、磯部美紀、下にホールの名前と名前が金色の大きなパンフレットを右手に持って真理子は美紀から送られてきた招待券をショルダーバッグから取り出してみると特A07と書かれていた。
交響楽団のメンバーが盛んに演奏前の音合わせをしている。

座席にも特A・A・B・C席とあってピアノを鑑賞するには演奏家のメンバーが目の前に見える指定席に静かに腰を下ろした。彼女が、私に特別席を招待券としてくれたのは友人としての親切心なのか、それともピアノが目の前にあるこの席で自分のピアノ演奏を誇らしげに見せようとしているのかとも考えてみた。

幕が開くと東洋交響楽団の面々がずらっと並んでいて左側にグランドピアノがあった。団員が次々に紹介されて、左側からにこやかに微笑みながら真理子の友人ピアニストが入って来る。「では、次にピアニスト磯辺美紀さんをご紹介します」彼女は中央に来て丁寧に頭を下げたが、ちょっと左を向いて真理子がわかったらしく微笑んだ。真理子もまた右手をちょっと上げて小さく手を振った。

「演奏してくださる曲目は、チャイコフスキーのピアノ協奏曲第二番、ショパンの2つのピアノ協奏曲、第一番変イ長調作品11番と第二番へ短調作品21番、それに小曲ノクターン作品9-2 変ホ長調でこの曲は映画「愛情物語」にも取り上げられました最後に別れの曲、12の練習曲作品10-3ホ長調です」指揮者が指揮台に立って、会場は一瞬静寂になった。

タクトが振られると荘重なオーケストラの調べがはじまり、ついで彼女のピアノが力強く鍵盤をたたきはじめた。彼女の指先がたたきだす調べがあるときは優雅に、あるときは激しい熱情的な調べとなって音響装置に跳ね返り次第に広いホール全体を覆った。

いつの間にかこんなにうまくなったのだろう、やっぱりヨーロッパに留学するとちがうんだなあ、真理子はそう思いながら白いバッグをひざに乗せて指を滑らせていた。演奏が終わり、場内の満場の観衆の拍手とともに胸元が開いた白いドレスをまとって挨拶する彼女はまぶしいくらいに輝いていた。額ににじんだ汗が舞台のライトに輝いて彼女の熱演を表しているようだった。

真理子と美紀はよいライバル同士だったが、友達が今こうしてピアニストとして演壇に立っているのを見て真理子も手の皮が赤くなって血管が露出するほど拍手し続けたが、数百人の中の自分の熱い拍手を美紀はわかってるくれてるのかなと思った。瞬間、自分がピアニストとして立っている姿と重ね合わせた。

実際、高野真理子と磯辺美紀はテストでもお互いが5位以内を争っていたし、よきライバルだったのだ、二人とも目指すところはポーランドのワルシャワの国際ピアノコンクールに参加することだった。学期試験でも春は美紀が第1位、秋は真理子が第1位と、実力、技法は五分五分だった。いったん忘れていたピアニストの夢が真理子の心に灯った。

ピアノ演奏会が終わるといつのまにか外は雨が降っている。真理子は親友美紀に一言だけ「おめでとう」といいたかった。演奏会を終えて通路はまだ興奮が覚めやらぬ聴衆でホールの出口に向かう人であふれていた。真理子はそんな人並みの続く強い圧力を身体ではじきながら掻き分けて反対方向の楽屋裏を訪ねると彼女は記者会見に出ているとのことだった。

それを聴いてあんなに親しかった友人磯辺美紀がもう遠くにいるのだなあ、自分の存在が急に小さく見えて来た。「彼女は、あのワルシャワの国際ピアニストコンクールで優勝して、今日、演奏会、あたしは子供たちのピアノ教室と時々小ホールの演奏会でピアニストとして狩り出されるのか」彼女は、美紀に会えないことがわかるとあらかじめ用意していた手紙の入った封筒を係りの人にことづけてホールの外に出た。

会場に着く前の雨は強くなってドアの外から強い雨音がロビーにも流れてきて降り止まず、真理子は駆け足で目の前の地下鉄赤坂見付駅の階段を下りた。地下鉄赤坂見付でホームに入ってきた電車のドアが開くと、雨にぬれた乗客としずくが落ちて床がぬれていてすべりやすい車内に入った。

新宿に出て小田急で自宅の百合丘に帰るのだった。電車は驟雨の中を走っていて、時折通過する踏切の信号も赤くにじんでいて窓の外は雫がたれていて真理子は座っていた座席から後ろを振り向いて曇っているガラスに人差し指でゆめと書きながら一つ小さくため息をつくのだった。

百合丘から真理子の家は歩いて10分ほどのところにあった。雨は一向に降り止まず自分のあこがれていたピアニストの夢が友達磯辺美紀が実現しているのを見て今の自分の立場を考えると気持ちが沈んでしまう。「いつの間にか自分の大切なものが変わってしまって」いつまで待っても雨は止む気配はなく、電車が着く度に駅の建物は雨宿りをする人が膨らんできている。

真理子はケータイを取り出して家の母に電話しようとしていた。 「あなたはもしかして東都音大のピアノ科にいた高野真理子さんじゃありませんか」真理子は、男の声で驚いて振り向くと、長身の男が立っていた。「あなたは」と聞いた。「ほら、あなたたちのピアノ指導とか演奏会で指揮をした細田誠一郎ですよ」真理子はそういわれて音大時代を思い出していた。

「あっ、あのときの、先輩」思わず大声をあげたが、周囲の人がびっくりして自分を見ていることに機がついてのあわてて右手で口を覆った。「いやあ、ここで会おうとは」真理子はピアノを教えてもらったり、演奏会の練習で厳しく指導してくれた誠一郎をひそかに尊敬し慕って先輩と呼んでいたのだ。

「真理子さんの家までお送りしたいんですがあいにく傘を持ってなくて、どうです、5年ぶりにお会いしたので、それに雨も降っていて、雨宿りにそこの喫茶店でお話しましょう」誠一郎にそういわれて、真理子も「そうですね、本当にお会いできてうれしいです」真理子と先輩は頭を両手で覆いながらすぐ左側の喫茶店に行き、あわてて駆け込み、二人はハンカチを出してぬれた毛を拭い、窓の外の驟雨が止むまで音大時代の懐かしい話をするのだった。

店内は壁がところどころステンドグラスで飾られていて天井に組木の柱があって話をするには落ち着いたたたずまいだった。おりしも「美しくも短く燃え」のBGMが流れていた。「私、この曲大好きなんです、こうして聴くのもモーツアルトの原曲と違っていいわ」「普段何気なく聞いている曲が実はクラシックだったりして、最近はCMにさへ一節が取り上げられていますよね」

「あたし、今日、音大の同期生の磯辺美紀の演奏会に行ってきました」「僕も招待されて、彼女あんなにうまくなるとは思いませんでした。でも、二人を教えて真理子さんもピアノは本当にうまい、僕は是非同じように弾いてほしいと思ってるんです」「あたしのピアノ、ほめていただいて、もう恥ずかしいです」真理子は5年ぶりの再会なのに先輩が、いや助教授が会ったばかりなのにほめられてうれしかった。「ところで先輩、ずっと居られなくて」「僕はずっとパリにいってましたから、」「いいなあ、イタリアには行きましたけど、あたしも一度ドイツ、オーストリア、そうそうウイーンに行きたいんです」「ヨーロッパはいいですよ、音楽人口が違いますからねえ、理解者も多いし」

「あたし、テレビでベルリンフィルの夏の野外演奏会見たんです。皆、くだけた格好で、丘の上にも演奏を見てる人がいて」「ヨーロッパではよく見る光景ですよ」「皆、リラックスしていてすごい身近な感じで」「真理子さんがごらんになったのは、毎年6月の夜9時から、ベルリンのワルトビューネで開かれるピクニックコンサートでヨーロッパでは有名ですよ」「皆すごい楽しんで、踊ったりライト振ったり、手鳴らしたりとか仮面を被ってるとか、ローソクをつけて、花火まで鳴って、日本と違うんですね」「クラシックの音楽が人々の生活に深く入り込んでいるんです」誠一郎の話はパリに渡ってヨーロッパの音楽に触れた新鮮な話題で真理子は惹かれていた。

ベルリンフィルといえば、その昔はヘンベルト・フォン・カラヤンによって世界でももっとも名声が高く、権威があってちょっと近寄りがたい感じの交響楽団だった。それが、この間のテレビの野外コンサートを見て、まったく庶民の懐に飛び込みあの野外音楽会を開いている。真理子はもっと日本の交響楽団が同じようにどんどん野外演奏会を開いてほしいと思った。そうすれば、もっと音楽愛好家の層が広まってしいてはピアニストにとってももっと演奏会を広げて生活もずっと安定すると思っていたのだ。「あの、」「えっ」「聞いていいですか」「はい、何でも」

誠一郎は、真理子からそういわれてちょっと驚いたようだったが、「あの、日本でももっと気楽に野外とかドームでクラシックの音楽会気楽にできないでしょうか」「なかなか現状では難しいだろうね、最近はコミックでクラシック音楽をテーマに描いたものが評判になったり、若い人がクラシック音楽に関心持ってきてるけど、どこかのロックバンドのように数万人を集めてのクラシック野外演奏会は難しいだろうな」誠一郎の答えもやはり消極的な、悲観的な見方だ。

「先輩があたしの家の近くに住んでるなんて」「僕もようやくマンション買う頭金できて」「そうだったんですか」「ええ、ここに越してきて1ヶ月目です」「道理で、先輩に合えないのも当然ですね」音楽大学を卒業して、5年の月日はあっという間に流れていった。今こうして学生時代、音楽の指導を暖かく、しかしある時には厳しく怒られて何度もピアノをやり直された細田誠一郎を目の前にしてかっての思い出が鮮やかに蘇ってくるのだった。

「よく、先輩には怒られました。ショパンの曲を弾いたりしていると「子犬のワルツ」はもっと子犬が弾むようにとか」「そんなこと言ったのか」「私が期末試験でショパンの「雨だれ」を弾くと、先輩はもっと雨がぽろぽろと落ちるようなしなやかさがほしいなあ、君のは元気すぎるよ、とにかくよく怒られましたわ」「ある時なんかショパンの課題曲を弾くと、隣にじっと腰掛けていらっしゃって、僕が満足するまでは帰さないよと、引き始めるとストップ、もう一度最初からと」「君は悔しいのか目に涙浮かべてたな」「ひとつの曲を十数回弾いても先輩、だめだしして、あたし、ダメだなあと思いました」と真理子は誠一郎のスパルタ教育を思い出すかのように話をした。「そうでしたね」「ある時、僕はラフマニノフのピアノ協奏曲第二番をあなたに演奏してもらいたいといったら、私できたらチャイコフスキーのピアノ協奏曲第二番が弾きたいんですとか、よく言い争いましたよ」「私はチャイコフスキーがとても好きです。最初の出だしが重厚、壮大というか、弾く人も、聞く人も次第に自然に入っていけて、あるときは華麗に演奏者も高度なテクニックを駆使して、第三楽章の終曲まで息もつけない、あたしも観客の拍手とともに、ああ、弾いたなというか、満足感っていうか、成し遂げた達成感があってどきどきしちゃうんです」

「それは聴衆から見ても同じことが言えますよ、ピアニストとしてやりおおせたんだなあ、それが熱く胸に伝わって来ます」「僕がラフマニノフに傾注するのは、ピアノの中でも難曲っていわれていますし、第一楽章で自由なソナタ形式ですが、最初から全体に壮大な重奏感があり、そこにピアノの連打が、印象的で最初から思わず曲に惹きこまれるこまれるんですよ」そういって誠一郎は真理子の顔を見ながらコーヒーを一口飲んだ。

「ええ」「まあ、難曲なんでピアノの熟達度がわかっちゃうんです、それであなたに」「ええ、でも先輩にそういわれると嬉しいです」「僕はやっぱりベートーベンです。力強くしかも勇壮で,第五の運命とか第九の合唱付とか」「ベートーベンは、第六の田園が好きです。第一楽章から第三楽章まで、田舎の豊かな田園情景で第四楽章では打って変わってすさまじい嵐を表現する叩きつけるような怒涛の曲が、それだけにあとの第五楽章の静けさがとっても、田園風景が頭をよぎります」「田園聞いた人は誰もがそういいますよね、

僕はベートーベンを聴いて見たいという人は入門編として第六の田園をお勧めしてるんですよ、わかりやすくていろいろなクラシックの旋律のエッセンスがあの中に全部あると思っています」「ベートーベンってたしかピアノソナタと呼ばれるものは第一番のへ短調から第32番のハ短調までありますが、月光ソナタとかもいいですが、でも私はチャイコフスキー、ショパンがいいです。」「真理子さんはピアノの才能がありました。

家の事情でドイツ行きを断念されて残念です」「でも、先輩、今でも一週間に1回ピアノ習いに行ってるんです。子供たちのためのピアノ教室をやってるんで自分の腕を維持しないと、それに」「それに?」「あたし、音楽の灯だけはいつまでも消したくないのです、それで音楽愛好家とオーケストラの結成を呼びかけて見たり、時々都内の小ホールでピアノの演奏頼まれたり」

「そうでしたか、僕が真理子さんをドイツで音楽の勉強のために助けられればいいのですが、まだ留学中の身の上で時々オーケストラを指揮するだけで本当にお力になれなくて済みません」「そんな」「真理子さん、僕はあなたのピアノをもっと世に紹介したい、あなたみたいな方がうずもれてるなんて、機会作るようにします、頑張ってください、応援しますよ」

真理子は誠一郎にそういわれて、こんなにやさしいこと言われたの初めてだよ、ほかに誰もいないよ、そう思ってちょっと眼が潤んできて、うれしかった。真理子は窓の大きなウインドーの外の雨を見ながら、このまままだ止まないでほしいとさへ思った。「先輩、ここのチョコレートケーキおいしんですよ、いかがですか」「僕がほめてチョコレートケーキか、もっとほめて次は何が出るか」「はっ、先輩、いやだあ」「冗談、冗談、ごめん」真理子は大学時代、助教授で怒られて、厳しいまじめな人だと思っていたのに結構砕けていてと気持ちがリラックスして、誠一郎の思わぬやさしさに癒される想いがしてくる。

やがて運ばれてきたチョコレートケーキの右端をフォークで切って、口に運びながら真理子は、「先輩、私、最近ジャズピアノに興味持ってるんです」「はっ、驚きました。僕がジャズピアノを聴くのも違った意味でピアノの勉強になるよっていったことがありました」「デューク・エりントンの「A列車でいこう」とかオスカーピーターソン、リチャード・クレーダーマンを聴いて家でピアノたたいたりするんですよ」「真理子さんのそういうピアノ聞かせてほしいなあ」

「先輩、もう」真理子はちょっと恥ずかしそうに顔を赤らめた。「リチャードクレーダーマンは、パリ音楽院を出てそれでクラシックでなくポピュラー音楽を選んだんだ」「それってあたしも知ってます」「パリ音楽院は、かの有名なビゼー・ドビュシー・ラベル・サラサーテも出てる歴史ある学校だよ」誠一郎にいきなりそういわれて真理子は、先輩はあたしの音楽の知識を試しているのかと瞬間戸惑った。

真理子は学校時代の音楽の歴史にあったのだろうか、5年前の授業の内容は詳しく覚えていなかった。「そこまでは、でも、そういえばなにか聞いたような、聞かなかったような」無難な返事をしてここを切り抜けなければやばいと思った。「先輩、わかります、だから、クレーダーマンの曲で、ラブミーテンダーを聴くとピアノがやはりショパンのような感じを受けることがあります」「だから。ジャズ・ポピュラーミュージックとクラシックのピアノって相通じる、これは、僕の持論だけどねえ」「あたし、この歳になって、あの時先輩がおっしゃっていたことがよくわかります・・・「ジョージ・ガーシュインのラプソディー・アンド・ブルーのあの終曲近くのピアノとても華麗で雄大で、先輩の好きな力強さもあって」

「ジョージガーシュインって言えば、真理子さんの言ってるラプソディー・アンドブルーのあのピアノをロスアンゼルスオリンピックの開会式で8台もピアノを使って広いスタディアムでボストンフィルでロジャーウイリアムスの指揮で演奏したときのあのピアノ演奏はすごかったなあ」「あたしは、まだ幼稚園でした。でもテレビで見て覚えてるんですよ」「僕は中学生だったけど、すごいインパクトがあったよ」二人の話はどんどん広がって今から22年前のロスオリンピックまでさかのぼってのピアノの話をするのだった。

「真理子さんもずいぶん変わったなあ、僕が近代音楽のガーシュインとかもクラシックの曲と相通じるから、いろいろ聴いて自分で試すのも見方が違ってくるよと僕はいいましたよねえ」「ええ」「私、先輩のいわれる意味が最近になってよくわかるんです。クラッシックとジャズの技法がマッチしていて、あの曲はクラシックと次の世代のジャズの中継ぎをしてるんだなあと」「あの頃、あなたは、いいえそんな暇はありません

私は徹底的にクラシックでショパン一筋に、ポーランドのワルシャワの国際ピアノコンクールに出ることですと、怖いくらい一途でしたよ」「イやあ、先輩・・・よく覚えていますね」雨がいつまでも降り続いていたこともあるが、真理子は誠一郎があたしのことをこんなにも考えていてくれてることがうれしかった。

助教授である誠一郎と自分はその教え子であると自分から今まで距離を置き、自分から遠ざかっていた誠一郎との間が急に身近になってきたし、この今日の出会いが運命のように思えるのだった。友人磯辺美紀からピアノ演奏会に行ったものの観衆の万来の拍手に美紀は包まれて真理子は自分に置き換えたときに嫉妬感を覚えると同時に小さな存在に見えたのだった。しかし、今は真理子の表情は生き生きしていて喜びが誰の眼から見ても感じられるのだった。

二人は、クラシック音楽についてとことん話し合ったのだった。
真理子の胸に忘れていた雄一郎への想いがよみがえった。
「真理子さん、今度もっとゆっくりお話しましょう、ええと、僕のケータイは」といわれて真理子は自分のケータイを渡した。
誠一郎のケータイの押す指を真剣に見つめていた。
気がつけば、雨は上がって空には薄く虹が掛かっていた。

「雨が止みましたね、かえりましょう」
二人は、駅から坂を上ってそれぞれ家に帰るのだった。真理子は久しぶりに幸せを感じていた。真理子の歩みに誠一郎も合わせて、手こそ組まなかったが後姿を見ると恋人のようだった。もしかして、これを機会に誠一郎さんとお付き合いして
学校時代から先輩誠一郎と後輩で生徒の真理子の最初はたんなる関係が次第に好意を持つようになっていた。でも単なる私は生徒で先輩は音大の助教授だし、尊敬し段々誠一郎に好意を持つようになっていったが、これまで彼女のほうから距離を置いていた。

あたしが心から求めていた方ってこういう方だわ、真理子は5年ぶりに会った誠一郎のことで頭がいっぱいになっていた。
「真理子さん、今日はあなたに本当に会えてよかった」
真理子はだまってぽかんとして誠一郎を見つめていた。
「・・・・・・・・」
「真理子さん」
誠一郎に呼びかけられて真理子は、我に帰り
「はっ、あたし済みません、先輩、今日のあたしってどうかしてますよね」
といってごまかした。

じゃこの先が僕の家ですので、また、お会いしたいと思います」
「今日は先輩、誠一郎さんにお会いできてとても幸せでした、じゃ、また」
真理子はそういって丁寧にお辞儀して別れたがいつまでも誠一郎の後ろ姿を見送っていた。そのときだった、マンションの入り口に一人の女性が出てきて一生懸命に
雨に濡れたスーツをタオルで拭いてあげているようだった。
真理子の夢はこの瞬間潰えたのだった。

「結婚されて奥様がいらっしゃたんだ」
また、会って音楽の話がしたいとも思った。でもそれは許されないことだ。真理子は、誠一郎さんは東都音大の私の教師だし、教えていただく生徒があたしだし、単なる教師と教え子の関係ならいいじゃないの、とも考えても見た。
しかし、真理子の心は単なる関係を超えて親しさから次第に恋するようになっていた。先輩はそうでもあたしが愛したら、それは不幸な大変なことになる。
緩やかな坂を上りながらいつの間にか真剣に考えていた。
細田誠一郎の住んでいるマンションからちょっと坂をあがったところの左側が真理子の家だった。

「ああ、お帰りなさい、真理子、で、お友達の演奏会どうだったの、雨に濡れなかった」
そんな母の心配を背中の後ろで受け止めて
「お母さん、私ちょっと」
「どうしたの、真理子?」
階段を上がって二階の部屋に行く。
真理子はしばらく雨が上がって雲間から漏れてくる太陽の光を、窓の外を眺めていた。

「結婚されて奥様がいらっしゃたんだ」
「あんな近くに先輩の家があるなんて」
二階の窓から色とりどりの家の中が立ち並んでいる真ん中の雑木林に見え隠れする白いマンションが手の届きそうなところにあるように真理子には見えた。
物思いにふけっていた真理子だったが、細田誠一郎に会ったのに、雨宿りをしてあの喫茶店で話した生き生きとした彼とのクラシックの弾むような話、忘れていた彼との想いが募ってしまった。真理子は思い切り泣きたい気持ちになり、自分の部屋の鍵をロックした。彼女は、窓の外を見つめているうちに次第に一筋の涙が頬に伝わって流れ、やがて悲しくてとめどなく涙が流れて来て思いきり泣いた。あたしの幸せは、あの雨宿りのほんのわずかなんだ、この人ならと思った気持ちが、そう思うと悲しくて、壁際の椅子に座ってうつぶせになって泣くのだった。

しばらくして、ケータイを取り出して090の彼の番号の表示が涙でかすんでぼうっと見えた。泣きじゃくりながらじっと見つめていた。涙をハンカチで左手でほほにあて拭きながら、
「やっぱり消去」
そういって右手の親指でケータイの番号を消去した。
部屋を出て廊下の角の洗面所で泣いたあとの顔を母に気づかれないように顔を洗ったあと、でも雨が降っていたから先輩に会えたんだ、だから雨宿りができて、考えをもっと前向きにしなければと思うのだった。
「そうだ、「雨宿りの幸せ」っていう作曲を、」そういってなにごともなかったかのように1階に降りて、「お母さんただいま」一声かけて応接間にあるピアノに向かうのだった。
                               (完)

                                             








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短編純愛小説「けだるい夏の日」

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あらすじ

この小説は、昨年7月に出版した新風舎文庫「愛は時を越えて」
に掲載した「けだるい夏の日」のケータイ版ですが
内容は原作とは多少変えています。
タイムトラベルで過去に戻った幸一は、そこで高校生の涼子と


鉄道好きの幸一は土曜日の休日、鎌倉から湘南電鉄に乗って江ノ島に向かいます。
江ノ島駅で見慣れないもう引退した電車に出会って幸一は木造のタンコロに手をかけたとたん、目が廻り倒れそうになったが掴み棒で身体を必死になって支えると7年前の高校生に戻り、なんとそこには高校生の涼子が涼子と幸一は江ノ島に向かうのですが、幸一は7年前に戻り、涼子は17歳7年前の2000年の話で、幸一は2007年25歳の話と二人の話はかみ合わなくなり、涼子はあたしの7年後どうなってるか聞かせてと迫ってくるのですが
幸一は・・・・

そして7年後の幸一と涼子は


鉄道ファンの幸一は、Tシャツとジーンズ姿で,
湿気が身体にまつわりつくようなけだるい夏のお昼
前、湘南電鉄に乗っていた。
幸一の乗った電車は300系と言って楕円形前面4
つ窓がユニークな、旧式の電車で、天井の扇風機がけ
だるい湿った空気をかき回している。

七里ヶ浜を過ぎる左にカーブすると車窓一杯の夏の海
と海の香りが車内一杯に広がった。幸一はこの瞬間が
好きだった。
腰越から道路の路面を時速15キロの超低速度でゆっ
くりと進んで電車が江ノ島に着く向かい側になんとも
う引退したはずの単・コロが2両編成だった。

「おや、単・コロ10系が、なんで?」
 幸一は不思議に思った。
向かい側ホームに止まっている単コロの車体をなでな
がら木製ドアに乗り込んだとたん手を掛けて乗ると軽
いめまい、ふわっとして景色がぼけていく。運転台の
柱に捕まって倒れそうな身体を支えた。

もやもやとかすんだ景色がまた元へ戻ると、
「あっ」
と心の中で驚いた。
あたりを見回すと車内の広告にS社の動物ロボットの
広告とノートPCの発売表示が示されていた。
週刊誌の広告があり三宅島雄山の噴火の惨状と書かれ
ていた。

7年前2000年か、だが幸一のかっこはTシャツ・ジー
ンズ姿で変わらなかった。
前に進むとそこにセーラー服を着た涼子がバトミント
ンのラケットを持ち座席に座って気持ち良さそうに眠
っていたのを発見した。

幸一は、思わず近づいて
「涼子さん」
と声を掛けた。
「あっ、幸一さん、どうしたの、ここってどこ?」
涼子は目を覚ましふと窓の後ろを振り返った。

「江ノ島ね、幸一さんとは学校も違うし、久しぶりだ
し、どう江ノ島に行って見ない?」
「うん、降りようか」
と言って二人は電車を降りた。

「幸一さん、どうしたのよ、此の間家に行ったらいな
くて」
「それ、居ないのは僕は7年後の世界から来たのだか
ら」
「えっ、意味わかんない、幸一さんが7年後の人間な
んて、や~だ、あたしをからかわせないで」
「いや、本当なんだよ」

「あたしが今のままで18歳よ、幸一さんは」
「僕、7年後の人間だから25歳」
「はっ、まじ?」
「そうだからしようがないんだよ」

「幸一さん、じゃ7年後からきた証拠教えて
・・・・あたしに」
「ほら、自動車免許証25歳って書いてあるだろう」
「本当だ、あたしまだ17歳だし免許取れないし、本
当だ、でも25歳なんて信じらんない」
「でも、おかしい幸一さん25歳なんて年令偽ったの」
「そんなことするもんか、嘘だと思うなら」

幸一は頭を盛んにかしげ、疑いのまなざしで見つめる
涼子に、
「ほら、これならわかってくれるだろう」
といってバッグから社員証を取り出して涼子に見せた

大洋観光旅行株式会社 シンガポール支店
内藤 幸一と書かれていたからである。
「本当だ、幸一さん、かっこいい、シンガポール、平
成20年・・・・・本当に7年前から来たんだねえ」

涼子も次々と幸一から7年後の証拠を見せられては
納得しなければならなかった。
「なんかあたしが平成13年で、会いたかった幸一さん
が平成20年でしかも幸一さんはあたしのお兄さん、
本当は高校の同級生なのに」
と怪訝そうな顔をしながら幸一に言った。

幸一はそんな涼子がいじらしくなって、
「たとえ、僕が25歳で涼子さんと7つ違いになっても
今日は高校生に戻ったつもりで」
久しぶりに涼子に会って幸一はときめきを感じていた
「ちょっと待ってて」
といいながら、幸一は、江ノ島海岸に向かう途中の店
に寄ってソフトクリームを二つ、ハンバーガーを二個
買って店を出て立ち止まってる涼子に、
「これ」
といって渡した。

二人は、ソフトクリームをなめながら蒸し暑さが周り
を包んでいる通りを抜けて江ノ島海岸にでれば少しは
涼風も吹いてくるのではと急いだ。
江ノ島海岸に出ると、気が早い海水浴客が数人いる。
江ノ島に通じる弁天橋の下を歩いて砂浜にいつしか立
っていた。

海からの風が二人の頬をなでる。長い黒色の髪が涼子
の顔に掛かった。涼子はそれを打ち払うかのように、
右手で後ろに持っていった。
幸一は7年前に戻って高校生の気持ちに帰っていった

「やっぱり、涼子さんってかわいい」
今日、江ノ島に来て一人で電車と海を撮ろうと思って
いたのが、
初恋の涼子さんに会えるなんて。

幸一は、学校を卒業後、鉄道と旅行が好きだったので
自分の好きな道を仕事としたいと思い、いっそ海外も
旅行できる観光旅行会社、大洋観光旅行社に就職した
のだった。

でも、この業界は業者間の競争が激しく規制緩和に伴
って新手の観光旅行会社がなだれ込んで海外旅行客の
争奪合戦はすさまじくいつも帰宅は午前様だったので
ある。

好きで飛び込んだのに、シンガポール支店に転勤して
からは寝る暇もないほど働いた。
久しぶりに年休を利用して1週間ほど帰ってきて久し
ぶりに電車と海を見たいと出かけて来た。

「あの、幸一さん、あたし7年後どうなってるのか
教えて!教えて」
不意に聞かれて、幸一は、
「それは、でも・・・・・」
ことばを濁した。

「やっぱり聞かないことにしよう、なんか恐い気もす
るし」
幸一は、
「見てて」
と涼子に言いながら身体を少し曲げて右手で思い切っ
て波に向かって投げた。小石はポン・ポンと弾みなが
ら遠くに飛んで行った。

「面白~い」
 涼子も小石を拾って右手で水平に飛んで行くように投
げた。
その姿を気づかれないように秘かに写真を撮った。二
人は顔を見合わせて笑った。
 
幸一と涼子は江ノ島をつなぐ弁天橋を渡って歩いた。
 沖合いを白いヨットが2隻、波をけって進んでいる。
立ち止まって二人はそれを眺めた。
 橋を渡り終えて左の道路を歩いて防波堤の方に向かっ
て歩いた。
海からの微風が二人の顔をなでる。涼子は顔に掛かっ
た髪を手で振り払った。

防波堤には、釣り糸をたれて海釣りを楽しんでいる一
人の老人がいた。
涼子は側に行って老人に尋ねた。
「おじさん、釣れますか?」
 老人は、
「今朝からまだ1匹しか釣れていないよ」
 そう云ってボックスを開けて魚を見せてくれた。
「昔は防波堤もなくてこの辺なにもなくて、魚もよう
釣れたんだけど」
 老人はそういって麦藁帽の下の日焼けした顔で笑っ
た。

「幸一さんは、釣りするの?」
 涼子に突然尋ねられて幸一は
「やるけどさ、あまり好きじゃないんだ」と答えた。
「昔、父の会社の釣り愛好会があって、小さいとき近
くの沼に行って、いきなり雷魚が二匹釣れて恐くなっ
て。それが僕の顔をにらんでいるようで」
と話すと
「面白~い」
と涼子は笑った。
「それ以来釣りに行かなくなって」
と幸一は言った。

しばらく二人は休んで元来た道を戻り、海産物やみ
やげ物店の並ぶ細い江ノ島参堂の道を登った。
 潮の香を含んださざえを焼いてる香りが漂ってくる。
「おいしそうな匂い」
涼子は言った。

「食べる?」
 幸一はそういって店の中の奥の椅子に腰掛けた。
 涼子は運んできたサザエのつぼ焼きをおいしそうに食
べながら、
「食べないの?幸一さん」と聞いた。
「僕はどうも海の香りの強いものは」
と言ってコーラを飲んだ。

涼子は、
「ねええ、幸一さん、じゃなかったか、あたしより7
歳上だからお兄さんだよね」
と幸一に話しかけてくる。
「まあね、そうだけど、今日は高校生に気持ちもどっ
てるんだから幸一でいいよ」
「じゃあ、幸一」
「うん」

「あたし、今日バトミントンの練習だったんだけど、
幸一はたしか演劇部だったよね」
幸一は、またもや涼子から言われて一瞬戸惑ったが、
「うん、ハムレットとか以前やったんだけど、今度は
オリジナル作品書いてやろうかということになって、
僕が」
「幸一、監督?」
「そんな偉そうなものじゃないけど、シナリオ書いて
言いだしっぺだからシナリオ書けって言われて」

「すご~い、シナリオライターなんて」
「でも、いい思い出だよ、高校生活の忘れられない想
い出だ」
「あたし、幸一さんの発表会見にいけなくてごめんな
さい」
「いいよ、もう7年前のことだから」

涼子は、幸一の話を聞きながらつまようじでさざえを
つまみ出しておいしそうに食べていた。

「ねえ、幸一、あたし7年後のこと聞きたいの」
涼子は本当に真剣に聞いてくる。

「そのこと、いえないよ」
「あたしと幸一、どうなってるの」
そう聞かれて幸一は大いに困惑した顔をさせて、
「それ、いえないよ」
幸一は首を横に振った。

誰もが未来から戻ってきて突然恋人とか友人にあった
ら一番聞きたいことだろう。

実は、涼子は20歳で、つまり2年後友人と原宿を歩い
ている時に道端でスカウトされていつの間にかモデル
になったのだが、それから一年後、自転車で阪を降り
てきて出会いがしらにバイクと追突、病院に運ばれた
が、幸い軽症で3週間後退院したのだった。

幸一は、涼子が事故で入院したことを知ると、ずっと
涼子の父、母同様に付きっ切りで涼子の枕元で介護を
したのだった。

ちょうどその後、幸一に海外赴任の話が持ち上がり、
涼子の様子を心配しながらシンガポールに向かったの
だった。
「涼子、元気でね、何もしてあげられずごめん」
ベッドで寝ている幸一に握手をしようと手を差し伸べ
ると、涼子はベッドから両手でベッドの支え棒を握り
起き上がり、
「幸一さん、あたしこそ、いつかまた逢いたいわ、約
束して」
と不自由な身体で起き上がって立とうとしている。

幸一は、思わずパジャマ姿の涼子を手で支えた。
涼子のほほにナミダが
二人は誰もいない個室で固く抱き合った。

幸一は、当時の出来事を涼子は、実はと話そうとも思
ったが、涼子が事故にあったこと、それが元でファッ
ション所属事務所を解雇されたことなど、涼子には話
せなかったのである。

「・・・・・・ごめん」
「幸一、お兄さん、7年後も一緒なんでしょう」
涼子は、幸一に執拗に迫った。
幸一は、涼子に執拗に7年後のことを聞かれても話せ
なかった。

運命とは、ある日、突然その人の将来を大きく変わるものであり、
涼子が原宿でモデルにスカウトされたことがきっかけで、
そしてその後バイクと接触事故にあって入院したこと、
その頃、幸一がシンガポール事務所に赴任して、二人は永遠に別
れることとなること、そんな出来事を今17歳の純真無
垢なセーラー服姿の涼子には話すことが出来なかった
のである。

「涼子さん、ごめんなさい」
幸一は、椅子から立って涼子に深々と頭を下げた。
「仕方ないよね、幸一がそこまで言うのでは」
今日一日、高校生に戻って涼子と楽しみたかった。

「じゃ、出ようか」
「うん」 
店を出て江ノ島神社に通じる赤い鳥居を左に上ると
江ノ島エスカーが見えた。

「以前はここから長い階段で頂上近くまで歩いて20
分近くかかったけど、今はこの江ノ島エスカーで楽に
5分くらいで行けるようになったんだ。」
「ずいぶん便利になったのねえ」
 二人はエスカーに乗り換えては歩いていくと右側に
江ノ島植物園と展望塔があった。

「ここ入って見ようか」
「うん」
幸一と涼子は江ノ島植物園の中に入った。

公園の小道は熱帯植物の木々が覆っていて海から吹い
てくる風がけだるいような暑さを和らげた。
「あたし江ノ島っていつでも来れると思ったりして
えここは入ったことなかった」
「僕もなんだよいつも素通りしてこの先の階段下り
て岩屋の洞窟には行くんだけど」
 
二人は園内をゆっくり回った。
「この植物園には100年に一度しか咲かないアオノ
リュウゼツランとか、5000本の珍しい亜熱帯植物
があるんだよ」
「いま咲いているなら見た~い。まあ100年に
1回なの?。らんって夏咲くんでしょう」
 
二人はアオノリュウゼツランの花を見にいったが、葉
っぱだけだけだった。

「やっぱ無理ね」
「あっリスがいる。見て、見て」
 涼子がびっくりした声で幸一に言った。
「本当だ可愛いなあ」
リスは木の枝にいて両手で一生懸命木の実を食べてい
た。
 「あっ可愛いい~」
「ねえぇ、あの顔幸一さんに似てるかも・・・・」
「はっ僕ってあんな顔?」
 
二人はリスをしばらく見つめながら大きな声で笑って
いた。
小動物のいる小さな動物園には子供たちが喜んでい
た。しばらく歩くと目の前に展望台が二人を見下ろす
かのように行くてをさえぎるように屹立していた。

「ねえ、あの上に上ろうよ、きっと眺めがいいと思う
よ」
 幸一は展望塔を見上げるようにぽつんと言った。
「そうねえ、だってここでさえも高いんだからきっと
いろんなとこが」

二人は、屋上に続く長い階段を登りはじめた。展望塔
をさえぎるものはなく階段の隙間から海風が吹き上
げてきてここちよかった。

屋上は江ノ島の最先端で二人はそろって
「すご~い」
360度の眺望は少し霞んでいたが箱根の山々から
伊豆・そして三浦半島、葉山、鎌倉と、目を東に転ず
ると遠く横浜まで見えて横浜スランドマークタワーが
霞んで見えた。

「晴れていると富士山とか大島が見えるそうだよ」
幸一は欄干にもたれている涼子に言った。
「う~んん富士山見えなくてもいいわ。幸一さんと
久しぶりに会えただけで」涼子は、振り返えり首を横
に振って言った。

 幸一は涼子の仕草を見て
「涼子さんって可愛いなあ」
と心の中で思った。7年後の僕は25歳、7歳も離れて
いてもやはり高校生の気分に戻ると可愛い
幸一はそう思った。
二人は展望塔の欄干にもたれてしばらくうっとりとし
て景観を楽しんだ。
 
展望塔を降りて、植物園のベンチで二人は休んだ。
「ねえせっかく来たんだから写真撮ってもらおうよ」
と涼子はかばんの中から赤いデジカメを取り出した。
「ええと二人で撮ろうよ」
「うんそうしようか」
幸一はちょうどとおりかかった若者に声を掛けた。
「はいチーズ」
二人はVの字を大きく手で示し同じ写真を二枚撮って
もらった。

「ハンバーガーだけど」
幸一はそういってかばんの中に入っているハンバーガ
ーの入っている袋から取り出して涼子に差し出した。
「あれ幸一さんいつ買ったの?」
「さっきソフトクリーム買ったとき一緒に」
「幸一さんてずいぶん気が効くのねえ」
涼子はそう云ってうれしそうにハンバーガーを被りつ
いた。幸一は走って行って、氷で冷やした缶コーラを
手にとってほほにあて冷たそうな缶を選んで買って急
いで戻り、
「はい飲み物」
と言って涼子に差し出した。


二人は右手にハンバーガー左手に缶コーラを持って話
した。
幸一は
「涼子さん、2年後に僕がシンガポールに赴任す朝、
成田空港まで車椅子で・・」
といってからあわてて口を右手で押さえた。
「はっ、私が車椅子・・・何それ」
「いやいや、涼子さんでなくて車椅子の人が居てね」
となんとか誤魔化そうとしていた。
「危ない、危ない」
と考えながらも、2年後11:00出発のタイ航空のロビ
ーで涼子のくるのを待っていたのだった。

「お待たせしました、11:00発のタイ航空458便シン
ガポール空港にご出発のお方様は22番ゲートまでお越
しください。
涼子は交通事故で足の軽症で入院していたが、幸一が
最後に病院に行った時、
「幸一さん、必ずわたしお見送りに行きます、なん
か、これが最後のような気がして」
「なにいってるの、僕だって半年ごとに東京本社で会
議があるし」
「・・・・・・」
そんな会話を交わしながら、無理とは知りながら、
空港アナウンスを聞きながらやがてトランクを引いて
出発ロビーに向かっていった。

後ろからその時「幸一さん、幸一さん」といいなが
ら、看護婦に車椅子で引かれて良子が手を振ってくる
のを見た。
幸一は立ち止まり、車椅子に乗っている涼子を見て駆
け寄ってひざを曲げて
涼子に近づき手を差し伸べた。
「涼子さん、やっぱり来てくれたんだね」
幸一の目に涙が光った。

「幸一さんなに考えてんの」
涼子からそういわれて幸一は、
「ああ、ごめん」
と涼子に謝った。

「今日は幸一さんも、違うお兄さんもあたしと同じ
高校の同級生でしょう、一日だけど」
「そうだよ」

「でも、幸一さん、なんか歩いていてもあたしの2年
先のこと考えてるし」
「わかった、あと、どこ行こう」
「あのさ、・・岩屋洞窟もあるけど、遠いし、駅に近
い江ノ島水族館ってどう」
「そうだなあ、案外魚見るのもいいね」
 
二人は元来た道を再びエスカーに乗って下り江ノ島を
後にした。弁天橋を渡ると喧騒な音と排気ガスのにお
いや湿った風が身体の回りをまつわいつきけだるさを
さらに増して自動車が行き来していて江ノ島の静けさ
がうそのようだった。

「ちょっと待ってて」
幸一はそういって涼子を待たせてマクドナルドの店に
入り、マックドポテトを注文して涼子の元に駆けなが
ら戻ってきた。

少し歩いて江ノ島水族館の中に入ると冷気が二人を包
んだ。
「わあ、涼し~いっ」
 けだるい暑さから開放されて巨大水槽のある場所に駆
けて行った。

「ここは、相模の海を切り取ったような大水槽で8千
匹のいわしが泳いでいるんだよ」
「すご~い、いろいろな魚が居るみたいな」
涼子は驚いて大きな瞳で上を見つめていた。
「あまり高くって首が痛くなるよ」
と言った。

 水族館とマリンランドを結ぶ約40メートルの地下
通路は壁面には発光アートアクア・パラダイスがあっ
てラッコ・いるか・ペンギン・ザトウクジラ・クラ
ゲ・ウミガメなど、いろいろな海の生き物が黒く浮き
上がっていた。

二人は、壁画を眺めながら左右、天井の円形水槽を泳
ぐえいやさめにも目を配って歩いた。
「海の中に居るみた~い」
涼子は立ち止まってそう言った。
「あの中で泳いで見たい?」
「まさか、えいとかさめが居たら恐いよ」

「この水族館に来たからには・・・・・・」
幸一は、涼子にいるかショーを見せてやりたいと思っ
た。
「そうそういるかショー見なきゃ」
と幸一は涼子の手を引いてショー会場の採集時間に間に合うよう駆けた、駆けた。
幸一は自販機で缶入りドリンクを買った。
「ちょうど良かった、3時30分の最終に間に合ったよ」
「もう、私、もうどきどきよ、心臓が」
 
二人は扇状のスタジアムの席に腰掛けた。
「食べる」
と幸一は、さっき買ってきたポテトフライの箱と缶コ
ーヒーを涼子に差し出した。
二人は、箱に入ったポテトフライをr突っつきながら
仲良く食べた。

水族館の飼育スタッフが出てきて
「それでは、今日最後のハッピー・テイルショーを行
います」
とアナウンスがあり円形の水槽の中のいるかに話しか
ける。
 子供と大人たちが水槽の中のいるかと握手をしたり触
ったりしていた。

いるかショーがはじまり水槽をゆうゆうといるかは泳いでいたが、突然空中を
舞うかのように見事にフライングした。水しぶきが飛
び散って水槽の前の観客に水しぶきがパッと散って掛かった。
二人は大勢の観衆に混じって拍手をした

涼子は、ふとわれに帰って、腕時計を見て、
「もう4時だわ、あたし、帰らないと」
と言った。その時、涼子のかばんの中のケ
ータイが鳴った。ケータイを取り出すと母か
らだった。
「どうしたの、涼子」、
「お母さん、幸一さんに会って」
「ああそう、よかったね」、
と母は安心したようだった。

「楽しかった幸一さん。部活が休みになって
よかった」
「僕も涼子さんと一緒でよかった。・・・・ぼ、
僕は・・・涼子さんが好きだよ。・・・・・・」
 幸一はそういいかけながら、
「でも・・・・涼子さんと僕は7年違うんだ」
 
涼子は、
「幸一さんからあたしを好きだって言われるのって
悪い気持ちはしないし・・・・・・・」
と答えた。
「でも、あたしがあなたと今の気持ちのままでずっと
いたい、そうしたらまた・・・・・・逢えるじゃない」
と涼子は幸一の顔を見て言った。

涼子は、
「あれ、幸一さんのケータイってずいぶん薄くてすご~い」
と言いながら幸一が手にしていたブルーのケータイに気がついた。
「今、会社にかけたんだけどつながらない」
「あたしのPHSだけど、場所によっては話せないの、幸一さんは」
「これ、テレビも見えるし、世界各国どこでも話せる
んだ」

「7年後ってすごい、幸一さんが持ってるのすご~い」
とじっと見つめていた。
「涼子、君に上げるよ、でも今は使えなく無理なんだ」
「えっ、あたしに悪いよ」
「いいから、僕はまた買えるんだから」
「本当、うれし~い。今使えなくてもあたし、7年間
ずっとこれ見るたびに、幸一、違うお兄さんのことず
っと考えてられるし」

二人は江ノ島駅に向かって歩き、一軒の写真屋に
寄ってさっき撮ったデジカメのメモリーを外して店主
にプリントを頼んだ。
まもなくパソコンのプリンターから二人の写真が二
枚出てきた。
「どうも、お待ちどうさま」
写真を受け取って、涼子はにっこりと微笑み二人は
それぞれ大切にかばんに入れた。
 
江ノ島駅に着き、涼子をタンコロ100型レトロ
電車に送った。
「幸一さん、またねえ」
涼子の声を背中で聞きながら、振り返ってガラス窓
越しの涼子に手を振って2番線の停車中の電車に向か
って歩いた。電車のドアに手をかけて足を踏み入れた
とたん、幸一はまためまいを感じ耳がつーんとしてき
た。周囲の景色が次第に霞み、ふらふらとした身体を
握り手でしっかり掴んだ。どうしたんだろう、2回も
めまいがして、不安な気持ちが襲うと同時にぼんやり
していた視野がはっきりしてきた。遠くに聞こえてい
た音もはっきりと戻った。

ああ良かった。気がつくと元のTシャツに短パン姿
のままで7年後今に戻っていた。
 僕は夢を見ていたのだろうか、幸一はそう思った。
「お待たせいたしました。ただいま信号機が直りまし
たのでまもなく藤沢行きが発車いたします」
 
電車は何事もないかのように5分遅れでけだるい夏の
午後の日を藤沢に向けて走るのだった。
カメラを収めたバッグを開けると、そこには涼子と一
緒に撮ったセピア色に変色した写真があった。
「夢じゃなかったんだ、写真がここに」
 そう思って幸一は写真をしみじみといつまでも見つめ
ているのだった。

・・・・・・・


3日後、幸一は成田国際空港にいた。
空港ロビーは外国人も混じって出迎える人、見送る人
の人並みで華やかだった。
香港・ソウル。バンコクなど、昼間は主に東南アジア
の中距離ジェット旅客機の発着が多い。
幸一は誰も見送りのいないロビーで案内アナウンスを
待っていた。・・・・・・・・



幸一はシンガポールチャンぎー空港よりタクシーを拾
ってそのまま会社にに出勤した。
柳沢支局長が
「お帰り、休みどうだった」
と聞いてくる。
「ええ、まあまあでした」
まさか7年前に戻って高校時代の恋人に会いましたと
はいえなかった。
そんなこと誰も信じてくれるはずはないし、
涼子と自分の秘密にしておきたかった。

「早速で悪いけど、あさってTRAVELの来月号特集でバ
リ島を取り上げることになって、本社からも君に取材ご指
名なんだ」
「えっ、もう・・・ですか」
部長は、
「年休とって東京に帰ってきたんだから今度は思い切
って働いてもらうよ」
そういい終わると、現地駐在のシド・マリーが、
「幸一さん、バリの資料とかここ置いておきます」
といって幸一の机の上に紙袋を置いた。

ロッカーに東京からのトランクを閉まって今夜は久し
ぶりに外食しようかと思った。

赤道直下のシンガポールは日中は33度の海から湿った
空気を運んできて身体をまつわりつくように暑いが、
さすがに夕方になると暑さも和らいでくる。
夕方6時半、東南アジアの夜はなかなか来ず、ぎらぎ
らした太陽の輝きはまだ、シンガポール湾に沈もうと
はしなかった。

幸一は東西2kmにわたってショッピング・ホテル・デ
パートなどが林立しているオーチャードストリートを
歩いていた。

一週間ぶりに見るシンガポールの道路は、緑樹が生い
茂ってベンチも置かれて、道端のところどころに置か
れた小さな花壇には南国特有の赤いブーゲンビリアが
咲き誇っていた。
幸一にとってはもう見慣れた光景になっていた。
「もう5年目か、シンガポールの独身生活も」
一つ小さなため息をついた。

ふと、日本書店に目が吸い寄せられた。
華やかな女性雑誌、ファッション誌のELEGANTLADY
の表紙にあの細井涼子がすっかり美しくなり巻頭を飾
っていた。
「あっ」
幸一は驚いて無造作に雑誌を掴んで90セントを払って
外に出た。

夕食はこの先の屋台にしよう。
シンガポールの屋台は衛生的で政府公認の外国人が安
心していろいろなエスニック料理を味わえるのだ。
公園の中にはさまざまな屋台があって香港・タイ・イ
ンド・台湾。マレーシアなどの食事が安い料金で味わ
える。
まさに幸一のように独身男性の旺盛な胃袋を満たすの
だ。

屋台のある公園は道路と公園を大きな緑樹が仕切って
いて表通りの騒音は遮断され、わずかに木の間から赤
いロンドンバスや車の灯りが漏れてくるだけで別天地
だ。

幸一は、ナンとカレーを頼んで緑樹の下の椅子に腰を
下ろしてELEGANTLADYの表紙、細田涼子をいつまでも
ずっと眺めていた。・・・・・・・・


一方涼子は、5年前の足の傷もすっかり癒えてまたと
きどき雑誌のモデルをハケン社員で登録して活躍して
いた。

仕事が終わり涼子は、同じ仲間のあきと一緒に外に出た。暑さと湿気でひんやりした室内から出るとぎらぎら輝く夏の太陽が両腕に焼きつくように暑い。

「先輩、今日これから私合コンですけど、行きません」
突然あきにいわれて、
「合コン、いいね、いいね、行って見たいな」
涼子もこの所、ハケンとしてたまに声がかかってくるモデルの撮影にでるほかは家にいることが多く単調な生活を送っていたのだ。

最初のうちはシンガポールの幸一にメールを打って必ず幸一からもメールが届いたのだが半年ほど続いたもののばったり途絶えてしまった。

涼子はあきに、
「行くよ、連れていって」
と頼んだ。

書店の前を通り涼子は自分が載っている今月号のELEGANTLADYを自分の出ている雑誌が目に付いた。
二人で雑誌を買って
「あたし、たまに海外に行きたいなあ」
涼子に
あきも
「いいね、私もシンガポールあたりどう」
「一緒にいこうか、ハケンだから安いシンガポール」

TRAVEL、表紙をめくってぱらぱらとページを見ていて
思わず、
「あっ」
と声を出した。
あきが、
「えってなにかあったの」
涼子は
「うん、何でもない」
そこにはシンガポール楽園都市ガイド・本誌記者内藤
幸一の名前がそこにあった。

涼子は急いで2冊の本をカウンターで買って
あきに
「ごめん、あとで合コンに行くから」
「じゃ、場所はここで電話は」
あきがメモしてくれた。
「なにか、あったの、さっき驚いていたし」
「何でもない、じゃあとで行くから」

新橋駅に向かい山手線新橋駅ホームでラッシュアワーの電車を見過ごしてホームのベンチに腰を下ろしてトラベルの幸一が書いたシンガポール楽園都市の記事をむさぼるように読みふけっていた。

涼子のELEGANTLADYは二つ折りにされて赤い大きなバ
ッグにはさまれて・・・・・・

涼子も幸一も東京で、シンガポールで同じ時間、お互
いの出ている、書いた雑誌を夢中で読んでいたことは
定かである。気持ちはつながってるのだ。

二人の今後がどうなったかわからないままに









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長編純愛小説「愛は時を越えて」PB・ケータイ同時掲載版

作家のたまご


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  目  次
1  旅立ち

2  ギャレーの仲間たち

3  運命の出逢い

4  揺れ動く心

5  亜理紗のつぐない

6  ホリデイ

7  再会

8  想い出

9  新人類の青春

10 回顧

11 5番街

12 白い観光馬車

13 フィナーレ

はじめに
「愛は時を越えて」は昨年7月文庫本として出版したものを原作の持ち味を生かしながらケータイ版に内容を新しく書いたものです。

平成7年秋、ビジネス・コンサルタントの裕彦は三十二歳、成田第二国際空港から仕事でニューヨークに向かうのですが、機内で初恋の幼馴染亜理紗はキャビンアテンダント・チーフパーサーとなっていて20年ぶりに運命の再会をニューヨークで果たします。二人は20年の長い年月を埋めるかのように積年の想いを伝えるのですが
美しい秋のニューヨークを背景に、二人の愛は美しく、切なく。またちょっと哀しく進んで行きます。

第一章   旅立ち

平成七年、長かった残暑も終わりを告げ、街を行きかう人々にも夏の疲労が消えて、落ちついた表情を見せていた。昨日の雨も上がり、限りなく青に近い秋の空を見つめながら、錦小路裕彦は、成田第二国際空港国際線出発ロビーに着いた。あるメーカーの北米販売網拡充のための予備調査を一任されて思わず身震いするような気持ちだった。思わず両手を拡げて背伸びして
「よおし、やるぞ」
と決意を固めた。出発までまだ二時間くらいあったので、ポケットからケータイを取り出した。

「錦小路ですが、ニューヨークに行ってきます」
部下の井上が出てきて、
「主任心配しないでください。まかせてください」
という声を聞いて安心した。電話のそばで
「誰なんだ、えっ錦小路君、僕に貸して」
せっかちな声がして。部長が出てきて、
「錦小路君、大変だろうがしっかり頼むよ。ユナイテッド・デリバリー社と契約するための調査だから、君を信頼しているよ」
裕彦は一切を任されていることを改めて感じた。
「部長安心してください、満足な結果得られる調査報告書持って帰りますから」
「身体には気をつけてな、じゃあ」

裕彦は三十歳を過ぎて今一番働き盛りを迎えようとしていた。同じ時期に入社した同期生はもうほとんどが結婚し家庭を持っている。裕彦の母はいつまでも独身でいることを心配し、いろいろ縁談を持ち込んできた。もちろん、いくつかお見合いをしたが、結局このお見合いはなかったことにしてください、本当にごめんなさいと断ったのだった。父は、裕彦に教育熱心だった。特に英語を厳しく教えてくれたが、それ以外の結婚については、裕彦が自分で決めることだとまったく干渉してこなかった。

そういう家庭環境に育った裕彦にはどうしても忘れることのできない想い出があった。
それは幼稚園で知り合った女の子と小学校時代までずっと一緒だった高梨亜理紗を忘れることができなかったのである。なぜなんだ、幼稚園の聖書劇で一緒に出た女の子を好きになってそれから小学校までずっと一緒に過ごしてきてもう二十年たっているのに忘れられないなんて。初恋の人ってこういうものだろうか。
いまだに独身で母に心配掛けて、
「ごめんね」
と謝った。

胸の中では、年齢も三十二歳と仕事を選ぶか、それとも皆と同じように結婚して家庭を持つかで悩んでいるのだった。
そんなことを思いめぐらしている裕彦の頭上に搭乗案内の声が降り注いだ。
「皆様にご搭乗便のご案内を申し上げます。オーシャン航空946便、ニューアーク国際空港へお出でのお客様は27便ゲートにお越しください」。
 27番ゲートを歩くと、その先には搭乗機と直接連絡できる。

同じ頃、出発前のオーシャン航空946便北米線フライトのチェックが行われチーフキャビンアテンダントの高梨亜理紗もそこにいた。プリブリーフィング(ブリーフィングの前段階)は空港会社内の極東航空のコンピューターの端末チェック、端末を使って搭乗便の乗客数、乗客インフォーメーション、機材、駐機場番号、などをチェックして同乗する十二人のキャビン、アテンダントたちの一連の確認なのだ。亜理紗は入社十年たっていた。

キャビンアテンダントの仕事は時間も不規則で搭乗客のサービスに満面の笑みを浮かべながら、襲ってくる時差との戦いにも耐えて、フライトを終えて空港から全身に疲れが出て制服のままでタクシーで帰宅することもままある。フライトを終えて会社を出て立派なマンションに戻り、鍵を開けて中に入るとソファ、テーブル、テレビ、本棚、衣装ケースとオランダから買ってきた西洋人形がさびしそうにしていて、壁には蛍光時計が時を刻んでいるほかはそこには誰もいない空虚な空間が横たわっていた。壁にもたれて制服も着替えずに身体を少し屈めて
「あたし三十二だよね。なにやってんだろう」

亜理紗には、幼稚園、小学校時代に、自分を好きになってくれた男の子、錦小路裕彦がいた。、あんなに小さいときの裕彦の初恋って、裕彦さんが私を好きなんだから。最初は軽い気持ちで、あたしを好きな男の子が居るのと友達に伝えていたのだが、次第に裕彦への思いが深まっていった。
もちろん、自分はキャビンアテンダントでこのまま仕事をして行く行くは客室部長になれないでもない。会社は実力主義を取り始めていたし彼女の仕事ぶりをみなが認めていた。亜理紗にはいろいろな人たちから縁談の話も沢山集まって。それらの話から何回かお見合いした。また同じ会社のクルー、木下機長からも
「僕と結婚してください」
という話もあった。しかし、亜理紗は最後には断ったのだった。自分を好きになってくれた人やお見合いをした人を断ったためにいつしか周囲も亜理紗はきっと仕事に生きる人と周囲に思わせるようになり、お見合いの話も途絶えたのだった。

「私がいけないんだ。いいお話もあったし、木下機長だって、私を愛してくれてるのに」
でも一方では、
「自分が本当に好きだという人に私の愛を差し出したい。どんなにお見合いのいい話があっても自分の心を閉ざして結婚することは自分にとって不幸になるし、相手の人を幸福にできない、そんな偽善的な気持ちで結婚はできない」
と考えていた。

幼い頃、亜理紗は父に連れられて飛行機に乗った。
雲海がかなたにそびえ真っ青な空を何時間も飛んだ時
亜理紗は、
隣の席で寝ている父を起こすように小さな手でゆすぶって
「ねえ、パパお空の下にはこの地図のように線はないよね、皆一つのお空の下の人は仲良くすればいいのにねえ」
父はそういわれて亜理紗はなんとすごいことを言うのだろうと思った。
「亜理紗のいうとおり皆仲良くしないといけないね」
父は亜理紗にほほを寄せるようにして
「いい子だねえ、亜理紗」といった。
そんな父との飛行機の出逢いからいつしかキャビンアテンダントになつて世界をこの目で見てと頑張ってきたのだった。

それで、アメリカの二年間の大学留学から帰国して極東航空に入社、企画開発室を経てキャビン・アテンダントになり、一年前にチーフパーサーに上り詰めたのだった。極東航空は後発会社だったが、高岡社長のお客様サービス主義を第一とし、現場でお客様に接するCA、クルーの会合に参加して乗客のサービス、意見をどんんどん取り入れて利用客も大幅に増加しつつあった。現場の社員を本社各部門に配置し、働きやすい職場だった。

それだけに、仕事に掛ける情熱はすさまじいものがあった。亜理紗と塔乗する新人アテンダントに対するOJT体験実習は、厳しくいつしかキャビンアテンダントたちから鬼の亜理紗といわれ、新人たちからは涙をこぼすほどで恐れられている。かってキャビン・アテンダントになりたての頃は先輩に叱られその辛さ、厳しさを知っているので早く一人前になってほしいという情熱があった。そんな仲間たちから恐れられている亜理紗にもさびしさを漂わせることがあった。もちろん、仕事に掛けては優秀で、新人の教育も徹底していて上司からも信頼されていて、チーフキャビンアテンダントまで上り詰めて生活面では何ひとつ不自由なことはなかった。

亜理紗はふとわれに帰り
「いけない、こんなセンチメンタルな気持ちになって私には大切なことがある。」
と一筋の涙を拭い気持ちを無理に切り替えた。オーシャン航空成田空港支店ではニューアーク946便の出発準備のために慌しかった。
化粧室でユニフォーム姿を鏡で見ながら
「ええと一にスマイル二にスマイルか」
がっつポーズを取って
「私はやるようしがんばるぞ」
とほほを両手でたたいて化粧室を出て行った。

長い通路を客室部に向かって歩く間、成田空港に乗り入れているさまざまな航空会社のCAの制服が趣向を凝らしていて多くは紺色の制服だが、中にはオレンジ・イエロー・レッド・スカイブルー・ブラウンなどに混じってアジア各国の民族衣装をモチーフにした制服を纏っているキャビンアテンダントたちも行き来していて亜理紗は国際的雰囲気を醸し出している光景が好きだった。

そんな亜理紗を通路の階段の柱に隠れていた一人の男が立っていた。
「亜理紗」
突然名前を呼ばれた亜理紗は、
「お、お父さん」
「立派だよ亜理紗」
父は紺色の輝く金ボタンの制服を見て言った。
「ありがとね、来てくれてたんだ」
亜理紗は、キャビンアテンダントとして家を出て生活することを長い間反対されていたので父の一言でやっと融和できたことがなによりもうれしかった

極東航空の客室部のドアを開けて、中に入ると秘書が、
「高梨さん、部長がお呼びです」
亜理紗は、部長が私を呼ぶなんていったい何なんだろうと思った。
亜理紗は、そう思って部長席に行った。
「部長、お呼びですか?、高梨ですが」
「おお、高梨君、ご苦労さま、今回、うちの新しいニューヨークツアーの企画開発のために今日のニューアーク946便で急遽ニューヨークまで飛んでもらうことにした。それでどうだろう伊東葉月、後藤いずみの新人にも経験してもらって」
「はっ、あの新人ですか?」
「たしかにあの二人は、個性が強いとか、自己中心主義とか、僕はあの二人育て方によっては立派なCAになると思うよ」
「部長、ほらこの頃の子ってこうだからこうしてねと言ってもわかってますとかどうしてですか?とか結構こっちの方で後輩に気使うんですよ」
チーフとしての自覚は持っていたが、最近研修を終えて入ってくる新人CA(キャビンアテンダントの略)は苦手と思っている。

「では、まず、私から、秋野さん、小西さんの順にお願いします。」、
「L1の高梨亜理紗と申します。四十三期生です。どうぞよろしくお願いいたします」
「L2の秋野絵里子といいます。四十八期生です。どうぞよろしくお願いいたします。国際線搭乗経験は三年目です」
亜理紗は
「はい、次ぎの方」
「L3の小西優子で四十七期生で」
「L4の山下はるかと申します。四十三期生で」
次々に自己紹介があって新人二人の番が巡って来る。              
「伊東葉月と申します。同じ五十五期生で国際線勤務は二回目です。、よろしくお願いします」
「後藤いずみといいます。同じ五十五期生で国際線搭乗はこれで二回目です。どうかよろしくお願いします」
では、次の方、
(次ぎって言ったけど、私しかいないじゃないか。そそっかしいなあ。)
そう思いながら、皆に伝えておかなければと思い、急にすまし顔を作り、
「ええと、みなさま、各自の受け持ちの非常ドアの確認をしてください。本日ファースト、エコノミーともほぼ満席です。お客様が何を求めているか、注意を払ってクレームが出ないように気をつけてください。ニューヨークまで約十二時間、長時間のフライトですので休息取って疲れないようにしてまいりましょう。

亜理紗は皆の顔を眺めながら新人二人にもわかるように丁寧に説明し頭を下げた。亜理紗はふと本多木綿子のことを考えていた。
今から、この間までは、キャビンアテンダントとして本多チーフパーサーの指図に従って言うことを聞いて、乗客サービスに対応していた。亜理紗は、乗客から頼まれたことを他の仕事をしていてついうっかり忘れたり、行動が遅く厳しくあなたは信用できないと乗客から怒られたとき、深くわびたあと、ギャレーの片隅で泣いていた。

そんな時、
「高梨さん、元気を出しなさい、どうしたの、私に話してごらんなさい」
といつも優しく亜理紗の話を聞いて、励ましたり、家に呼んだり、暖かく抱きしめてくれたり、時には食事に誘ってくれたりしてかけがえのない頼れる先輩だった。

そんな本多が、ある日、
「亜理紗、私、9月1日付で地上勤務になったの」
と一枚の辞令を見せた。
辞令には。
「オーシャン航空本社、企画開発部課長を命ず」
と書かれていた。
「本多チーフパーサー、おめでとうございます。けど、チーフが本社に行かれたら私は誰に相談したらいいかなあ」 
と少しか細い声で本多の顔を見つめた。

「しっかりしてよ、亜理紗、私の後任っていうか、立派なチーフパーサーよ。もう、あなたに教えることないし、これからも色々なれないこともあって戸惑うこともあるでしょうが、あなたなら大丈夫、頑張ってね」
そういわれてもう一年たった。今までは、何か起こっても本多チーフが責任を負ってくれて安心していられた、まるで風雨が強く、防波堤の中に居るように高波から自分を守ってくれるような本多の大きな存在を感じた。これからは、すべて私が六人のCAの前に立って機内の出来事に立ち向かわなければと覚悟しなければと思っていた

皆は納得して亜理紗の説明を聞いていた。なおも皆の指示、キャビン関係、緊急事態発生の対応などについて説明は続いていた。プリブリーフィングを終えて亜理紗は、乗客インフォーメーションを見て車椅子の客、UM(無添乗の子供)を見て
「二百九十七人プラスゼロかあ」
プリブリーフィングを終えるといつものように亜理紗は、駐機場に続く長い通路を六人のキャビン・アテンダントたちと歩いた。歩きながら
「もう十年目かあ」
とつぶやいた。

通路で同期の坂西鈴江が声を掛けてきた。
「亜理紗、しばらくね」
「鈴江、しばらくっ」
「お互いすれ違いだし、これからどこへ」
「946のフライトでニューヨークへ」
「うらやましい、私なんかソウル、バンコク、遠くてドバイ」
「仕事だからね」
「この間、あなた木村クルーと歩いていたでしょう、イマカレ、モトカレ」
「どちらでもないよ、私、一筋派だから」
「あの、初恋の人、会えるといいね」
「まさか」
こんなくだけた会話が出来る同期生って心が休まるなあ、ほんのつかのまだった。

駐機場には機体にグリーンでOALをデザイン化した1970年に就航した400人もの乗客が乗れる BOING747が大きな巨体を横たえていて銀翼がきらきら陽の光りに輝いていた。搭乗機を眺めながら世界の空に羽ばたこうとするこの瞬間が大好きだった。これだからキャビン・アテンダント辞められないんだわといつも大きな瞳で見上げていた。
(しかし、でもあたしは結婚願望でおいおい二重人格者かよ)
と心の中は複雑だった。

亜理紗は、オーシャン航空本社のある霞ヶ関の方向に向かって、
「本多チーフ、ああ違った、本多課長、見ていてください、私は頑張ります」
と言って
階段を上がり機内に入ると亜理紗は並んでいる五人のキャビンアテンダント一人ひとりに手を合わせて微笑みながら、
「さあ、頑張っていこうよ」
といつものようにエールの交換を行った。この仕事はなによりも皆と一緒にチームワークを形成することが大切と考えていた。

、続いて、平井機長、福島副操縦士のクルーが待っている室に入った。
「さあ、合同ブリーフィングを始めよう」
平井機長が言った。合同ブリーフィングとは、クルーとキャビン関係者のCAが緊急脱出時の対応、非常口の確認、到着地までの飛行ルートの説明、天候とか、キャビンアテンダントとして必要とされる説明を行うことなのだ。皆は、長身の平井機長の説明を聞いて、航路上の天気も安定していて、ジェット気流に乗れればニューヨークまでの時間も一時間ほど短縮されることを聞いて安心した。

代わって、亜理紗が、
「では、私たちのサービスプランについて簡単に説明します。離陸後二時間で最初のお夕食ミールサービスを行います。本日のお客様は、ファースト二十名、エコノミーが二百七十七名、トータルで二百九十七名様の予定です。あわせてお客さまの入国書類の配布、食前酒とドリンクサービスの用意を行います。なお、本日は、ベジタリアン(菜食主義者)のお客様が五名ほど居られます。ベジタリアン食は、万一に備え七名様分用意してありますが、間違わぬように充分注意してください。このほか免税商品販売も行いますのでそちらのほうもよろしくお願いします」
皆の顔を眺めながら新人二人にもわかるように丁寧に説明し頭を下げた。

搭乗客を迎えるためにキャビンアテンダントたちがやらなければならないことは非常に多かった。さあこれからが戦場だ、

亜理紗は
「機内の整備状況、サービス物品点検、飲み物とか、お食事の量の搭載、オーデオチェック、それにトイレの確認とか仕事、山ほどあるんで、このチェックリスト見てチェックしてちょうだい」
新人2名が入っているので、
「乗客搭乗まで少ししか時間がないの、協力してやりましょう。葉月さん、いずみさん、頑張ってねえ」
二人は
「はい」
と返事して、葉月はトイレと収納棚チェック、いずみはオーデオチェックに廻るのだった。

乗客の搭乗まで目前に控えていて十二人のキャビンアテンダントはトイレの水の流れ具合、客席のオーディオの確認、国内外の新聞の確認、テレビの状況、荷物収納棚一つ一つのチェックなどをこなさなければならず駆け巡って戦場のように混乱している。一方、ギャレーでも三食分の食材、食器、飲み物の量、免税商品の確認などを短時間で終えねばならず喧騒だった。
「いつも戦場になるし」
亜理紗は低い声でつぶやいた。
「お食事の数、ミート、フィッシュ、それぞれ、それと・・・・そうそうベジタリアン食も」
客席ではキャビンアテンダントたちの声が飛び交っていた。亜理紗はチェックリストを持ち由佳里の数えた結果を記入確認している。

亜理紗は時計を見つめながらハンドマイクを手のして
「乗客搭乗五分前です」
その瞬間、今まで喧騒だった機内がシーンとして元の静けさに戻った。いよいよ搭乗客を迎えるこの一瞬は亜理紗たちを緊張させた。三人のキャビンアテンダントとチーフパーサーは搭乗口に立ち搭乗客を迎えた。
「ウエルカム・トゥー・ボーデイング」、
「いらっしゃいませ」
「こんばんは、ようこそ」、
とことばこそさまざまだったがお客様を心から迎えることには代わりがなかった。

一方、コックピットでは、機長、副操縦士が最終点検を行い離陸準備を始めていた。
 羽田航空管制塔とファーイーストエアーラインの航空機の間で交信が始まっていた。機長が
「こちらは極東航空808便サンフランシスコ行きです」
「ジス・イズ・ファーイースト・エアー27、クリア・トウー・スタート・・・」
副操縦士が復唱して、
「ビフォーアー・スタート・チェックリスト」、
「エンジンスタート3」
「エンジンスタート4」

次々に動作確認をすると、エンジン音がひときわ高くなり、
「ナンバー4スタート、フルパワー」
最後に四つのエンジンが全開して離陸体制が完了するのだった。
一方、機内では、キャビンアテンダントも着席、やがて轟音とともにエンジン全開で滑走路を疾走、、轟音と共に離陸し大空に舞い上がった。やがて、シートベルトサインが消えてFALをデザインした七色のエプロンをそれぞれがまとってキャビンアテンダントたちは忙しそうに働き始めた。

第二章 ギャレーの仲間たち

ギャレーに十二人のキャビン・アテンダントは集まって、亜理紗はてきぱきと指示した。
「いいこと、キャビンアテンダントって看護師とか保安員とか、またある時には主婦とかやさしい恋人とかその場の判断で臨機応変に果たさなければならないの」
今回は新人二人のトレーニングもしなければならずやさしく説明した。

「それ国内線のときに聞きました」
葉月が冷たい反応を見せる。
「このことはむづかしいのよね、つまりお客様の要望って世界各国によって習慣、生活が多種多様だし」
「あたしたち国際線の時にも聞きました」
いずみも同じような態度なのだ。

「香織と優子はお客様のチェックをして呉れる?特に酔っ払ってる方とか具合の悪い方がいないか注意してね」
二人は微笑んで指で〇を作りオーケーと答えた。
「それと不審な動きをする人がいるかも注意して。気をつけて、それとなく見張って」
香織が、
「任せて先輩、あたしたち例えゴキブリ1匹でも逃がしはしません」
ギャレーに居た皆が笑いに包まれる。
「ゴキブリは、機内にはいないけど、その心構えでやって」

亜理紗は二人を送り出した。彼女は、免税品のカートを目の前にして、
「伊藤さん、後藤さん。今日はどちらも満席なの、それで・・・」
亜理紗は全部説明するのでなく仕事がわかってもらうようにいつも質問して新人の意識を高めるようにしていた。いずみが口を開いた。
「それでお客様のお買い物の際に、ドルだけでなく、ロシアだとルーブル、ドイツだとマルク、中国だと元とか・・」
葉月がすかさず
「貨幣のレートに気をつけろといってるみたいな」
「ピンポン」
亜理紗の声で二人は笑った。

自分に比べて五十五期生と言ったことを思い出して、急に歳をとったと思った。何やってんの、ここでひるむなんて
「言って置きますが、お金の換算にはくれぐれも気をつけてね。大変でしょうが」
ここは先輩らしさを見せなければと思った。
葉月が
「あのお、亜理紗先輩、私たち、キャビンアテンダントになってまだ直ぐだし、どうしてですか?、私たちにそんな難しいことを」
いずみも
「あたしもそう思います。なぜですか、貨幣レートの換算の・・・・もし間違えたら先輩責任取ってくれますか?」
(出たっ、やっぱり、どうしてですか、なぜですかが)

亜理紗は、
「あのねえ、言って置きますが、どんなことでも最初は難しいと思うの・・そんな・そんなこと言ってたらいつまでも仕事っておぼえられないわ」
いずみが
「わ、わかりました。先輩が責任持つならやってみます」
と、この場はもう逃れることができないと思ったようだ。亜理紗は新人の教育は厳しく叱るときには徹底的に叱ったが反面、和やかな親しみの雰囲気を醸し出すことは誰よりも優れていた。この二人問題意識があるようだし任せようと思った。機内では、キャビンアテンダントたちがいつも客席を廻って乗客の細かな要望に対処していた。

亜理紗は葉月といずみの様子をそっと眺めていたが
「お客様、免税品はいかがですか」
と声を掛けている二人を見て大丈夫そうねと微笑んでいた

裕彦は、側を通りかかったキャビンアテンダントに
「あの、ニューヨークタイムスありますか」
「お客様今直ぐお持ちしますので」
今度の出張はニューヨークなのでなによりも現地の情報を知っておきたいと思った。英語は際立ってできるほどではなかったが、父が熱心に学生時代教えてくれたので何とか新聞を読んで大筋を理解できるのだった。現地での会話も頑張ってやってきたのだった。

「お客さまおしぼりでございます」
キャビンアテンダントが熱いお絞りを一人ひとりに配って廻る。
亜理紗は皆に仕事を与えた後、ギャレーで 一息ついていた。乗客の様子を巡回していた香織と優子がギャレーに帰ってきた。香織が
「亜理紗助けて」
「はっ、助けてってなに」
「お客様50Dのお子さんが機嫌が悪くて泣いていてお母さんがなだめてるんですが困っておられるようなので」
「それで私がその子を泣き止ませるって言うわけ」

香織は、困った顔をして、
「私たち、お子さんなだめたのですが泣きやまず、亜理紗先輩なら不可能なことはありません」
「香織が私を信頼してくれるのはうれしいわ、だけど無理なことも」
「いいえ、先輩はこれまでもお客様の難問を解決されてきましたし」
「わかった、じゃ行って来る」
亜理紗は、部下や上司に頼まれると決していやとはいえなかった。隅の引き出しから折り紙を取り出してギャレーを出て行った。

50Cの通路側の母親が
「何を言ってもこの子が言うこと聞かなくていやがったりして困ってるんです」
「わかりました、お子様のお名前は」
「隆夫といいます」
「隆夫ちゃん、あのね、お姉ちゃんがこの折り紙でなにか作ってあげましょう」
嫌がってる隆夫が亜理紗の優しい顔を見て、急ににこにこして
「お姉ちゃん、じゃキリンさん折ってくれる、象さんでもいいよ」
「ごめんなさい、お姉ちゃんキリンさんわからないの、その代わり隆夫ちゃんに象さんを折ってあげるね」
亜理紗は隆夫の顔を見つめながら象を折り始めながら、はっとした。


「ありちゃん、僕、折れないよ」
「ひろちゃん、折ってあげるね、ええとこうして」
ふと、自分が幼稚園だったとき、裕彦に象を折っている姿が目に浮かんだ。象を折り終えると、亜理紗は、
「隆夫ちゃん、ほら、象さんが折れたでしょう」
「お姉ちゃん、どうもありがとう」
母親も軽く頭を下げた。
「本当にこの子のために、すみません」
亜理紗はこの時まさか、その裕彦と三十分後に運命の再会をするとは考えてもいなかった。

離陸して二時間、すでにオーシャン航空946便は太平洋上にあった。
乗客は壁の大スクリーンの映画を見ている者、席の前のスクリーンでゲームを行ってる者、あるいはイヤーホーンを耳にあて音楽を聴いている者と長旅を楽しんでいる中で
キャビンアテンダント山下はるかが聞いた。

「お客様お飲み物はいかがですか」
十二人のキャビンアテンダントはそれぞれファーストエコノミークラスと別れて休みなく乗客の機内サービスを行っていた。
「これからまだ十時間の旅か」

裕彦は、カップのコーヒーを飲み終えた時、
「コーヒーよろしいですか、お代わりしましょうか」
まだういういしい感じのはるかが話しかける。
「結構です」
裕彦は答えた。

「次のお客様にお飲み物を聞いてね」
新人に付き添ってる背の高いベテランキャビンアテンダントがいう。新人の機内の実習なのかなあ、裕彦は何気なく彼女の顔を見ると、胸のネームプレートには、OAL TAKANASI 高梨と記されている。
「あっ、似てる、亜理紗さんに」
 
裕彦は、驚きの声をあげようとしてあわてて口を抑えた。
「まさか、あの幼稚園の幼馴染で二十年間消息不明の亜理紗さんじゃないよ」
心の中でそう思う。その瞬間さっき配られた手に持っていたお絞りを床に落としてしまった。
彼女は同じように二十年間も頭の隅から離れない裕彦がこの国際線に乗ってるとは考えていなかった。裕彦に軽く会釈して次の座席でドリンクサービスをしてやがて裕彦の視界から消えた。

「まさか、彼女が乗ってるはずはないよ」
無理に考えを打ち消そうとした。
「だめだ、記憶から消えない、抹消しようとしても、だめ」
あたりの乗客に聞こえない小さな声でつぶやく。
「よおし、今度のレポートでも見ておくか」
そう思って頭上の収納棚を空けてアタッシュケースを取り出して書類を取り出す。北米販売網確立に伴う予備調査、大きな活字が目に飛び込んできたが、さっきの高梨 亜理紗のことばかりだった。

ありちゃん、僕折り紙できないよう
あたしが折ってあげるから貸してごらんなさい
忘れていた幼稚園での想い出がよみがえってきた。

「書類も頭に入らないし」
機内のエアコンはよく効いて裕彦の周りには冷気が漂っている。足の周りが冷えてきたことに気がついて
「そうだ、亜理紗さんにブランケットを持ってきてもらおう、そして聞いてみよう」
そう考えただけで心臓がぱくぱく鼓動しているのを感じた。裕彦は、ちょうど通りかかったキャビンアテンダントに
「済みません、エアコン効きすぎて、ブランケットを」
「済みません、今お持ちします」
と絵里子がいうのを遮るように、
「あのお、高梨亜理紗さんにお願いしたいのですが」
「お客様、高梨亜理紗ですか?」
「ええ、お願いします、友人なので、僕の名前は錦小路裕彦といいます」
「わかりました、その旨伝えます、少々お待ちくださいませ」

彼女が裕彦の伝言を持ってカートを引きながらキャビンに背中を見せて遠ざかって行く姿を見ながら彼女が現れたらなんと話したらいいだろうと心がときめいていた。

平静を装ったもののもう心臓の鼓動が音をたてて耳に聞こえるほどだった。まさか、人違いじゃないのか、でも錦小路っていう苗字は全国探してもほとんどなかった。二十年間、頭のどこかにあったあの裕彦さんがこの飛行機に乗っているなんて。信じられないと思った。

亜理紗はブランケットを取り出し
「行ってくる」
ブランケットを手に持って裕彦に届けに行った。客席17C、ここだわ、裕彦は書類に目を通している。亜理紗は身体を少し屈めて声を掛けた。
「お客様、ブランケット、お届けに参りました」
乗客は、
「どうもありがとう。少し空調強くって」
書類を見ていた裕彦は顔をあげ亜理紗をしげしげと眺めた。

「あっ」
亜理紗は小声で驚いた。幼かった頃の面影が顔ににじみ出ていて
「あ・・あなたは高梨亜理紗さんですね?。横浜の幼稚園時代で一緒だった、僕のこと覚えて・ニューヨークに仕事で行くところで」
そう裕彦から言われて驚いて声も出なかった。のどはからからに渇き思わず
「お、・・お客様、失礼ですが、人違いだと思います。どうも大変し・・失礼しました」
とやっとのことで答えて、丁寧に頭を下げてギャレーに消えた。

裕彦は亜理紗に人違いと言われてひどく落胆した。自分からキャビンアテンダントのコーナーに行って高梨亜理紗に話をしようかとも思った。でもそれは仕事中の彼女を困らせたり傷つけてもよくないと思った。目の前に二十年間想い続けてきた初恋の人とやっとめぐり逢ったのに、その想いは目前で崩れ落ちる思いだった。亜理紗が去ったあと、膝に置いていた書類に目を通しはじめたが、彼女のことだけ考えていた。まだニューヨーク迄、随分時間があるし、また機会があるだろうと考えても落ち着かなかった。ギャレーでは仲間が待っていた。亜理紗はどきどきする心臓を手で押さえながらギャレーに入った。

「ああ、驚いた」、
「お帰りなさい、で、どうなの」
「それが、ねえ、、ねえ、ねえ。もう」とまだ気持ちが落ち着かなかった。
絵里子が、
「何なんです。亜理紗先輩」
亜理紗はまだ驚きを隠しえずに
「か、彼、幼稚園、小学校のときからあたしを好きで。」
葉月が
「超すごいっつ」
絵里子がすかさず
「それでデートの約束したの?」
「う~んん、お客様なにか人違いではないかって・・・・」
絵里子は
「先輩って仕事はすごい出来るのに自分のこととなると弱いわね」
と亜理紗に言ってくる。

「亜理紗チーフ、どうしてそんなことを、最高のチャンスなのに」
「そうかもねえ、ああ、あたしって馬鹿じゃなかろうか」
絵里子が、
「私だったら」
「でも、今はフライト中だし、お客様に愛してるなんて言えないよ」

そこへ乗客の様子を見に行った香織と木綿子がギャレーに戻ってくる。
「何かあったんですか、亜理紗、なんだか元気ないし」
亜理紗は、この二人にもわかっちゃうのかなあ、香織とは一番親しいし知られたくないなあと心の中で考えていた。
亜理紗と香織は歳が二歳違いでいつも香織の相談に乗っていた。
「亜理紗、あなたならどうする?」
と恋人のこととか、両親のことからちょっとした仲間とのトラブルにいたるまで親身になって相談に乗るのだった。

香織は、本当に亜理紗を頼って心強い先輩と尊敬されている。それだけに香織にだけは自分の情けない姿だけは知られたくなかった。
その時葉月が
「亜理紗チーフの恋人が機内に」
「余計なことを言うんじゃないの」
亜理紗は、目をつりあげ葉月に怒って見せた。

気がつくと新人いずみも帰ってきていた。亜理紗は恥ずかしそうにして小さくなっていた。
舞衣子が、
「ねえ、亜理紗、ラブラブのようだけど、今は仕事中だから、ニューヨーク着いてから逢うのはいいけど」
葉月も、
「あのう、こんなこと亜理紗チーフに言ってわるいんですけど、彼の夕食にメモを書いてパンの下にそれを置くとか」
舞衣子も
「ニューヨーク着いた時、デッキでそっとメモを上げるとか」

香織が、
「それとも亜理紗、私がお客さまのところに行って、錦小路裕彦さんをここに呼んできてあげようか」
「そんな」
「お客さまとの対応、会社の規則にあるけど、すでに亜理紗は昔からのお知り合いだから、チーフが行くと目立つし」
「香織、ありがとう、でも私」
「それでここで彼とここで話している間、少しくらいなら、住所とか電話聞くくらいなら、席はずしてもいいよ」

葉月が、
「何だったらケータイっていっても番号わからないか」
「それにわかったとしてもいつもお客さまに機内でのケータイのご使用は計器を狂わせますといってるじゃない、その私たちが」
亜理紗が大きな声を出したので皆、びっくりした。

「皆さん、お気持ちだけでいいの」
「なに、私たちその間、席はずしてお客さまのサービスだって出来るんだし」
「皆、本当にありがとね」
亜理紗は、私の彼のためにこんなに皆が親切にしてくれてと思うと、思わず目になみだが溜まりギャレーの仲間たちってなんと優しく思いやりがありあり素晴らしい仲間だろうと胸があつくなった。










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中篇企業小説「大井田さくらのツアーコン日記」

大井田さくらは東京虎の門にある帝国観光旅行社のベテラン社員で、部下からはアネキといわれ部長までがすっかりさくらを頼っていて頼もしい存在であるものの、高度成長期に入社したこともあり、会社のため、自分のためにと夜も誰よりも残業するので恋人も出来ず、いつのまにか32歳を迎えてしまった。

そんなさくらは入社時、語学の堪能さが買われて旅行企画室に従事してきたので、上司の海外視察でヨーロッパに出かけたものの、実際にコンダクターとしては海外旅行にいけぬまま年輪を重ねてきた。

ある日、部長からアメリカ西・東海岸のツアーコンパニオンとして仕事を命じられるが、かねての念願が達成できて喜んだが、大下という入社間もないどうしようもない大下を連れて鍛えてくれといわれたさくらは大いに悩むのだった。

さくらは大下とともに成田国際空港に10日間のツアー少し大きい文字少し大きい文字客を引率して出発するのだが、同行の大下は彼女を困らせるのだった。

4月10日晴れ

朝の地下鉄虎ノ門駅、おびただしい人の波が狭いホームから改札口に流れて行く。

近くに溜池駅があり虎ノ門駅も狭いホームを改装したものの周辺のビルは立ち並び高層ビルが出現したためホームは依然として許容量を超えている。

大井田さくらもその中の一人で改札口を出て階段を駆け上ると目の前に帝国観光商事ビルがある。

信号を横断して向かい側道路を歩くとさくらは立ち止まって目を留めた。

さくらのビルの二件前の中華料理店の袖看板を見つめた。
看板には、
「おかげさまで開店10周年・ランチサービス」
さくらは、
「う~ん10周年かああたしも10年目かあ、おかげさまじゃないよ、ずっとあねごやっててさ」」
独り言を言ってると

「さくらお早うあなたなに一人ごと言ってんの」
「ちょっと私もうあの看板・・・・10年続けてみてるんだよ。考えちゃうよ」
といつもさくらの悩み事を聞いてくれる由香里に声を掛けられた。

二人は同期生で気心も知れていて、会社では上司の言うことを聞いてよく働いた。

そのため男子社員からあまり仕事に熱中してると嫁の行き遅れになるよと冷やかされていた。

「ねえ私今朝急いできたので食事まだなの、マックに寄らない」
「うんそうしようか」
二人は、ファーストフードショップに寄って注文を頼み、トレーにバーガーとコーヒーを載せて通りの人並みが見える窓際の席に座った。


「ねえ大下だけどああいう新人さあ私どうやって教育したらわかんないよ」
「どこの課にもいるんだよね」
と、由香里も答えてみたもののさくらになにか相談に乗ってあげたいのだが、実は同じ添乗員の田中和彦に困っているのだ。

「あの、昨日も私が仕事をしていると」
「お先ですさくらさん、僕は用事があるのでいい
加減に帰ってください。目にくまが出来てますよ」
なんて大下、平気で言うんだよ。

「はっ新人であなた大変ね」
でも私が悪いかも知れない、部長から呼ばれて
「うん、君はこの課で一番出来るからとか言われて」
皆、彼は態度がでかくて敬遠しているのに部長は、何でも私がどんなことでも引き受けるから、それに海外旅客部ができて私が一番古いから断れない自分に少しいらいらしていた。

さくらは新人大下が新入社員の研修を終えてうちの課に配属された時に部長から呼ばれてキャリアも実力もあって知識も豊富だから君しかいないとほめあげ
られて引き受けざるを得なくなってしまった。

さくらはそういわれると断りきれなかった。
「大下、気楽でいいね、私は自分の仕事を途中で投げ出すと帰って気になるの」

そう、さくらが帝国旅行観光に入ったときは、高度経済成長の真っ只中だった。

海外旅行客の急増とともに仕事は山ほど抱えていて少
人数で無我夢中に働いたのだった。

トルコナイル川の旅・イスラエル巡礼の旅・ギリシャ地中海の旅・ギリシャ遺跡の旅など打ち出した企画は当たってなぜか中高年の人たちの人気を呼んだのだっ
た。

さくらは新企画のために寝食を忘れて働いた。会社が海外旅行自由化により急成長して飛行機の増便とともに旅客を募集して旅行代理店として送り込まねばならなかった。

それで、特色ある新企画を立てる必要があった。

さくらは、課長、部長に自ら企画書を作るためによく現場の案内所有楽町、新宿などまた成田空港まで出かけたのだった。

由香里をはじめ5人で海外旅行アンケートを作り、新宿・銀座の現場案内所に出かけてカウンターに立つ皆とのコミュニケーションをよくするとともに、1000枚ものアンケートを行った。

時には休日でごったかえしている新宿駅のとおりに立って、用意してきたアンケート用紙をバインダーに挟んで「あの、海外旅行についての簡単なアンケートをお願いしております。ご協力いただけないでしょうか」と頭を下げて、
「ありがとうございます、では今一番行きたい海外旅行先と予算は」
と短時間に矢継ぎ早に聞いていき、まとまると、
「これを本社にもっていって集計しといて」
と新人にも頼んだものだった。

記入が終わると夕方、会社に持ち帰りPCのスイッチを入れて集計、終電にも間に合わず会社のソファーで仮眠を取る日もあったのだ。
その結果の新しい海外旅行コースは募集と同時に満杯だった。


さらに彼女は企画部時代に積極的に航空会社ともアプローチをして海外旅行の方面別パンフレットに現職航空会社の客室乗務員のこの旅行のお勧めのところと店の話を載せるなど、さくらのすさまじい男勝りの仕事に周辺は驚いて「彼女と一緒に仕事してみろよ、殺されちゃうよ」
と男性社員から恐れられていた。

「さくらさん、どうしてそんなに働くのですか、それじゃかさかさした気持ちになりますよ」
と聞いたのに対して、
「たしかに、だけど仕事がそこにあるから、征服したいから、その先になにがあるかわかんないでしょう、先も見ないであきらめるの」
と平然とこたえたのだった。

それを時代が変わったとはいえ、部下の大下のように人事のように言って動こうとしない新入りはどうしたらいいんだと悩んでいた。

今、低成長に日本も落ちてこの一、二年に入ってきた新人のなんと覇気に乏しいことか

6階を降りると帝国観光旅行海外旅客部のドアを開け
て二人は入った。

「お早うございます」
「ああお早う」
「お早うございます」

たがいに挨拶を交わしながらさくらは新入社員大下の
向かい側の席に座った。

「部長おはようございます」
「おはよう大井田君。例の件できた」
部長は、何かというとさくらを頼っていた。さくらもまた部長は私に仕事を任せてくれるし頑張らなければと考えて、ほかの社員が休んでも彼女は会社に出てき
てがむしゃらに働いた。そのため年休も消化しきれず山ほど残っていた。

そんなさくらの働き振りを見ていて人事の役員会で
部長は、「わが部の大井田さくら君は女子社員ですが、仕事は正確で語学も堪能ですし私の出した課題を片っ端から片付けてくれます」

大川人事部長が、「それは判るんだが男性社員で候補者もいるしね」
「判ってます。課長にとお願いしているわけではあり
ません、係長に勤務評定も充分推薦するだけのものを持ってます」

「う~ん、君のいうこともわかるが女性は結婚を控え
てるしなあ」
杉田専務が
「じゃ、主任ということでこれで勘弁してくれないか」
ということでさくらは海外旅行第一部の主任となったのだった。

そんなさくらは、
「ええまとめました」
さくらはバッグから資料を取り出して部長席に行った。

「部長これです」
「君、短時間でよくまとめたね、イスラエルの食べ物とか情報なかなかなくてね」

さくらの叔父は東和通商に勤めていた。部長は大井田さくらを信用していた。入社10年の最古参でベテランの彼女は、いつも部長の片腕的な存在だった。
「あたしのこと信用してくれてるのはうれしいけどさ・・・・でも何かと言うと、おおい、さくら君これって便利屋さんなのかなあ」
そんなことを考えながら最後には部長の言うことは率先して仕事をした。

でもいつもさくら一人の力ではどうにもならない難問題をぶつけられたのだった。今度も中近東イスラエルの食事についてまとめてくれるように頼まれたのだった。

「お願いです叔父様あたしを助けてください」
「さくら君からそういわれると僕も」
と現地の事務所に連絡してイスラエルの情報をあつめてくれた。旅行観光会社同士の競争はすさまじくツアー料金の引き下げとかツアー年代を高齢化社会時代の到来に合わせて新しい企画開発が必要だった。

ヨーロッパやアメリカ・東南アジアの国々へのツアーは企画も出揃って新しい販路としてトルコ・イスラエル・ギリシャなどの中近東諸国の旅行が帝国観光がこれから力を入れて他社にない特色作りを行うことだった。

それを時代が変わったとはいえ、部下の大下のように人事のように言って動こうとしない新入りはどうしたらいいんだと悩んでいた。

さくらは部長から信頼されて何よりも現地の食べ物・レストラン情報が集めにくいため部長からなにかというと情報収集を依頼されたのだった。

さくらは
「ルートがあるものですから何とか部長失礼します」
席に戻って机上のパソコンのスイッチを入れて海外ツアーの集客状況を見ようと思った。

そのとき、大井田君ちょっとと部長が呼んだ。
「おおいさくら君、君にお願いがあって」
今度はどんな難問題かしら、さくらはそう思いながら椅子を立ち上がって部長席に行った。

「はい」
「君に、今回・・・]

特に今回といわれたことにどこかツアーの添乗を頼まれるのかなあと推理した。
さくらはこの課でもう数年間も帝国観光のツアー企画を集めてきたパンフレット、現地資料、日本での収集資料を分析、具体化することには秀でていた。

「なんですか。今回って」
「君にアメリカ・東・西海岸10日間のツアコンしてほしいんだ」

「はっ?、この私に・・ですか」
さくらは心の中でゆかりに言ったこと本物だなと思った。

「ええと、本当ですかうれしいです。やった私はやりました」

長い間企画部の仕事をして、帝国旅行観光会社に入ったのは世界の各地を自由に添乗員として飛び回ることが夢だったのだ。

心の中で私30過ぎているし、初めてで強行軍だしとも心配が別の面であった。

「部長そのプラン強行軍ですよね、私を選んでくれたのはうれしいですがいきなり10日間って言うのが」
「ほかにだれも居ないしね、私を除いては来月皆出かけちゃうんだ。
 ベテランの山口君だけどインフルエンザで急に入院しちゃうし」

「ちょっと、待って・・・・・・・そうですか?。それでは・・・・お引き受けし」
あたしのように入社一〇年選手になると結構会社に忠節なのよねと思いながら部長の返事を待っていた。

「行ってくれるかね。、いやあ君のためにもツアコン経験してほしいんだ、出発はまだ4日間あるから準備して」
さくらは軽くお辞儀をして自分の席に戻ろうとした。

「あっ、さくら君、もう一つ、あの大下君も一緒に」
「はっ、大下・・・・大下をですか」
「だ、ダメです、ぶ、部長お断りします、大体私はこの課でベテランて思っておられるでしょうが私も出来ることと出来ないことがあります」

さくらは部長の席の前に戻って手をすり合わせて必死になって断ろうとした。

由佳里が「さくらさん、おめでとうございます。いよいよあねごの出番ですね」

さくらになにかというと突っかかってくる大下が苦手だったが、あたしが一番古株だし仕方がないよと心の中で思いながら軽く受け流した。

「って云うか、遅い・・・出番だよね」
「わたし大井田さんのこと尊敬しています」と言った。

さくらの向かい側に座っていた大下が
「アネごと一緒に僕もいよいよツア・コンの洗礼か」
「大下君、人ごとのように行ってるけどあんた」
「僕、アネゴを応援します。大丈夫です。アネゴはなんかあっても驚かないしなに僕は尊敬していますから先輩を」

「それって、ほめてるのけなしてるの」
大きな声に仕事をしている皆がさくらのほうを振り向いた。

「ちょっと大下君仕事のほうは」
思わず身を少し乗り出して顔は大下のパソコンを覗き込んでいた。

さくらは午後の会議に使う全国海外ツアー集客状況をパソコンでまとめていた。

入社10年海外旅客部全員からさくらは嘱望されていた。入社10年という長いキャリアからいつのまにか海外旅行の生き字引とさえ言われ部長の持田までもがさくらを頼りきっていた。

壁の時計は12時をとっくに過ぎていたのにさくらは
エクセルで集計の計算を行っている。

「さくら、もう昼休みよ社食いこうよ」
由香里がさくらの肩に手を置いて誘った。
「あっ、そっかそっか行こうか」
すでに海外旅客部は皆外に出ていた。自分は正午も気づかずに仕事をするなんて明らかに最近の若い子たちと違っていた。由香里に声をかけられなければ、まだEXCELLの仕事をしているところだった。EXCELLの集計をファイルに保存してパソコンのスイチを切った。


「あのねええ、由香里教えてほしいの」
「私でよければいつでも」
「じゃ外のレストラン行こうよ、あたしおごるから」
さくらと由香里はエレベーターで1階ホールに下りて外のまぶしい光の中に吸い込まれて行った。

さくらと由香里はレストランの窓際に座った。
「部長から是非って言われて引き受けたけ
ど・・・・・ああ困ったなあ。」

「困ることないよ。気を楽にしてやれば・・・・・ど
うって言うことないよ」
「それにさ、今朝話した大下までもお土産につけてく
れて」

さくらも部長からの突然の話、三泊程度の韓国、香港
ならばいいのだが、30歳を過ぎていきなり10泊のアメリカ東・西海岸ツアーに指名されて戸惑っていた。

私、何でも自身あったのに、一歩自分が引いちゃうのは歳のせいかなあとも考えた。
「ああ大下にはあんなこといったけど」
「あたしずっと前にヨーロッパのツアーの新しいパ
ックの企画でそれも部長とか課長のお供で行っただけよ」
「大丈夫よ、さくらさん頭いいしお客のクレームも機転利かせるし」

「いやだあ、あたしがカキフライ定食おごったからと
言ってほめ殺し」
「絶対大丈夫、さくらなら」
「由佳里、で世界中お客様連れて・・・・・・・何
回」「う~んと百回位かなあ」
「どうっていうことないよ、さくらさん頭いいし、経験長いし」

4月11日 くもり時々晴れ

翌日のことさくらが出勤すると、部内にさくらがはじめてツアーコンダクターとして外国に出かけることが知れ渡っていた。

「ああ、大井田君」
と部長に呼ばれた。さくらはまた何か部長の提案があるのではないかと心配しながら部長席に行った。
「はい、大井田さくらです」

「実はね、さくら君が乗るアメリカン・ウエスト航空だけど、乗務員労働組合と会社側の交渉がうまくいかなくて、ストライキに入る公算大だそうだ」

「はっ、ストライキ、じゃあたしのツアコンもないんですね」
「いや、万一ストでも非組合員で運行するそうだ」
「わかりました」
といって席に戻りパソコンのスイッチを入れて頬ずえをつきながら
「こんなのあり」

ツアーのスケジュール表を眺め、ためいきをついた。

大下が、「さくらさんも始めてのツアー旅行がストライキでは気持ち沈みますね」
と人事のような話かけをしてくる。

「あのさ、大下君あんたもいくんだからね」
「わかってます」

「部長そのプラン強行軍ですよね、私を選んでくれたのはうれしいですがいきなり10日間って言うのが」
「ほかにだれも居ないしね、私を除いては来月皆出かけちゃうんだ。
 ベテランの山口君だけどインフルエンザで急に入院しちゃうし」

「ちょっと、待って・・・・・・・そうですか?。そ
れでは・・・・お引き受けし」
あたしのように入社一〇年選手になると結構会社に忠節なのよねと思いながら部長の返事を待っていた。

「行ってくれるかね。、いやあ君のためにもツアコン
経験してほしいんだ、出発はまだ4日間あるから準備して」
さくらは軽くお辞儀をして自分の席に戻ろうとした。

「あっ、さくら君、もう一つ、あの大下君も一緒に」
「はっ、大下・・・・大下をですか」
「だ、ダメです、ぶ、部長お断りします、大体私はこの課でベテランて思っておられるでしょうが私も出来ることと出来ないことがあります」

さくらは部長の席の前に戻って手をすり合わせて必死になって断ろうとした。

由佳里が「さくらさん、おめでとうございます。いよいよあねごの出番ですね」

さくらになにかというと突っかかってくる大下が苦手だったが、あたしが一番古株だし仕方がないよと心の中で思いながら軽く受け流した。

「って云うか、遅い・・・出番だよね」
「わたし大井田さんのこと尊敬しています」
と言った。

さくらの向かい側に座っていた大下が
「アネごと一緒に僕もいよいよツア・コンの洗礼か」
「大下君、人ごとのように行ってるけどあんた」
「僕、アネゴを応援します。大丈夫です。アネゴはなんかあっても驚かないしなに僕は尊敬していますから先輩を」

「それって、ほめてるのけなしてるの」
大きな声に仕事をしている皆がさくらのほうを振り向いた。

「ちょっと大下君仕事のほうは」
思わず身を少し乗り出して顔は大下のパソコンを覗き込んでいた。

さくらは午後の会議に使う全国海外ツアー集客状況をパソコンでまとめていた。

入社10年海外旅客部全員からさくらは嘱望されていた。入社10年という長いキャリアからいつのまにか海外旅行の生き字引とさえ言われ部長の持田までもがさくらを頼りきっていた。

壁の時計は12時をとっくに過ぎていたのにさくらはエクセルで集計の計算を行っている。

「さくら、もう昼休みよ社食いこうよ」
由香里がさくらの肩に手を置いて誘った。
「あっ、そっかそっか行こうか」
すでに海外旅客部は皆外に出ていた。自分は正午も気かずに仕事をするなんて明らかに最近の若い子たちと違っていた。由香里に声をかけられなければ、まだEXCELLの仕事をしているところだった。EXCELLの集計をファイルに保存してパソコンのスイッチを切った。


「あのねええ、由香里教えてほしいの」
「私でよければいつでも」
「じゃ外のレストラン行こうよ、あたしおごるから」
さくらと由香里はエレベーターで1階ホールに下りて外のまぶしい光の中に吸い込まれて行った。

さくらと由香里はレストランの窓際に座った。
「部長から是非って言われて引き受けたけど・・・・・ああ困ったなあ。」

「困ることないよ。気を楽にしてやれば・・・・・ど
うって言うことないよ」
「それにさ、今朝話した大下までもお土産につけてくれて」

さくらも部長からの突然の話、三泊程度の韓国、香港ならばいいのだが、30歳を過ぎていきなり10泊のアメリカ東・西海岸ツアーに指名されて戸惑っていた。

私、何でも自身あったのに、一歩自分が引いちゃうのは歳のせいかなあとも考えた。
「ああ大下にはあんなこといったけど」
「あたしずっと前にヨーロッパのツアーの新しいパ

ックの企画でそれも部長とか課長のお供で行っただけよ」
「大丈夫よ、さくらさん頭いいしお客のクレームも機転利かせるし」

「いやだあ、あたしがカキフライ定食おごったからと言ってほめ殺し」
「絶対大丈夫、さくらなら」
「由佳里、で世界中お客様連れて・・・・・・・何
回」「う~んと百回位かなあ」
「どうっていうことないよ、さくらさん頭いいし、経験長いし」

4月11日 くもり時々晴れ

翌日のことさくらが出勤すると、部内にさくらがはじめてツアーコンダクターとして外国に出かけることが知れ渡っていた。

「ああ、大井田君」
と部長に呼ばれた。さくらはまた何か部長の提案があるのではないかと心配しながら部長席に行った。
「はい、大井田さくらです」

「実はね、さくら君が乗るアメリカン・ウエスト航空だけど、乗務員労働組合と会社側の交渉がうまくいかなくて、ストライキに入る公算大だそうだ」

「はっ、ストライキ、じゃあたしのツアコンもないんですね」
「いや、万一ストでも非組合員で運行するそうだ」
「わかりました」
といって席に戻りパソコンのスイッチを入れて頬ずえをつきながら
「こんなのあり」
ツアーのスケジュール表を眺め、ためいきをついた。

大下が、「さくらさんも始めてのツアー旅行がストライキでは気持ち沈みますね」
と人事のような話かけをしてくる。

「あのさ、大下君あんたもいくんだからね」
「わかってます」

4月11日 くもり時々晴れ

翌日のことさくらが出勤すると、部内にさくらがはじめてツアーコンダクターとして外国に出かけることが知れ渡っていた。

「ああ、大井田君」
と部長に呼ばれた。さくらはまた何か部長の提案があるのではないかと心配しながら部長席に行った。
「はい、大井田さくらです」

「実はね、さくら君が乗るアメリカン・ウエスト航空
だけど、乗務員労働組合と会社側の交渉がうまくいかなくて、ストライキに入る公算大だそうだ」

「はっ、ストライキ、じゃあたしのツアコンもない
んですね」
「いや、万一ストでも非組合員で運行するそうだ」
「わかりました」
といって席に戻りパソコンのスイッチを入れて頬ずえ
をつきながら
「こんなのあり」
アーのスケジュール表を眺め、ためいきをついた。

大下が、「さくらさんも始めてのツアー旅行がストライキでは気持ち沈みますね」
と人事のような話かけをしてくる。

「あのさ、大下君あんたもいくんだからね」
「わかってます」

4月14日 晴れ

その日、気の進まないままにツアー旅行日程表を大下にも渡して細かな打ち合わせをやっておかなければと思った.

さくらは、
「大下君、打ち合わせやるから早く社食いってきて」
「さくらさん、昼ぐらいゆっくり休ませてくださいよ」
「何いってんの、出発までに時間ないの」

さくらは部長から手渡されたツアー旅行スケジュールを側でコピーしてホッチキスで閉じて大下の机に置い
た。

さくらは大下のような新人類から見ればあくまでもお給料をもらっている以上働かねばという強い信念だった。

実際働いただけの実りも多い時代で分厚い袋のボーナス支給の札束を数えることが出来たのだ。

大下が上の階の社員食堂から帰ってくるとさくらは
脇の会議室のドアを開けて「それじゃざっとやろうね」
といって中に入り大下を招き寄せた。

さくらは、こののんびりした新入社員の大下を今のうちに鍛えておかなければならないと思っていた。
カーテンを下ろした小会議室で二人は向かい合っていたがさくらは時差・両替・出国入国手続き・パスポート・所持品・食事・チップ制度、万一お客様の間で体の具合が悪くなった時の対処法などを手短に説明した

「いい、大下たとえばお客様からこちらに不手際があって謝らなければならない時どうする」

「ええ、謝る、わかりますがどういう時」

「あなたね、どういう時ってたとえば間違って昼食を頼んでしまってお客からクレームがあった時」

「そこは正直に僕はまだ入社して1年生で」

「ブー、大下間違い」

「でも正直にありのままの自分を」

「いい、あなたが新入社員かどうかはお客様にどうだっていいの、たとえまだ1週間でもわが社のベテラン社員とお客様は思ってるの」

「難しいものですね、学生時代と違って」

「いつまでも学生時代の気分でいては困るわ、あなたはもう当社の社員だし、ツアーのお客様はあなたのことをもう立派なベテラン社員と思ってみてるわ。
たとえ、入社1週間でもお客様はこのツアーに任せておけば安心して外国旅行に出かけて楽しむことが出来るって考えてるの」

「さくらさん、わかります」

いつもさくらは何かと大下にからかわれていたが今日はこの新人をなんとしてでも鍛えたいと顔にも気迫が満ちていて立ち上がって右のこぶしでテーブルを時に軽くたたき迫力がある。

さくらは大下と話をしてるうちに、自分の頃と違って人との直接なコミュニケーションをとれず、いつもメールで対話している世代だから、こういうことも教える必要があると頭が痛かった。

「それから現地であなたにもガイドを少しやってもらうから」

「えっ、この俺が」

「誰であろうとそうやってガイド役になっていくの」
といいながら、さくらは壁際のガラス棚を空けて赤いファイルのガイドマニュアルを大下の前に置いた

「それって考えてませんでした」

「いいこと、もし、あたしが具合が悪くなった時、お客様に今日はガイドできませんていえないでしょう」

「厳しいな、会社って」

大下が一言さくらを見ながらつぶやいた。

その夜、家で両親と弟健二がさくらのツアー旅行出発を祝ってくれた。
母が
「あなたは、いつも自分でツアー旅行のコンダクターをやってみたいといってたわね、よかったね、さくら
」と喜んでくれた。

身体をあたためるすき焼きのなべがぐつぐつ音を立てている。
「今日はすき焼きよ」
「お母さん、ありがとう」
父が自分でコップのお酒を飲みながら
「さくらとしばらく会えないか、一番さびしいよ」
弟、健二が
「親父は僕がどこか行くといっても平気なのに、あねきのことになると、親父はあねき離れが悪いんだから

さくらは
「あのね、私今夜成田とまりなの」
「えっ、出発は明日夕方だろうが」
「部長がホテル予約してくれたの、それにいろいろ準備が」
「そうかわかった、身体に気をつけて元気で帰ってきてね」

京王線で新宿に着きあたりは真っ暗く夜の帳が下りていたが、変わってビルの灯が彼女に降り注ぐように照らしていた。

上野からは、京成スカイライナーで成田国際空港に向かった。
夕方から深夜にかけてはアメリカ・ヨーロッパ線の長距離路線のラッシュアワーが始まるのだった。
スカイライナーは全席満席だったが運のいいことにさくらは入り口付近の座席が空いていた。

いよいよ自分が明日35人のツアー客を連れて10日間の海外旅行を添乗すると思うと改めて身の引き締まる思いがした。

「ええ、でも、あたし、まだお客様を連れてっていう
か・・・」
お客様大勢いたらあがって小心者なんです」
「回数には関係ないよ、要はやる気さへあれば」
さくらは思い出していた。

成田国際空港の傍のオリエンタル成田空港ホテルに入
った。
「いらっしゃいませ」

「帝国観光商事の私、大井田さくらですが」
さくらは、少し緊張して自分の名前をいうと、
「ご予約承っておりますが持田敦夫さまから」

早手回しに持田部長はホテルの予約を頼んでくれてたのだった。
ホテルについてシャワーを浴びてバスローブに着替えて、備え付けの冷蔵庫から缶ビールを取り出して飲みながら旅行のスケジュール表を眺めた。

「ええと、第一日はサンフランシスコ市内観光で・・・ロスアンゼルスからニューヨーク市内、ナイアガラ行って九日目にハワイ・ホノルルかあ」

「大下に遅れないように」
そういってケータイを取って右指を忙しく走らせてメールを送った。
「当日遅れないように早めに来てね」と。

4月14日 晴れのちくもり次第に風雨強くなる

翌日、さくらは成田国際空港第二空港国際線ロビー構内のTV天気予報を見ていた。何よりも大下が言ったアネゴは嵐を呼ぶ男といわれたことが気になっていた。
国際線空港ロビーから見える晴れ渡った空を見て安心していたが、天気予報を見てこれからの天気を非常に気にしていたのだった。
「今日ははじめは晴れですが次第に雲に覆われて低気圧前線の関係で風速が強くなり、陸上で15メートル以上、海上では25メートル近い春の嵐が・・・・・」
見ながらさくらは、大下の言うことがいまさらのようによみがえる。
「えっ、大下の云うこと本当じゃない、大変だょ」
「まだ、早いよ、出発5時までまだ5時間あるよ」
腕時計を見つめながら少し早すぎたかなと考えた。

さくらはとても用心深く、高校時代も友達と旅行するときもいつも予定より30分も早くついて皆を待っていたので、深見洋介から「用心さん」とニックネームをつけられた。後ろから
「さくらさん、」
由佳里が平井を連れてきていた。さくらは振り向いて
「ああ、由佳里さんに、平井どうしたの?。駄目じゃないの仕事しなくちゃ、二人ともどうしたの」
思わず言った。

由香里は、
「部長から大井田君、初めてだからちょっと平井君連れて行って励ましてやってくれって」
それを聞いてやっぱり部長は、あたしがしかも30歳を越えてアメリカ10日間ツアーに行くことを心配してくれてるんだ。
「ありがとね。二人とも」
「ところで大下ここで会おうといったのにあいつまだ来ないの」
「大丈夫ですよ、必ず来ますよ」
その時、大下が黒いスーツケースを右手で引きながら走ってくるのを見た。
「あねご、さくらさん」
「どうもごめんなさい、時間に遅れて」
「あのね、時間に遅れないことは添乗員としては基本なの」
「ぼく、間違えて第一ターミナルのある駅で降りてしまって」
「はっ、昨日打ち合わせしたじゃないの」
大下が
「アネゴ、飛ぶんですかストライキ中って書いてあるし」
「まあ、飛ぶんじゃない」

ここでいまさら心配しても仕方がない。この航空会社は今までもストライキをやってきてると部長もいってることだし、ここであせっても落ち着いていないととさくらは思いなおしていた。

由香里が
「心配だったの、で、ホテル電話したら。居なくて」
「ありがとう、持つべきものは後輩かあ」
「ツアコンやってると何が起きるかわかんないの、突然、予想しないことが起きて」
もう百回もツアー添乗をしている由香里の言葉は真実だった。
さくらは、はじめて部長からの命令で、しかも三十路を越えた私がいくのにいきなり予想もしない出来事に遭遇し、
「突然っていうか、あのさ行く前から、飛行機ストライキなのよ、でも飛ぶらしいけど、あんまりだよ。こんなのないよ」
と飛行機のストライキに、さらに天候異変で春の嵐まで吹くなんてと思わず口にした。

「そういうときこそ落ち着くの」
由香里は、さくらに助け舟を出そうとしていた。
「落ち着くって」
「あのね、うちの祖母が言ってたけど、手のひらに人っていう字を書いてそれを飲み込むの」
「ええと、こうやって」
と言って飲み込む
「どう、落ち着いた」
「う~んん、落ち着かないよ、ああお客様に説明してわかってくれるかなあ、ツアー料金返せって・・・・・・ああ困った」
自分で、さくら、そんなことでどうするの、やるっきゃないでしょう、頑張れさくら、暗示をかけるように頭の中で何度もことばを繰り返して見た。
「とにかく飛行機飛ぶって云ってるんだから、安心してくださいって何回も云うのよ」
「わかった」

「あと、時として、はじめてのお客様に多いんだけど、緊張してしまって具合が悪くなる方が」
「そういう時、緊張して酸素欠乏症になるの、ええと・・・・・・・・。」
「過呼吸酸素症候群でしょう?」
「、ああ、そうそうそのそれ、それ、でも必ずお医者様いらっしゃいませんかとアナウンスしてね。でビニール袋をお客様の口にあてて息を吐き出させるの。そうするとよくなることもあるの」
「うん」

くららのベテランツアコンの話を聞いていた大下がくららの顔をしみじみと眺めながら、
「さすがですね、ベテランは、僕初添乗するときは由佳里さんについていこうかなあ」
由香里と一緒にいた平井がそういった。
さくらは、こんな質問をしてくる平井君って、競争の激しい旅行業界で生きていけるのか、もう少し真剣に勉強するとか努力してほしいと思った。
「何言ってんの、二人って言うわけいかないの」
「どうしてですか?」
「あのねえ、団体の海外ツアー添乗員は全部の費用から差し引いて一人分の費用が浮くの、二人行くと赤字なの」
「そんなに厳しいんだ」

のんきなことを言ってる大下に、さくらは、
「私がアメリカから帰ったら部長に、香港ツアー3日間ツアー、大下にやらせてくださいといっておこうかなあ」
「そんな、さくらさん、僕まだ入って半年ですよ、最初は今日と同じように、誰かと一緒に」
「なに、あなたは甘っちょろいこと言ってるの、自分で調べて苦労して一人前になるの」
とにかく大下と一緒になると、つい大下を一人前にしなければと思うあまり、火花を飛ばしてしまう。

「さくら、あと、両替はなるべくこっちでアメリカって時間によっては開いていないし、フイルムもこっちが安いし、それからツアーの時間厳守はうるさく言って」
「日本人って時間ルーズな人がいるよね」
「バスで移動するとき、時間守らなくて遅い人いるじゃない?。皆も迷惑そうな顔するけど、ドライバーが大切な時間を返せって怒り出すの、気をつけてね」
「ありがとう」

「あと、ニューヨークからナイアガラ行くでしょう?。ホテルにパスポート忘れてしまう人がいるのよねえ」
「なるほど」
「ナイアガラ滝って対岸のカナダ滝がスケールが大きいじゃない。忘れるとカナダ領に絶対入れないの」
「そうだよね」
「そうするとお客様がなぜ教えてくれないんだって、自分が忘れているのにツアコンが悪いと怒り出すの、だから」
「由佳里、いろいろありがとね。平井君も留守中しっかり頼むわ」

さくらは、帝国観光旅行社の小さな旗を持って
「こんにちは、私は帝国観光旅行株式会社、エンパイア・ツアーの皆様をお世話します添乗員の大井田さくらと申します。これから搭乗券をお渡しいたします。」
と言って皆に搭乗券を配った。

「よろしいですか?搭乗券はパスポートと一緒にお持ちになってください。
では、次に出国手続きについて」
さえぎるように団体客から
「大井田さん、あなたは手続きって言っておられるが、あそこのカウンターにはただいま、48時間スト決行中と書いてあるじゃないか。」
「そうよ、私ははじめての海外旅行で楽しみにしていたのに何なんですか、これは?」
「そうだ、そうだ」
「さくらさん、もし飛行機飛ばなかったら、旅行費用全額返してくださいよ」
「帝国観光旅行社さんならって信頼したんだけど」
「二日前に会社からは連絡あったんだけど・・大丈夫と思ってきたら。」
さくらは、ツアー客の異様な雰囲気を感じていた。でもこちらが落ち着かなければねえ、
「皆、皆様、あのおっしゃられることはよ~くわかりますが、どうぞ私の言うことをよくお聞きください。お願いします。」
「いくら、お願いしますって言われても」
「航空会社のカウンターにはスト決行中の表示がありますが、組合員以外の非組合員で運行するとの返事を得ていますので、どうかご安心ください」
「非組合員っておっしゃるが、部長とか課長が飛行機飛ばすんですか?」
さくらは、ツアー客の中年の紳士の思いがけない質問に戸惑うが、
「これは、アメリカの航空会社の組織になるので日本と事情が違うようなので、まあ、組合に加入していない非組合員が運行するという返事を得ておりますのでその点はどうぞご安心ください」
と言いながら
「あの、皆様アメリカン・ウエストのカウンターで出発時間の確認に行って参ります。」

カウンターで話しているさくらと航空会社係
さくら小走りで皆の居る場所へ帰る。
「皆様予定通りの時間に出発出来ることが確認されました。ストは行っておりますが非組合員で運行いたします」
「大井田さん、ああほっとしました、なにここにいる女房がもし中止だったら私は殺されるよ」
「さくらさん、私はやっぱり帝国観光社さんに申し込んでよかったよ」

ここでいまさら心配しても仕方がない。この航空会社は今までもストライキをやってきてると部長もいってることだし、ここであせっても落ち着いていないととさくらは思いなおしていた。

由香里が
「心配だったの、で、ホテル電話したら。居なくて」
「ありがとう、持つべきものは後輩かあ」
「ツアコンやってると何が起きるかわかんないの、突然、予想しないことが起きて」
もう百回もツアー添乗をしている由香里の言葉は真実だった。
さくらは、はじめて部長からの命令で、しかも三十路を越えた私がいくのにいきなり予想もしない出来事に遭遇し、
「突然っていうか、あのさ行く前から、飛行機ストライキなのよ、でも飛ぶらしいけど、あんまりだよ。こんなのないよ」
と飛行機のストライキに、さらに天候異変で春の嵐まで吹くなんてと思わず口にした。

「そういうときこそ落ち着くの」
由香里は、さくらに助け舟を出そうとしていた。
「落ち着くって」
「あのね、うちの祖母が言ってたけど、手のひらに人っていう字を書いてそれを飲み込むの」
「ええと、こうやって」
と言って飲み込む
「どう、落ち着いた」
「う~んん、落ち着かないよ、ああお客様に説明してわかってくれるかなあ、ツアー料金返せって・・・・・・ああ困った」
自分で、さくら、そんなことでどうするの、やるっきゃないでしょう、頑張れさくら、暗示をかけるように頭の中で何度もことばを繰り返して見た。
「とにかく飛行機飛ぶって云ってるんだから、安心してくださいって何回も云うのよ」
「わかった」

「さくらさんはたいした人だ、あそこにスト決行中と書いてあるのに飛行機飛ばさせるんだから」
(何いってんのよ、さっきまで皆あたしを責めまくって、これってあたしへのごますりっていうわけ)
と心の中で思いながら、
「皆様、本当にご心配、ご迷惑をおかけしました。それでは出国手続きのため向こうのゲートに参ります」
さくらは、とにかく乗客には丁寧なことばで話しながら、これから十日間、大下と一緒に行動をともにすることについて気が重かった。






                                








































































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童話「美華のお手伝い」

新童話「美華のお手伝い」
この物語はノンフィクションであり、ここに登場する名前・会社名は実在しません。


東京から西に40キロ、多摩丘陵の一角にある高台のもみじ丘ハイツの建物が冬の短い陽を浴びて美しい。
もみじ丘ハイツは多摩丘陵の新多摩公園駅から歩いて10分、都心の新宿へも東西電鉄と京神電鉄があってとても便利である。一戸建てを中心に一部の建物は、12建ての中層マンションが集まって15棟ほど建っていた。駅はもみじ丘から見るとちょっと谷間になっていて、人口の増加に伴って駅前にはスーパー、大型電気店、DIY、それに図書館、美術館まであって日曜日はかなりの人でにぎわっている。矢田一樹・佳奈子は29歳で職場で出会い結婚した、3年経って二人は女の子を授かった。
美華は両親の愛を受けてすくすく育った。佳奈子の母がクリスチャンだったこともあって聖書を読んで、佳奈子は美華をやさしく、しかし時には厳しくしかって育てることも忘れない。
「少年をその道にしたがって育てよか、うん、なるほどね、」

「ねえ、美華、スパゲッティー作ってあげようと思ったんだけど、ひき肉とかケチャップがないの」
「ママ、ないの」
「ええ、それでねえ、ママ美華にスパゲッテーとかパンとか買ってきてほしいの」
母の佳奈子は、美華に独立心と自分で判断することがもう必要と考えてかねて考えていたことをこの機会に一人で出かけてケチャップとかパンを買ってきてもらうようにしなければと思った。美華は、母から突然言われて、目をくるくる回しながら、
「ねえ、ママ行かないの」
と白いエプロンのすそを引っ張って母を見上げるように話す。
「美華ももう来年は保育園から幼稚園、もうおねえちゃんになるのよ」
「でも、美華怖いよ」
「はっ、怖いって」
佳奈子は、美華の目線にあわせるようにかがんで、美華の手をしっかり握って
「ねえ、あなた何が怖いの」
と優しく聞いた、佳奈子はいつも美華になにか聞かれて答えるとき、少し腰を折って子供の目線に合わせて必ず手を握り話すのだった。
「ねええ、この坂の下のほら加藤さんのワンちゃんが怖いの」
加藤さんとは、美華の行ってる保育園の友達の沙織の家なのだ。
毎日午後になると、加藤さんのおじいさんがかわいい犬を連れて散歩に出て来るのだった。
「怖いのって、大丈夫よ、加藤さんのワンちゃん、きっと美華のことが好きななのかも」
「だってわんちゃん、美華が側に行くとワンワンってほえて」
「でもあなたが近づくといつも尻尾振ってるでしょう、あれはね加藤さんのわんちゃん、美華が好きだから尻尾振るの」
「へえ、そうなの」
「犬はねええ、喜んでるときには尻尾を振る習性があるの」
「ママ、習性って」
「うん、なんていったらいいかなあ、ああ習慣、わかる?」
「うん、ちょっとわかってるけど、わからない」
「くせっていえばわかるかなあ、美華には」
「うん」
そんな和やかな美華との会話を交わしてるときが、私にとって一番幸せだわ」
母はしみじみそう思った。
美華はこれまで佳奈子と一緒に駅前の東友スーパーに出かけていた。佳奈子は、美華にお使いを頼むのにいつもいく東友スーパーでは無理だと思った。身長100センチ足らずの小さな美華が買い物籠を持ってレジを通るのは無理だしそれにスーパーで小さい子が一人で買い物をしてかえって周囲の人たちから奇異な眼で見られてもかわいそうだとも思った。
新多摩公園駅から紅葉丘ハイツに亘る道路の左右には一戸建てとか中規模のマンションが立ち並び人口も増加の一途をたどって自然発生的に商店街が出来上がっている。
スーパーに対抗して新鮮な肉・野菜。鮮魚をはじめ一般食品は結構安かった。
商店街のお店の人も母が美華が可愛く顔を覚えてくれて、時々買い物をしていると、
「美華ちゃん、お母さんとお買い物でいいわね、これおばさんからご褒美」といって商店街大売出しの時には風船とか、そうでないときは店で売っている鉛筆一本とか、箱入り菓子一箱とかを美華の小さな手に握らせてくれることもある。
美華もまた、母、佳奈子の書いたメモをもみじのような可愛い手で持って、
「あのねえ、おばちゃん、コロッケ3つとええと、ぽ・て・と・サラダをこんだけちょうだい」と背伸びして肉屋のお店の人にメモを見せたりしているのだった。
母の佳奈子は、美華は皆から愛されていて幸せな子だわと心の中で喜んでいた。
美華が、「あのねえ、美華一人でお買い物行ってもいいよ」といったので、美華も大人になったと喜ぶ反面、もし、買い物に行く途中、わが子が見知らぬ人に誘拐されたり、事故に巻き込まれてもと心配もあった。
かって佳奈子も母から丁度幼稚園に進むことが決まって、一人でお買い物を頼まれた経験があった。しかし、その頃は公園にも子供たちが集まってブランコに乗ったり砂場で遊んだりしていた。子供はのびのびと外に出て歓声をあげて遊んでいた。そんなことを美華の顔を眺めて考えた。
でも、時が変わり、今は子供が安心して外に出ている姿も見られなくなり、治安の悪化でこの辺でも子供に話しかけてそのまま車に乗せようとしたり、歩いて見知らぬ男についていって危うく誘拐されそうな子供の犯罪が発生していた。
佳奈子は、美華が行ってる保育園の同じ父兄と子供が一人で出かけるときにはお互いが助け合って子供を見守りましょうという協力体制がいつのまにかできていた。
昨日美華に気がつかれぬようにひそかに商店街に通じる道筋の父兄仲間にあらかじめケータイで連絡、監視をしてもらう約束が出来上がっていた。
「美華ちゃん、頼むわよ、その間美華の大好きなホットケーキ作っとくからねえ」
そういって「これがお財布、この中に2000円入ってるから、お買い物できたら美華の大好きな絵本一冊だけ買っていいからねえ」
といいながら美華に財布を渡す。
美華は、「保育園に行くときの・・・・ええとアヒルさんのかばんに入れていくね」
といって柱にかけてあるかばんを小さな手で肩にかけた。
美華は、数ある保育園のかばんの中でも母親がミシンを掛けて刺繍をしてくれたあたたかい手作りのかばんが一番好きなのだ。
「美華、これが美華に頼むお買い物を書いてある紙よ、なくさないでね」
佳奈子は、美華の目線にあうようにかけているレースのエプロンを少し手繰って腰を屈めて、
「いいこと、ひき肉が300グラム。スパゲティーが一袋、ケチャップが一つ、それにソースが一つ、あとパンが一袋いいわね」
「ママ、美華わかった、ええとお肉、ひき肉でしょ、ええと、ええと、ああわかったスパゲティーが一つ、それにパンだよねえ」
佳奈子は、美華が眼をくるくるさせながら小さな指を折りながらわからないときにはちょっと首を傾けて子供なりに買い物の品を一生懸命に復唱している姿がなんとも言えず可愛く、思わず、美華を抱いて、
「美華ちゃん、いつのまにかお買い物の名前覚えて・・・・じゃ、行ってらっしゃい」と手を引いてエレベーターに乗り、1階のロビーから通りに出て、
「じゃ、行ってらっしゃい、頑張ってね」
そういって美華の姿が消えるまで手を振っていつまでも見送るのだった。
美華もときどき振り返って小さな手を振っていた。
佳奈子は、美華の姿が見えなくなるとケータイを取り出してまづ、同じ保育園の松本直子に連絡をすることにした。
「あのう、美華の母ですけど」
「あっ、佳奈子」
「あのねえ、美華が今買い物に出たの、で、あなたの家から美華を見たらそれとなく見張ってくれる」
「いいわよ、佳奈子、心配だったらあたし、美華ちゃんと一緒にお買い物に行ってもいいけど」
「はっ、それじゃ、今日一人でお買い物させてるのは美華のためだわ、お気持ちうれしく受けておきます」
一方、美華ははじめて一人で外に出て緩やかな坂を下っていた。駅に通じる通りは黄色や赤色に葉が色づいていてプラタナスの木々がきれいだった。
時折風が吹くと葉がぱらぱらと舞いながらくるくると落ちてくる。
美華は道路に落ちている赤いもみじの葉に眼を留めて
「もみじさん、とってもきれ~、美華に一つちょうだいね」
折りしも風が吹いてきて歩道に落ちた紅葉の葉がくるくる回って足元を廻ってゆくのだった。
「紅葉さん、ちょっと待って」
美華はちょっと駆け出して風の止むのを待ってしゃがんで
「この葉っぱ、赤くてきれ~い、美華これがいいなあ」
そういいながら赤い紅葉を二、三枚拾って、プラタナスの木に向かって
「ねえ、紅葉さん、きれいな紅葉をありがとう、美華大切にするからね」
頭をぴょこりと下げた。その様子をじっと2階の窓から見ていた松本真子の母、松本直子が気づいて、
「美華ちゃんががここを通るようだわ」
タンスの中からケータイを取り出して二階を降りて玄関から外に出て待つことにした。
遠くから美華が近づいてくるのだった。
美華は、生まれてはじめて外に出たのがうれしいのか
「ランラランラン・ランランラン」となにかわからないが、ハミングして松本直子の立ってる場所に近づいてきて、
「あっ、真子ちゃんのママ、こんにちは」と前に立ち止まって丁寧に頭を下げた。そのしぐさがとても可愛かった。
母、直子は、美華さんのままはとても子供をよくしつけてるわ、近頃は挨拶もしない子供もいるのにと思った。
「おばちゃん、そこで何してるの、真子ちゃんは」
と不意に聞かれて、
「おばさんはねえ、美華ちゃんを」
といいかけてあわてて口を閉じた。危うくいうところだった。危ない、危ない
「あのねえ、真子ちゃんは今お父さんと一緒に駅前の公園にいってるの」
と答えて美華の顔を眺めた。
「あのねえ、おばちゃん、美華はねえ」
「お使いに行くの、偉いわねえ」
「うん」
「気をつけて行ってらっしゃいね」
美華は、紅葉のような右手を振って
「さよなら」
と行って通りすぎて行った。
直子の母親はケータイをエプロンのポケットから取り出して、
「直子の母ですけど、美華ちゃんねえ、今家の前を通って行ったわよ」
と報告した。
美華は黒塀のある加藤さんの家に差し掛かってきた。
あっ、加藤さんのワンちゃんがいたら怖いなあと思っていた。
左折道路があって、美華は黒塀の角からそっと様子を見ていたが、そのときだった。
加藤さんのおじいさんが犬を連れて門から目の前に出てきた。
「あっ、わんちゃん、美華怖~い」
驚いて、あとずさりしようとしてる美華におじいさんが
「美華ちゃん、怖くないよ。ほらこんなに尻尾振っているよ」
加藤さんの家で買っている犬は決して大きくなくフランス原産のパピヨンで小さく大きくなっても4キロという犬だった。人なっつこくて陽気だといわれている。
小さな美華には犬が大きく見えるのだろう。犬は立っている美華をじっと見ているようだった。
「美華ちゃん、喜んでるよ、こっちに来てごらん」
美華は母がワンちゃんは尻尾を振ってるときは怖くはないのよといった言葉を思い出していた。
美華は、おじいさんに近づいた。
「ほら怖くないよ」
おじいさんに言われて美華は
「可愛いねえ、ねえ、ワンちゃんの名前なんていうの」
といいながら右手を恐る恐る出して毛をなでようとした。
犬は驚いて、舌を出して美華の小さな手をペロッとなめた。
「わっ、驚いた」
といいながらも犬になれてきたようだ。
「わんちゃんの名前はねえ、ごん太郎というんだ」
「ごん太郎」
犬の側にいつまでもいて様子を見ている美華だったが、
「おじいちゃん、美華ねえ、ママに買い物頼まれたの、さよなら」
そういってまっすぐ道を渡って歩いていった。
加藤さんのおじいさんもケータイを取り出して、ひそかに美華に知られないように
美華の母に連絡した。

美華は、
「ええと、お買い物は、スパゲティーにええとケチャップにええとごん太郎に・・・」といいながら
「ええと、スパゲティーにええとああ、ごん太郎に」
犬の名前を教えてもらって美華には珍しかったのか、立ち止まって、
右指を折りながら、
「ええと、スパゲティーに、ええとケチャップに、それからごん太郎に」
と後の買い物の名前が思い出せない。
「ええと、ええと」
首をかしげながら思い出そうとするけど、思い出せない。
美華は、小公園に差し掛かった。この公園は地域の環境整備のために市が地区ごとに作った公園で、土、日のウイークエンドには周辺の子供を連れた親子でにぎわっている。
そこには、美華がお父さんやお母さんに連れられてずっと小さいときからこの公園で父に手を引かれて上った滑り台、母が小さな美華の背中を右手で支え左手でブランコの振り子があまり大きくならないようにして押さえて、わが子の安全を考えながら遊ばせてくれた美華にとっての楽しい想い出がいっぱい詰まっている場所でもあるのだ。

                               (続)

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童話「一箱のクレヨン」



童話「一箱のクレヨン」

ある日、トラックが駅前のぶんぼう具屋の前でとまりました。うんてんしゅさんはトラックから降りて段ボールの箱をかかえて「こんにちは」といいました。

店の奥から、おばあさんが出てきて「いま、だれも出かけていてわたしひとりるす番しているの、わたしも手つだうよ」
うんてんしゅさんは、床において段ボールを開けました。

中にはいろいろなぶんぼう具が入っていました。ボールペン、消しゴム、ノート、ふうとう、などをおばあさんといっしょにお店のいろいろなところに並べました。
「ごくろうさん」
おばあさんはそういっておまんじゅうとお茶をうんてん手さんにもってきました。うんてん手さんはちょっとおじぎをしてお店を出て行きました。

その中で一箱のクレヨン箱のクレヨン皆が箱の中で
「ねえ、ぼくたちを使ってくれる人はどんな人かなあ」といいました。
しばらくたって赤いランドセルを背負った小さな女の子がお店に入ってきました。おや、かずちゃん、がっこうの帰りかい」
おばあさんがききました。「そう、クレヨンほしいの」かずちゃんは、「うん」といいました。

おばあさんは、
「ちょうどいま新しいクレヨンが来たのよ、ふでで書ける水彩絵の具にもなるし」
かずちゃんは
「それちょうだい、いまお母さんが病院ににゅういんしているの、お母さん、お花が好きなので、お花の絵をかいてわたし持っていこうと思ってるの」
おばあさんは、かずちゃんのいうことを聞いて、
「お母さんがはやく直るといいねえ」
といいます。

一箱のクレヨンはお店のクレヨンを積んだ2番目にありました。かずちゃんは、クレヨンの前にきて「おばあちゃん、クレヨン取っていい」といいながら、クレヨンを取ろうとします。
一箱のクレヨンは「かずちゃん、ぼくたちは2番目だからえらんでね」
といっしょうけんめいいいますが、皆には聞こえません。
かずちゃんは3番目のクレヨンをえらび、「おばちゃん、これちょうだい」といって五ひゃくえんをおばあちゃんにわたして「どうもありがとう」といってお店を出ていきました。

つづいてはいってきたおきゃくさまは白いワゴン車から降りてお店の中に入ってきました。おきゃくさまはこの町から2時間も山奥に入った山里小学校の分校の高田せんせいです。
せんせいは、お店のクレヨンの前にきて、「これにしようかなあ」といって2番目のクレヨンを手に取っておかねをおばあさんにわたします。
一箱のクレヨンは先生がかばんにしまったので、うれしくなって皆で思わず「やったあ」といいました。

「せんせい、ごくろうさま、お茶でも飲んでいってください」といっておまんじゅうとお茶を持ってきました。おばあさんは「高田せんせい、ことしは寒いので山奥の分校も大変だねえ」といいました。せんせいは「うん、ここから車で2時間も入ったところだから雪もたくさんあって、野うさぎも冬ごもりしてるのか、学校の裏山にも出てこないよ」とおばあさんに答えました。

せんせいは「じゃあ、おばあさん、元気でいてね、今度くるまで」といってお店をでていきます。

「高田せんせい気をつけて帰んなさい皆によろしくいってちょうだい」
とおばあさんの声がせんせいの後ろから追っかけてきます。せんせいは白いワゴン車に乗り、エンジンを入れてハンドルを握って町の中をとおり抜けてやがて道がせまくなり林の中のまがりくねった道を登ってゆきます。

だんだん道のはじっこに雪が残っているところをすべらないようにしてこうして山里小学校の分校にたどりつきました。ここは冬の寒い間だけ、雪で道路も通れにくくなりこの山里小学校の生徒の皆はこの分校で雪にじっとがまんをして春がくるまでここでせんせいとともにすごすのです。

二日後に先生は一年生から三年生の7人のせいとにかばんの中から一箱のクレヨンを出して、皆に見せながら「このクレヨンを一週間だけ一人ずつあずけるので、皆の好きな絵をかいて、さいごのだれかが絵といっしょに持ってきてくれないかと皆に話します。

高田せんせいはいつも一年生から三年生までの7人のせいとをおしえています。だからさんすうの時間でも一年生と三年生ではちがいます。それで、みんな同じようなことをして7人がなかよくするには、今日買ってきたクレヨンで絵を皆にかいてもらおうかと考えました。

7人の生徒の絵を教室のかべにはり出して皆にそれぞれ賞品をあげようと思いました。
「せんせい、何でもかいていいのですか」三ねんせいの順君が聞きました。
「うん、何でもすきなものかいていいんだよ、さいごのだれかがせんせいに絵といっしょにもってきてくれないか」といいました。

「わかりました。せんせい」七人の生徒が元気よくこたえます。

「さあそれじゃ最初に三年生から書いてもらって最後は一年生にしようかなあ」とせんせいは、しゅっせきぼを見ながら「最初は三年生の順くんだ、そしてかなえさん、次に二年生の有紀子さん勇くんとしはるくんそして一年生に移って洋子さん、文彦くんが最後だ、いいね」
といいながら、せんせいはクレヨンの箱を順くんにあずけます。

「書き終わったら学校に持ってきてくれないか、このクレヨン」せんせいはそういって
「みなどんな絵をかいて持ってきてくれるかたのしみだなあとにこにこしています。

箱の中のクレヨンたちは、
「順くんがいちばん最初につかうのは、この中のどのいろだろう」と話しています。

順くんはランドセルにせんせいからあずかったクレヨンを入れて家に帰ります「ぼく、なんの絵を書こうかなあ」と考えているうちにおじいちゃんの顔を思い出しました。


「そうだ、僕はじいちゃんの顔をかこうかなあ」
箱のクレヨンたちはそれを聞いて「きっと茶色だよ、おじいさんの顔書くんじゃ」といっています。

順くんの家は学校から小さな川にかかっている橋を渡り国道に出てそれを沿って北に5分歩くと左側の黒い兵に囲まれた家がそうです。
お父さんはこの町のやくばに勤めていて、お母さんは近くの農協で働いていて、おじいさんが一人で留守番をしています「ただいま」といって戸を開けると、
中から
「順か、お帰り」というおじいさんの声がします。

雪囲いのある戸をあけると奥の部屋でおじいちゃんが「寒かっただろう、こっちにおいで」と手招きしています。
大きな柱が天井にあって部屋の真ん中には大きないろりがあって皆、家族がそこに集まる場所になっています。

大きなふるい柱時計がとつぜんぼんぼんとなりました。時計の針はごご3時なのにまどの外は白い雪にかこまれていてガラス戸が曇っています。
順くんは小さい頃まだ5歳のときだったでしょうか、暗い部屋から順くんの背のたかさまでもあろうかと思うような柱時計のぼん・ぼん・ぼんという大きな音が恐くてよく泣いたものでした。

「おじいちゃん僕恐いよ」おじいちゃんはそのたびに
「恐いことはないよ順」といって大きなたくましい日に焼けた手でしっかりと抱いてくれました。
順君はそんなおじいちゃんが大好きなのです。
それで学校でクレヨンを先生にわたされたとき、真っ先に僕はおじいちゃんの絵を書こうと思ったのです。

おじいちゃんは順君が部屋に入って肩にかけていた布で作ったリュックを置いてその中からクレヨンのはこを取り出します。
「順、寒かっただろう、おじいちゃんなあ、甘酒造っておいたから「甘酒、順くんのはじめて聞く名前です」
「寒い時にはからだをあたためるのがいちばんいいのじゃよ」おじいちゃんは立ち上がって台所にあった甘酒をあたためておわんに甘酒を入れてもってきました。
順君は目の前に差し出された甘酒にとまどっています

「飲んでごらん」おじいちゃんから言われると順くんは、おわんをもって一口飲みました」
「なにこれ白い米粒みたいのが」「それはなあ、お米で米の粕で作ると甘くなるんじゃよ」
「なんだかカルピスみたい」

このいなかでも街道そいにコンビニエンスストアができてから学校のともだちとときどきおにぎりとか
はんばーがーとか、カルピスウオーターとか買ってくるようになったのです。

「おじいちゃんは僕の宝物だよ、だって僕が知らないこまとか竹とんぼとか、竹馬とかいっぱいいっぱい作ってくれたんだもの」雪の深いこの山奥にも都会と同じようにテレビゲームが入ってきてこどもたちはこんなに自然がゆたかなところなのに外で遊ばなくなって家で過ごしてあそぶようになってしまったのです。

箱の中のクレヨンたちは「順くん、いつおじいさんの絵を書いてくれるのだろう」とささやきあっています

順くんはおじいちゃんの作った甘酒を飲みながら、
「おじいちゃん、今から僕、おじいちゃんを書いてあげるね」そういって箱の中のクレヨンを開けると16色のクレヨンたちはきちんと並んでいて「来た、来た」
とお互いの顔を見ながらいどおれ、ってます。
「順がおじちゃんの顔を、それはうれしいのう」
おじいちゃんは「それじゃ、きちんとせにゃあ」
ともういくらもない頭の白い髪の毛をくしできちんと直しました。

「おじいちゃん、じっとしててね」走ってとなりの部屋にいって引き出しから画用紙を取り出して帰ってきます。

箱の中のクレヨンは「順君、最初に何色でかいてくれるんだろう」茶色のクレヨンが「順くん、ぼくを使って」肌色のクレヨンも負けずに「私を使って、おじいちゃんの顔」と言い出しますがもちろん順くんにはきこえません

「おじいちゃん、いくよ」
おじいちゃんは順くんにいわれたからなのか、背中をまっすぐにして順くんの顔を見た。肌色のクレヨンに順くんの手が伸びたので肌色のクレヨンは思わず
「僕、やった」といってよろこびました。
順くんは、肌色のクレヨンを右手で持ちながら憩いよく画用紙いっぱいにおじいちゃんの顔全部をかきはじめます。

画用紙はつるつるするのでクレヨンもすべるように書いていくことが出来ます。肌色のクレヨンは「わあ、スケートみたい」と喜んでいます。
ええと、僕はといいながら肌色のクレヨンをおさめて
今度は黒のクレヨンと白のクレヨンを取り出します。

順くんはおじいちゃんのかみの毛をクレヨンを使って書いてゆきます。「ええとおじいちゃん白い毛もあるから」
そういって黒いかみの毛のところどころに白い毛をふやしていきます。「ええと、まゆ毛は」順くんはおじいちゃんのまゆ毛を黒いクレヨンで書いて行きます。
おじいちゃんはやわらかい弓のようになっていて順くんも一生けんめいです。

「次はおめめ」おじいちゃんの目は小さい目だけどとてもやさしく順くんもたいへん苦労しているようです。「おひげにお口でおわりだからね、おじいちゃん」そういっていっしょうけんめいで
「お口は赤だよね」
赤いクレヨンは思わず「わたしのばんよ」
といってよろこんでいます。
こうして10分でおじいちゃんの絵が無事にできました
「出来た、ほら、おじちゃんの顔」
順くんはそういって絵をおじいちゃんに渡します。
「順、ありがとう」おじいちゃんはそういって順くんを抱いてよろこんでいます。
「あのね、おじいちゃん、この絵はみなの絵ができたら学校でかざってみなで見るの」
「わしの絵を学校でかざってくれる」「そうなんだ、それまで僕、家のかべに張っておくからね」
順くんはおじいちゃんにいいました。

かなえさんは急いで玄関の戸をあけました。
おじさんがにこにこして「お母さんからでんわがあったので急いできたよ」
おじさんのうしろには、あの絵にかこうと思っている赤いいろの自動車がとまっています。
外はくらくなって山の上に赤いたいようが沈もうとしています。

かなえさんは急いで画用紙を持ってきて暗くならないうちに赤い自動車の絵を書こうと思いました。
台所からしいたけご飯のいいにおいがしてきました。
かなえさんは玄関の近くに止まっている赤い自動車を書くため部屋から小さないすを持ってきて絵をかきはじめます。

箱の中のクレヨンたちはまたさわぎはじめます。
「ええと、赤い色の自動車だから赤いクレヨンとタイヤの黒色だから黒いクレヨンだよね」
かなえさんはいすに座って赤いクレヨンで画用紙に赤い自動車のりんかくを書きます。
窓とドアを書いて
次は自動車のタイヤを丸く書いて行きます。
山の上の夕陽がそらを真っ赤に染めていましたが、やがて通りの街灯が点き始めて赤い自動車の影が伸びて行きます。「大変だ、急がないと、困ったなあ、夜になったし」

かなえさんは困ったようです」
どうしよう、弱ったなあ、そう思いましたが、ふと
「そうだ、赤い自動車が夜走ってることにしよう」
箱の中のクレヨンたちは「今度は黄色いクレヨンの出番だよ」黄色いクレヨンは突然のできごとにとまどいました。

「えっ、僕が」かなえさんの小さな手が伸びてきて黄色いクレヨンを取り上げました。そういいながら前のライトを黄色く塗って自動車が走ってるように前を灯りが照らしてるようにしました。

自動車はいかにも夜、走ってるようです。
窓を灰色で塗ってドアのりんかくを灰色でまとめて絵は出来上がりました。「ついでにおうち書こう」
かなえさんは灰色のクレヨンでおうちを書いて黄色で灯りを書きました。「できた、私の赤い自動車」

その時「かなえ、しいたけごはんが出来たわよ、おじさんも来てるから」「はあい」かなえさんは外でからだが冷たくなって玄関を開けて家の中に入りました。
おじさんも来てお父さん、お母さん弟も含めて5人でおいしいしいたけごはんを食べました。

夕ご飯が終わるとかなえさんは、
「おじさんありがとう、あたし赤い自動車書きたかった」といって皆に絵を見せました。
「かなえさんうまいねおじさんうれしいよ」
と喜んでいます。

翌日一箱のクレヨンをかなえさんは由紀子さんに渡します。由紀子さんは何を書こうかと思って腕組みをして校門を出てたちどまりました。かなえさんの頭には人形?いもうと?お母さん?バナナ?にしき鯉?とうずまいています。そのとき頭にひらめいたものがありました。そうだ犬のごん太郎を書こう。
犬のごん太郎は由紀子さんの家に来てもう3年目小さい時から由紀子さんはごん太郎を可愛がってきました












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現代若者ことば字鑑

少し大きい文字

1 「いけてる」

いけてるは、垢抜けしている、かっこいい、など昔はいかしてる、いかすといっていたことばが死語同然となっていけてるに変わったことばである。
今日では非常に多く使われている

日常の生活の中で、「その服結構いけてます」、「この料理いけてます」という具合に用いる。
またいけめんということばがあるが、いけてるめん(men)を意味し、テレビで聞かない日はないほど頻繁に使われている。

テレビドラマの使用例、

NTV「働きマン」で新人田中(速水もこみち)が「これ誰が書いたか知りませんが結構いけてます」とベテラン女性記者働きマン松方弘子(菅野美穂)にいい、弘子は「私が風呂にも入らずに3日間渾身こめて書いたこれ、軽くいけてる」と呆れ顔で田中の持ってる記事を取って「ご意見ありがとう」という具合に展開している。

2 「意味わかんない」「わかんな~い」

最近テレビドラマを見ていると、やたらに「意味わかんない」が一人歩きをしているようだ。
元はといえば、相手が話していることに対して「意味がよくわからないけれど」という否定の形のことばである。

しかし、最近は、たんに話していることに対して意味がわからないという表現のほかに、もっと広義な意味で用いられているようである。
たとえば、相手が行った行動に対して不可解なときに「意味わかんないし」とか、異性間でどちらかが悪気がなく取った行動に「意味わかんないし」とか、自分を中心になにか相手からの提案が受けにくい、否定したいと思うときにも「意味わかんない」と用いているように思われる。その意味でも新しい若者ことばといえよう。

3 はじまった

はじまったは解説するまでもなく物事のはじめての状況を言っている。
このことは今も昔も変わりはないがなにか自分にとって不利だと思われるときたんにはじまったというようである

テレビでの使用例

NTV「働きマン」で父が喫茶店で「妹の結婚が決まったぞ、お前はさきを越されて恥ずかしくないか」といわれたことに対して弘子は「はじまった」といっている。



3 「そっこう」

そっこうとは漢字で即行、即攻などの意味に用いる。
迷わずすぐに行動を起こす意味である。

テレビドラマの使用例

NTVTVドラマ「働きマン」で、友人の結婚式に招かれた弘子が、「今夜は久しぶりに腰を落ち着けて飲むぞ」と友達に言ってるのに、「私たち終わったら即攻だし、」「だんな子供が待ってるし、独り者はいいね」という意味に使われている。

4 「ダメだし」

元はといえば、演劇、舞台関係などで使われていたことばが、テレビのドラマなどに使われて一般に広がった用語である。
もともとは、ここのところはダメだからもっと強調してください」とかダメだから~してという意味で使用される。

テレビでの使用例

ドラマなどではNTVテレビドラマで弘子の家に泊まってうるさく娘に言ったのに翌日「だってお父さんダメだしばかりするんだよう」といってダメなことを言ってしまう、「不利なことを言う」など、広義な意味で使われるようになってきた

5 空気読まない「空気読まないKY」

空気を読むということばは以前からもずっと言われてきたことばであるが、あるときにはその場を読めないとかいう意味も使われてきて混乱していた。
ところが最近、マスコミに取り上げられて、またテレビドラマでも取り上げてきていて空気を読まないという形で用いられ、女子高生の間では空気K,読むYを取って、「KY]という言葉で使われてくると俄然流行語らしくなってくる。

意味は、広範囲に用いられるが、その場での皆の雰囲気とか意見をまったく無視してしまうのを、「まったく空気を読めないんだから」という風に使われる。

テレビでの使用例

NTVの「ハケンの品格」でも、ハケン社員の大前春子に部長が「大前さん本当によくやってくれて上のほうにも通じていて、契約を延長したいだけど」と言うのに対して、春子が「私は契約どおり3ヶ月で去ります
」と答え、なぜかねと部長が尋ねると、「理由は二つあります、私がこのままいると社員が私を頼りすぎて働かなくなります」と答え、正社員の黒岩匡子が「まったく、空気読まないんだから」というように使っている。

6 コンビ二ことば「よろしかったでしょうか」

近頃コンビ二ストアー・レストランなどで、例えば買い物をし1000円札を出して店員に示すと、「1000円からでよろしかったでしょうか」と言う風に盛んに用いる

また、郊外レストランに入り、食べる物をオーダーすると店員が「ハンバーグにポテトスープに野菜サラダ、コーヒーですね、かしこまりました」と一応お客の注文を聞いてから「以上でよろしかったでしょうか」とここでも相手に対して強調のことばを用いているようだ。

「~からでよろしかったでしょうか」と言われると、つい出したお金のほかに財布のお金を見る事もある。かなり強調したことばと言える気になることばでもある。

従来は、買い物をすると「1000円お預かりします」とか「1000円でよいでしょうか」という具合に相手の出したお金を肯定する形で使われてきた。

テレビでの使用例

NTVテレビドラマ「anago」で
野田奈央子(篠原涼子)に朝、会社で朝食を食べてるのを見て
「あの朝ご飯は・・・」と切り出したら立花が新入社員黒澤明彦(赤西仁)に「ああ、先輩にも勧めなさい」といい、黒澤が「梅もありますけど、鮭もありますが梅でよろしかったですか」というように用いている

7 「微妙(ビミョー)」

微妙という意味は、本来は国語辞典によれば①美しさ・味わい・状態などの細かなところに重要な意味がこめられていて、口で言えないとか一口にこうだと言い表せない状態を指していうこと、②どっちともはっきりいえない様子を指す意味で用いる。金利の引き下げは微妙とか用いる。
最近は微妙をカタカナで「ビミョー」とカタカナでも表す。
意味としては、どちらともいえないような状態をいう。自分にとってはどちらともいえないとか、感情面でどちらともいえないとか、人とか物とかが好きか嫌いかどちらともいえない微細な状態など悪い状態のときでも微妙(ビミョー)と悪い意味で多く用いるようになった。


8 「超」(ちょう)

これまで超ということばは普通考えていた限度をはるかに越えたという意味で超特急とか超越とかいう意味に用いてきた。
三省堂国語百科事典によれば、「超」は①基準・限度を越えたという意味で「超高速」「超満員」が事例に挙げてあり、②超越するで超党派という具合にすべてを含んで賛成も反対も超えてという意味、俗語としてとても、とびきりという意味があって、超うまいとか反対に超まずいという具合に用いる。そのほか超過するという意味もあり二千円越えたという意味で用いることもある。
これが若者ことばになると、「超まずい」「超まずっ」「超最悪」「超むかつく」という具合に悪いことを最高に表現する用い方に変化してきているのである。

9 「~する人」

「~する人」とは名詞、格助詞で自分を第三者に見立ててそれをあいまいなぼかした表現で用いるように変化してきている。

 従来は、「船を動かす人」とか「火事の火を消す消防士」とか明確に第三者が何か行為を行う意味で用いてきた。

最近は、自分のことを「~する人」だからという形に推量して使うことからこれをぼかして例えば「私的には料理が好きな人で」「「私とか夢を追う人みたいな」とか「僕的には日本食的なほうが好きな人」とか専ら自分のことを表現するのであるが、あらかじめそれがわかりきっていることでも、その意味で曖昧にしてしまうことである。従来は若者に多く使われてきたのだが、次第に中高年者にまで広がってきており、「私は部屋をきれいにする人だけど、旦那は散らかしても平気」・・とか今の不確実性を象徴してか拡がってきている。

10 「来た、来た」

来たということばは、従来は「彼が来た」とか「犬が我が家にやって来た」とか人物・動植物、自然界の現象、事物などがあるところからどこかに移動した場合の表現法である。

まれに電気がびりびりと感じることを「ああ、電気がびりびり来た」と使うこともあるが、そのことが原因である状態になることをいうこともある。
これが最近「来た、来た」という形で例えばなにか相手から自分にとって都合の悪いこととか欠点を指摘されたときに「あっつ、来た来た」という形で表現されるように変化してきているのである。

自分のことを言われてやっぱりかというときの意味で「来た、来た」と反抗的な態度を表すことばとして表現されるように思えるのである。

ただ、これは母親が子供に「表で遊ぶんだったら先に宿題やりなさい」といわれて昔なら「はい」とか「わかった」とかいうであろうが、今は「ほら来た来た」というのであろうか。

テレビでの使用例

ドラマの中で農家の長男に嫁いで3年後、一郎の母から「明子さんあなた本当にお料理が上手になりましたね?」とほめられて嫁の明子は「本当ですかお母さん、ありがとうございます」といったんは喜ぶのですが、「それだけお料理が上手なのに一郎は疲れた顔をしてますよ」と遠まわしに子供ができないのはそのせいといいたいことを察して「ほら、来た、来た」という

12 「やばっ」「やばい」

従来は「やばい」はなにか見つかったらまずいとか取り返しがつかないとか否定の意味で使われていた。
例えば「明日までに宿題やらないとあの先生はうるさいしやばいよ」とか「見つかったらちょっとやばいけど」とかいずれも危険性を含んだ行動のときに使用していた。今もこの用法は変わらなく使っているが、最近は「やばっ」と想像も付かなかったとか言う意味で使われることが多くなってきてこのことばがきわめて多様性を帯びてきている。

例えば、食べ物を食べて思いもよらないほどおいしいことを「このラーメンやばっ」とか桃を食べて「う~ん、この桃やばっ」という風に使用することがある。
「やばい」でなく「やばっ」という風に用いるようである。

テレビでの使用例

TBSテレビ「花嫁は厄年っ」で明子(篠原涼子)が
はじめて一郎の桃農家にバラエテー番組放送のために
駅で降りて桃を買って食べて「やばっ、この桃おいしすぎ」という具合に用いている。

13 「~れる」

食べれる・着れる・掛けれる・行けれるといういわゆる「ら」抜きことばは完全に定着したようだ。
すでに各出版社が出している種々の国語辞典にも取り上げられていて食べられる・着られる・掛けられるという「ら」語は完全に死語となった感がある。
もうことばづかいをうるさくされるアナウンサーでさへ「はい、そちらに1時間くらいで行けれます」と言ってるのである。

それにしても私が学生のときは学校で、ら・り・る・る・れ・れと四段変則活用を厳しく教えられて文法の用法に従ってことばの使い方をうるさく指導されたものである。四段変則活用を覚えてそれを実際のことばに当てはめるのは以外に大変だったことを今でも覚えている。

テレビでの使用例

TBSの「花嫁は厄年っ」で農家の長男として3ヶ月花嫁に修行している武富明子(篠原涼子)に長男の母親安土幸恵(岩下志麻)が浴衣を持ち出して「あなた、浴衣一人で着ることできますね」と聞くのに対して「はい、着れます」と答えて「あなた、らが抜けてます、着れるでなく着られますです」と苦言を呈す場面があるがすでに完全に定着した「~れる」と使う度に正しくは「~られる」と考えている人が何人いるだろうかと思うのである。

14 「~過ぎ」

最近テレビを見てると若い人の番組、ドラマにしても「~過ぎ」ということばがよく使われている。
従来は「仕事をやり過ぎだった」「遊び過ぎて疲れた」とか~過ぎの次にその理由がはっきりと述べられていた。またその行為はあらかじめ予見できなくて結果がそうなったということである。
最近の過ぎの用法は、すでに現象・結果が説明されているのを「~過ぎ」ときわめて広範囲に使うようになってきた。

テレビでの使用例

TBSテレビ「花嫁は厄年っ」で明子と一郎の弟、次郎との会話の中で次郎が例えば「あんたはわかり過ぎ」「それは出来過ぎ」「あんた少しわからな過ぎ」など、きわめて「~過ぎ」は広範囲に使用されるようになったようだ。

15 「どたきゃん」

ドタキャンとは改めて解説する必要もない新語でわかりやすいことばである・
土壇場でキャンセルされたという意味である。
従来は、すっぽかされたとか約束を破られたという具合に使われていた。

旅行業界、芸能界といろいろなところで使われていたという説があるが、旅行業界ではたしかに予約していたものの出発前日旅行ができなくなり、土壇場でキャンセルされたことをドタキャンと短くいうようになったことは容易に理解できるし、芸能界に置いても出演交渉、放送予定が土壇場でキャンセルすることもあるだろうからこれらの業界からケータイなどでドタキャンが一気に使われるようになったのかも知れない。

テレビドラマの使用例

NTVテレビ「働きマン」の一部で働きマンの雑誌記者弘子(主演:菅野美穂)がいつも仕事優先に頑張ってきたが恋人新二から仕事の都合であえなくなったと打ってきたケータイメールを見ながら「ドタキャン」という具合に使っている。

16 「いい感じ」

いい感じとは文字通りのことばである。
以前は感じがいい、あの人感じがいいとかいう意味で使われてきた。
いい感じは人・物・雰囲気など、すべてのものに使われてきて日常生活の中に深く定着しているがすべてのものがいい感じと表現すると繊細な表現が世界的に見て美しい日本語の表現も必要とも思う。

、温泉を訪ねて和室から月に照らされた日本庭園を眺めて「ああ、いい感じねえ」、グルメ探訪でおいしい中華料理をたべて「いい感じ」ともう何回も聴いたのである。「いい感じ」という表現は例えばおいしい料理に店内部の雰囲気(ムード)とかここで食べるのに全体のからだで感じるすべてを捉えていい感じというのであり、それを一言で表現するのであろう。
でも、このいい感じも乱用は避けたいものだと思った。

例えばどこか遠くに旅に出かけて「いい感じ」をそのつど使っていたら旅先にしかない日本とか外国独特の趣き、風情・食物を見逃してしまうのではないかと思う。
「いい感じ」も簡明でよいこともあるが、時には美しい景色とか食物とか日本語の持つ美しい表現を工夫して使い感性的にも情緒的にも秀れたいと思う

テレビでの使用例

TBSテレビ「花嫁は厄年ッ」で若い女性が桃農園の一郎を訪ねてきてお風呂に入り「湯加減どうですか」とたずねているのに「ああ、いい感じです」という場面があった。

また、NTVドラマ「働きマン」でも雑誌編集の弘子の恋人新二がお菓子屋でケーキを買うのに
店員から箱にケーキを入れて見せられたとき「ああ、いい感じです」といっている。

17 KY式「ローマ字略語」

最近女子高校生を中心にローマ字の頭文字を取った独特なことばが流行っていてケータイとかに利用して仲間同士のコミュニケーションを図ってるようです。
その種類は相当多く、ついに最近ローマ字日本語辞書が刊行されたぐらいです。

たとえば、もうすっかり有名になったKY「空気読まない」など、
最近のことばでは、JK「女子高生」MK5「まじ切れ5秒前」とか、辞書にするローマ字日本語を募集したら3万件集まったそうでこれからも無限に増えていくのではないのだろうか。
さらに若い人同士のグループ間にしか通用しないローマ字日本語も登場し、それがグループ間のコミュニケーションにもなっているようである。

KYは空気読まないですが、KYは「部屋が汚くて苦労読めるよ」とか「彼はやめた」、「こいつはやばい」:とかいろいろ作れるわけで、ことば遊びの範疇ならばよいとは思いますが、やがては広がりすぎると判別困難で意味がないものになるかも知れない。、
ローマ字を取ってそれを読むということは目新しいことではありません。ずっと以前からあったし、今も続いているものがある。

たとえばY.K.Kというファスナーは有名であり、また、結構鉄道ではローマ字を取って読むことが多い。
TKKは東京急行電鉄株式会社、KHKは京浜急行電鉄株式会社という具合である。
また有名なテーマパークはTDL、東京ディズニーランドは広く知られるところだ。

しかし、ローマ字の頭文字を取って日本語にするとなるといくらでの自分で新語をつくりだすことが可能になり際限なく作っていくことにより、日本語自体が崩壊するのではと心配する人もいるようだ

18 「それが何か」

元はといえば昨年NTVで放映されたTVドラマ「ハケンの品格」で30もの資格を持つスーパーハケン大前春子が使ったことば「それが何か」から来ていてあっというまに拡がった。
たとえばドジな新米ハケンがタクシーに記録したCDロムを置き忘れ、廃車処理される寸前に
クレーン免許を持つ大前春子がタクシーを持ち上げて救い、社員からほめられたのに「それが何か」と冷静に冷ややかに答えているといった具合である。
この新語昨年の新人賞にノミネートされる勢いだった

「それが何か」と簡単なこのことば、賛否両論があるようだ。
一生懸命に話しているのに「それが何か」の一言で切られてはたまらない、でも、大前春子は自分をほめずに話をして「それが何か」ということばはすっきりしているとかいろいろな見方があるようである。

19 「でも、そんなの関係ねぇ~」

お笑い芸人小島よしお氏がさかんに使用し今年大流行として一挙に広まった。
このことばは賛否両論があるだろうが、僕は問題を持っていない時と悩みを抱えてる時に用いる場合によってはいわれた人は衝撃も大きいと思うのだが。
もっとも小島氏の「そんなの関係ねえといったあとで「おっぱピー」と軽く行っているので、そういう意味で乗りがいいと若者中心に受け入れられているのであろう。

先のその場の雰囲気を読まないことを「空気読まない」といい、この言葉が同じように使われることもあろうが、前者のほうがまだ柔らかな感じになる。
友達同士で冗談を言っていて、「でも、そんなの関係ね」ならばジョークで笑いにつながるだろうが、父親が息子のために一生懸命になって何かを教え諭す時に、子供が「お父さん、そんなの関係ねぇ・・・・」といったとしたら、それまでの苦労が一瞬にして砕けてしまうような強烈な言葉であるのではないだろうかと思えてくる。

20 「~じゃん」

いわゆる「~じゃん」(いいじゃない)ということばは昔から使われてきた。
このことばのルーツを調べると私の住んでる横浜ことばから派生している。

文明開化で横浜は外国からあらゆるものが入ってきて外人居留地となった。日本人がはじめて長崎とともに外国人と接してきた地であり、案外今使われていることばが横浜ことばとして定着したのかも知れない。
昔、一時「ハイカラ」ということばが使われてしゃれてるとかセンスがあるという名称で用いられて当時の今風ことばであったであろうが、調べてみると明治時代、開港した横浜は当時和服をまとっていたが、調べてみると、明治時代、開港した横浜は当時和服を男女まとっていたが外国人の洋服・ワイシャツ姿、中でもカラーが高くとても日本人には素敵な姿に移り英語の「ハイカラー」High Colorがいつの間にかハイカラと変化したといわれる。

さて「~じゃん」であるが、今日では「まあ、いいじゃん」「自分でいいじゃん」
「騒いでもいいじゃん」「何だっていいじゃん」「気楽でいいじゃん」「休んだっていいじゃん」「気楽でいいじゃん」「休んだっていいじゃん」「「普通でいいじゃん」「下手でいいじゃん」「暇でいいじゃん」と枚挙に暇もないくらい使われている。

「~じゃん」にかをつけて「いいじゃんかよ」となるともっと意味が強調されてきて相手にその行為をはっきりと認めさせることになる。

横浜の近郊では、「~だべ」とローカルカラーたっぷりのことばが使われており、この「だべ」は関東地方の広い地域で使われ、時として若者の今風ことばでも「~だべ」と使うことがあるようである。
そうなると、今のことばも結構地方のことばから派生しているのかも知れないと親しみを感じるのである。

21 「系」

私は鉄道ファンなので「系」ということばは古くから用いてきたおなじみのことばでもある。例えばJRの電車の分類に100系新幹線とか113系近距離電車とか用いてきた。
この「系」は一般的に何かを分類する意味で最近は使用されている。何でもあらゆるものを分類するために系を用いている。
例えば、「アキバ系」「オタク系」「なごみ系」「癒し系」「渋谷系」果ては食べ物の「カレー系」とかなど若い人は何でも分類するときに系を使うようである。系の使い方に制限はなく自分でなにかを分類して表現するために用いるためにことばの使い方の制限はないようである。また全体の雰囲気を伝える~っぽいみたいなという感じを系で表現することもあるように思える。

22 「べた」

べたという語源は、どうも新聞のべた記事、つまり最下段の「ありきたり」とか「つまらない」あまり報道価値のない記事をさして言うようである。
それから変じて、最近は「当たり前」とか「無難」とか言う意味に用いられ、いい意味での「王道」常識内とか、常套とかいう意味とも理解されている。

テレビでの使用例

NTVテレビドラマ「働きマン」(菅野美穂)で、親が「早く結婚しろとうるさいのよね」とまゆが言ってるのに、「歳を取ってくるとお見合いしろとかうるさいし」と田中(速水もこみち)が言うのに対して、まゆが「いまどき、そんなべたな人がいるの」といった具合に使っている。
出版業界で、べた記事というのはつまらない、ありきたりの記事というときに用いているようである。

23 「ありえない」

ありえないは、自分が考えていることとまったく想像がつかなかったときに「ありえない」と使うことばである。
以前は、なにか言われて「そんなことありえない」という具合にありえない理由を明確にしていたのだが今は「ありえない」と一言で強調された形に変わってきているように思える。

テレビドラマの使用例

NTVドラマ「働きマン」で、弘子の父が上京してきて、父にあって「お父さん泊まるところホテル頼んだの」といってるのに対して、父は「お前のところに泊まる、お母さんもそういうものだから」と答えたので、弘子はまさか自分のところに泊まることは考えもつかず、一言「ありえない」といっている。
「ありえない」は相当広い意味で使われているようである。

24 「どんだけぇ~」

元はといえば、新宿あたりの夜の歓楽街で使われていたが、その後テレビでおなじみのIKKOが使い始めて、以来拡がって、一般に使われるようになったといわれている。

そういえば、テレビ、ドラマで頻繁に使われるようになってきている。
意味は「どれだけ」という感嘆詞の時に用いるが、また、相手を非難するときにももといられるようである。

例えば、従来だと「ごめん遅くなって」、「どうしても会社ではずせない急用で」と言い訳する男性に対して女性がいろいろいう。、「どれだけ待ったと思うの?」「もい30分よ、こんなに待たせて、もう」、それが、今はすべてを「どんだけ~」という一言で怒りを表現する。
を「どんだけぇ~」と一言で相手に感じさせるような口調で使われる。

テレビでの使用例
TBSテレビ「花嫁は厄年っ」で首都テレビアナウンサー竹富明子(篠原涼子)が一郎に「私どんだけ~したの」という具合に用いている。

25 「~じゃないですか」

従来は、「私は会社員じゃないです」とか「スポーツは見るのは嫌いじゃないです」と言う風に否定または肯定されて用いられてきた。

ところが、最近は~ないですの次にかをつけて~ないですかと言う風にあらわすようになってきてる。
例えば従来ならば「私ってお菓子が好きです」と表現法では、単に卵焼きが好きな事を相手に示すだけであるが、これ好きじゃないですかという表現になると、自分の好きな食べ物を示すだけでなく、ついお菓子を食べ過ぎたときなど、謝る意味もかねてしていたのが「私ってお菓子が好きじゃないですか?」と自分を強調して極端に言えば相手を強く失敗したものを相手に説得させる強調の意味を持っているように思えるのである。
新しい日本語の一つであるといえよう

26 モトカレ、モトカノ、元カレ 元カノ

一番わかりやすいことばでありモトカレ・モトカノは元の、過去付き合っていた彼であり、彼女である。
モトカレは元カレとモトを元と漢字で書くという人もいる。

私が20歳台のときはどちらかといえば親友にも周りにもたとえ付き合っていてもそれをはっきりといわなかった時代であった。

ともあれ今は若者の間で「元カレ、元カノ」ということが出来て明るい開放的な雰囲気で暗さがない。

テレビドラマの使用例

NTVテレビ「CAとお呼び」で、キャビンアテンダント
(観月ありさ)が飛行機に乗っていて元つきあっていた学校時代の彼にあって、同僚に元カレよといっている。
また、TBSテレビ「花嫁は厄年っ」で一郎が
「お前は元かのだ、ただの元かの、それだけ」
と明子に言っているし、明子も元カレだからといろいろな場面で使われている

27 しかとする

三省堂書店の大辞林を検索してみるとこの難解用語が掲載されている。
最近の辞書はかなり現代的な新語・俗語まで幅広く掲載されている。

しかとするとは、花札の十月(もみじ)の鹿が横を向いている、そっぽを向いている、つまり無視していることからシカ(鹿)と(十)するから着ていることは以外であった。

テレビドラマの使用例

NTVテレビドラマ「ハケンの品格」でスーパーハケン大前春子がS&F社に勤務して社員の東海林主任が来て「働かないのか、給料もらってるんだろう働けよ」というのに無視をするので「お前、しかとするのか」とつまり「無視をするのか」といっている。

28 タイマン張る

このことばほど難解と正直に思ったことはなかった。
たいまんということばは怠慢(怠ける)と取られがちだが相手と堂々と勝負を挑む、対するという意味に用いられる。
たいまんを対面という風に理解してみると意味がわかりやすい。
しかし一般的には使われていない。

テレビでの使用例

NTVテレビ「anego」で立ち飲み酒場で「それだったら堂々とタイマン張ったらといっている。

29 ふたまた、さんまた

ふたまたとは、同時に二つのことを掛ける意味で昔から使われてきたことばである。

たとえば「俺、早稲田と慶応二股掛けている」といった具合に大学受験に両方の大学を掛けることを指す。

最近では同時に二人の人を好きになるといった時に用いるようである。

テレビの使用例

NTVのテレビドラマ「働きマン」でまゆが喫茶店で泣いているのを見て弘子が「まゆなんで泣いているの、ああ、田中か、この間二股して、ああ、あれもそうだ健二、三股で浮気の理由を聞いたら逆切れされてそれでも忘れられないといってたああ、あいつのこと」という具合に用いている

30 萌えっ

萌えということばを辞書で引くと萌えるとたとえば
若葉が萌える、生き生きとしているさまを表しているようである。

従来の使い方は、新緑の萌え出ずるというようにあたりが新緑で包まれて生き生きと覆っているという意味で使われてきた。

萌えっが広くあらゆる人に知られるようになったのは
秋葉原のメイド喫茶、コスプレ姿の女の子が「ご主人さま、いってらっしゃいませ、お帰りいなさいませ」
とにこやかに話しかけるところから、アキハバラで萌えっと若い人の間で言われて着ているようである。

萌えっと言うことばは意外に表現することが難しいが
各々個人によって差があろうが、ことばに出来ない心の燃焼してみたいような気持ちを表しているように思えるのである。

31 重い
国語辞典によれば、重いとは

① 目方(重量)が重い 荷物が~
② 動きがにぶい(動作)
③ 気分がさっぱりしない 頭が~ 気分が~
④ 物事の程度がはなはだしい
  容易でない 解決できないなど。
を意味する。

最近は「重い」とか「空気重い」とか全体のその場の雰囲気とか人の状態を指していう。

テレビでの使用例

NTV「anego」でハケンの佳奈が会社に出社してきて
皆だまって仕事をしていると
「どうしたんですか、何か空気重いですね」
といっている。

32  きれる

きれるを三省堂国語辞典で引けば、
切れる(電灯が)切った状態になる(電気を)、はなれる、関係がまったく壊れる(夫婦関係が)
期限が切れる(貸借が)終えることが出来ない(食べきれない)など、実にさまざまな意味で用いる。

しかし最近は抑えていた感情が、腹が立って我慢が出来なくなるとうい意味(障害、果ては殺人にいたるまでのさまざまな過程がある)が一番適していて新聞・雑誌・テレビで最近は日常茶飯に使われている。

また、逆ぎれといって相手と話をしていたら逆に相手が切れてしまったという使い方もあるようである。

33 むかつく

むかつくとは国語辞典ではむかむかする、吐き気がするという意味であるが、最近は自分がいやなことを表現する際にいろいろな意味で使われている。
さらに最もいやだと表現する意味で超をつけて「超むかつく」という意味で用いる。

34 だっちゅうの

ことばには一時すごい流行ったことばがあるが時代とともに使われなくなって死語となったものがある。

90年代に流行った「だっちゅうの」もそうである。
~だっちいうのと本来は使われていたのが同じ意味で
~ちゅうのという具合に使われる。

35 ナウイ

90年代盛んに用いられたナウイはいまや死語となりつつある。
ナウイはNOWといが合わさってかっこいいことの意味に使われていた。
ことばも時代の変化とともに死語となるものが多い。

36 バックれる

バックれるとは「知らばっくれる」の意味が詰まったものでとぼけるとかさぼるとか広い意味で使われている。

ばっくれるはたとえばNTVテレビでは「ハケンの品格」で
東海林主任がスーパーハケン大前春子が無視したためなにばっくれると言っている。
また同じ「anego」で婚約者斉藤から今度和食にお誘いします」と外国からメールが来たのに対して斉藤が女性がいることを知り「斉藤さん、なにバックれてるの」という具合に用いている。

37  きゃら
キャラクターの略で性格、性質である。
略してきゃらという具合に使う
たとえば「お前そういうきゃらか」「きゃらじゃない」とかいう風に用いている。

テレビでの使用例

NTVテレビ「anego」で東京駅で新入社員黒澤(赤西
仁)が奈央子に「今からきゃら変えようと思っても無理です、あねご」といっている。

38  個

~個ということばは~個上、下という具合に用いられる。
たとえば年令を自分は~個上とか下という風に用いている。

テレビでの使用例

NTVテレビドラマで野田奈央子と新入社員黒澤の間でしばしばいろんな場面で用いられている。
黒澤が奈央子を慕う場面で奈央子が「10個上のおばさんからかってどうするの(10歳上)、とか「10個下の子供とでは」という具合に使っている。

39 乗り

三省堂国語辞典によると、
乗りとは乗る(車に乗る)、調子(彼の歌は調子がいい)、乗りがいい(化粧の乗りがいい)という具合に用いる。

最近は、ここから乗ってるとか乗りがいいとか乗ってるとかいうように用いている。

40 マジ

まじとは真面目の略でありまじはもう一般的に拡がって会話の時に最も多く使われている。

まじと「それマジっ」単体で使われるほかに「超まじっすか」(真面目な話ですか)という具合に用いている。

テレビでの使用例

NTV「anego」PART2で、
モンゴルへ赴任していた黒澤が遭難したことを知って奈央子は出かけるのですが途中でばったり黒澤に会い
奈央子は会社であなたが遭難したといって大変なのよ
・・・」と苦情を言ってるのに黒澤が「マジっつすか」と驚く場面でいってます。

41 突っ込み

突っ込みは昔から使われてきたことばで取り立てて話題にすることもないが、いろいろな意味で使われているので入れた。
たとえば「突っ込みいれろ」とか「そこが突っ込み」とかいう風に用いているようである。

テレビでの使用例
NTV「anago」で奈央子がお見合いに敗れて黒澤が心配している場面で「ぼけも突っ込みもなくて悪い、ごめん」といっている。










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短編青春小説「終電車」



その鉄道は明彦の住んでいる大都会から二、三時間ほど電車で山間に入った過疎の町を走っていた
井田明彦は何よりも鉄道が大好きで、鉄道雑誌を見ては香mれら片手に一人で出かけるのだった。
妻の真理子は、
「あなたが、デパートが好きだったらよかったのに」
と思わず本音を漏らす。
「鉄道好きだとあなた一人で楽しむし」
「ごめん、時々君を一人にさせて・・・・この穴埋めはきっと・・・・・」
「あなた、結婚前二そんな話聞かなかったわ、もし、聞いていたら・・・・」
妻は相当怒っているなあと思う。

「それともたまにはどうだ、僕と一緒に来るか」
「いやよ、この前だってさ、あなたSL撮るからって言ってさ、1時間も帰ってこなくてさ」、
「あの、何も汽車みなくても、ほら・・・・ええと、あの何とか言った
麦とろのおいしい店、ごちそうしてあげるから」
「丸子庵」でしょう?」
妻はぶっきらぼうに答えた。
なだめてもすかしてもどうにもならないと悟った和彦は、書斎の引き出しから映画の鑑賞券を2枚出して、
「これ二人でと言われたんだけど君のお母さんと一緒に見てきたら」
「今日のところ許してあげるわ、行ってらっしゃい」
「久しぶりに映画のあと、君のお母さんの家に泊まったら」
「でも、あなたのお食事のこと気になるし」
「いいよ、コンビニもあるし、冷蔵庫にも残り物が」
「あなたの何ていうかそういうとこに負けちゃうのよね」
明彦は交渉成立してほっとして家を出た。

大東駅から都心に出て新幹線で2時間のところに過疎の鉄道があった。
新幹線ホームをエスカレーターで下りてビルの立ち並ぶ駅前の広い通りを300メートル歩くとと木造の不似合いな小さな駅舎があった。すでに鉄道廃止をどこから聞きつけたのか大勢の群衆に混じって鉄道ファンも詰め掛けていて駅はごった返しだった。
赤色の電車は15メートルの長さで玩具のように可愛かった。
明彦はやまと鉄道の廃線記念切符を手に入れて狭いホームで電車の来るのを待った。
間もなくして赤い車体を左右にゆらせて赤い四両編成の電車が到着した。
いつもは1時間おきの運転も今日が最後の日で乗客も裁ききれないほどの人たちのために20分おきに電車を運行していた。

車体には横断幕でやまと鉄道さようならと書かれていてホームの頭上のスピーカーは
「今日を持ちましてやまと鉄道は廃止となります。長い間のご愛顧ありがとうございました」
と繰り返し放送していた。
鈴なりの乗客を乗せて蛍の光の調べに乗って赤い電車はホームを離れた。
駅を離れ500メートルほど走り鉄橋を渡り大きく左に曲がり、5分ほど走り、最初の停車駅、北浜南駅を過ぎると家並みも少なくなってあたりは茶畑になった。
電車はすぐ側を併行して走る県道の自動車に何台も追い抜かれて古いモーター音をさせながら甲高い音をさせて走った。

点々と農家があり、柿が赤く色づいた実をつけていてのんびりした秋の光景を醸し出していた。屋敷田、久保塚、やまと高井、重原、平石を過ぎて、秋の木漏れ日に電車の陰が長くどこまでもついてきた。単線のこの鉄道は山中駅で対向電車といつもすれ違うのだった。
閑散としたこの駅も今日ばかりは鉄道ファンがカメラを電車にいっせいに向けて最後の電車を撮り続けていた。
上り電車が林の向こうから姿を現し鈴なりの乗客を乗せて到着した。
明彦の電車は山中駅を出ると上り勾配に差し掛かり鉄道に沿って流れている川幅も狭くなり渓谷と変わって行った。原沢を過ぎてトンネルを二つくぐり、川久保と無人駅にも今日が最後の運転とあって電車が近づくといっせいにカメラのフラッシュの攻撃が待ち構えていた。トンネルをくぐって鉄橋を渡ると左の車窓に見えていた渓谷が右側に変わってしばらく10分も走るとそこはやまと鉄道の過疎の町やまと追分駅だった。

人口8千人のこの町は主に林業で成り立っていた。
狭い車両からどっと人が吐き出されて改札口へと流れていく
明彦もまた、切符を出して駅舎から出て後戻りして小さな車庫に向かった
やまと鉄道の小さな車庫の前には黒山のような人だかりだった。
カメラを持った鉄道ファンを中心に地元の人たちが電車の周りを囲んでいた。
明彦ももう50年近く走り続けている赤いレトロな小さな電車を撮影しようとバッグからカメラを取り出し大きな望遠レンズを取り付けた。

やまと鉄道の制服を来た職員がやってきて電車を取り囲んでいる皆に説明しはじめた。
「皆さん、こんにちは、ようこそやまと鉄道にお出でくださいました。長い間皆様にご愛顧いただいた鉄道線浜南―やまと追分間21,3キロは本日を持ちまして廃止されることになりました」
明彦は、大勢の見物客とともに職員の挨拶を聞いてたが、明彦のほうに目を向けた瞬間、 明彦は思わず
「あっ」
と叫んだ。

それもそのはず何と中学時代の親友だったからである。
明彦は思わず見物客の人並みを掻き分けて前に出た。
挨拶をし終えた彼も明彦の顔を見て、
「おお、鶴見じゃないか」、
「井田しばらくだなあ」二人は駆け寄って思わず握手をした。
明彦は
「君に逢いたかったよ、いったいどこ行ってたんだ。?」
「ごめん、ごめん、僕もどうしているかと気になってたんだ」
脇の職員に
「この電車の説明僕に代わってやってくれないか」
と頼んだ。

明彦は、
「いいのか、君が説明しないでも」
「大丈夫、こんなとこで逢おうとはなあ」
「いったいどこに雲隠れしてたんだよ」
「君には本当に済まなかったと思ってるよ。実は?」
「どうなったんだ」
「実は、親父のやってた工場が不況で不渡り出して倒産して・・・・」
「そうだったのか、あの頃、君の家は羽振りがよくて僕はうらやましく思ったんだけど」
「それで借金取りは来るわで、叔父が浜南市に住んでて、こっちに来たんだ。」
「そういうわけだったのか、大変だったなあ」
明彦は複雑な事情で友人が急にいなくなったことがわかった。
「そういうわけで高校出て地元の工業大学何とか出て、やまと鉄道に入ったという訳」
「やまと鉄道って言えば、鉄道のほかに県内のバス・百貨店・スーパー・コンビ二・不動産までやってていいじゃないか」
「地元ではまあまあだけど君は?」

「僕は平凡だよ、サラリーマンで、今日はやまと鉄道が最後の運転をするというんで新幹線でここまで来たんだ。写真撮ろうと思って」
「今日はすごい見物客だなあ」
「いつもこんなだとな、鉄道廃線しなくてもなあ」
と鶴見はためいきをつきながら言った。

「それじゃ、僕から説明しようか」
と鶴見は車庫のすぐ側に陳列されているレトロな5つ窓の電車を指差しながら
「これはモハ10という形式で中部鉄道で、名古屋の岐阜を走っていたのを払い下げてもらった大正5年製造の一番古い電車なんだ」
「知ってる。何度か岐阜で乗ったけど、こいつが岐阜の市内の道路を走るときにはのろのろと左右に車体を揺らせて駅まで走ったよ」
「これは大正時代の古典的価値があって円形の窓が特徴あるんだよ。」
と鶴見が言うのを聞いてて
、明彦は、
「君もずいぶん詳しくなったなあ」
と言った。

鶴見は
「まあ、やまと鉄道に入ってからなあ、商売柄しょうがないよ」
と鶴見は、
「僕、鉄道部長なんだ」
と明彦に名詞を見せて笑った。
「この車両もうちが鉄道廃止になったらもう全国でも見られないんじゃないか」
と鶴見は電車を見上げながら言った。
「ところで、君の仕事の鉄道部が終わったら」
「今度は、やまと百貨店入りだよ」
 「いいじゃないか、百貨店なら地方で有名だし」
「わが社の電車はほら阪神地方を走っていた加速・減速の早いジェットカーか、これの屋根に冷房装置を取り付けて、やっとわが社にも冷房電車が走って皆に喜んでもらったと思ったら、3年で廃止だもんな」
と鶴見はしみじみと話した。

「記念に写真撮るか」
と明彦は、バッグからカメラを取り出し三脚を引き伸ばしてカメラを三脚に固定した。
明彦は、セルフタイマーを押して急いで鶴見の立っているところに戻り肩を組んで写真に納まった。
明彦は、鶴見に案内されて10系古典電車と右側の15メートルの短い車両と一番左に止まっているやま鉄ご自慢の1000系の冷房電車を見て廻った。
明彦は、要所要所で電車をカメラに収めた。

「うちの事務所に来るか。あげたいものがあるんだ」
鶴見は明彦の方に手を掛けて、
「さあ、行くか」
と言って駅に向かって歩きだした。
「ここがうちのやまと追分事務所だ。」
と鶴見は言って、観光案内センターの3階の建物脇の自販機にお金を入れて缶コーヒーを二つ買って2階に通じる狭い階段を登った。
「悪いなあ、仕事中に」
「狭いけどそこに座って」
鶴見はソファーに明彦を座らせて、左の壁のロッカーを開けてなにやら取り出した。
「これは、当社の鉄道の開業50周年を記念して作った写真集で」
「ええと電車の文鎮どこだっけなあ」
とロッカーの中を探した。

若い社員が、
「部長、ここの箱の中に・・・・・でも結構皆に配ったし」
狭い事務所の左の隅にある机の引き出しを捜した。
「部長、これでしょう」
と言ってほこりを被った金属の塊を取り出して、ほこりを払って鶴見に差し出した。
「こんなもので良かったら、さっき見た10系電車の文鎮だ」
缶コーヒーを開けて鶴見の前に置いた。
「悪いなあ大切にするよ、これもらっていいの?」
「ああ」

明彦にとっては何にもましてかけがいのない物だった。
「ところで、君はさっきサラリーマンだって言ってたが、電車の好きな君のことだから」
井田は興味深く鶴見の返事を待っていた。
「ああ、僕のこと、大したことじゃないが武蔵鉄道なんだよ」
「大したもんだなあ、武蔵鉄道は電車も大きくVVVF方式の新車だしな」
「うちは、つり掛け方式で、いや走ってもうるさいしな」
「つりかけ方式は貴重だよ、もう全国でも貴重だよ」
「いや、君のところは、規模が違うもんな、安全なATC方式だから、事故も起きにくいし」
「ああ」
「でも併行して多摩鉄道も走っているし、結構大変だよ」
そんな話をしているうちに、秋の日差しも影って来て山並みが赤く染まっていた。
「そろそろ、今日の終電車の運転時間も迫ってきたしなあ、飯食いに行くとするか」
二人は事務所の階段を下りて駅前の道路を左折して歩いた。

鶴見は、
「ここのとろろは名物なんだ」と言って「丸子庵」
と書かれた看板を見て中に入った。
「済まない、こんなとこで、運転があるんで酒はちょっと」
と明彦の顔をすまなさそうな顔で言った。
「いいんだ、僕は酒は全然飲めないんだよ」
と明彦は言った。

明彦は、以前妻と一緒にここへ来たんだよと危うく口にしそうになって、ご馳走してくれる鶴見に申し訳ないと思って
「こんな自然の特産物なんて口にできなくて」
と感謝して言った。
二人の前にお櫃に入った麦ご飯ととろろ汁が運ばれてきた。
外は、すっかり夜の帳が下りていて遠くのやまと追分駅の周りだけがこうこうと灯りがついていて明るかった。

「ところで、君にお願いがあるんだけど」
「僕が住民数人から花束受けるところを新聞社のカメラマンが写真撮ることになってるんだけど、そんな形式的なものでなく、君は僕の親友としてもっと自由な角度で写真撮ってほしんだけど」
「はっ。僕に、新聞社でもなく、ここの住民でないのに」
「僕の親しい親友っていうことで。君の自由なというか、きっとあたたかい、僕にとってたった一回の想い出になると思うんだけど」
「OK、わかった。僕でよければ」

駅に入ると最終電車はホームに入っていた。
電車は、ホームにはみ出る長い5両編成でご自慢の冷房電車1000系に混じってさっき見た大正時代の古典的な5つ窓、丸窓の10系電車も連結していた。
明彦はすでに新聞社のカメラマンより遠い場所に陣取って待っていた。
制服姿の鶴見が構内の詰め所から歩いてきて、
「当社はじまって以来の5両編成だよ、まあ、ファンと住民サービスかなあ」と笑いながら明彦に言った。
「皆様、やまと鉄道を長い間ご利用くださいまして本当にありがとうございました。いよいよこの列車を持ちまして当駅の営業を終わらせていただきます。明日からはバスが運行いたしますので今後ともご愛顧のほど、よろしくお願い申し上げます」
とアナウンスを繰り返した。

ホームのやまと追分駅の赤い電車の周りにはこの時間でも鉄道ファン、住民で一杯だった。
町の有力者の挨拶のあと、終電車を運転する鶴見に花束を送った。その光景を見ていた明彦は鶴見の一番にこやかな瞬間を狙って、連写した。
鶴見は、明彦の顔を見つめて
「すまないなあ、君まで借り出して」
と小さな声で言った。

制服を着た鶴見はきりっと帽子の紐を締めなおして運転室に入った。
明彦は一番前の窓から井田の後ろ姿を見ていた。
ホームの中学校のブラスバンドが「線路は続くよどこまでも」を演奏しはじめた。鉄道ファンが群がってカメラのシャッターを押した。フラッシュを受けてまばゆかった。
出発のベルが鳴り終わると、鶴見は正面の信号が緑に変わったのを確認して「出発進行、定時、制限15と立て続けに指差歓呼しながらコントローラーを白手袋でノッチ2の位置まで操作した。
「ファーン。」とタイフォンを鳴らして電車はホームを離れはじめた。
電車はやまと追分駅の構内を離れると町の家の軒並みが明るいほか闇に包まれ電車の前照灯だけが線路の先を照らしていた。

鶴見は前を見つめて
「制限解除、信号よおし、速度50」
と言ってコントローラーのノッチ5一杯まで持って行った。
電車は甲高いモーター音を出して速度を増して走った。
明彦は、鶴見の電車を運転する姿を見てなにか不思議なめぐりあわせを感じながら、親友のあたたかさを感じ、今日の感動の出来事そのままに妻にどう伝えたらいいかと心の中で迷っていた。

用語解説
つり掛け式  モーターから車両に動力を伝達する(モーターを台車で装架する方式で構造は簡単であるもののモーター重量の五十パーセントが車軸に掛かり、さらに騒音が大きく乗り心地も良くなく既に過去の物となっている。

VVVF方式 
VVVFインバーターとは
直流を交流に変換、そこで電圧と周波数を変化させて交流モーターを制御する方式である
電気車両の動力に使うモーターは交流タイプの方が保守などの面で秀れている。
今までのような抵抗器を必要としないため、省エネルギー、低騒音化、高効率化が実現した。


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NTVテレビドラマ [働きマン」

span style="font-size:large;">少し大きい文字作家のたまご

NTVテレビドラマ「働きマン」
要約
物語は、雑誌豪胆社に勤める松方弘子(菅野美穂)は、恋より仕事を何よりも大切にする編集部の記者で、「私は死ぬときに仕事を充分した」といわせるほどであり、いったんスイッチが入り、働きマンに変身するとものすごい勢いで問題を解決していく。
豪胆社には、新人編集者で仕事よりも自分を大切にする生意気な田中(速水もこみち)、先輩と弘子を敬ってるものよく失敗しては弘子をはらはらさせる渚まゆ(平山あゆ)の二人のほかに、弘子の同期生のこぶたんこと小林明久(荒川良良)、カメラマン菅原など、個性いっぱいの部員がいて楽しませてくれる。
編集長梅宮はこういう編集部を機関車のたくましい勢いで引っ張って行き、部下に采配をふるって週間時代を動かして行くデスク成田は皆から頼られる厳しくもやさしい。

原作は、安野モヨコの「働きマン」で、これをドラマ化したものであるが、原作に沿っているもののドラマとして脚色されている。
全編11話のいずれも胸を打つ温かい人情味あふれた物語となっている。
雑誌社の仕事の様子が鮮明に、忠実に描かれていること、笑いと涙とコミック的な要素もあって実に楽しい、見てさわやかさを感じさせるドラマといえる。

かっての高度経済時代と違って、低成長の今日、誰もが自分の仕事を弘子のように愛している人は少ないかも知れないし、リストラ、ニート、ハケン社員といった労働環境は厳しいものがあるが、このドラマを見て働くこと、また働きたいと希望を持って前進することができるのではないかと思った。

残念ながら、筆者は1、4、7、8、9、10、11話意外は一部見過ごしたが、このドラマはNTVが放送したドラマの中でも傑作といえる。

主演の菅野美穂は、あいのうた(菅野美穂・玉置浩二)でも素晴らしい演技を見せたが、今度は、仕事に熱血的な働く女性を見事に演じきっていて、数少ない本格的演技派女優といえる
いつもは静かに仕事をしているのだが、問題に直面、解決の糸口をつかむとこれまでの何倍もの力を出して猛烈に仕事をこなして行く姿が見るものに感動と勇気を与えてくれる.

あらすじ
第1話
豪胆社雑誌記者はいつも朝、あわただしく身づくろいして朝食もとらないまま駅で新聞を買うと階段を二段とびして発車する電車に向かって駆けてゆくのが日課である。
主人公「弘子」自身が「ベルが鳴るとつい駆けちゃうんです」と告白している。このあたりサラリーマン・OLに共感を与えそうである。

会社のへ道を歩きながら「恋・おしゃれも・健康何事もバランスが必要です」とは行ったものの実際の弘子は、社内で納豆まきを食べながら企画書を見るほどの忙しい毎日である。
誰いうとなく「働きマン」というニックネームがついた。
その弘子はとんでもない新人田中に出会った。

彼はもともと男性雑誌の担当だったのだが半年以前に廃刊になって週刊時代に来たのだった
弘子が書いた原稿を「これ軽くいけていた」といったことから、弘子は「私、風呂にも入らず三日間渾身の思いで書いたのが軽くいけてる」と低い声で言ったほどだ。
皆の顔がきつくなってきたのに田中は、「時代はゴシップ誌」といったものだからデスクの成田まで顔をこわばらせてこの場がきつくなったので、弘子は怒りたい気持ちを抑えて
「面白い、面白いよね」と笑って和ませた。

翌日弘子は、編集長に呼ばれたがあんな太い態度の新人の面倒は見られないときっぱりと「新人田中の教育はいやだ」と編集長に詰め寄ったのだが、逆に弘子の書いた原稿を編集長から代わりに、弘子が書いた企画書通してやってもと弱点をつかまれて引き受けざるを得なくなった。

弘子は新人田中に頼んだ中高年に悩む頻尿の記事をネットで調べて何とかするといったので、思わず弘子は立ち上がって若いのに楽をするな」こぶしで机をたたきどなった。
田中は実は弘子が外務大臣セレブの取材に会ってくれるかどうか、田中が引き受け取り付けたのだった。
弘子はその夜、田中をつれてパーティーの合間の休みに会いたいということで行かざるを得なくなった。

弘子は、田中から「変身とは、女モードですね」と聞かれたのに対して「TPOに合わせて戦闘服も」とかわした。実は前日、田中の歓迎会で「松方弘子は変身するんだよ、働きマンに」といわれてわからなかった。2時間待たされた挙句に星川外務大臣に会うことが出来たが、セレブの日常についての弘子の取材に大臣は、こうして一人ひとり握手をするのも仕事だよ」といって去ろうとした大臣にたまりかねて、「外交とは何ですか」と聞いたが、「君に任せたよ」と一蹴して去った。

田中は、悔しがる弘子に「政治家とはあんなものですよ、楽でいいじゃないですか、俺が書きましょうか」というので、弘子は簡単に努力もしない彼を怒った。
弘子は、田中が何で出版社に入ったか知りたくなって聞いたのに「ブランド」と悪びれた様子も見せずに答えたので、思わず「聞いた私がばかだった」と言ってしまった。
数日後、忙しい弘子は、3ヶ月ぶりに恋人の新二と会う約束をして向かったのだが、タクシーの中で外務大臣の女性秘書から内部告発のようなケータイの会話を聞いて新二との約束をほごにして秘密の話をリークすることに成功した。

すぐに豪胆社に戻り、弘子はテープと資料を成田デスクに提出、編集長が「巻頭差し替え八ページぶち抜き」という声を聞いて弘子は働きマンに変身して締め切り間際に間にあわせるのだった。
弘子はこの瞬間に満ち足りた喜びを感じ、雑誌の売れ行きも上々で、急いで会社に出た。
ところがテレビで、星川外務大臣が記者会見で、国民の皆様への謝罪と秘書の関与をほのめかしていた。
弘子のいる編集部には脅迫まがいのファックスが舞い込んでその対応に皆一生懸命だった
一転、弘子の立場は不利になって、そこで弘子は・・・・・・・・・

第4話
弘子は、まゆと待ち合わせるために、カフェテラスに行き、まゆに声をかけるとまゆは涙を流してないていた。
弘子はなんのことだがわからずに、理由を聞くと一冊の本を差し出して「この夏目先生の恋愛小説がすごく悲しいんです」というのだった。まゆは熱烈なファンでサイン会には必ず行って、将来は先生とご一緒に仕事をさせていただきますといっていた。

弘子は仕事一筋の猛烈働きマンで、プラーイベートな弘子には建設会社に勤務する新二という恋人がいるのだったが、デートの約束をしても、直前電話が入ると仕事優先に新二との約束を取り消すのだった。

そんな弘子が、編集長、デスクから呼ばれて「お前は夏目三好の時代の連載記事担当として仕事を進めてくれ」といわれて、同席していたまゆは、「私のこの企画をどうして私にさせてくれないのですか」と執拗に食い下がるのだったが、二人は「夏目三好の小説を男性路線の時代に連載させて女性路線を開拓しようとした功績は大いに買うが、入社2年目のお前では心細い」といわれて、まゆは、「今まで松方がやっていたザ・仕事人の人間国宝陶芸家糸山正弦の取材をやってくれといわれて大いに失望、弘子とまゆの間に亀裂を感じるのだった。
弘子は新二との恋もうまく言っておらず大いに悩み、まゆは尊敬する大好きな恋愛小説のカリスマと思っている夏目三好の仕事ができず、弘子とまゆは反目するようになっていく。
弘子は恋愛小説の夏目三好に、もともと豪胆社の時代は、男性路線志向であり、困った挙句 豪胆社で夏目三好にこの際、発想を変えて競馬・スポーツなどを扱った話を書いてみるようにしたらどうかと提案するが、まゆはそれを知って夏目先生は恋愛小説でないと駄目なんですと一歩も引かない。
まゆは、仕事をしても夏目三好が忘れられず、弘子が与えたザ・仕事人陶芸家糸山正弦の取材に行ったものの仕事場で大切な大きなつぼを割ってしまい、編集長、デスクから叱責を受けて失望して会社を去った。
一方、弘子は、まゆを庇いきれず自分自体が夏目三好に何をどう書かせたらよいか決まらず迷っていた。まゆが自分を先輩といって頼ってくれてるのに何もしてやれず、悩んでいた時新二から電話があって、翌日二人は久しぶりに海でデートして弘子ははしゃぐのだった。
新二から自分の建設現場で中年のおじさんから恋愛相談を受けて、俺たちよりよほど中年のおじさんのほうがときめいているという新二の話に弘子は楽しそうに笑うのだった。
その時、電話があり、まゆが行方不明という知らせを聞いて、デートを打ち切ってまゆを捜しに行き、駆け回って探した挙句に公園でまゆを発見するのだが・・・・・・・・・・


第9話
レストランで弘子はまゆ、雅美と食事をしていたが、時代に連載された小説54を二人が読んで泣けてくるといって二人とも涙を流すのだった。
弘子はまゆの泣き上戸には困るといったものの雅美まで二人が泣いているのに当惑していた。
雅美から51の連載恋愛小説の担当がヒロなのに恋愛していないんじゃといわれて、弘子は新二に振られたので言い返せず情けないとつぶやいた。
豪胆社に帰るとデスクの成田が夏目三好の小説54の単行本化が決まったと報告を受けてまゆと弘子は小躍りして喜んだが、
弘子は作家夏目三好に電話で小説54の単行本化が決まったことを伝えたが夏目から最終回の続きが書けないといわれて弘子は急いで夏目三好宅に向かうのだった。
玄関で何も書けないと悩んでいる夏目三好に、私もご一緒しますからといって、困っている夏目に、主人公の恋を成就させてやりましょうyといって韓国に行くことを提案、達夫が恋した韓国女性のふるさとを一人で訪ねるということで徹夜の上に完成させた。
こうして社に戻ると販売部と編集部の会議を開き54の書籍化についても決められることになった。
初版は5万部ぐらいかと考えていた編集部に販売部からもたらされた54の初版は2万部という答えに
納得しない弘子は・・・・・・・

第10話
主人公の松方弘子は、寝ていても近くで消防自動車のサイレンが聞こえると、早朝であろうがカメラを手に飛び出して取材に出かけて小火であってほっとするのだが「いかん、職業病が出て」というほどの仕事大好き、働きマンである。
弘子が家に帰ってポストを見ると、金沢の父からはがきが来ていて、新聞を見ると今日の日付になっていた。
今週の時代の校了が済んでほっとするまもなく、成田デスクから時代の20周年記念増刊号のチーフはお前がやれ」といってきた。
そんな時父から電話があって、なんと豪胆社の近くにいると聞いて、編集長と上司に挨拶に行くという父を、二人は出張と会議となんとか誤魔化したものの、近くの喫茶店で父と会うはめとなった。
弘子は実直な公務員の父を敬遠していたが、喫茶店に入って席につくなり「妹が結婚が決まって姉のお前は悔しくないのか」というのだった。
最初から結婚話を切り出されて、返答に窮していた弘子に友達のまさみが声をかけてきて、父を紹介し、同席してもらって話を別に切り替えようと思っていたが、・・・・・・・・・・・

第11話
弘子は、新二との結婚に胸をときめかしていた。
父に引かれて微笑んでいる新二のもとにバージンロードを歩くのだったが右手を捉まれて「離して」というのだった
その時、松方さんという声で目が覚めると、床で寝ている弘子の手を握って身体を起こそうとしている田中がいた。
「なんで田中が」と弘子がいうと、田中は「しきりに彼氏の名前を読んでいましたよ」というのだった。
まゆが「先輩、29歳の誕生日ですね、元彼と復活の機会がありますよ」というのだった。
弘子が仕事をしてると別れた恋人の新二からだった。
久しぶりの新二からの電話で、喫茶店で待っている新二の姿を見て「もしかして復活かも」と胸がときめいた。
新二は、福岡転勤尾話を弘子に話をして、驚く弘子に「福岡港湾開発の
大きな仕事に挑戦することになった」と話をして、仕事の模様を弘子に優しく聞いた後、「今の仕事ずっと続けるのか」と意味深なことを聞いた。
弘子は即答を避けたものの、友人雅美からも「そのチャンスを逃してこのまま歳とっていいの、今だったらやり直せるかも」と助言をした。
数日後、デスクから新しいニュースが入った、小学校の教師の痴漢行為の取材をしてほしい」といわれて、弘子は警察署に取材に行ったのだったが、帰りにSPEEK社の人から声を掛けられて、新しい女性誌「WOMAN SPEEK」を出版するのでデスクとして来ないかとスカウトの話を持ち込まれた。
弘子は、実はSPEEK社のような国際的な雑誌を作ることが夢だったので心が揺れる。
弘子は、皆とこれまでやってきた豪胆社に残るか、新二と一緒に仕事を辞めて福岡に行くべきか、新しいSPEEK社でかねて目標としていた仕事をするべきか、29歳を向かえて大いに悩むのだった。
弘子が思案した挙句に取った行動は・・・・・・・・・・・・・



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物書きは読書するより100倍楽しい

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書くことは本をよむより100倍楽しい

はじめに
自費出版して自分の書を手にして以来、最近書くことは、本を読むよりも100倍も楽しいと思うようになってきました。
それというのも小さいときから絶対、自分の本を書いて誰かに読んでもらいたい、それが一生の願いだとずっと考えてきました。
小学校のときに、「運動会」という作文を書いて学校の新聞に掲載されて講堂に集まった大勢のみなの前で賞を受けました。
それ以来、書くのが好きになって、いつしか、本は書店で買って読むだけでなく、自分の書いたものを誰かに読んでもらうために書店で売ることだと固く志を抱いていました。
1億総作家といわれる時代にあって、とにかく1冊書を書けば、それで作家になれるともいわれているほど、現代は作家志望者が多いようです

僕はそんな気持ちはありませんが、とにかくスタート地点に立てたものだと思っています。
でも、長い間経営コンサルタントで、企業診断とか教育訓練、市場調査で膨大な報告書は書いてきました。
ただ、経営的な論理的な思考性の固い表現をしてき増したので、まったく異なる情緒、感性などをあらわすまったく異なるシナリオ、小説に挑み果たしてうまくかけるだろうかという一抹の不安はありました。

その僕が小説を書くようになった転機は、次のことからでした。
一昨年長年の激務がたたり、体もぼろぼろになり、なんと4回も入院の羽目になりました。
今まで夢中で駆けて来た人生で初めて生死を知って、それで見舞いに着てくださっつた方からノートとボールペンをいただいてそれでベッドでまずシナリオを書いてみようかという気持ちになりました。

入院していて朝6時から夜9時までの時間、いやというほどあるので午前中は心を穏やかにする読書、午後からは時間があり夜のTVドラマも犯罪サスペンスが多く、それで自分のホテル経験を基に、都会のホテルに働く恋人たちを書いてみたいと思い、「ホテルの恋人たち」をなんと13話を設定、あらすじは全部書いたのですがシナリオはやはり60%程度しか完成していません。

僕は多分に韓流ドラマ「冬のソナタ」を観てあの高校時代のぺ・ヨンジュン、チェ・ジュウの純愛に惹かれたのか、人間の美しさを書いてみたいと思いました。
その後、ふとしたとき私の幼稚園・小学校での幼馴染(戦争で音信普通)と20年ぶりに国際線ニューヨーク行きの機内で彼女はCA(チーフキャビンアテンダント)彼はビジネスコンサルタントとして運命の再会をする物語を書いて出来上がりました。

当初シナリオとしてTV局シナリオ登竜門に応募する予定でしたが民放が今年から当分中止するということで昨年12月から小説化して6月完成しました。
こうして1年後の今年7月一冊の小さな本「愛は時を越えて」が文庫本として完成したのです。
現在、作家のたまご・Cafeのある散歩道(NEWBLOG)ブログには以下のような小説、童話をいろいろ公開していますので見ていただければうれしく思います。
★童話「美華のお手伝い」
★童話「一箱のクレヨン」
★長編小説「黒い地下鉄」
★短編小説「雨宿りの幸せ」
★中篇小説「意表」

★「ホテルの恋人たち」シナリオ・現在小説化中
★短編小説「けだるい夏の日」同上
★短編小説「終電車」    同上
★シナリオ「大井田さくらのツアーコン日記」未完成・進行中
★中篇小説「山手線」未完成・進行中
★シナリオ「新浦島竜太郎物語」

物書きのメリット

①物を書くということは、目・耳・鼻・口など、また頭脳などの五感を動かすわけですから心・精神・身体を鍛えることになると思います。
目で見たことをいろいろな視点でとらえ、耳で聞いたことを正確に表現し、鼻でかいだにおいとか口で感じた食べ物の味などを伝えて右脳・左脳の持つ情緒性(喜怒哀楽)・論理性などをいかんなく文章に駆使し伝えることができると思っています。

②自己を文という形で表現できること

人間には、思ってる、考えてることを誰かに伝えたいと言う本能が誰にもあります。それをシナリオ・小説。エッセイという形で伝えることに、読み手に伝えることに喜びを感じると思います。

③さまざまな人間模様を自由に描き出す楽しみがある。

シナリオ・小説はまずどんなキャラクターを持った人物を登場させる書き手に自由にゆだねられています。登場人物の世代、性格によって、自由自在に、またそれが喜劇にも悲劇にも、コミック風とか、に大きく変化させることができます。

④背景・舞台の設定が自由にできる。

登場人物の舞台・背景はそれが歴史的観点で江戸・明治・大正・昭和・平成の今、自由に置くことができます。また、それが日本・外国のいずれにも設定できる面白さがあります。
また、季節(春夏秋冬)時間の経過(朝昼夜)場面(室内、屋外)と言う具合に登場人物の背景が自由にできます。

物書きのデメリット

あえて物を書くことのデメリットについて僕の個人的な考えを述べたいと思います。
物を書いてゆくうちに登場人物の描写が細かくなってあたかもその人物が実在するように考えてしまうことです。
ですからいつも登場人物を描きながら離れていて客観的見方を保たなくてはいけないことがわかります。
これが愛を持った親切な優しい人ならばそれはそれでよいのですが、残忍で殺人を犯したり金と欲望に目がくらむ人物だと心はその人によってですが暗くなるのではないのかと思います。

ですから、あまりに熱中して妄想を抱くようになってはいけないと思います。
たまに人を殺害するTVゲームを見ていて自分もその気になったと言う人がいますが心に悪の気持ちが芽生えたとのだと思います。
僕はコンサルタントの経験を生かして、いろいろな企業内で働く人たちの中にあって心が純粋で明るい愛のある人を気遣う物語りを書いていきたいと思っています。


小説のジャンルについて

一口に小説と言ってもいろいろあります。
いわゆる戦前・戦後の文豪の香り高い文学的手法を用いた小説
ブログの日記が認められて小説、そして圧倒的支持を得て映画化、ドラマ化される
ブログ小説 鬼嫁日記など
ケータイに投稿しまとめて小説とするケータイ小説
日常起き得るさまざまな出来事を軽く描いたライトノベル
など、
今やいろいろな手法や表現を自由に描いた小説が認められる世の中になりました。
誰でも気軽に自分を表現し小説を書く時代が来たといっても過言ではありません。

小説で一番大切にする点

まず、全体のあらすじを書きます。そして書かれた筋に従って物語を進めてゆきますがあくまでもこの段階では荒削りです。
絵で言えば全体の輪郭を書きます。輪郭ですので細かい点はいくらでも修正できます。

第二に僕の場合はあらかじめ物語の登場人物のプロフィールを設定することにしています。

たとえば僕の書いた作品の「愛は時を越えて」がありますが、
登場人物別に細かくキャラクターを設定します。
そしてあらかじめ章を設定し、そこでキャラクターがどういう背景の下で活躍するかを想定し柱立てとします。
シナリオであれば、柱、場面に当たりますが、自分のおもむくままに書いてゆくこともできるのですが、荒削りでもあらかじめ決めておくと、書きもれもありませんし、書いてから今はワープロの時代ですから、まずければいくらでも修正できるわけです。

登場人物のプロフィール
高梨亜理紗(30歳)極東航空チーフキャビンアテンダント
いつも穏やかで人のことを第一に気遣う、穏やかで落ち着きと優雅さを持った女性である。高梨家の祖父、祖母から慎み深さ、貞淑であることを教えられて亜理紗も育った。
CAのチーフパーサーであることから仕事のプロを目指し率先垂範して実践し、同僚・後輩から尊敬される反面、新人の研修は凄まじく鬼の亜理紗といわれている。

錦小路裕彦(31歳)

落ち着いていて真面目な性格である。仕事熱心で責任感を持っている。
幼稚園時代の幼馴染の亜理紗を忘れられない純粋さを持っている。
父は教育熱心であり、語学をはじめ父から教えられて育った。
細かいことにくよくよせず、非常におおらかであり、進んで人を許すなどのいい面を持っている。
高所恐怖症である。

本多木綿子(37歳)

元チーフパーサーとしてCAとクルーの潤滑油的存在である。CAの仕事を暖かく見守り亜理紗をよく理解し信頼している。

伊東葉月(23歳)

新人で、キャビンアテンダントとしては小柄であるが積極的で、彼女の持つ少女っぽいキュートな面があり、明るい性格で誰からも好かれる。いずみと同期生、今風の価値観と個性的で亜理紗とは距離感がある。

後藤いずみ(24歳)

新人で葉月と同期生、葉月とは同期生であるが、生まれが3ヶ月早く落ち着いている。二人はやりあっているが実は一卵性双生児のように仲がいい。短歌をこよなく愛しインスタントに作った短歌を披露し亜理紗が苦手としている。
と言った具合にです。

徹底的な資料収集と状況分析
たとえばこの作品では、昭和17年の幼稚園から小学生まで過ごした幼馴染の想い出をを書くために、記憶をたどってカソリック系幼稚園で二人は聖書劇ではじめて一緒になるのですが、幼稚園から小学校4年生までの想い出を可能な限り掘り下げて、当時の出来事とか生々しい戦争の悲劇を追いかけて書いています。
同時にインターネット、当時の新聞記事での出来事をたどり真実性を徹底的に追究することによって後の20年後の成長した二人が再開して軌跡を追いながら物語を展開させることができます。
次に20年後の再開は、昭和42年頃ですから、当時就航していた航空機を調べたり、当時の世相を書籍・インターネット・新聞などで克明に物語に織り込んで浮行くのです。
その場合、当時ダグラスDC-8が就航していて、まだ今日のような大型ジェット機時代ではなく、それを予表する時代です。それで何度か航空博物館に足を運んでDC-8の性能、機内構造、客室、座席配置、非常脱出口など、またビデオ、雑誌、書籍など、あらゆるものを駆使して調べることによってリアル感が出てくると思います。


シナリオで大切にしていること

僕はもともとシナリオを書くことからスタートしました。
ですから書いた作品を小説化しても映像の面が強く浮かんでくるのも無理ありません。
たとえば「愛は時を越えて」も拙作を読まれた方から読んでいて目に映像が浮かんでくるようだと意見いただきます。
小説は、文学的、抽象的な文言が多い作品もあり、そこから各自が頭に映像として浮かび上がってくればよいのですが、何しろ最初からシナリオを書くことからスタートしたものですからどうしても具体的な映像重視主義になっています。

そこでシナリオとして大切な条件も大切にして小説を書くことにしています。
あるシナリオ雑誌で見たのですが、シナリオ審査委員の方の覆面座談会だったのですが、こういう作品は審査員が注目するという10か条が載せられていました。

①映像が目に浮かんでくること
②せりふは効果的で短めに
③監督・ディレクター・俳優の三者にたった立場から書く
④背景・洋服などの説明は簡単に、見ればわかる
⑤恋愛物ならば最初から始まって5分くらいで予感を感じさせるように、だらだら引っ張って最後にわかるはよくない
⑥CMごとに物語、せりふの山場を作る、見せ所を作る
⑦せりふは今風言葉を活用する。時代が古くても視聴者は今の感覚で見ている
⑧効果的な場面とせりふを作っておく、俳優は台本渡されると自分が一番個性の現れているところに注目する
⑨全体的に自然な流れを持たせる
⑩登場人物の性格を明らかにする、
などが注目点だそうです


小説のジャンル

①伝統の文学小説
②プロレタリアート小説
③時代劇小説
④推理小説
⑤官能小説
⑥サイエンスフィクション小説
新しい小説
①ライトノベル
②ケータイ小説
③NET小説
④ブログ小説
⑤コミック小説

①古典的文学
日本にいつごろから文学的表現の書物があったのでしょうか。
古くは「日本書記」と言われています。
ついで平安時代を経て、清少納言の「枕草子」兼好法師の「徒然草」などがあります。
中でも「枕草子」は当時の女官の日常の出来事を女性らしい繊細な目で書いたものです。
中でも高校時代に学んだ「枕草子」はその叙情的な美しい表現がいまだに記憶として深く刻まれています。
鎌倉時代に完成した平家の隆盛で華美な姿と壇ノ浦の戦いで滅没するさまを描いた「平家物語」など、江戸時代に入ると華やかな町民文化が到来しまた商業も発展したことから井原西鶴の「当世胸算用」は商いをどのように行い成功させるかを細かく書いた書物としていわば、経営学の創始者ともいわれており注目されます。また当時の華やかな浮世絵文化を描いた「好色五人男」があります。

①伝統的文学小説
これは、明治・大正・昭和時代に生きてきた香りの高い文学的手法で書いてきた文学者です。

明治時代
森鴎外・二葉亭四迷・樋口一葉(初の女流作家)徳富蘆花などがあげられます。
異色は樋口一葉で貧乏だった自分の生活をモチーフにした「たけくらべ」で僅か27歳でこの世を去っています。

大正時代
有島武郎・坪内逍遥・徳多秋声・石川啄木などがあげられます。
中でも石川啄木は東北の貧しい農家の出身で昭和初期の東北地方が度々冷害に見舞われて不作となった時代の生活ぶりを描写しています。石川啄木は「働けど働けどわが暮らし楽にならず・・・・じっと手を見る」と歌ったことはあまりのも有名で当時の日本の農業の大地主制度の搾取・米作中心の不安定な要素を抱えていたからにほかありません。

昭和時代
川端康成・谷崎潤一郎・堀辰雄・太宰治の戦前派から戦後はきら星のように伊藤整・佐多稲子・高見順・井伏鱒二・三島由紀夫・井上ひさし・松本清張・最近では村上龍など優れた作家を輩出しています。

川端康成の「雪国」「伊豆の踊り子」は美しい日本の光景を背景にきわめて叙情的に物語りを展開していて世界的に日本文学が認められました。
その反面厭世的な世の中を背景を描写した太宰治の作品「人間失格」「グッドバイ」があります。

作家を目指す人は、谷崎潤一郎の作品を読むことがいいとある審査員は述べています。谷崎潤一郎の代表的作品は「細雪」ですが、いまだに恥ずかしいことながら見ていませんので文学を語る資格はありません。この当時の文豪の作品を読むことは日本文学を築いてきた方だけに必要だと思います。

最近では芥川賞・直木賞・などの作家の登竜門の受賞者もぐっと年齢が若返っています。
因みに最近芥川賞を受賞した金原ひとみ「蛇にピアスを」はわずか19歳です。また、直木賞として、綿矢りさの「蹴りたい背中」があるが、従来見ることのなかった若年層(高校生年代層)にまで拡がってきていルナ度、新しい時代を感じさせる。
今年度の直木賞は森絵都の「まほろば駅前多田便利軒」三浦しおんの「風に舞い上がるビニールシート」です。芥川賞は伊藤たかみの「八月の路上に捨てる」となっています。

②プロレタリアート小説
大正時代になると、国家が主体となって近代化のひずみが現れて低賃金で搾取される労働者の抵抗が現れて、当時の劣悪な労働条件を表わした「蟹工船」が有名になり作家の小林多喜二が有名になりました。

③時代劇小説
時代劇小説はほとんど知識がないのですが、日本の忠実な歴史を再現したものとかとか当時の偉人を描いた小説、当時の庶民の生活を描いた小説、またたび物の小説があるようです。

当時の偉人を描いた小説家としては、大仏次郎・吉川英二が上げられます。
吉川英二の「徳川家康」はあまりに有名です。当時NHKラジオで徳川無声の連続小説「徳川無声」は全盛を風靡しました。

当時の庶民の生活や侍、奉行の行動を描いたものとしては、
山手樹一郎・山岡宗八・池波正太郎・などが上げられると思いますが詳しい知識がなくてごめんなさい。

③推理小説
推理小説の元祖は、まずなんと言っても江戸川乱歩でしょう。
江戸川乱歩はいまだに高い評価を得ていて少年から年輩者まで広い層で読まれているようです。
その手法は今でも新鮮で奇抜な発想で読むものをひきつけてしまう魅力があります。
さらに、推理小説の面白さは物語りはきわめて論理的に組み立てているものの真の犯人が誰であるか、最後まで読者がハラハラ、ドキドキした気持ちで興奮して、結末はまったく想像もし得なかったことが待っているといったところでしょう。

戦後派としてはなんといっても松本清張に留めをさすでしょう。
戦後の不可解な事件を探った「帝銀殺人事件」をはじめ日本の政界を抉った「日本の黒い霧」巨大金融の「日本銀行」そのほか「東京大学」などがあります。
また完璧なアリバイを崩して犯人を時間と線でたどって追いかけた「点と線」などがあります。
なお、松本清張の作品については下記サイトを見るといいでしょう。
http://dennoutosi.seesaa.net/

⑤官能小説
戦後荒廃した世相の中にあってその日を生きてゆくさまを描いた田村泰二郎の「肉体の門」があげられます。

⑥サイエンスフィクション小説
代表的作家は
小松左京・星信一などがあげられます。
星新一の代表的作品として「ポッコちゃん」「マイ国家」長編小説「きまぐれ指数」などがあります。
同時に一般の人を対象に「ショートショートストーリー」を公募して新人の発掘を行いました。
小松左京は星信一とともに本格的なSF作家で「日本沈没」「首都焼失」などが上げられます。

時代は2000年を超えてからは、コンピューターの飛躍的発展、中でもインターネット、ケータイ電話の技術の飛躍的発展により、従来考えなかった5つの部門が発展して誰でも気軽に小説家を目指すことが出来るようになったということです。
会話の表現も今風の感性的言葉が使われています。

僕が書いた小説も「愛は時を超えて」短編小説「けだるい夏の日」「終電車」もある面では登場人物の会話の面白さとちょっとした表現で微妙に変化する人間の心理の変化を掬いあげています。これなどは僕が最初シナリオからスタートしたので、私のこの一言わかって欲しいというドラマの会話の面白さを書いているつもりです。
中には最初から登場した主人公、ヒロインが最後に結果がわかるのはよく言えば王道、悪く言えば「ベタ」で面白くない」もっと強い女性でなければという意見も見られますが、たとえばNTVの「あいのうた」でもヒロイン「あい」が育った不幸の環境の中で、ガンを宣告されて余命いくばくもない子連れの片岡優二に恋心を抱いていることに終始変わりなく、また、最近放映されたドラマ「働きマン」でも仕事一途に男顔負けのすさまじい猛烈に仕事をやってのける強い弘子が恋人新二に会うと「好きです」と一言も言えない繊細な心を持った女らしさを見せて、最初から恋人は新二でそれ以外には振り向きもしないそんなピュアーな愛が好まれているのも真実です。
また、最近純愛物が復活していて、男女いずれかが死の宣告を受けて生きている限り力強くいきていこうという実話・物語がありますが、これらも最初からある人と出会いそして同じ人を命つきるまで愛して行くという物語、映画が人気になっています。
この二つの作品のように女性の弱さを見せるがゆえに強い部分も引き立ってくるのではと思います。
一方では最初の部分と最後の部分がまったく読者が想像することは不可能な小説も最近多くなってきていますが小説には両方あってよいのではないでしょうか。
ただ、推理小説との区別をする必要があるのではないでしょうか。

従来の伝統的文学では考えられなかったこれらの部門である日テレがコミックとして、小説として発表されると爆発的増刷でたちまち50万部で、それをドラマ化、映画化されるようになってきていて、何が読まれる基準なのかわからなく不透明な時代であると難しさを主張する出版社も出てきている有様です。

①ライトノベル
僕の考えですが、楽しく明るく読める軽い読み物という意味でライトノベルという名前がつけられたのではないかと思います。
この小説は従来の文学的表現にとらわれず、見てみるとシナリオのように会話の羅列されたところがありますが、シナリオと従来の小説が合体したのではないのではないかと思っています。僕が書いた小説も「愛は時を超えて」短編小説「けだるい夏の日」「終電車」もある面では登場人物の会話の面白さとちょっとした表現で微妙に変化する人間の変化を掬いあげています。これなどは僕が最初シナリオからスタートしたので、私のこの一言わかって欲しいというドラマの会話の面白さを書いているつもりです。

②NET小説(HP・ブログ)
これらの範疇としてインターネットのHP,またはブログで自分の作品を掲載して皆に見てもらうことです。
特に小説は自分で書いていてどこがよいかわからなくなることがまだありますので読んでもらってコメントをしてもらうと客観的に判断ができて励みにもなるようです。

因みに最近はブログの小説・日記がある日映画化・ドラマ化されることが多くなってきてます。
怖い嫁の言動をユーモラスに綴った「鬼嫁日記」電車内のちょっとした事件をブログに書いてそれが評判になって投書を元にした「電車男」は映画化までされました。

➂自費出版文学
一億総著述家といわれる今日、新しい潮流に自分の思いをエッセイ、小説、詩、短歌、俳句、童話、さらに写真、絵画にして出版する自費出版が脚光を浴びつつあります。

一方、最近は活字離れでかわってコミックに人気が集まって中にはたちまち何十万部という驚異的な販売冊数を記録することがあります。そしてそれが視聴率の増加につながればということでいきなりTVドラマ化、映画化される例が多くなってきています。
たとえばつい最近もNTVの「働きマン」「ごくせん」「女王の教室」TBSの「CAとお呼び」フジテレビの「のだめカンタービレ」などがコミックのドラマ化されたものが放映されている状況です。

もの書きとして目指す点

もの書きとして目指さなければならないことは、いったん書き出したらその作品が完成するまでは終わりまでずっと書き続けることが大切だといわれています。
決して途中で投げ出さずそれを最後まで貫く忍耐力・持久力・探究心が大切だと言うことです。とは言っても書いてて途中で指が進まなくなってしまうことがあります。

出来るだけ沢山書くこと

もの書きとして表現とか情緒とか、感情の表現とか大切なことは沢山ありますが、どんな下手な人でも原稿用紙に1千枚くらいを目標にして書くと自分の伝えたい言葉が自然に出てくるようになるそうです。
僕も昨年からシナリオ・小説・エッセイなどをこの1年間といにかく書き続けてきたので小説にしてもボキャブラリーが豊かになっていろいろな表現が出てくるようになったと思っています。

情景に敏感であること

一口に小説につきものの情景といっても自然の表現がたとえば夕方を表わすのに「茜色の雲」とか「心地よいそよ風」とか当たり前の言葉で表現していてはもの書きとしては落第とある審査員は言ってました。
風といえば20種くらいの表現がなくてはいけないそうです。
夕日の表現でも天気・雲によって時間の変化によって違ってくるので、色彩辞典を持っていることが大切だそうです。
二人は海辺で茜色に染まった雲のある夕焼けを見て「きれいだね」といつまでも寄り添っていた×
二人は海辺でオレンジ色に染まった夕陽が黄色・紫やがて濃い灰色に変わってゆく
雲の色を見て「きれいだね」といつまでも寄り添っていたの方がよいのでしょうか。

同じ言葉で締めくくらないこと

これは文の終わりが「遅く来てごめん」と言った、「私何分待ったと思う」と言ったとゆう具合に「言った」「だった」など同じ文言を羅列しないことです。
この場合「言った」「だった」と過去形文言を使用すると物語そのものは継続的動作なのにあたかも長い麺がぷつっと切れてしまって冷たい平板な感じになってしまうことに最近気がつきました。

現在進行形の「~している」「感じる」「遊んでいる」という形の文言を挿入することにより全体としての文体が引き締まってきます。
登場人物のそのときのなぜそういったのかを考えてみることが必要だと思います。
これは最近僕が言ったの羅列をしていていえないんですけど、果たしてこれが皆に読んでもらえるだろうかを真剣に考えるようになって書店で文庫本を見て今頃にして気づきました。

物語に意外性をもたらせること

読者が小説を読んでいて、読み進むうちに読者が考えていなかった意外なこととかどんでん返し的な手法が読者の興味を誘うようです。
意外性とは読むものは最初の部分をよんでいるうちにすでにこれはきっとこうなるのだろうと頭にイメージつけてしまう傾向があるので読んでいるものの想定と違った結果を表わすことにより読む人の気持ちを高めることが大切と思っていますが、実際書くとなると非常に難しい部分です。


今風若者言葉も時には必要

物語りを書く場合、いつも正しい言葉が大切とは限りません。
登場人物によって30台の男女と20台の男女の場合、年代の相違を明確に表わすには言葉の相違によって表わすことが効果的だと思います。
あるシナリオ教室では受講生にテーマを与えて書かせるんだそうですが、50台以降の人は丁寧なザーマス調で書いてるので、先生が若者言葉がわからなければ大勢の若者が集まる渋谷などへ出かけて街を歩き感覚を掴んで来いというそうです。
場合によってはドラマをDVD・ビデオなどで収録しそこから20台の若い人たちの言葉を研究することもいいかも知れません。



原稿用紙かPCか

よく作品を書く場合原稿用紙かPCかどちらがよいかが議論の的になるようですが、僕の経験から見るとどちらも一長一短あるようです。
原稿で書き物をするとPCと異なってとにかく何百ページと言う作品をペンで書くわけですから一句一字間違ってはいけないことになり、神経を集中させてわからない字を辞書で調べる必要があります。
もし、誤まった字とか書きながら何節かを付け加えたりすると極端な場合は最初から書き直す必要があります。

僕もはじめて原稿用紙に150ページ分を書きましたが最初にきれいな乱れない字が書けても最後まで字を一糸乱れずに書くことがいかに困難かを実感しました。
物語りを途中から書いたり書けるところから書いていくことは出来ないようです。
PCがこんなに発展している世の中でいまだに原稿用紙で応募すことが条件付けられているのを見ても原稿用紙の重要性がわかると思います。

一方、PCで指でキーをたたいて作品を書くということは原稿と異なってどこからでもかけることです。初めから、または途中から、最後から思いついた構想をメモに書いていてそれをやがて作品に高めていくことが出来ます。
また早打ちをして作品を描いてゆくことが出来ます。
PCは該当漢字がいろいろと出てきますので正確な漢字を調べないで書いてゆくので誤字が出てしまいます。

またPCで書くと時折ここが説明不足とかもっと情感を高めなければとかいうことで挿入が多くなり、甚だしいときは当初意図していたこととまったく異なった作品になってしまうことがあります。
その結果いつまでも作品が出来ず修正に固持してしまうことがあります。
一方、原稿用紙だと一度書いたものは挿入・訂正が不可能なので書き終わったもの、すなわち完成品ということです。

エッセイ | コメント:0 | トラックバック:0 |

おすすめのTVドラマ フジTV「のだめカンタービレ」

4月 「のだめカンタービレ」準備中
長編小説 | コメント:0 | トラックバック:0 |

今月の書評「女性の品格」坂東真理子 PHP研究所刊

昨年病院に行く途中、駅の書店で目に止まったのがこの本でした。
その時、30万部(現在200万部)突破ということで、なにか診療を待つ間、さらっと読めてさわやかな感じの本はないかと探していたので早速購入しました。
「国家の品格」が出て、それ以来、品格ということばが盛んに用いられるようになって、ついにNTVテレビドラマさえ、派遣社員300万人といわれており労働市場も様変わりですが、「ハケンの品格」が放映されました。

余談になりましたが、「女性の品格」を読んで見た感想は、

品格を保つための項目が60項目以上ありますが、読んで目だったものはなく、古きよき時代と新しい時代のモラルを融合させてほしかったと思いました。
たとえば、お礼状はすぐに出すとか、人に感謝の気持ちをすぐ伝えるとか、つつましく振る舞い、自分を主張しないとか、目上の人を尊敬するとか、一昔前には、女性が守っていた常識的な内容が多く少しがっかりしました。
もっと新しい時代に即したフォーマルな場合とインフォーマルな場合とのことばの使い分け、
ケータイで外で話すときには小さな声で話す、車内でお化粧をするのを控えるとか日常起きているささいなことも言及してほしかったと思いました。

面白かったのは、会社でもご近所のお付き合いでも、特定のグループには入らないことという項目がありましたが、グループでも中にはあまり有益でないものもあるかも知れません。
つまり、それに流されて、自分の目的を失ったりすることです。
新しい時代に対応してほしかったのは、語学とか自分の趣味を広げるためにスクールにいくとか、テレビで学ぶということです。

また、高級な物を持ちなさい、いいものを何年も使うことは理解できないでもありませんが、安いものを買って使うのも今の厳しい経済情勢では当然ですので、これはあくまでも個人の意思決定にゆだねるべきであり、女性がこれによって品格があるかどうかの問題ではないと思いました。

昔は家族も二代が同居していて祖母から、母へ、母から娘へと語り継がれて自然にマナーが継承されてそれぞれの品格が形成されていくと思いますが、今は核家族でどういう風にエチケットを身につけたらわからない、誰も教えてくれる人がいないので、そういう意味で家庭に一冊あってもよいのではと思いました。

その他 | コメント:0 | トラックバック:0 |

純愛小説「愛は時を越えて」新風舎から7月出版され PART2も書く予定です、

「愛は時を越えて」は7月7日念願の書として新風舎より短編2編「けだるい夏の日」「終電車」を収録、刊行されました。
収録内容はPART1です。

あらすじPART1
幼稚園で幼馴染の裕彦と亜理紗は聖書劇で一緒になって以来仲がよかった。
その後二人は別れて、大人になった二人は、32歳を迎えて亜理紗が極東航空の客室乗務員(キャビンアテンダント)チーフ、裕彦はビジネスコンサルタントとして20年ぶりに国際線機内で再会した。

しかし、同時に亜理紗はチーフパーサーとして新人の伊東葉月と後藤いずみとの実地研修を行わなければならなかった。
亜理紗と10歳も違う二人は、個性的でちょっと自己中心的で、機内でいろいろ説明、指示してもどうして私たちが、とか、まだ新人ですと言って素直に応じず、亜理紗を困らせた。
しかし、新人の葉月が、ベジタリアン食しか食べない外国人乗客に間違って豚肉入りカレーを出して大騒ぎになったが、亜理紗は新人に代わっり償った。
その夜、機内で急病人が発生、亜理紗は率先して乗客の救急措置を行うのだった。
葉月、いずみに亜理紗から叱責されたが、亜理紗の積極的な行動に次第に目覚めていった。

ニューヨークマンハッタンで二人はようやく再会、積年の想いを話した。
幼い幼稚園時代の想い出から始まった二人の話は20年の時の流れを埋めるにはあまりにも長かったのである
5番街を、セントラルパークで秋のニューヨークを散策しても長い年月の空白は埋まらなかった。
ついに二人は夜のエンパイアステートビルで愛していますと告白した。

PART2これから書こうと思っています。この小説はブログに順次掲載して行く予定です。
ただし自費出版はいたしません。
初期の目標は達成されましたし、結構費用もかかります。
この書を出版したことにより今までも多くの感想をいただきました。

・幼稚園時代の幼馴染二人が戦争で別れ、断絶、32歳になったとき二人が国際線機内で再会を遂げて、少しずつ積年の想いを話しながら、最後に愛していることを告白、ロマンチックで感動した。
・美しく純粋な二人に感動するとともに幼稚園時代の幼馴染を考えた。
・淡々と二人が描かれていてよかった
・はじめから出会った二人が一緒になる話は退屈で飽きる、陳腐化した話である
・主人公の性格が弱い、男まさりの女刑事の主人公のような女性とか
実にいろいろな感想をいただいたことを感謝しています。

PART1のポイントは幼馴染の亜理紗、裕彦は20年後32歳のとき、運命の再会を果たし、二人には戦争が激しくなって突然別れて、再会したといってあまりにも長い空白期間があり、二人は不安を抱えながら、幼年時代の話から、少しずつ氷が溶けるように時間をかけてゆっくりと愛し合ってることがわかってくるのです。
だから会話を通じて二人の繊細な気持ちを書きました。

次に亜理紗は、極東航空のチーフキャビンアテンダントで、機内で起きる乗客の問題を冷静にとっさの事態にすばやく判断し5人のキャビンアテンダントに指示するとともに自ら率先して問題を解決し、文字どおり仕事に厳しくアテンダントたちにとっては恐く、会社上層部からも高く買われている存在ですが、反面、そんな亜理紗はいくつになってもピュアーでひたむきの純粋さ、不器用な恋しかできません。そういった亜理紗の対照的な異なるプロフィールによって生きてくるのです。

このような純愛物語は、どうしても二人が中心になり、飽きてくるという人もいて、亜理紗・裕彦のほかに極東航空という企業の中で、亜理紗と登場する5人のキャビンアテンダント、特に新人ギャル、新人類の葉月・いずみにも焦点を与えて一本調子にならないようにもしまた。特に32歳の中堅社員としての仕事と新人二人の仕事を大きく対比させました。

あらすじPART2
PART2は新しくこれから長編小説シリーズとして登場します。

亜理紗は裕彦と運命の再会を遂げたあと、4日後、亜理紗は葉月とともにアメリカからの帰途突然房総沖で発生した乱気流に遭遇、機長から緊急情報を聞き、客室乗務員は皆に緊急時の対応を知らせて、座席に身をかがめて低い姿勢をとるように指示した後、彼女たちもシートベルトを着用したが、亜理紗は通路で客席からすべった小さな幼児が通路にいるのを発見子供の命を助けるために亜理紗は身を子供の上に覆うように子供をしっかりと守るのだったが乱気流に巻き込まれ、亜理紗の身体は幼児を抱いたまま宙に舞い、天井に身体をぶっつけて、全身打撲で意識不明となったが、亜理紗は子供の命を救ったのだったが、羽田空港着と同時に入院

翌日、新聞に「極東航空、客室乗務員高梨亜理紗、お手柄、幼児の命救うが意識不明で入院」と報じられて、会社もいまさらのように亜理紗の行動を大きく評価して復帰することを待つと声明、新聞を見て驚いた裕彦が病院に駆けつけて、亜理紗は数日後意識回復するのだが、裕彦は徹夜して毎日亜理紗を励まし。病院の廊下の椅子で寝て、会社にそこから出かけるのだった。こうした裕彦の励ましにもかかわらず、松葉杖に頼らなければならない亜理紗は裕彦の仕事と未来の彼の飛躍に自分が妨げになってはとある日、裕彦に手紙をしたためてお別れしましょう,そういう手紙を残して叔母のいるサンフランシスコに飛び立つのだった。

亜理紗、裕彦、それに葉月、いずみは・・
10年後、20年後まで描いてまいります。

第二部は、第一部と異なっていくらか波乱に満ちた物語にしたいと思っています。
亜理紗は帰りの機内で乱気流で負傷、病院に入院、裕彦が駆けつけて病院寝泊りの必死の看護、
それでもついに亜理紗は車椅子の身になり、裕彦の足手まといになってはと、別れの手紙を書き、私が去っても葉月はとてもいい子なので彼女と幸せに
その時、亜理紗と裕彦にはじめて試練が
もし、あなたの恋人がこういう不運に立たされた時、どうしますか、そんな問いかけを物語で書いてみたいと思っています。

私の小説、シナリオには刑事とか警察は登場しません。そういう物語は書店で沢山求めることができるのでほかの作家さんにお任せしたいと思います。

なぜ毎日のように人は憎みあわなければならないのでしょうか。お互いが助け合い、いまだからこそ愛し合っていくことが幸せだと思うような物語が大切と思っています。
それに、年輩者でもあり、吉永小百合などの映画を見たのが青春時代で、和泉雅子、山口百恵を見た時代です。
テレビドラマも恋愛物でも、シリアスな刑事・犯罪・不倫物語もありますが、最近は純愛シリーズのドラマも復活してきています。

NTVの菅野美穂・玉置浩二主演「あいのうた」、警官役の片岡優二、彼は妻に3年前先立たれて、3人の小さな子供を抱えて毎日を送っていたが、彼も医師からがんに侵され、あと、半年の命と告げられているが、せめて限られた命を子供のために楽しい想い出を残してやりたいと明るく振舞っている。

そこへ突然、小さいときから母親の愛を知らずに不幸を一心に背負った松田洋子が成人して、東京を見た後,川に飛び込むが、死に切れず、優二と知り合い、記憶喪失症を装う洋子に皆が名前をつけてあげて、新しくあいちゃんといわれて、一緒の生活をしていく。

あいは、優二を次第に愛して行くものの、ピュアーで相手に自分の気持ちさえ伝えられないこんなひたむきな女性を描いたものも今もなお放送されています
私は強い女性よりも、弱くまた、男性も恋愛が不器用な人間としての弱さを持っている物語、ドラマが好きです。
だからこそ、定年間際のあと半年といわれた警官、片岡優二と20歳以上も年齢差のあるあいとの間が清楚な感じになるのです。好きだった好きとなぜ言わないのと何度も同じレストランに働く彼女に言われるのです。

「働きマン」の新二への不器用な松方弘子の恋愛、彼女は仕事を猛然とこなし、あらゆる問題を解決していく働きマンです。でも、一方ではいつも恋人新二に逢うときは、弱くてピュアーで見ていても聴視者が見て支えてあげたい気持ちがあるのです。仕事がスーパーマンで、恋愛も男まさりの女性、そういう女性は書いていても魅力がないでしょう。人間どちらかが強ければ、どちらかが弱いのです。松方弘子がとても不器用で思ったことさえ、誰かに言われる弱さ、それがあるからこそ仕事がすごい女性に見えて、また可愛くもあるのです。つまり、これが主人公の特徴です。
韓国ドラマペ・ヨンジュン・チェ・ジュウ主演「冬のソナタ」チェ・ジュウ。グオ・カンサン主演の極め付きの純粋さを描いた「天国の階段」
をはじめ映画「恋空」など、

私の書いたこの小説は昭和41年ごろの時代背景です、そんな時代は今は通用しないと思われる方もいるかも知れません。登場人物、ヒロインの話すことばは当初は今風の言葉で書きましたが編集部の方からも、その当時の時代背景の言葉を考えてくださいということで、若干修正しました。しかし純愛はいつの世にもあります。その時代の背景も踏まえて二人の純愛物語を書いてみました。




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+ 小説書きに100の質問 +

+ 小説書きに100の質問 +

1 まえがき(あなたの意欲をどうぞ)。
A.今回、「愛は時を越えて」短編「けだるい夏の日」
「終電車」収録文庫本を行いました。
小さい時からいつかは絶対自分の書いた本を世に出したいと思っていました。これを契機に作家としての足固めを図りたいと思う
ですから意欲満々です.

2 あなたのペンネームを教えてください。
A.大路宏といいます
雄大な広い感じに小さいことにこだわら図、ゆったりしていたいと思い表現しました

3 小説の中の人物として○○○○(←あなたのペンネーム)を描写してください(自己紹介)。
「愛は時を越えて」は幼稚園の幼馴染亜理紗(仮名)と20年ぶりに裕彦と再会する話です。
裕彦のように、仕事は積極的で、反面のんびりとしていて、常に人をを気遣い、優しくしかし高所恐怖症の面もあるのは自己を紹介しています。

4 あなたの職業は?
A.高齢者ですので、今後は作家の卵として頑張りたい、著述業でしょうか.生涯現役のためにも。

5 あなたのバイト遍歴を教えてください(あれば)。
A ありません

6 小説書き歴は。
A 2年です

7 小説書き以外の趣味を教えてください。
A パソコン、音楽、鉄道、写真など

8 好きな小説のジャンルは。
A 純文学小説、純愛小説、歴史小説、SF小説、推理小説、ドキュメンタリー小説など広範囲です

9 好きな作家は。
A 夏目漱石(純文学作家だから)、、
星新一(ショートショートストーリーの大切さをSF物語で平易なことばで書いている,
林真理子(女性の世界を克明に描写)
城山三郎(高度成長時代の企業を鋭い観点から描写)
松本清張(論理性、事実の検証という点で一番参考になる),
最近では
江国香織
石田衣良


10 尊敬する作家は。
A 夏目漱石、小松左京 星新一
夏目漱石は昭和を代表する純文学作家
小松左京はSF作品でも科学的に分析して書いている
星新一は同じSFでも平易な言葉で書いていて読んでいるうちに自分も書きたくなってくる感じ、

11 好きな小説は。
A 「毎日が日曜日」,「日本沈没」、「anego」
12 好きな映画は。
A 「ローマの休日」、「デイ・アフター・トモーロー」、、

13 好きな漫画・アニメは。
A 「ちびまるこちゃん」「サザエさん」

14 好きなドラマは。
A NTV「ハケンの品格」、「anego」
  NTV「働きマン」,
  ハングルドラマ「ホテリアー」

15 良く聞く音楽は。
A 音楽は広範囲に好き
 クラシックではチャイコフスキー、ベートーベン
 軽音楽ではムードミューズイク、マウントバーニー、
 POPSでは中島美華 「見えない星」をよく聴く
 歌謡曲では山口百恵 「いい日旅だち」、

16 心に残る名台詞と、その出典は?
A 名せりふといえないが、ある大手企業の社訓
 「向上の一路頂点なし」
 「THINK」
聖書のことば、「何事も一生懸命励みなさい」
映画では「ローマの休日」で
アン王女がひそかに宮廷を抜け出して、新聞記者と一日ローマを楽しく過ごすうちに恋に陥るが、自分の国の人たちを思い出して、記者と別れた翌日記者会見があり、ヨーロッパ諸国のどこが一番よかったかと記者に聞かれ、最初はお決まりの「どの国にもよいところがあり、どこといえませんが・・・・」と言って、突然、「それはローマです、私は一生ローまで楽しく過ごせたことは忘れません」といった言葉は、いまだに忘れられない名せりふである

17 月に何冊くらい本を読む?
A4~5冊

18 小説以外ではどういう本をよく読みますか。
A パソコン誌、鉄道雑誌、旅行雑誌
 パソコン誌はPCをより理解して種々に活用したいため
 鉄道は趣味のため

19 読書速度は速い方ですか遅いですか。
A、速いほう、要点をつかむため

20 あなたは自分を活字中毒だと思いますか。
A 相当高度な活字中毒、極論するならば活字がなくては生きられない
 常に新しい情報収集を行ってる

21 執筆に使用しているソフトは。
A WORD2003 WORD2003  たまに一太郎

22 初めて書いた小説のタイトル・内容。
A TVシナリオがはじめて「ホテルの恋人たち」
 ホテル経験をもとにアレンジした、TV並みに13話
 小説では「愛は時を越えて」
 短編「けだるい夏の日」「終電車」

23 小説のタイトルはどうやってつけていますか。
A 思いつくまま、なにかやってて思いつくことが多い

24 あなたが書く小説のジャンルは。
A 青春小説、純愛小説、企業小説、

25 一人称と三人称、どちらで書くことが多いですか。
どちらかといえば三人称

26 短編と長編、どちらが多いですか。
長編が圧倒的に多い、数作品を思いつくままにワープロに打ち込む
短編で訴求力のあるものを書くのはかなり難しいと思っている

27 どのくらいのペースで小説を書いていますか。
6ヶ月に3~4本(ただし未完)

28 ストーリーと登場人物、どちらを先に決めるか。
A ストーリー、まずあらすじ、大要が頭に浮かんでしまう

29 ストーリーはどういう時に思いつきますか。
A あらゆるときに思いつく、テレビを見てるとき、ニュースを見てるとき、人と話しているとき、街を歩いているときなど。


30 ストーリーはどの程度決めてから書き出しますか。
A あらすじを組み立てて書いて見て半分くらいにまとまると書き出す
 いきなり思い立って書きながらストーリーを考えることもある。時には書き出しているうちに先のストーリーまでまとまることもあり、あまり苦労しない

31 人物の名前はどのように決めますか。
A 思いつくまま、女性の場合、○○子は使わない、今風なな前にこだわることが多い。
 子を使用するとなにか古いイメージに見える

32 資料をどのくらい集めてから書き出しますか。
A 時と場合による、書きながら不足資料を集めたり、調査したりする
 「愛は時を越えて」は幼稚園時代の幼馴染と国際線機内で20年ぶり に運命の再会をするため、しかも彼女が客室乗務員パーサーの設定を したので、仕事の役割、機内描写など、あらゆる資料を集め、リアル 性を高めて迫力感を持たせた

33 小説を書くときにあなたが気をつけていることは。
 ➀ストーリーがしっかり組み立てられていること
 ➁登場人物が確定していること
 ➂登場人物の性格がはっきりしていること
 ④短編ならばどこで終わらせるかを考慮する
 ⑤長編ならば各章が読者に訴求力を持たせること
 ⑥読んでいて映像として結ぶこと
 ⑦季節、場所、時間など背景がしっかりしていること
 ⑧書くための徹底的な資料、取材の徹底
 ⑨時代考証が性格であること
 ⑩各せりふの効果的な活用など
 
34 小説を書く能力は、どのように磨きますか。
 本をよく読む、どういう表現かよく考える、短文を頻繁に書く、
 気に入ったドラマはDVDに録画してせりふを全部PCに打ち込み、これを小説化して よく読んで表現性、情緒性などの参考にする。
 

35 ネタが無いときはどうしますか。
A ネタはいつでも転がっていて不自由しない

36 あなたが小説を書く上で影響を受けたものはありますか。
A 親しい友達が小説を書いていて感化を受けた
  病気でたびたび入院して、それが契機で小説を病院でノートに書い  たことが動機
過去、経営コンサルタントとして報告書、商業雑誌にもルポを書いた  ことが大いに役立った

37 他の人の書いた小説を読むとき、ついつい注目してしまうのはどういうところですか。
A 登場人物と性格の明確化
 全体の流れ
 ことばの表現
 付け加えると、独創性、個性、表現性、論理性など

38 これから書きたいテーマは。
A いろいろな企業で展開される人間模様、その中に恋愛もある。
 過ぎ去りし日の青春時代、「3丁目の夕日」のような
 「愛は時を越えて」は航空会社をテーマに前半調べ書いた

39 感想はどのように得ていますか。
A ブログに掲載の上、コメントを書いてくれた方から
  本を差し上げた方への印象

40 批評されても良いですか
A とにかく批判を含めて大いに歓迎している
 つい自己満足に陥りがちになり、批判してもらうことによって自分の 気のつかないことがわかる。

41 あなたの未来予想図、22世紀の世界はどうなっていると思いますか?
A わからない
 環境の破壊がますます進むことが考えられる

42 ますます発達する科学。人間のクローンについてあなたの考えは。
A 絶対あってはならない

43 超能力やUFOを信じますか?
 超能力の解釈によるが、例えば珠算暗算世界一とか、小学校で大学学 力同程度の子供とかTVで見るが、これも超能力といえる。
A まったく信じない。ただしドラマ、映画の上など見るのはよい。

44 世界の終末はどのように訪れると思いますか。
A 核戦争、

45 世界平和は実現しますか。
A 実現不可能
 過去の数千年、また最近でも内戦紛争が起きていて止んだことがない。国家間の利害関係による

46 最近の凶悪犯罪についてどう思いますか。
A 絶対根絶すべきである

47 政治家に物申す!
A 政治的には中立の立場だが、自分が高齢者、母を介護してる立場から言えば年金、介護、医療に優しくあってほしい。
格差是正、公約の実施

48 宗教についてどう思いますか
長い人生の間にはどんなに人生計画をたてて生活しても思わないいろいろな事情で破綻することもある。
そういうときに立ち直り、自分を強く忍耐を培うには必要だと思う。
それが他人に迷惑をかけるものあってはならないと考える。
A 人生の支え、試練に打ち勝つために聖書を役立ててる。
 関心持つ人には話をする。

49 一日は二十四時間ですが、ほんとは何時間くらい欲しいですか?
A あと24時間はほしい、小説など自分が集中してるときは寝なきゃならず、継続してあと1日あればよいと思うことがある。
でないと思考の中断になってしまう

50 現代に生まれてきて満足ですか。現代以外ならいつ頃生まれたかった?(過去・未来どちらでも)
A もし過去ならば平安時代、雅やかであったため。
 その頃の古文を読んで感じた。

51 「ファンタジー」とは?
 ファンタジーとは大人の夢である童話のようなものと思う。
 デイズニー映画に多い

52 何処かに引越しをするとしたら何処へ引っ越しますか。
A 外国ならばアメリカ、サンフランシスコ、スイス
 現在首都圏都市に住んでいるので田舎に行きたいとは思わない。

53 旅は好きですか。何処へ行きたいですか。
A 海外はヨーロッパ、パリ、ローマ、イスタンブール、ロンドンなど

54 登場人物の死についてあなたの所見を。
A 登場人物の死を書こうと思えばかけるが好きでない。
 ドラマでは、真実の話も含めて多くストーリーを盛り上げて感動とか涙をもたらすが、自分がもしここに踏み込むと下手するとそういうことを意図しているように思えてくる。

55 メールや掲示板の書き込みなどで「顔文字」や「(笑)(爆)(死)」の類は使いますか?
書き込みでは絵文字を使うことがある。
文字は、(泣)(涙)(笑)など、

56 昨今の日本語の乱れについてどう思いますか。
A よくないと思うが、ドラマでも使用していて小説書く場合に使うと効果的になるので使うことがある.
要は流行言葉は親しいもの同士で使うことはよいが、例えば職場の上司、目上の人に使うと誤解される。
非公式と公式の場をわきまえることが大切

57 社会に不満を感じることはありますか?どういう時ですか?
A、格差が拡がっている。高齢者に不親切,
医療費が高齢者なのに値上がりしていること

58 小さい頃、将来何になろうと思っていましたか。
A 放送局アナウンサー
歌手、俳優など考えたことがあるが顔が普通、声が歌手に向いていないことであきらめた

59 あなたの人生設計を教えてください。
A 高齢者のために今後は自分の持ち味である執筆活動をして、できればわずかな印税収入でもよいので頑張りたい。

60 外はどんな天気ですか。風景も含めて少し描写してください。
A 夕方に差し掛かる陽の日差しが柔らかく向かいの小学校の家路に急ぐはしゃいでいる子供たちをそっと包み、影が次第に伸びて遠くなってゆく。
季節はあきらかに秋だった、明日の天気を知らせるかのように雲は次第に折り重なってゆく。

61 読書感想文は得意でしたか。
A 得意なほうである、著作者の意図を汲み取って感想を書く

62 国語は好きですか?好きだった学科を教えてください。
A 好き、ただし文法は苦手だった

63 学校は好きですか。
A 好きだった。ただし学科によって好きな先生と苦手な先生がいたことは事実。高校3年のとき、なぜか一時登校拒否になった。

64 運動は得意ですか。
A 運動はまったく苦手、

65 鉛筆の持ち方、正しく持ってますか?
A 正しく持っている
 鉛筆より最近は水性ボールペン

66 実生活で「あぁ自分は小説書きだな……」と実感することはありますか?どういう時ですか。
A ある。自費出版をして著作書を手にしたとき
 出版社から小さいけど、自分の小説が毎日新聞に広告してくれた時
 ブログの掲載で、良いコメントをいただいたとき
 小説が完成して何度も読んでみて感性が豊かに表現されているとき
書きあがった作品を文学賞に応募したときにたぶんそう思う
 その結果の出版社からの感想、結果が送られてきたとき、たぶんそう 思う
 作家賞には応募したことはないが、原稿を出版社に送り結果の返事が 来たときには胸がどきどきした。

67 新聞はどこまでちゃんと読んでますか。
A 隅々、特に書評は念入りに読む、最近は取っていない

68 購読している雑誌は。
A 鉄道雑誌「鉄道ファン」「鉄道ジャーナル」など

69 本は本屋で買いますか?古本屋?図書館派?
A 本屋、最近はネットを利用して買うこともあるが。

70 詩・短歌・絵など、小説以外で創作をしていますか。
A 当初の出発点がシナリオ、詩、短歌、俳句も創作してブログ掲載
 最近は童話にチャレンジ 、
「美華のお手伝い」「一箱のクレヨン」「新浦島竜太郎物語」未完

71 恋人はいますか。
A 過去のこと、以前はいた。

72 何をしているときが一番楽しいですか。
A パソコンに向かい、インターネット見る、小説をPCで書く、他の人の作品を読むことなど、

73 あなたの人生の支えはなんですか。
A 聖書、友達、知人
 自分の趣味である作品を書くこと

74 懸賞小説に応募したことありますか?その結果は?
A まだない、自費出版を機会に今後は応募する

75 日記は書いていますか?
A 過去には書いたが、高齢なので書いても切ないことがあるため書かない

76 今までで一番衝撃的だったことは。
A 弟の死、26年間一緒だった妻子との離婚

77 睡眠時間は何時間くらいですか?
A 6~7時間

78 夜、眠りにつく前に布団の中で何を考えていますか。
A よく寝られるよう、母が元気であるように

79 長時間電車に乗る時、車内で何をしていますか。
A 小説を読む
  自分の書いた出版書を読む

80 ネタになりそうな実体験を教えてください。
A 過去の経営コンサルタントの経験
  戦争体験

81 どうして小説を書くのですか。
A 創造性、独創性を生かしていろいろな登場人物に自分の考えを語らしめることができる。
 時代、季節、場所など背景を変えたり、悲劇、喜劇、コミック調など自由にアレンジできること

82 小説を書いていて嬉しい・楽しいときはどんな時ですか。
A いろいろあるが、
 ブログに掲載、コメントもらったとき
 長編、短編、いずれも書き上げたとき
 
83 小説を書くうえで苦労することはなんですか。
A 高齢者なので今を書きたいと思うが、企業も激変していて正社員、派遣社員、契約社員などに分かれていることは知っているが、現実の体験がないこと。
若い人の行動も回りにそういう人もいなく、この面でもわからない

84 小説を書く時の状況は?(場所・時間・BGM等)
A 自宅、暇な時間があれば、平均して3~5時間 側でテレビがなっている、どんな状況でも集中できる

85 周りの友人や家族などはあなたが小説書きであることを知っていますか。
A 知っている。
 自費出版を機に、出版社から送られてきた本50冊を進呈したので、
 知ってるようにした。(笑)

86 あなたの周りに小説書きはいますか?何人くらい?
A ブログ仲間を含めると5人

87 スランプに陥ったことはありますか?どう乗り切りましたか?
A あまりスランプになったことがないが、先に進まないこともあり、そ のときはもう一度あらすじを見て、もし変えられるならばあらすじを 変えてストーリーを変えて書き、スランプを乗り切ったことはある。

88 長時間パソコンと向き合っていると目が疲れませんか?対策はしていますか?
A 不思議に目は疲れないが、活字をPCに打ち込むため肩が凝ることがあ る

89 最近難解な漢字を使用する作家が多いようですが、あなたはどうです か?
A まだ、難解な文字を使用したことがないが、難解な文字は漢字自体 が非常に深い意味を持っているのでいつか取り入れたいとは思う

90 こういう小説は許せない!
A 誰もが表現の自由があって束縛すべきでないと思うものの最近純文学がもっと育ってほしい、ヒットしてほしいと思うことがある。

91 自分の小説に満足していますか。
A 自費出版したぐらいなので満足はしている。
 満足できなかったら小説はかけないと思うが。

92 他の人のオンライン小説、どれくらい読みますか?
A ブログの小説ランキングを見て適切なものを読んでいる
  総計して90分ぐらいか

93 同人誌に参加したことはありますか。
 まだ、ない

94 将来的にプロ作家になりたいですか。
 プロになれるかは、ひとえに努力、資質があると思う。
 作品に対する読者の評価
 できれば出版社が出版してくれるようにはなりたい

95 それはどうしてですか。
 年金生活者であり、できたらわずかな印税収入による収入の確保

96 あなたの自作小説を一つだけ薦めてください。
A 一番最初に書いた短編小説「けだるい夏の日」
はじめて書いたので小説として拙い文章と思うこともあるが、幸一、涼子の高校生としての淡い初恋の淡々とさりげなく書けたのでひときわ愛着を持っている。
こんな時代に戻りたいと思うことがある。
 長編では「愛は時を越えて」
具体的に長年の夢が実現できた。

97 構想中のネタをこっそり披露してください(言える範囲で)。
A 長編小説で現代に住んでいるある男性が大地震に遭遇、壊滅的打撃を 受けたが、忙しくて行けなかった踏切をわたり隣町に行くが、そこに はかって青春時代に過ごした街があった・・・・・・
 男はそこで生活しているうちに、ある日
(踏み切りの向こうの街)

98 いつまで小説を書き続けますか。
A 病気で入院したときからベッドで書き始めたので生涯にわたって書く つもりである。生涯現役でありたい

99 読者に一言。
A 著作書にはあとがきを書き、どういう意図で書いたか述べてあるので
 そこを汲み取って読んでほしい。

100 あとがき。
A 質問が多く答えるのに苦労したが、気持ちを探る質問が数問あってびっくりしたが、自分がよく見えてきて特に小説についてどのように自分が意欲持っているかがよくわかった


by 小説書きに100の質問
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物書き手帳➀ 「小説は最初と終わりが一番大切というが

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もの書き、特に小説を書く時には、はじめの部分と最後の部分がもっとも大切で、そこに作者の凝縮された気持ちが現れていて、これから大体の内容が推察できること、登場する人物がどういう軌跡をたどるかが想定されなければならないという作家、評論家がいうがこれは非常に難しいことである。また、最後の部分も書く小説が花を持たせる部分でなければならないとは思う。
それは、壮大なオーケストラの荘厳な調べと一糸乱れぬ一人ひとりの手腕がこれらがまとまってこそ、演奏会を聞いた感激が伝わってくるのだと思う。
小説もまた、最後が終わりに、いうなれば最初から展開されてきた物語の流れが終わりに余韻となって読者に深い感銘を与えなければならないことは容易に理解できる。

さて、文を書く場合に、~している、見ているという現在進行形、~した、見た。思ったという過去形と~しているのだったという過去形で断定している書き方、また~なのだろうという疑問文をどこの部分で使い分けるかが非常に難しいと思うのである。
最初、はじめの部分で5分ほど読んで、読者がその展開に引き込まれてずっと読んで見たくなるような細かい設定がなされていなければならないのであろう。
終わりの部分が最近気になって、家にある小説を読んでみたのだが、
例えば、
山本甲子「ALWAYS三丁目の夕日」
この子がこれからも○の中の○○を見つけることができますようにと祈った
吉田修一 「東京湾景」
~が、○○○を真っ直ぐに、今、○○の方へ泳いできている
林真理子 「anego」
その○○がちの大きな○は確かに○○○のものであった
村上冬樹 「海辺のカフカ」
そして○○歳の○○さんがこの部屋に戻ってくるのを待つ(上巻)
江国香織 「号泣する準備はできていた」
大好きな○に電話口で~を言われても、ちゃんと○○を保っていられるように
など、
森絵都  「アーモンド入りチョコレートのワルツ」
私は~のように、生きていけるだろうか?
恩田隆  「夜のピクニック」
少年は○○に向かって、一目散に駆けてゆく
内田幹樹 「操縦不能」
○○は暗い空に向けて○○いく光景を~しながら、夜の○○を後にした

多くの小説が~したと過去形で終わりの文書を占めているのだが、中には疑問文?、進行形で閉めている小説も見られる。
そこで、僕は「愛は時を越えて」のフィナーレの最後の締めくくりで
亜理紗と裕彦はずっと抱き合っているのだった。亜理紗は、次第に涙がこみ上げてきて泣くのだった
と過去形をさらに強調した「だった」を使ったが、背景が20年ぶりという長い年月を経てやっと再開したという想いを強調して締めくくったのだが、
もし、進行形で
亜理紗と裕彦はずっと抱き合っている。亜理紗は次第に涙がこみ上げてきて泣いている。夜更けとともに薄い乳白色の霧がゆっくりと二人を包んでいくことも知らないで
で終わらせるとどうだっただろうかと悩むのである。




エッセイ | コメント:1 | トラックバック:0 |

テレビで学ぶ「韓国語」

テレビで学ぶ韓国語

韓国KBS放送が放映したドラマ「冬のソナタ」(主演ぺ・ヨンジュン、チェ・ジュウ)をNHKが放映したら平均視聴率が22%という高視聴率でたちまち韓流ブームが起きました。
特に40歳以降の中年女性に支えられていわゆるヨンさまブームが起きました。
これは最近の日本のドラマにものたりなさを感じていた純愛ドラマに魅力を持ったのだろうといわれています。

物語は春川の高校に転校して来たカンジュンサン(ペ・ヨンジュン)にチョン・ユジン(チェ・ジュウ)が恋をするのですがジュンサンが交通事故で亡くなり悲嘆にくれていたユジンが10年後ソウルでジュンサンそっくりのミニョンに逢うという話です。

私はユジンが初恋の人としてジュンサンと一緒に行動するのですが遅刻して担任の先生の目を避けて学校の塀を上るのを助け合ったり、島に行って自転車に乗ったり落ち葉の道を二人で歩いたり冬、初雪の日に二人が雪を投げ合ったりとそこには現代のようにケータイも喫茶店もレストランもなにもない自然を楽しむ素朴さと初恋が美しく皆自分の青春を思い出したのではないでしょうか。


僕は数年前、あるきっかけで韓国の人とお会いし、そのときの暖かな印象が韓国語を覚えようという動機につながりました。
昨年体調を壊し病院に入院して時間もあるのと韓流ブームの影響もあって韓国語を覚えようとと思いましたが、今、韓国語を覚えたいという人が多いようです。

病院で朝、看護師さんが「今朝は具合はどうですか?」と聞くので今朝は熱もなく本当にありがとう」「カノサシ、オヌルン・ナ・アン・アチム・チョンマル・コマオウヨ」看護師さん、今日は熱もなくて本当に調子がいいです。と言って看護師さんから「うまいわね」と言われました。

NETで度々「冬のソナタ」第一話を見てましたのでこれをノートに台詞を書いたらいつのまにか韓国語が想い出されるのです。それで「冬のソナタ」を素材にして韓国語を書いてみることにしました。

これで普段話せるわけではなくNHKの韓国語放送を聞いたりまた手元に韓国語教本(CD付き)を購入して文法やハングル文字を覚えることが大切です。
では最初のきっかけとしてどのようにして「冬のソナタ」第一話からとにかく韓国語を覚える最初の取りかかりについてお話しましょう。

なお、記事編集ではハングル文字も正確に出ますが投稿された段階では(・・・)としか表示されないので中断原因調査中です。

冬(キョウル)の朝の今日(オヌルン)오늘、春川の坂のある住宅の通りをユジンが駆け下りて来ます。サンヒョクが待っていてそこへバス(버스)が来ます。
ユジンがそれを見て「あっ、バスだ,バスだ、行こう」(야 바스다 바스 가자)「ヤ・ボスダ・ボス・カジャ」と言ってバスが来るとサンヒョクがユジンを詰め込んで遅刻常習犯のユジンに「先に行けよ、居眠りするな」「モンジョガ・チョルジマ」と注意します。

しかし座席に座り居眠りをして気がつくと見知らぬところを走っているので隣の見慣れない男子生徒と一緒に降ります。
ユジンは学生に「ここはドコなの、もう、起こしもしないでどういうこと」「ヨギガ・トデチェ・オデイエ?アンギョン・ムオハンゴエヨ」と文句を言います。学生は黙ってるので、「何年生?」「ミョンタンニエヨ?」、「二年生」「イハンニン」と答えます。

遅刻するのでタクシーを拾い引き返して学校の近くで二人は降ります。ユジンは気が急いていますが学生は立ち止まり壁に寄りかかりたばこを吸おうとするので「ちょっと、今何をしてるの?」「ヤ・ノチグム・ムオヘ」と言います。
高等学校「コドンハッキョ」の校門では先生「サムソンニン」ニックネームのゴリラ「カガメリ」が生徒を厳しくしかっています。

教室にソウルから転校してきた学生が入ってきますがさっきの学生でユジンは驚きます。先生が「今日、私たちのところに転校生が一人入ってくることになった」「オヌルン・ウリパネ・チョナクセンイ・ハンミョン・センギョッタ」と紹介されて名前を聞かれると学生は「カンジュンサンです」「カンジュンサン・イムニダ」と答えます。

女子学生の間でハンサムなカンジュンサンに関心が移り女子学生のオ・チェリンが「こんにちは、私、オ・チェリンよ、よろしく」「アンニョン・ナ・オチェリニア・パンガッタ」と挨拶しますが無視されます。

翌日再びバスで居眠りしているのをカンジュンさんにバスの外から窓をたたかれて目を覚ましてユジンもバスを降りますが遅刻であることには間違いありません。
ユジンが一計を案じてジュンさんのコートを引っ張って学校裏の塀を越えて中に入ろうと言います。

そこでユジンが「私が先に登ってから引っ張ってあげるね、早く伏せて」「ネガ・モンジョ・オルラゴソ・チャパジェルテニカ・パルリ」と言います。
じっとしているジュンサンに、ユジンが「相互扶助(お互いに助け合う)を知らないの?さあ早く、早くしてよ」「サンブサンジョ・モルラ・パルリ・パルリ」と急かせます。

ユジンのためにジュンサンは背を屈めて馬になって塀に登らせた後、ジュンサンは
手前の塀で勢い付けて塀に登り下に降りてしまいます。
塀から飛び降りれないユジンに手を差し伸べてユジンはジュンサンの腕に身体を抱かれるわけにも行かず「いいわよ、結構よ」「テッソ」と断ります。

ジュンサンはその答えを聞いて行ってしまおうとするのですが、ユジンもさすがに
困ってちょっと、ねえ、カンンジュンサン」「ヤッ・カンジュンサン」と手招きをして塀の上から降ろしてもらいます。

しかし、ユジンはジュンサンから抱かれるようにして降ろしてもらったのが恥ずかしくごまかすようにジュンサンに「今日、昼休みに放送しなければならないのをあなた知っているの?遅れないでね」「オヌル・チョシム・パンソン・ヘヤ・ハヌンゴ・アルジ?ヌッチ・マルゴワ」と言います。

とこのように物語を追いかけて短いせりふのところを覚えていくと韓国語も楽しく覚えられます。

なお、第一話で上で取り上げた以外の単語を若干載せます。

拍手「パクス」、ありがとう「コマオウヨ」ありがとうございました「カムサハムニダ」、野球「ヤグソン」、放送部「パンソンブ」、頭「モリ」、そこ「コギ」
学生「ハクセン」、父「アボジ」、日本「イルポン」、飛行機「ビヘンギ」
そう?「クレ」、母「オンマ」、韓国語「ハングルマル」、家族「カジョク」
好き「チョアヘヨ」、違う「アニャ」、音楽「ウマク」、初めて「チョウム」
影「クリム」、友達「チング」、はい「ネ」それで「クンデ」、数学「スハク」
高等学校生「コドゥンハクセン」、父「アボジ」、どうして「オットケ」、うるさい,「シックロ」、韓国語「ハングンマン」、家族「カジョク」、好き「チョアヘヨ」




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